花嫁移民(邦字紙記事)

Noiva-imigrante (artigo publicado em jornal de língua japonesa)

Immigrant brides (article published in a Japanese language newspaper)

花嫁は日本で入籍して、妻を呼寄せるという形式で渡航した。交際は写真と文通によるため、ブラジルの港で花婿に会って幻滅を感ずるということは、間々あったという。

移民花嫁
 夢と希望抱いて 12名到着
   おムコさんと感激の対面


『サンパウロ新聞』 1959年4月25日

 約三百名の新移民を乗せた大阪商船”あめりか丸”は予定より一日おくれて二十三日午前六時半サントス港に入港した。この船からはコチア単独移民八十九名、産業開発青年隊十五名、沖縄協会扱三家族十七名、力行会七名など合計二十八家族百十五名の家族移民と百五十一名の単独移民が上陸した[、]コチア移民は第二次千五百名口のうち第一回目のものであるがこの船ではほかにカンポス・ト・ジヨルドンに行くボーイスカウト隊の本年度第一陣渡邊平君(愛媛県、二十三才)も上陸した。


 しかしこの船で人気を集めたのは、集団としては初めてのコチア青年呼寄せの十二名の花嫁移民でこの日の人気を完全にさらつた感があつた。十二名のうち大半は日本で既に知り合つた相思相愛の仲であり数名は写真を通じて結ばれたものであるが船が岸壁につくや甲板上の花嫁と岸壁の花婿とがそれぞれ自分たちの”夫” ”妻”を確認し合い再会、初対面のちがいこそあれ共に感激にホホを紅潮させていた。上陸のはじまる約四時間はお互にそつと眼と眼を見合わせてはずかしそうにほほえんでいたが待ちに待つたこの日の喜びはかくし切れないものがあつた。やがて午前十時すぎ花嫁たちの付添役神野女史を先頭に十二名の花嫁がタラツプを降りてくるや待ちかまえた日伯報道陣の盛んなフラツシユがたかられ全観衆の注目を集めたが時ならぬこの騒ぎに荷役関係者もしばし仕事の手を休めた程であつた。岸壁に勢揃いして記念撮影を終つた花嫁たちは待ちこがれたノイボ[注 花婿]たちと初めて感激の握手を交わしお互の健康と将来を祝福し合つた。

 

  集団披露宴
   大勢の祝福受けて


 間もなく三々五々仲良く肩をよせ合つて税関所へ向つたが手荷物の通関終了後直ちにコチア産組提供の特別オニブス[注 バス]で披露宴会場へと向つた。潮ホテル屋上広間で行われた集団披露宴にはオタビオ連邦政府移民局長、上野領事夫妻[、]コチア産組大平氏など関係者約六十名が出席し関係者から新郎新婦に対して激励と祝福の辞が次ぎ次ぎに述べられた。これに対して新郎代表伊勢脇世君は、
  関係者の皆様にいろいろお世話になりました。幸福で健全な家庭をつくるべく一生懸命努力します。
と語つた。また岸田静子さんは新婦を代表して次のように応えた。
  私たちのためにこのような盛大な披露宴をして頂き厚くお礼申し上げます。ふつつか者たちですが今後とも宜しく御指導御鞭撻下さい
この後山下氏の発声で祝杯があげられ祝宴に移つた。

  “ホツト一安心”
    引率の神野女史


 あめりか丸に同乗花嫁たちと終始行動を共にした付添役の神野ヒサコ女史が無事任務を果した喜びを感慨深い面持で次のように語つた。
  船中では厳格すぎる程の監督をしました。これは心身共に健全な状態で花嫁たちをそれぞれのノイボに渡すためでしたが全員事故もなく無事任務を果したことはこの上ない喜びです。今回の企ては一つのケースとしてブラジルはもとより日本国内でも各方面から非常に注目していますので立派な家庭をきづくべく一生懸命努力して下さい。

 なおこの後荷物検査を終わつた花嫁たちは直ちにそれぞれの新郎に引取られ新生活に入るため目的地に向けて出発した。