憲法問題調査委員會会第一回乃至第四回總會並びに第一回乃至第六回調査會に於て表明せられたる諸意見[昭和20年12月22日提出] 大日本帝国憲法改正試案(昭和二一年一月、入江委員) 美濃部顧問私案[昭和20年12月22日提出] 大日本帝國憲法改正案(宮澤委員)[昭和20年12月22日提出] 大日本帝國憲法改正試案(清宮委員)[昭和20年12月22日提出] 大日本帝國憲法改正試案(河村委員)[昭和20年12月22日提出] 大日本帝國憲法改正私案(小林委員)、金子伯談話(抄)[昭和20年12月22日提出] 帝國憲法改正私案(大池委員)[昭和20年12月22日提出] 帝國憲法中會計關係規定改正案(中村委員)(昭和20年12月17日) 憲法改正綱領(未完稿)(古井嘱託)[昭和20年12月22日提出] [憲法第61条改正案](奥野委員)[昭和20年12月22日提出] 憲法改正試草(佐藤委員)(昭和21年1月3日)、憲法改正試草(追加一)(佐藤委員)[昭和21年1月3日] 憲法問題調査委員會会第一回乃至第四回總會並びに第一回乃至第六回調査會に於て表明せられたる諸意見[昭和20年12月22日提出]付箋に「十二月二十二日、二十六日の総会で検討せるもの」と記されている。(秘) 憲法問題調査委員会第一回乃至第四回総会並びに第一回乃至第六回調査会に於て表明せられたる諸意見凡例一、総会及び調査会に於て各顧問及び各委員の表明せる憲法改正に関する具体的なる意見はその強弱に拘らずなるべく網羅的に之を記載する方針を採れり。一、諸意見は之を憲法の関係各条項の下に分載せり。その際現状に近きものより遠きものに及ぶ順序に記載する方針を採れるも、必ずしも然らざる場合もあり。 一、諸意見中特に出席者の多数の意向と認められたるものには「多数」と附記せり。 一、「憲法改正ノ基本問題」に表れたる意見は総会及び調査会に於て言及せられざりしものも之を記載せり。 第一章 天皇第一条改正の要なし。天皇の統治権の行使は万民の翼賛に依る旨を特記するは妥当ならず。(多数)(cf第四条) 第二条 本条を修正し、皇室典範中実質上憲法に属する条項は之を憲法中に併せ規定すべし。(皇室典範及びその下に於ける皇室令は純然たる皇室家法たらしむべし)。(cf第一七条) 第三条 (イ説)現状を変更する必要なし。 (ロ説)「天皇ハ」を「天皇ノ一身ハ」と改むべし。 (ハ説)「神聖ニシテ」を削除すべし。 (ニ説)天皇は大権の行使に付無答責にして、責任は補弼大臣の負ふところなる旨を明記すべし。 (試草)天皇ノ一身ハ侵スヘカラス。 責任ハ国務大臣ニ属ス。 (ホ説)本条に付ては十分考慮の要あるべし。 第四条 改正の要なし。天皇の統治権の行使は万民の翼賛に依る旨を特記するは妥当ならず。(多数)(cf第一条) 第五条 別段の意見なし。 第六条 (イ説)現状にて可なり。 (ロ説)両議院の議決を経たる議案の裁可の時期に付き規定を設くべきか。(cf議院法第三二条) 第七条 A召集 (イ説)一定数の議員に対し召集を請求する権を認め、その旨を臨時会に関する条項(第四三条)に規定すべし。(多数) (ロ説)通常会は毎年一定の期日(例一月中旬)に当然集会すべきものと為し、その旨を第四一条(又は第四二条)に規定すべし。 (ハ説)右イ説又はロ説の如き規定を設くる場合は本条の「天皇ハ」の次に「此ノ憲法又ハ議院法ノ定ムル所ニ依リ」といふが如き句を挿入するを妥当とすべし。 B停会 停会の制度を廃止すべし。 C解散 (イ説)貴族院議員が公選によるとせらるる場合には貴族院に就くも解散を考慮する必要あるべし。(cf第三四条) (ロ説)解散以外に於て何等か貴族院の反省を求むる方法を考慮すべし。 (ハ説)貴族院の組織如何に拘らず、その権限を縮少すべく、その解散は之を認めざるを可とす。(cf第三三、三四条) (ニ説)同一の事由にもとづく再度の解散を禁ずる趣旨の規定を設くる要なし。(多数) (ホ説)帝国議会をして自ら解散を提議せしめ得るものとするは妥当ならず。(多数) D会期 会期の制度を廃止し、議会は常時開会するものと為すべし。(cf第四二条)(反対多数) 第八条(cf第七〇条) (イ説)緊急勅令の発布は帝国議会の常置委員会の諮詢を経べきものと為すべし。(常置委員会に付いては第三章に於て規定すべし)。(多数) (ロ説)枢密院に代へて参議院を設け、緊急勅令の発布はその諮詢を経べきものとすべし。(cf第五六条) (ハ説)第八条の定むる要件を第七〇条の要件と等しくすべし。 (ニ説)右の点現状を維持すべし。(第七〇条の要件を第八条に比して重くするを至当とす)。 (ホ説)緊急命令を以て法律を廃止変更したる場合に於てその命令が次の議会の承諾を得ざるときは法律はその命令の失効の公布と共に当然その効力を回復すべき旨を憲法に規定すべし。 次の議会開会前に緊急命令を廃止したる場合に於てもその緊急命令は次の議会の承諾を要する旨を規定すべし。 次の議会の議会中に承諾又は不承諾の議決を見るに至らずして閉会したるときは不承諾と看做す旨を規定すべし。 緊急命令が議会の承諾を得たるときは「法律たるの効力を有する」(或は「法律となる」)旨を規定すべし。 (試草)(第三項)次ノ会期ニ於テ承諾又ハ不承諾ノ議決ヲ見ルニ至ラスシテ帝国議会閉会シタルトキハ不承諾ノ議決アリタルモノト看做ス (第四項)第一項ノ勅令カ議会ノ承諾ヲ得タルトキハ法律タルノ効力ヲ有スルモノトス (第五項)第一項ノ勅令ヲ以テ法律ヲ廃止変更シタル場合ニ於テ其ノ勅令カ次ノ会期ニ於テ帝国議会ノ承諾ヲ得サルトキハ其ノ効力ヲ失フ旨ノ公布ト共ニ法律ハ当然効力ヲ回復ス (第六項)第一項ノ勅令ハ次ノ議会開会前ニ於テ之ヲ廃止シタル場合ニ於テモ之ヲ次ノ議会ニ提出シ承諾ヲ求ムルヲ要ス (ヘ説)右ホ説の如き規定を設くる必要なし。 (緊急勅令制度を維持する以上右の点は従来の通りにて差支へなかるべし。斯の如き規定を設くるときは第八条のみ徒らに長文となりて体裁上も妥当ならざるべし。) (ト説)緊急命令廃止説は之を採らず。(その存置によつて生じ得る弊害は議会の会期の拡大、前述常置委員会制等によつて之を防止し得べし)。(多数) 第九条 (イ説)現状を維持すべし。(別に法律事項を強化するに於ては現状にて弊害なかるべし)。 (ロ説)直接に臣民の権利義務に関係せざる命令を発する権のみを認むべし。 (試草1)天皇ハ法律ヲ執行スル為ニ又ハ行政ノ目的ヲ達スル為ニ必要ナル命令ヲ発シ又ハ発セシム但シ(以下現状通リ) (試草2)天皇ハ法律ヲ執行スル為ニ又ハ臣民ノ自由及権利ニ関ラサル範囲内ニ於テ行政ノ目的ヲ達スル為ニ必要ナル命令ヲ発シ又ハ発セシム但シ(以下現状通リ) (ハ説)独立命令を廃止すべし。 (試草)天皇ハ法律ヲ執行スル為ニ必要ナル命令ヲ発シ又ハ発セシム但シ(以下現状通リ) (ニ説)独立命令を廃止し、委任命令に就き規定すべし。 (試草)天皇ハ法律ヲ執行スル為又ハ法律ノ委任ニ依リ必要ナル命令ヲ発シ又ハ発シム但シ(以下現状通リ) (ホ説)委任命令の規定事項に一定範囲を定むるは妥当ならず(多数) 第一〇条 (イ説)「文武官」を「官吏」とすべし。(cf第一九条)(多数) (ロ説)但書を削除すベし。(多数) (ハ説)重要なる官制は法律を以て定むるものと為すべし。(多数?) 第一一条及び第一二条 (イ説)之を存置し、次の如く修正すべし。 (1説)「陸海軍」を「軍」と改むべし。 (2説)第一一条及び第一二条を一ケ条に統合すべし。 (試草)天皇ハ軍ヲ統帥シ其ノ編制及常備兵額ヲ定ム。 (3説)軍の編制は法律に依るものとすべし。 (試草)天皇ハ軍ヲ統帥ス 軍ノ編制及常備兵額ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム。 (4説)統帥権の独立を否定する趣旨を五五条に規定すべし。 (試草1)(第三項)軍ノ統帥ニ関シテモ亦前二項(1例)ニ依ル (試草2)(第一項)国務各大臣ハ 天皇ヲ輔弼シ其ノ責ニ任ス軍ノ統帥ニ就テモ亦同シ (第二項)凡テ法律勅令其ノ他国務ニ関スル詔勅ハ国務大臣ノ副署ヲ要ス軍ノ統帥ニ関ルモノ亦同シ (ロ説)第一一条及び第一二条を削除すべし。 (憲法改正を行ひつつ之を存置するは妥当を欠くのみならず、之を削除するも将来軍を設くる上に於て憲法上別段の支障なし)。 第一三条 (イ説)法律事項に関る条約及び国(庫)に重大なる義務を負はしむる条約の締結には議会の協賛を経べきものとすべし。(多数) (試草)天皇ハ諸般ノ条約ヲ締結ス但シ法律ヲ以テ定ムルヲ要スル事項ニ関ル条約及国(庫)ニ重大ナル義務ヲ負ハシムル条約ハ帝国議会ノ協賛ヲ経ルヲ要ス (ロ説)第一一条及び第一二条を削除する場合は宣戦に関する規定を削除すべし。 (ハ説)第一一条及び第一二条の存否に拘らず宣戦に就て規定すべし。 (1説)すべて宣戦は議会の協賛を要するものと為すべし。 (2説)専ら防禦的なる戦争以外の戦争に就いてのみ議会の協議を要するものと為すべし。 (試草1)天皇ハ帝国議会ノ協賛ヲ以テ戦ヲ宣ス但シ他国ノ攻撃ヲ受ケタル場合ハ帝国議会ノ協賛ヲ要スルノ限ニ在ラス (試草2)天皇ハ戦ヲ宣ス (第二項)他国ノ攻撃ヲ受ケタルニ非サル場合ニ於テ戦ヲ宣スルハ帝国議会ノ協賛ヲ経ヘシ (ニ説)条約は公布に依り法律の効力を有することを明示すべし。(cf第六七条) 第一四条 削除すべし。(第一一条及び第一二条を存置する場合に於ても本条は之を削除するを可とす)。(多数) 第一五条 (イ説)爵は之を廃止すべし。 (ロ説)位も廃止すべし。 (ハ説)士族平民の別を廃止すべし。 (ニ説)臣民中に於ける特殊階級の存在を否定する趣旨並びに栄典大権の輔弼に関する従来の不明確を払拭する趣旨に於て本条を削除すべし。(勲章紀章の類の栄典を設くる場合敢て本条を必要とせざるべし)。 第二章 臣民権利義務第二章 表題本章に於ける臣民の義務に関する規定が全部削除せらるるが如き場合に於ては本章表題に就き考慮し、例へば之を単に「臣民」と改むる必要あるべし。 第一九条 「文武官」を「官吏」とすべし。(多数)(cf第一〇条) 第二〇条 (イ説)「兵役ノ義務」を「国家ヲ防衛スル義務」又は「国ノ為ニ役務ニ服スル義務」と修正すべし。 (ロ説)削除すべし。 第二一条 第二〇条を削除する場合は本章の体裁上本条を削除すべし。(本条を削除するも第六二条あるを以て不便なし)。 第二二条乃至第二六条 別段の意見なし。 第二七条 (イ説)「所有権」の意義を一層明確なくしむるやう字句を修正すべし。 (ロ説)現状にて可なり。 第二八条 (イ説)「臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ」の次に「法律ノ範囲内ニ於テ」又は「法律ノ定ムル所ニ従ヒ」を挿入すべし (ロ説)「臣民タルノ義務」云々を削除すべし。 (試草)日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケサル限ニ於テ(法律ノ定ムル所ニ従ヒ)信教ノ自由ヲ有ス (ハ説)「安寧秩序」云々及び「臣民タルノ義務」云々を削除すべし。 (試草)日本臣民ハ(法律ノ範囲内ニ於テ)信教ノ自由ヲ有ス (ニ説)神社の国家的地位を廃止する旨明文を設くべし。 (試草1)(第二項)従来神社ノ享有セル特殊地位(又ハ特典)ハ之ヲ廃止ス (試草2)(第二項)神社ハ一般ノ宗教ト異ル待遇ヲ享クルコトナシ (ホ説)神社に付き別段に規定せず、専ら実際の取扱上問題を解決すべし。 第二九条及び第三〇条 別段の意見なし。 第三一条 削除すべし。(多数) 第三二条 削除すべし。(多数) 第二章 一般 (イ説)臣民の義務に関して兵役、納税の如き個々の義務を列記することを改め、包括的に「臣民ハ此ノ憲法及法律ニ服スル義務ヲ負フ」といふが如き趣旨の規定を設くべし。 同様に臣民の権利に関しても包括的に「臣民ハ法律ニ依ルニ非サレハ其ノ自由及権利ヲ侵サルルコトナシ」といふが如き趣旨の規定に設くべし。 但し、法律を以ても侵すことを得ざる自由及び権利に付ては個々に之を規定すべし。 (ロ説)右イ説に従ふ場合、「此ノ憲法及法律ニ服従スル義務」に代へて「国家ニ忠誠ナル義務」と為すべし。 (ハ説)法律を以てしても制限し得ざる臣民の自由を新たに設くる場合は第二八条に於けるが如き条件を定めざるを可とす。 (ニ説)現行規定以外に営業の自由等に関する規定を設くべし。 (ホ説)日本臣民は法律の前に平等なる旨の規定を設くべし。 (ヘ説)第二章に列挙する場合の外すべて臣民の権利義務に関る規定は法律を以て定むべき旨の明文を設くべし。 (ト説)労働の権利及び義務に関する規定を設くべし。(cf労務法制審議委員会附帯決議) (チ説)外国人も原則として日本臣民と同様の取扱を受くべき旨を定むるは妥当ならず。(多数) 第三章 帝国議会第三三条(イ説)両院制は之を維持し、貴族院の権限を縮少すべし。 (1説)貴族院は予算に関し衆議院の削減せるものを復活し得ざるものとすべし。(多数) 右の外、予算案、法律案に就き貴族院の権限を制限する必要なし。 (2説)予算その他金銭法案に関する貴族院の権限を縮少すべし。 (3説)法律案に関する貴族院の権限をも縮少すべし。 (ロ説)両院制は之を維持し、貴族院の組織を民主的に改むべし。(cf第三四条) 第三四条 (イ説)貴族院の組織は法律を以て定むべきものと為すべし。(多数)(現行貴族院令の改正に貴衆両院の議決を要するものと為すは妥当ならず)。 (ロ説)貴族院の組織は大体現状を維持し、(但しその員数を減少すべし)、その権限を縮少すべし。 (ハ説)華族議員に関し、自已の勲功により授爵又は陞爵せられたる者のみ議員たり得るものと為すべし。 (ニ説)皇族議員及び華族議員を廃し、勅任議員のみとなすべし(貴族院法により勅任議員中に選挙にもとづき勅任せらるる議員を設くべし)。 (試草)貴族院ハ貴族院法ノ定ムル所ニ依リ勅任セラレタル議員ヲ以テ組織ス (ホ説)皇族議員及び華族議員を廃し、勅任せられたる議員及び選挙せられたる議員を以て組織するものとすべし。 (ヘ説)皇族議員、華族議員及び勅任議員を全廃し、選挙による員を以て組織するものとすべし。 (1説)選挙は複選法を用ふべし。 (2説)選挙は国民の直接選挙によるものとすべし。 (3説)議員は地域代表的性質を有するものの外職能代表的的性質を有するものを設くべし。 (試草)貴族院ハ貴族院法ノ定ムル所ニ依リ選挙セラレタル議員ヲ以テ組織ス。 皇族議員及び華族議員を廃止したる場合は「貴族院」ヲ「元老院」と改むべし。 (ト説)皇族議員及び華族議員を廃するも「貴族院」の名称を維持して可なり。 (チ説)貴族院を「特議院」と改称するは妥当ならず。(多数) 第三五条 (イ説)本条に選挙法の大原則(普通、平等、直接、秘密乃至女子選挙権等の原則)を規定するは妥当ならず。 (ロ説)第三四条に関し、同条へ説により「貴族院ハ貴族院法ノ定ムル所ニ依リ選挙セラレタル議員ヲ以テ組織ス」の如き表現を採用する場合はそれとの対比上本条の字句に関し考慮の要あるべし。 第三六条及至第四〇条 別段の意見なし。 第四一条 通常会は毎年一定の期日(例、一月中旬)に於て当然集会すべきものと為すべし。 (試草)帝国議会ハ毎年一月十五日ニ於テ各議院ノ会堂ニ集会スベシ 第四二条 (イ説)会期は三箇月以上に於て議院法の定むる所に依るものとすべし。(多数?) (ロ説)会期は五箇月とし、その旨を憲法に規定すべし。 (ハ説)通常会は毎年一定期日に当然集会するものとする場合は右イ説又はロ説の趣旨は之を前条に併せ規定するを妥当とすべし。 (試草1)帝国議会ハ毎年一月十五日ニ於テ各議院ノ会堂ニ集会スベシ (第二項)前項ノ議会ノ会期ハ三箇月以上ニ於テ議院法ノ定ムル所ニ依ル必要アル場合ニ於テハ勅命ヲ以テ之ヲ延長スルコトアルヘシ (試草2)(第一項)同右 (第二項)前項ノ議会ハ五箇月ヲ以テ会期トス必要アル場合ニ於テハ(以下同右) (ニ説)会期制を廃止すべし。(反対多数) 第四三条 一定数の議員に対し召集を請求する権を認むべし。 (試草)(第二項)両議院ノ議員ハ各々其ノ院ノ総員三分ノ一以上ノ賛成ヲ経テ臨時会ノ召集ヲ求ムルコトヲ得 第四四条 (イ説)第二項の「停会」を「閉会」又は「閉院」と改むべし。 (ロ説)右の如く改むる要なし。(多数) (ハ説)停会の制度を廃止すべし。(cf第七条) 第四五条 (イ説)「五箇月」を「三箇月」と改むべし。(多数) (ロ説)選挙法第一条第三項の趣旨を本条に規定すべし。 (ハ説)会期を定むるは勅命に依る旨を規定すべし。 (ニ説)「之ヲ召集スヘシ」を「帝国議会ヲ召集スヘシ」と改むべし。 (ホ説)右の点現状にて可なり。(多数) 第四六条及び第四七条 別段の意見なし 第四八条 (イ説)「政府ノ要求又ハ」を削除すべし。(多数) (ロ説)議会に於ける公開会議の忠実なる報道は民事刑事の責任の原因と為り得ざる旨の規定を設くる要なし。 第四九条乃至第五二条 別段の意見なし。 第五三条 (イ説)会期開始前に於て逮捕せられたる議員は其の院の要求あるときは会期中之を釈放すべき旨を規定すべし。(多数) (ロ説)会期中議員の住所を侵す場合にも其の院の許諾を要するものと為す必要なし。 第五四条 (イ説)「何時タリトモ」を削除すべし。 (ロ説)議院法第四二条但書の趣旨を規定すべし。 (ハ説)現状を変更する必要なし。(多数) 第三章 一般 (イ説)常置委員会は各議院に之を設くるものとし、それに就き憲法に規定し、詳細は之を議院法に譲るべし。(多数)(衆議院の常置委員会は衆議院解散の場合は新常置委員会成立迄その職務を継続すべきものと為すべし)。 (試草)両議院ニ議院法ノ定ムル所ニ依リ常置委員(会)ヲ置ク (ロ説)常置委員会を設くるも之を憲法に規定する必要なし。(常置委員会を設くることは現行憲法に牴触することなし)。 (ハ説)議院の査問権に就いて考慮の要あり。 第四章 国務大臣及枢密顧問第五五条(ロ説)国務大臣が議会に対して責任を負ふ規定を設くべし。(多数) (1説)本条第二項に国務大臣はその在職に就き議会(或は単に衆議院)の信任を必要とする旨を規定すべし。 (2説)第三章に両議院(或は単に衆議院)は国務大臣の不信任を決議するを得る旨(或は更にその場合に国務大臣は退任すべき旨)を規定すべし。 (3説)第一〇条中に右の如き趣旨を規定すべし。 (4説)衆議院のみに政府不信任決議権を認むべし。 (5説)貴族院も不信任決議権を有するも、貴族院の不信任は政府の進退に影響なきものとすべし。 (ハ説)右の如き規定を特に設くる必要なし。(実際の慣行に一任すべし)。 (ニ説)大臣訴追制度は之を設くる必要なかるべし。(多数) (ホ説)国務各大臣は内閣を組織する旨を憲法に規定し、内閣官制 は法律を以て定むべきものとすべし。 (試草)(別条)国務各大臣ハ内閣ヲ組織ス (第二項)内閣ノ組織ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム (へ説)右ホ説が国務大臣の連帯主義を確立する趣旨ならば格別然らざる場合は特に之を憲法に規定する要なかるべし。 (ト説)国務大臣以外の者が国務に付 天皇を輔弼することを禁止する規定は之を設くる必要なし。 (チ説)主席国務大臣(及び次席国務大臣)は国民の直接選挙によるべきものとし(任期四年)、所謂プレジデンシャルシステムを採用すべし。(反対多数) (リ説)「国務各大臣」の「各」を削除するの要なかるべし。 第五六条 (イ説)枢密院は之を廃止せず、その内容を改むべし。(内大臣は之を廃止すべし)。 (附)各大臣が枢密院に於て表決権を有するとする制度は之を廃止すべし。 (ロ説)枢密院を廃止し、之に代へて参議院を設け、天皇の諮詢に応ふるの府とすべし。参議院議員は貴衆両議員及び政府中より之を選任し、任期四年とすべし。 (内閣総理大臣の選任に就いては参議院に諮詢すべきものとすべし)。内大臣は之を廃止すべし。 (ハ説)枢密院は之を廃止すべし。 第五章 司法第五七条(イ説)「天皇ノ名ニ於テ」の字句を修正する必要なし。(多数) (ロ説)法令審査権に就ては特に規定する必要なし。(多数) 第五八条及び第五九条 現状にて可なり。(多数) 第六〇条 (イ説)削除すべし。 (ロ説)現状のまま存置すべし。 第六一条 (イ説)行政裁判所は之を存置すべし。(その組織及び権限に就いては改正の要あり)。 (ロ説)行政裁判所は之を廃止し、行政官庁の違法処分に由り権利を傷害せられたりとするの訴訟は司法裁判所の管轄に属するものとすべし。 (試草1)行政官庁ノ違法処分ニ由リ権利ヲ傷害セラレタリトスルノ訴訟ハ法律ノ定ムル所ニ依リ司法裁判所ノ管轄ニ属ス (試草2)行政官庁ノ違法処分ニ依リ権利ヲ傷害セラレタル者ハ法律ノ定ムル所ニ依リ司法裁判所ニ出訴スルコトヲ得 第六章 会計第六二条(イ説)租税以外に於て国民に財政上の負担を課する場合(例、郵便電信、鉄道の料金乃至運賃)にも法律を要する趣旨を明示すべし。 (ロ説)特にその旨を明示せずとも現状にて可なり。(多数) 第六三条 (イ説)一年税主義を採り之を憲法に規定すべし。 (ロ説)右の旨を憲法に規定する要なし。(多数) 第六四条 (イ説)議員に予算の発案権を認むる要なし。(多数) (ロ説)一年を超ゆる期間を以て一会計年度とすることを禁ずる趣旨を規定すべし。 (1説)憲法中に規定すべし。 (2説)会計法に規定すべし。 (ハ説)右の趣旨を規定する必要なし。(多数)(必要ありとするも憲法に之を規定する必要なし)。 (ニ説)特別会計を設くるを得る旨を憲法に特に規定する必要なし。(多数) (ホ説)責任支出制度を廃止すべし。而してその趣旨に於て本条第二項を第六九条第二項に移すべし。 (ヘ説)現状を維持すべし。(多数) (1説)責任支出に関する現状を是認すべし。 (2説)責任支出は勿論之を否認すべきものなるも、既に現行法上に於ても違法なるものなるを以て之を否認する為に特に本条第二項を第六九条に移す必要なし。 第六五条 cf第三三条 第六六条 (イ説)「増額」を「増減」(又は「変更」)と改めては如何。 (ロ説)右の如く改むるは妥当ならず。(多数) (ハ説)本条を削除すべし。 第六七条 (イ説)「憲法上ノ大権ニ基ツケル既定ノ歳出及」を削除すべし。(重要なる官制は法律を以て定むべきものとす)。(cf第一〇条)。(多数) (ロ説)条約にもとづく歳出に関しては条約は之を法律と同じく取扱ふべし。(cf第一三条) 第六八条 (イ説)継続費制度を廃止するは妥当ならず。(多数) (ロ説)継続費を廃止すべし。(之を廃止するも必ずしも実際上の不便を生せず) 第六九条 (イ説)予備費の支出は議会の常置委員会の諮問を経べきものと為すべし。(多数) (ロ説)予算外支出の為の予算費は之を一定額に限ることと為すべし。 (ハ説)第四条第二項を本条第二項に移すべし。(cf第六四条) (ニ説)予備費の廃止は妥当ならず。(多数) 第七〇条(cf第八条) (イ説)財政上の緊急処分制度は之を存置するを妥当とす。(多数) (ロ説)その発布は(第八条の緊急勅令の場合と同じく)帝国議会の常置委員会の諮詢を経べきものと為すべし。(多数) 第七一条 (イ説)予算不成立の場合は国の常務を継続するに必要なる歳出及び法律の経果に依り又は法律上政府の義務に属する歳出の為の経費を限り前年度の予算を施行すべきものと為すべし。而して此の場合は次の議会の承諾を要するものと為すべし。 (ロ説)予算不成立の場合は前年度の予算の範囲内に於て一定の期間を限り仮予算を編製して之を施行すべきものとし、この場合議会閉会中なるときは速かに議会を召集して之に予算を提出すべきものと為すべし。 (試草)(第一項)会計年度開始前ニ予算成立ニ至ラサルトキハ政府ハ三箇月以内ノ期間ヲ限リ前年度ノ予算ノ範囲内ニ於テ(仮)予算ヲ作製シ之ヲ施行スヘシ (第二項)前項ノ場合ニ於テ会計年度開始後ニ於テ帝国議会閉会中ナルトキハ速カニ帝国議会ヲ召集シ前項ニ定ムル期間ヲ除ク期間ノ予算ヲ提出スヘシ (第三項)第一項ニ定ムル期間内ニ予算成立ニ至ラサルトキハ第一項ノ規定ニ準ジ政府ハ更ニ仮予算ヲ施行スヘシ (第四項)第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス (ハ説)本条ヲ削除すべし。 第七二条 別段の意見なし。 第七章 補則第七三条(イ説)現状のままとし、議員に発議権を与へざるを可とす。 (ロ説)議員にも発議権を与ふべし。(多数) (1説)憲法改正は法律制定の手続に依るべきものとすべし。 (試草1)(第一項)削除 (第二項)両議院ハ各々其ノ総員三分ノ二以上出席スニ非サレハ憲法改正案ノ議事ヲ開クコトヲ得ス(以下現状通リ) (試草2)(第一項)憲法ハ法律ニ依リ之ヲ改正スルコトヲ得 (第二項)(現状通リ) (2説)本条に議員の発議権の規定を加ふべし。 (3説)議員が憲法改正案を発議するにはその院の議員三分の一以上の賛成あるを要するとし、その趣旨を憲法に規定すべし。 (試草1)(第二項)両議院ノ議員ハ其ノ院ノ総員三分ノ一以上ノ賛成ヲ経テ憲法改正ノ議案ヲ発議スルコトヲ得 (第三項)両議院ハ各々其ノ総員三分ノ二以上出席スルニ非サレハ憲法改正案ノ議事ヲ開クコトヲ得ス(以下現状通リ) (試草2)(第一項)憲法改正ノ議案ハ勅命ニ依リ又ハ両議院ノ議員ノ発議ニ依リ帝国議会之ヲ議決ス (第二項)両議院ノ議員憲法改正ノ議案ヲ発議スル場合ハ其ノ院ノ総員三分ノ一以上ノ賛成ヲ経ルヲ要ス (第三項)(試草1)に同じ (附)現行法上憲法改正案に対する議会の修正権の有無及びその範囲に関する意見 (多数説)勅命により発議せらるる憲法改正案に対して議員は議案事項に関する限り修正権を有す。提案事項に関するや否やは専ら実質に基き判断すべきものとす。(貴族院令に対する貴族院の修正権の範囲も之と同様に解すべし)。 第七四条 別段の意見なし。(cf第二条及び第一七条) 第七五条 削除すべし。(多数) (以上) 大日本帝国憲法改正試案(昭和二一年一月、入江委員)(秘) 大日本帝国憲法改正試案 (二一、一)入江委員(括弧内ノ数字ハ現行条文) 朕枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ帝国憲法第七十三条ニ依ル帝国議会ノ議決ヲ経タル大日本帝国憲法中改正ヲ裁定シ茲ニ之ヲ公布セシム(別ニ勅語ヲ賜フコトト致度シ) 御名 御璽 年月日 国務各大臣 < 大日本帝国憲法中左ノ通改正ス 「大日本帝国憲法」ヲ「日本国憲法」ニ改ム 「日本臣民」ヲ「日本国民」ニ改ム 第一条(15)日本国ノ統治権ハ万世一系ノ天皇之ヲ総攬シ此ノ憲法ノ条規ニ依リ之ヲ行使ス 第三条(3)天皇ハ統治権ノ行使ニ付責ニ任セス 天皇ノ一身ハ侵スヘカラス 第四条ヲ削ル 第五条ヲ第四条トシ第六条及第七条ヲ順次各一条宛繰上グ 第七条(8)天皇ハ公共ノ安全ヲ保持シ又ハ其ノ災厄ヲ避クル為緊急ノ必要ニ由リ帝国議会閉会ノ場合ニ於テ法律ニ代ルヘキ緊急勅令ヲ発ス 緊急勅令ヲ発セントスルトキハ帝国議会ノ常置委員会ニ諮問スヘシ 緊急勅令ハ次ノ会期ニ於テ帝国議会ニ提出シ其ノ承諾ヲ求ムルコトヲ要ス若シ議会ニ於テ承諾ノ議決ニ至ラサルトキハ政府ハ将来ニ向テ其ノ効力ヲ失フヘキコトヲ公布スヘシ 緊急勅令ヲ以テ法律又ハ他ノ緊急勅令ヲ改正又ハ廃止シタル場合ハ前項ノ失効公布ノ時ヨリ曩ノ法律又ハ緊急勅令ハ其ノ効力ヲ回復ス(大池案参考) 第九条中「又ハ」ノ下ニ「此ノ憲法ニ於テ法律ヲ以テ定ムヘキモノトセラレタル事項ニ関スル場合ヲ除キ」ヲ加へ同条ヲ第八条トス 第九条(10)天皇ハ官吏ヲ任免ス 第十条乃至第十五条ヲ削ル 第十条(13)天皇ハ諸般ノ条約ヲ締結ス 此ノ憲法ニ於テ法律ヲ以テ定ムヘキモノトセラレタル事項及政治上重要ナル事項ヲ定ムル条約並ニ予算ニ定メタルモノヲ除クノ外国庫ノ負担ヲ定メタル条約ノ締結ニハ帝国議会ノ協賛ヲ経ルヲ要ス但シ帝国議会閉会ノ場合ニ於テハ其ノ常置委員会ニ諮問スベシ 前項但書ノ場合ニ於テハ次ノ会期ニ於テ帝国議会ニ提出シ其ノ承諾ヲ求ムルコトヲ要ス 第十一条(15)天皇ハ栄典ヲ授与ス 第十六条ヲ第十二条トシ第十七条ヲ第十三条トス 「第二章 臣民権利義務」ヲ「第二章 日本国民」ニ改ム 第十八条ヲ第十四条トス 第十九条中「文武官ニ任セラレ及其ノ他ノ」ヲ削リ同条ヲ第十五条トス 第二十条及第二十一条ヲ削ル 第二十二条ヲ第十六条トシ第二十三条乃至第二十六条ヲ順次各六条宛繰上グ 第二十七条第一項中「所有権」ヲ「財産上ノ権利」ニ改メ同条ヲ第二十一条トス 第二十二条(28)日本臣民ハ其ノ信教ノ自由ヲ侵サルルコトナシ安寧秩序ヲ保持スル為必要ナル処分ハ法律ノ定ムル所ニ依ル 第二十九条ヲ第二十三条トス 第二十四条(新)日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ職業ノ自由ヲ有ス 第三十条中「相当ノ敬礼ヲ守リ別ニ定ムル所ノ規程ニ従ヒ」ヲ「法律ノ定ムル所ニ従ヒ」ニ改メ同条ヲ第二十五条トス 第二十六条(新)本章ニ掲グルモノノ外新ニ日本国民ノ権利ヲ制限シ又ハ日本国民ニ義務ヲ課スルハ法律ノ定ムル所ニ依ル 第三十一条及第三十二条ヲ削ル 第三十三条中「衆議院及参議院」ニ改メ同条ヲ第二十七条トス 第二十八条(35)衆議院ハ法律ノ定ムル所ニ依リ公選セラレタル議員ヲ以テ組織ス 第二十九条(34)参議院ハ法律ノ定ムル所ニ依リ練達堪能ナル者並ニ職域及地域ヲ代表スル者ノ中ヨリ勅任又ハ選挙セラレタル議員ヲ以テ組織ス 第三十四条及第三十五条ヲ削ル 第三十六条ヲ第三十条トシ第三十七条及第三十八条ヲ順次各六条宛繰上グ 第三十三条(39新)衆議院ニ於テ其ノ総議員三分ノ二以上ヲ以テ可決スルコト引続キ二回ニ及ヒタル法律案ハ参議院ニ於テ之ヲ否決シ又ハ議決スルニ至ラサルコトヲ得ス 前項ノ場合参議院ニ於テ修正ヲ為シタル為成案ヲ得サルトキハ衆議院ノ議決セル案ヲ以テ成立セルモノトス(大池案参考) 第三十九条ヲ削ル 第四十条ヲ第三十四条トス 第三十五条(41、42)帝国議会ハ毎年一月十五日ニ於テ各議院ノ会堂ニ集会スヘシ 前項ノ議会ハ五箇月ヲ以テ会期トス必要アル場合ニ於テハ勅命ヲ以テ之ヲ延長スルコトアルヘシ(宮沢案参考) 第四十一条及第四十二条ヲ削ル 第四十五条第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加へ同条ヲ第三十六条トス 両議院ヨリ各々其ノ総議員三分ノ一以上ノ賛成ヲ得会議ニ附スヘキ事件ヲ示シテ臨時会召集ノ請求アルトキ亦前項ニ同ジ 第三十七条(新)両議院ヨリ各々其ノ総議員三分ノ一以上ノ賛成ヲ得帝国議会ノ会期延長ノ請求アルトキハ会期ハ之ヲ延長スヘシ此ノ場合ニ於テ会期ヲ定ムルハ勅命ニ依ル 第四十四条第二項中「貴族院ハ同時ニ停会セラルヘシ」ヲ「参議院ハ同時ニ閉会ス」ニ改メ同条ヲ第三十八条トス 第四十五条中「五箇月以内ニ之ヲ」ヲ「三箇月以内ニ帝国議会ヲ」ニ改メ同条ヲ第三十九条トス 第四十六条ヲ第四十条トシ第四十七条ヲ第四十一条トス 第四十八条中「政府ノ要求又ハ」ヲ削リ同条ヲ第四十二条トス 第四十九条ヲ第四十三条トス 第五十条中「臣民」ヲ「日本国民」ニ改メ同条ヲ第四十四条トス 第四十五条(新)衆議院ハ其ノ総議員三分ノ二以上ノ多数ヲ以テ国務大臣ノ不信任ヲ議決スルコトヲ得 衆議院ノ不信任議決ヲ受ケタル国務大臣ハ辞任ス 第四十六条(新)両議院ニ議院法ノ定ムル所ニ依リ各々常置委員会ヲ置ク 第五十一条ヲ第四十七条トシ第五十二条ヲ第四十八条トス 第五十三条ノ末尾ニ左ノ如ク加へ同条ヲ第四十九条トス 会期開始前ニ逮捕セラレタル議員ハ其ノ院ノ要求アルトキハ会期中之ヲ釈放スヘシ(宮沢案参考) 第五十四条ヲ第五十条トス 「第四章 国務大臣及枢密顧問」ヲ「第四章 国務大臣」ニ改ム 第五十五条ヲ第五十一条トス 第五十二条(新)国務各大臣ハ内閣官制ノ定ムル所ニ依リ内閣ヲ組織ス 内閣官制ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム 第五十六条ヲ削ル 第五十七条ヲ第五十三条トシ第五十八条乃至第六十条ヲ順次各四条宛繰上グ 第五十七条(61)行政官庁ノ違法処分ニ由リ権利ヲ侵害セラレタリトスル者ハ法律ノ定ムル所ニ依リ裁判所ニ出訴スルコトヲ得 第六十一条ヲ削ル 第六十二条ヲ第五十八条トシ第六十三条及第六十四条ヲ順次各四条宛繰上グ 第六十五条ニ左ノ一項ヲ加へ同条ヲ第六十一条トス 参議院ハ衆議院ヨリ送附セラレタル予算ニ付テハ増額ノ修正ヲ為スコトヲ得ス(大池案参考) 第六十六条ヲ第六十二条トス 第六十七条中「憲法上ノ大権ニ基ケル既定ノ歳出及」ヲ削リ同条ヲ第六十三条トス 第六十八条ヲ第六十四条トス 第六十九条ニ左ノ二項ヲ加へ同条ヲ第六十五条トス 予備費ヲ以テ予算ノ外ニ生シタル必要ノ費用ニ充ツル場合ニ於テハ帝国議会ノ常置委員会ニ諮問スヘシ 避クヘカラサル予算ノ不足ヲ補フ為ニ又予算ノ外ニ生シタル必要ノ費用ニ充ツル為ニ予算費外ニ於テ支出ヲ為ス場合ニ於テ亦前項ニ同シ(中村案参考) 第七十条第一項中「能ハサルトキハ」ノ下ニ「其ノ常置委員会ニ諮問シテ」ヲ加へ同条ヲ第六十六条トス 第六十七条(71)予算成立ニ至ラサルトキハ政府ハ其ノ成立ニ至ル迄三月分毎ノ暫定予算ヲ調製シ之ヲ施行スヘシ 前項ノ三月分ノ暫定予算ノ額ハ前年度予算総額ノ四分ノ一ノ額ヲ超ユルコトヲ得ス 第七十二条ヲ第六十八条トス 第六十九条(73)将来此ノ憲法ヲ改正スルノ必要アルトキハ勅命ヲ以テ議案ヲ発シ又ハ両議院ノ各々ヨリ議案ヲ提出シ帝国議会ノ議決ヲ経ルヲ要ス 前項ノ場合ニ於テ両議院ハ各々其ノ総議員三分ノ二以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開クコトヲ得ス出席議員三分ノ二以上ノ多数ヲ得ルニ非サレハ議案ヲ提出シ又ハ改正ノ議決ヲ為スコトヲ得ス 第七十三条、第七十五条及第七十六条ヲ削リ第七十四条ヲ第七十条トス 附則 本改正ハ公布ノ日ヨリ一箇年ヲ経テ之ヲ施行ス 美濃部顧問私案[昭和20年12月22日提出](秘) 美濃部顧問 私案第八条 天皇ハ帝国議会閉会中新ニ法律ヲ制定スヘキ緊急ノ必要ヲ生シタル場合ニ於テ両議院継続委員ノ諮詢ヲ経テ法律ニ代ルヘキ勅令ヲ発ス此ノ勅令ハ次ノ会期ニ於テ帝国議会ニ提出シ其ノ承諾ヲ求ムルヲ要ス既ニ其ノ勅令ヲ廃止シタル場合ニ於テ亦同シ 既ニ廃止シタル場合ヲ除クノ外勅令ガ両議院ノ承諾ヲ得タルトキハ将来ニ向テ法律ノ効力ヲ有ス若両議院ノ何レカ一ニ於テ承諾セス又ハ議決ニ至ラスシテ会期終了シタルトキハ将来ニ向テ其ノ効力ヲ失フ何レノ場合ニ於テモ政府ハ直ニ其ノ旨ヲ告示スヘシ 第九条 天皇ハ法律ヲ執行スル為ニ又ハ法律ノ委任ニ由リ及行政上ノ目的ノ為ニ必要ナル命令ヲ発シ又ハ発セシム但シ法律ノ根拠ナクシテ命令ヲ以テ臣民ニ負担ヲ課シ又ハ其ノ権利若ハ自由ヲ侵犯スル定ヲ為スコトヲ得ズ 第十一条 (第十二条ヲ併合)天皇ハ軍ヲ統制ス 軍ノ編制及常備兵額ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム 第十三条 天皇ハ戦ヲ宣シ和ヲ講シ及諸般ノ条約ヲ締結ス 戦ヲ宣スルニハ敵軍ノ進攻ヲ防ク為ニスル場合ヲ除クノ外帝国議会ノ協賛ヲ経ヘシ条約ニ依リ国庫ニ負担ヲ生シ又ハ臣民ノ権利義務ヲ定ムル場合ニ於テ其ノ締結ニ付亦同シ此ノ場合ニ於テ条約ハ公布ニ依リ法律ノ効力ヲ有ス 第二十条 日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ従ヒ忠誠ニ国家ヲ防衛シ及国家ニ貢献スヘキ義務ヲ有ス 第二十一条 (削除) 第二十二条 日本臣民ハ国内任意ノ場所ニ其ノ住所ヲ定メ及任意ノ職業ニ従フコトヲ得公益ノ為必要ナル制限ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム 第二十九条 日本臣民ハ言論出版集会及結社ノ自由ヲ有ス公安ヲ保持スル為ニ必要ナル制限ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム 第三十一条 (削除) 第三十二条 (削除) 第三十三条 帝国議会ハ第一院第二院ノ両院ヲ以テ成立ス 第三十四条 第一院ハ全国日本臣民中ヨリ選挙セラレタル議員ヲ以テ組織ス其ノ詳細ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム 第一院議員ノ選挙権及被選挙権ハ法律ノ定ムル年齢ニ達シタル日本臣民ハ欠格者ヲ除クノ外男女ヲ通シ均ク之ヲ有ス 第三十五条 第二院ハ法律ノ定ムル所ニ依リ選挙又ハ勅任セラレタル議員ヲ以テ組織ス 第四十二条 帝国議会常会ノ会期ハ三箇月以上トシ勅命ヲ以テ之ヲ定ム 第四十四条第二項 第一院解散ヲ命セラレタルトキハ第二院ハ当然閉会ス 第四十五条 第一院解散ヲ命セラレタルトキハ勅命ヲ以テ新ニ議員ヲ選挙セシメ選挙終リタル後遅滞ナク新帝国議会ヲ召集スへシ其ノ会期ハ勅命ヲ以テ之ヲ定ム 第四十九条ノ二 第一院ハ内閣又ハ国務大臣ノ不信任ヲ議決スルコトヲ得 此ノ議決アリタルトキハ第一院解散ヲ命セラレタル場合ヲ除クノ外其ノ議決ヲ受ケタル内閣又ハ国務大臣ハ其ノ職ヲ辞スルコトヲ要ス 解散後ノ新帝国議会ニ於テ更ニ同様ノ議決アリタルトキハ其ノ職ニ留ルコトヲ得ス 第五十五条 国務各大臣ハ天皇ヲ輔弼シ及命ヲ受ケテ行政各部ノ事務ヲ主管ス 凡テ法律勅令其ノ他国務ニ関ル詔勅ハ国務大臣ノ副署ヲ要ス軍ノ統帥ニ付亦同シ 国務大臣ハ一切ノ国務ニ付帝国議会ニ対シ其ノ責ニ任ス 第五十六条 国務各大臣ヲ以テ内閣ヲ組織ス 内閣ノ組織ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム 第六十一条 裁判所ハ法律ノ定ムル所ニ依リ行政事件ニ関スル訴訟ヲ審理ス (以下略) 大日本帝國憲法改正案(宮澤委員)[昭和20年12月22日提出](秘) 大日本帝国憲法改正案宮沢委員第一章 天皇第一条 現行第一条を削除し、現行第四条を第一条とす第二条 皇位ハ皇室典範ノ定ムル所ニ依リ万世一系皇男子孫之ヲ継承ス 第三条 天皇ハ国務ニ付責ニ任スルコトナシ (別案)天皇ノ一身ハ侵スヘカラス 第四条 削除(第一条へ移ス) 第五条 現状通り 第六条 「及執行」を削る 第七条 天皇ハ此ノ憲法又ハ議院法ノ定ムル所ニ依リ帝国議会ヲ召集シ其ノ開会閉会停会及衆議院ノ解散ヲ命ス 第八条 天皇ハ公共ノ安全ヲ保持シ又ハ其ノ災厄ヲ避クル為緊急ノ必要ニ由リ帝国議会閉会ノ場合ニ於テ両議院ノ常置委員会ノ議ヲ経テ法律ニ代ルヘキ勅令ヲ発ス 第二項 現状通り 第九条 「又ハ公共ノ安寧秩序ヲ保持シ及臣民ノ幸福ヲ増進スル為ニ」を削除す 第×条(第九条の次) 天皇ハ皇族会議及樞密院ノ諮詢ヲ経テ皇室典範ヲ制定ス 皇位継承摂政其ノ他皇室ノ事務ニ関ル規程ハ此ノ憲法ニ定メタルモノノ外皇室典範ヲ以テ之ヲ定ム 第十条 天皇ハ行政各部ノ官制及官吏ノ俸給ヲ定メ及官吏ヲ任免ス但シ重要ナル官制及官規ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム 第十一条 削除 第十二条 削除 第十三条 天皇ハ諸般ノ条約ヲ締結ス但シ法律ヲ以テ定ムルヲ要スル事項ニ関ル条約及国ニ重大ナル義務ヲ負ハシムル条約ハ帝国議会ノ協賛ヲ経ルヲ要ス 天皇ハ条約ノ公布ヲ命ス 条約ハ公布ニ依リ法律ノ効力ヲ有ス 第十四条 削除 第十五条 天皇ハ栄典ヲ授与ス 第十六条 現状通り 第十七条 天皇未タ成年ニ達セサルトキ又ハ久キニ亘ルノ故障ニ由リ大政ヲ ラスルコト能ハサルトキハ皇室典範ノ定ムル所ニ依リ帝国議会ノ親ヲ経テ摂政ヲ置ク 第二章 臣民権利義務第十八条 現状通り第十九条 日本臣民ハ法律ノ前ニ平等ナリ (第二項)日本臣民ハ法律命令ノ定ムル所ノ資格ニ応シ均ク官吏ニ任セラレ及其ノ他ノ公務ニ就クコトヲ得 第二十条 削除
神社ハ通常ノ宗教ト異ル待遇ヲ享クルコトナシ 第二十九条 現状通り 第三十条 現状通り 第三十一条 削除 第三十二条 削除 第×条 日本臣民ハ本章ニ掲ケタルモノノ外凡テ法律ニ依ルニ非スシテ其ノ自由及権利ヲ侵サルルコトナシ 第三章 帝国議会第三十三条 「貴族院」を「元老院」とす第三十四条 元老院ハ元老院法ノ定ムル所ニ依リ選挙セラレタル議員ヲ以テ組織ス 第三十五条 衆議院ハ選挙法ノ定ムル所ニ依リ普通平等直接秘密ノ原則ニ従ヒ選挙セラレタル議員ヲ以テ組織ス
前項ノ議会ハ五箇月ヲ以テ会期トス必要アル場合ニ於テハ勅命ヲ以テ之ヲ延長スルコトアルヘシ 第四十二条 削除 第四十三条(第一項) 現状通り (第二項)両議院ノ議員ハ各々其ノ院ノ総員三分ノ一以上ノ賛成ヲ経テ臨時会ノ召集ヲ求ムルコトヲ得 (第三項)現状通り 第四十四条 現状通り 第四十五条 衆議院解散ヲ命セラレタルトキハ勅命ヲ以テ新ニ議員ヲ選挙セシメ解散ノ日ヨリ二箇月以内ニ臨時会ヲ召集スヘシ但シ其ノ期間内ニ第四十一条ニ依リ帝国議会集会スル場合ハ此ノ限ニ在ラス 第四十六条 現状通り 第四十七条 現状通り 第四十八条 「政府ノ要求又ハ」を削る
第五十四条 現状通り 第×条 両議院ニ議院法ノ定ムル所ニ依リ常置委員会ヲ置ク 第四章 国務大臣及枢密院第五十五条(第一項) 現状通り(第二項)現状通り (第三項)国務大臣ハ其ノ在職ニ付衆議院ノ信任アルヲ要ス(衆議院国務大臣ノ不信任ヲ決議シタルトキハ政府ハ衆議院ノ解散ヲ奏請スルコトヲ得但シ次ノ議会ニ於テ衆議院再ヒ不信任ヲ決議シタルトキハ国務大臣ハ其ノ職ヲ退クヘシ) 第五十六条 枢密院ハ 天皇ノ諮詢ニ応へ皇室ノ事務ヲ審議ス枢密院ノ組織ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム 第五章 司法
第六章 会計
第六十五条(第一項) 現状通り (第二項)衆議院予算ノ款項ニ対シ廃除又ハ削減ヲ為シタルトキハ元老院ハ之ヲ原状ニ復スルコトヲ得ス 第六十六条 現状通り 第六十七条 「憲法上ノ大権ニ基ツケル既定ノ歳出及」を削る 第六十八条 現状通り 第六十九条(第一項) 現状通り (第二項)予備費ノ支出ハ両議院ノ常置委員会ノ議ヲ経ヘシ 第七十条 公共ノ安全ヲ保持スル為緊急ノ需用アル場合ニ於テ内外ノ情形ニ因リ政府ハ帝国議会ヲ召集スルコト能ハサルトキハ両議院ノ常置委員会ノ議ヲ経テ勅令ニ依リ財政上必要ノ処分ヲ為スコトヲ得 (第二項)現状通り 第七十一条 会計年度開始前ニ予算成立ニ至ラサルトキハ政府ハ三箇月以内ノ期間ヲ限リ前年度ノ予算ノ範囲内ニ於テ予算ヲ作製シ之ヲ施行スヘシ 前項ノ場合ニ於テ会計年度開始後ニ於テ帝国議会閉会中ナルトキハ速カニ帝国議会ヲ召集シ其ノ年度ノ前項ニ定ムル期間ヲ除ク部分ノ予算ヲ提出スヘシ 第一項ニ定ムル期間内ニ前項ノ予算成立ニ至ラサルトキハ第一項ノ規定ニ準シ政府ハ更ニ三箇月以内ノ期間ヲ限リ予算ヲ作製シ之ヲ施行スヘシ 第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス 第七十二条 削除 第七章 補則第七十三条(第一項) 現状通り(第二項)両議院ノ議員ハ其ノ院ノ総員三分ノ一以上ノ賛成ヲ経テ憲法改正ヲ発議スルコトヲ得 両議院ハ各々其ノ総員三分ノ二以上出席スルニ非サレハ憲法改正ノ議事ヲ開クコトヲ得ス出席議員三分ノ二以上ノ多数ヲ得ルニ非サレハ改正ノ議決ヲ為スコトヲ得ス 天皇ハ帝国議会ノ議決シタル憲法改正ヲ裁可シ其ノ公布ヲ命ス 第七十四条 削除 第七十五条 削除 第七十六条 現状通り (註)一、以上の改正に照応して皇室典範、諸皇室令、議院法、貴族院令、会計法、公式令、諸官制等に改正を加ふるの要あり。 一、以上の改正の施行期日は個々の規定につき必要に応じ関係法令の整備を俟ちて法律を以て之を定むべきものとすべし。 大日本帝國憲法改正試案(清宮委員)[昭和20年12月22日提出](秘) 大日本帝国憲法改正試案清宮委員第一章 天皇第一条乃至第五条 現状通リ第六条中「執行」ヲ削ル 第七条 現状通リ 第八条 天皇ハ公共ノ安全ヲ保持シ又ハ其ノ災厄ヲ避クル為緊急ノ必要ニ由リ帝国議会閉会ノ場合ニ於テ両議院ノ常置委員会ニ諮詢シ法律ニ代ルヘキ勅令ヲ発ス 第九条 天皇ハ法律ヲ執行スル為ニ又ハ臣民ノ自由及権利ニ関ラサル範囲内ニ於テ行政ノ目的ヲ達スル為ニ必要ナル命令ヲ発シ又ハ発セシム但シ(以下現状通リ) 第十条 中「文武官」ヲ「官吏」ニ改メ但書ヲ削ル 第十一条及第十二条 削除 第十三条 天皇ハ諸般ノ条約ヲ締結ス但シ法律ヲ以テ定ムルヲ要スル事項ニ関ル条約及国ニ重大ナル義務ヲ負ハシムル条約ハ帝国議会ノ協賛ヲ経ルヲ要ス 第十四条及第十五条 削除 第十六条及第十七条 現状通リ 第二章 臣民権利義務第十八条 現状通リ第十九条 日本臣民ハ法律ノ前ニ平等ナリ 日本臣民ハ法律命令ノ定ムル所ノ資格ニ応シ(以下現状通リ) 第二十条中「兵役ノ義務」ヲ「国ノ為ニ役務ニ服スル義務」ニ改ム 第二十一条乃至第二十七条 現状通リ 第二十八条 日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ信教ノ自由ヲ有ス 第二十九条及第三十条 現状通リ 第三十一条及第三十二条 削除 第三章 帝国議会第三十三条中「貴族院」ヲ「参議院」ニ改ム第三十四条 参議院ハ参議院法ノ定ムル所ニ依リ地方団体及職能団ヨリ選出セラレタル議員ヲ以テ組織ス 第三十五条乃至第四十条 現状通リ 第四十一条 削除 第四十二条 帝国議会ハ毎年一月十五日ニ於テ各議院ノ会堂ニ集会スヘシ 前項ノ議会ハ五箇月ヲ以テ会期トス必要アル場合ニ於テハ勅命ヲ以テ之ヲ延長スルコトアルヘシ 第四十三条 第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ 両議院ノ議員ハ各々其ノ院ノ総員三分ノ一以上ノ賛成ヲ経テ臨時会ノ召集ヲ求ムルコトヲ得 第四十四条 第二項中ノ「停会」ヲ「閉院」ニ改ム 第四十五条中「五箇月」ヲ「二箇月」ニ、「之ヲ」ヲ「帝国議会ヲ」ニ改ム 第四十六条及第四十七条 現状通リ 第四十八条中「政府ノ要求又ハ」ヲ削ル 第四十九条乃至第五十一条 現状通リ 第五十一条ノ二 両議院ニ議院法ノ定ムル所ニ依リ常置委員会ヲ置ク 常置委員ハ議会閉会中及議員ノ任期満了後又ハ衆議院解散後新会ノ集会ニ至ル迄ノ間ニ於テモ引続キ其ノ職務ヲ行フコトヲ得 第五十二条 現状通リ 第五十三条 第二項トシテ左ノ一項ヲ加フ 会期開始前ニ於テ逮捕セラレタル両議院ノ議員ハ其ノ院ノ要求アルトキハ会期中之ヲ釈放スヘシ 第五十四条 現状通リ 第四章 「及枢密顧問」ヲ削ル第五十五条 現状通リ第五十五条ノ二 国務大臣ハ其ノ職ニ在ルニ就キ帝国議会ノ信任アルコトヲ要ス衆議院ニ於テ明示ノ決議ニ依ル不信任ノ表示アリタルトキハ国務大臣ハ其ノ職ヲ退クヘシ 第五章 司法第五十七条乃至第六十条 現状通リ第六十一条 行政官庁ノ違法処分ニ由リ権利ヲ傷害セラレタリトスルノ訴訟ハ法律ノ定ムル所ニ依リ司法裁判所ノ管轄ニ属ス 第六章 会計第六十二条乃至第六十四条 現状通リ第六十五条 第二項トシテ左ノ一項ヲ加フ 衆議院ニ於テ廃除シ又ハ削減シタル歳出ハ参議院ニ於テ之ヲ原案ニ復スルヲ得ス 第六十六条 現状通リ 第六十七条中「憲法上ノ大権ニ基ツケル既定ノ歳出及」ヲ削ル 第六十八条 現状通リ 第六十九条 第二項トシテ左ノ一項ヲ加フ 予備費ヲ支出スル必要アルトキハ両議院ノ常置委員会ニ諮詢スヘシ 第七十条 第一項ヲ左ノ如ク改ム 公共ノ安全ヲ保持スル為緊急ノ需要アル場合ニ於テ内外ノ情形ニ因リ政府ハ帝国議会ヲ召集スルコト能ハサルトキハ両議院ノ常置委員会ニ諮詢シ勅命ニ依リ財政上必要ノ処分ヲ為スコトヲ得 第七十一条 会計年度開始前ニ予算成立ニ至ラサルトキハ政府ハ三箇月以内ヲ限リ一箇月ニ就キ前年度ノ予算ノ十二分ノ一ノ範囲内ニ於テ予算ヲ作製シ之ヲ施行スヘシ 第七十二条 現状通リ 第七十三条 憲法改正ノ議案ハ勅命ニ依リ又ハ両議院ノ議員ノ発議ニ依リ帝国議会之ヲ議決ス 両議院ノ議員憲法改正ノ議案ヲ発議スル場合ハ其ノ院ノ総員三分ノ一以上ノ賛成ヲ経ルヲ要ス 両議院ハ各々其ノ総員三分ノ二以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開クコトヲ得ス出席議員三分ノ二以上ノ多数ヲ得ルニ非サレハ改正ノ議決ヲ為スコトヲ得ス 第七十四条 現状通リ 第七十五条 削除 大日本帝國憲法改正試案(河村委員)[昭和20年12月22日提出](秘) 大日本帝国憲法改正試案 河村委員第一章 天皇第一条 第一項 現行ノ通リ第二項 統治ハ臣民ノ輔翼ニ依リテ行フ 第二条 現行ノ通リ 第三条 天皇ノ尊厳ハ侵スヘカラス 第四条 現行ノ通リ 第五条 仝右 第六条 仝右 第七条 「衆議院ノ解散ヲ命ス」ヲ「各院ノ解散ヲ命ス」ニ改ム 第八条 第一項「帝国議会閉会ノ場合ニ於テ」ヲ「帝国議会閉会ノ場合其ノ常置委員会ノ議ヲ経テ」ニ改ム 第二項 現行ノ通リ 第九条 現行ノ通リ 第十条 天皇ハ行政各部ノ官制及官吏ノ俸給ヲ定メ及官吏ヲ任免ス但シ内閣ノ組織其ノ他重要ナル官制ハ法律ヲ以テ定ム (第二項) 国務大臣ノ在職ニハ帝国議会ノ信任アルコトヲ要ス 第十一条 第十二条 削除 第十三条 天皇ハ諸般ノ条約ヲ締結ス但シ帝国議会又ハ裁判所ノ権限ニ属スル事項ヲ定ムル条約ハ当該機関ノ正規ノ決定ヲ俟チテソノ効力ヲ発ス 第十四条 削除 第十五条 天皇ハ栄典ヲ授与ス
第二章 臣民権利義務第十八条 現行通リ第二十条 日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ従ヒ国家ヲ防衛スル義務ヲ有ス 第二十一条 現行通リ 第二十一条ノ次 日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ従ヒ勤労ノ義務ヲ有ス 法律ハ勤労者ノ生活ヲ保護シ失業者及就労不能者ヲ救護スル為ニ必要ナル規定ヲ設クヘシ
安寧秩序ヲ維持スル為ニ必要ナル処分ハ法律ノ定ムル所ニ依ル (国教ハ設ケス)神社ハ一般ノ宗教ト異ナル待遇ヲ亨クルコトナシ
第三章 帝国議会第三十三条 「貴族院」ヲ「元老院」ニ改ム第三十四条 元老院ハ元老院組織法ノ定ムル所ニ依リ各種職域ニ於テ選挙セラレタル議員ヲ以テ組織ス 第三十五条 衆議院ハ選挙法ノ定ムル所ニ依リ各地域ニ於テ公選セラレタル議員ヲ以テ組織ス
第四十三条 第一項 現行通リ 第二項 各議院ノ議員其ノ院ノ総員三分ノ一以上ノ賛成ヲ以テ臨時議会ノ召集ヲ求メタル場合亦同シ 第三項 現行第二項 第四十四条 第一項 現行通リ 第二項 帝国議会ノ一院解散ヲ命セラレタルトキハ他ノ一院ハ同時ニ停会ヲ命セラルヘシ 第四十五条 「衆議院」ヲ「帝国議会ノ一院」ニ 「五箇月」ヲ「二箇月」ニ改ム
第四十九条 現行通リ
第二項 会期前ニ逮捕セラレタル議員ハ其ノ院ノ要求アルトキハ会期中之ヲ釈放スヘシ 第五十四条 現行通リ 第四章 国務大臣及枢密顧問
第五章 司法
第六章 会計
第六十八条 現行通リ 第六十九条 第一項 現行通リ 第二項 予備費ノ支出ハ予メ帝国議会ノ常置委員会ノ議ニ付シ後日帝国議会ノ承諾ヲ求ムルヲ要ス 第七十条 「帝国議会ヲ召集スルコト能ハサルトキハ」ノ次ニ「其ノ常置委員会ノ議ヲ経テ」ヲ挿入ス 第七十一条 会計年度開始前ニ予算成立ニ至ラサルトキハ政府ハ三箇月以内ノ期間ヲ限リ前年度ノ予算ノ範囲内ニ於テ仮予算ヲ作製シ之ヲ施行スヘシ残余ノ期間ノ予算ハ速カニ帝国議会ノ協賛ヲ求ムルヲ要ス 前項ニ定ムル期間内ニ尚予算成立ニ至ラサルトキハ次ノ期間ニ付前項ノ規定ヲ準用ス 第七十二条 現行通リ 第七章 補則第七十三条 第一項 現行通リ第二項 両議院ノ議員ハ其ノ院ノ総員三分ノ一以上ノ賛成ヲ以テ憲法改正ノ議案ヲ発議スルコトヲ得 第三項 両議院ハ各々其ノ総員三分ノ二以上出席スルニ非サレハ憲法改正案ノ議事ヲ開クコトヲ得ス (以下現行通リ) 第七十四条 現行通リ 第七十五条 削除 第七十六条 現行通リ 大日本帝國憲法改正私案(小林委員)、金子伯談話(抄)[昭和20年12月22日提出](秘) 大日本帝国憲法改正私案小林委員前提一、大日本帝国憲法ハ之ヲ改正スルノ要ナシ二、若シ帝国憲法ヲ改正スルヲ要ストセバ根本的調査ヲ遂ゲタル上之ヲ為スヲ可トス 三、憲法改正ハ現在ノ如キ国家ガ異常ノ状態ニ在ル際ニ之ヲ為スコトハ慎シムベキモノトス 四、聯合国軍最高司令部ニ対シテハ大日本帝国憲法ハ運用ニ依リ軍閥再擡頭ヲ防グヲ得ル旨力説スルヲ要ス 五、聯合国軍最高司令部ニ於テ国情ノ相違等ヨリシテ右説明ヲ了解スルコト能ハズトセバ其ノ了解ヲ得ルニ必要ナル限度ニ於テ成ルベク簡単ニ且ツ迅速ニ改正ヲ為スベキモノトス 条項 (第一章)第九条 天皇ハ法律ヲ執行スル為ニ又ハ法律ノ委任ニ依リ必要ナル命令ヲ発シ又ハ発セシム但シ命令ヲ以テ法律ヲ変更スルコトヲ得ス第十条 天皇ハ行政各部ノ官制及官吏ノ俸給ヲ定メ及官吏ヲ任免ス但シ此ノ憲法又ハ他ノ法律ニ特例ヲ掲ケタルモノハ各々其ノ条項ニ依ル 第十一条 削除 第十二条 削除 第十三条 天皇ハ帝国議会ノ協賛ヲ以テ戦ヲ宣シ和ヲ講シ及諸般ノ条約ヲ締結ス 但シ他国ノ攻撃ヲ受ケ戦ヲ宣スル場合ハ此ノ限ニ在ラス (第二章)第十九条 日本臣民ハ法律命令ノ定ムル所ノ資格ニ応シ均ク官吏ニ任セラレ及其ノ他ノ公務ニ就クコトヲ得第二十条 日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ従ヒ国家ヲ防衛スルノ義務ヲ有ス 第三十条 日本臣民ハ別ニ定ムル所ノ規程ニ従ヒ請願ヲ為スコトヲ得 第三十一条 削除 第三十二条 削除 (第三章)第三十三条 帝国議会ハ公議院、衆議院ノ両院ヲ以テ成立ス註 貴族院ノ名称ハ改正セザルヲ可トスルモ強テ改正スルヲ要ストセバ公議院又ハ耆宿院、上院、北院何レニテモ可トス 第三十四条 公議院ハ公議院令ノ定ムル所ニ依リ勅任セラレタル議員ヲ以テ組織ス 註 公議院令第十三条 将来此ノ勅令ノ条項ヲ改正シ又ハ増補スルトキハ帝国議会ノ協賛ヲ経ヘシ 第三十八条 両議院及政府ハ各々法律案ヲ提出スルコトヲ得 第三十九条ノ二 衆議院ニ於テ三分ノ二以上ヲ以テ可決スルコト引続キ三回ニ及ヒタル法律案ハ帝国議会ノ協賛ヲ経タルモノト看做ス 第四十二条 帝国議会ハ三箇月ヲ以テ会期トス 但シ政府ニ於テ必要ト認メタルトキ若ハ各議院ノ決議アリタルトキハ勅命ヲ以テ之ヲ延長スヘシ 第四十四条 帝国議会ノ開会、閉会、会期ノ延長及停会ハ両院同時ニ之ヲ行フヘシ 衆議院解散ヲ命セラレタルトキハ公議院ハ同時ニ閉会セラルヘシ 註 議院法第三十四条 削除 議院法第三十六条ニ第二項ヲ加フ 衆議院ノ解散ニ依リ公議院ニ閉会ヲ命シタル場合ニ於テハ前項ノ例ニ依ラス 第四十五条 衆議院解散ヲ命セラレタルトキハ勅命ヲ以テ新ニ議員ヲ選挙セシメ解散ノ日ヨリ二箇月以内ニ帝国議会ヲ召集スヘシ 第四十八条 両議院ノ会議ハ公開ス 但シ政府ノ要求又ハ議員ノ発議ニ依リ其ノ院ノ決議アリタルトキハ秘密会ト為スコトヲ得 第五十三条 両議院ノ議員ハ現行犯罪人又ハ内乱外患ニ関ル罪ヲ除ク外召集詔書公布後閉会ニ至ル期間中逮捕セラルルコトナシ但シ会期中ヲ除キ其ノ議長ノ許諾会期中其ノ院ノ許諾ヲ得タル場合ハ此ノ限ニ在ラス 第五十四条 国務大臣及政府委員ハ各議院ニ出席シ及発言スルコトヲ得 第五十四条ノ二 両議院ハ各々国務各大臣ヲ弾劾スルコトヲ得 註 国務大臣ノ帝国議会ニ対スル責任ヲ明カニスル為メ本条ヲ設ク (第六章)第六十四条 国家ノ歳出歳入ハ毎年予算ヲ以テ帝国議会ノ協賛ヲ経ヘシ予算ノ款項ニ超過シ又ハ予算外ニ為ス支出ハ予備費ヲ以テ之ヲ為シ後日帝国議会ノ承諾ヲ求ムヘシ 第六十五条 予算ハ前ニ衆議院ニ提出スヘシ 衆議院ヨリ送付セラレタル予算ハ公議院之ヲ増額シ又ハ否決スルコトヲ得ス 第七十一条 帝国議会ニ於テ予算ヲ議定セス又ハ予算成立ニ至ラサルトキハ予算成立ニ至ル迄ノ間政府ハ前年度ノ予算ノ範囲内ニ於テ実行予算ヲ作成シ之ヲ施行スヘシ 前項ノ場合ニ於テハ次ノ会期ニ於テ帝国議会ニ提出シ其ノ承諾ヲ求ムヘシ 実行予算ハ当該年度ノ予算ニ編入セラルヘシ 註 会計法第七条 歳入歳出ノ総予算ハ前年ノ帝国議会集会ノ始ニ於テ之ヲ提出スヘシ 但シ実行予算ヲ編成施行シタル場合ハ残余期間ニ対スル予算ハ之ヲ当該年度頭初ニ於テ召集セラルル帝国議会ニ提出スヘシ必要避クヘカラサル経費及法律又ハ契約ニ基ク経費ニ不足ヲ生シタル場合ヲ除ク外追加予算ヲ提出スルコトヲ得ス 第七十二条 国家ノ歳出歳入ノ決算ハ会計検査院之ヲ検査確定シ政府ハ其ノ検査報告ト共ニ之ヲ帝国議会ニ提出シ其ノ承諾ヲ求ムヘシ (第七章)第七十三条 将来此ノ憲法ノ条項ヲ改正スルノ必要アルトキハ勅命ヲ以テ議案ヲ帝国議会ノ議ニ付スヘシ両議院ハ各々其ノ三分ノ一以上ノ賛成ヲ以テ憲法改正ノ議案ヲ提出スルコトヲ得 前二項ノ場合ニ於テ両議院ハ各々其ノ総員三分ノ二以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開クコトヲ得ス出席議員三分ノ二以上ノ多数ヲ得ルニ非サレハ改正ノ議決ヲ為スコトヲ得ス (参考) 金子伯談話(抄) 貴族院令を勅令とした理由 そこで憲法草案の第三章帝国議会の第三十四条と第三十五条とにも 第三十四条 貴族院ハ貴族院組織権限法ノ定ムル所ニ依リ、皇族華族、及ヒ勅任セラレタル議員ヲ以テ組織ス 第三十五条 衆議院ハ選挙法ノ定ムル所ニ依リ公選セラレタル議員ヲ以テ組織ス と記載したのであつたが、衆議院と同様に貴族院組織権限法といふ法律に従つて議員が任命せられるとなると、後日、衆議院から改正案が出るかも知れない。 「皇族が議席に御列しになるのは畏れ多いからこの項は削らう」 「公侯伯子男だけが構成分子であるまい。 勅選などは入らぬ。多額納税議員などは小癪だ。みんな削除して人民公選による議員を以て上院を組織しよう」 などといふ改正案が出て、それが通過して法律となつても仕方がない。 苛くも法律である以上は、衆議院議員選挙法、その他の法律も同等で、衆議院で貴族院の組織権限法を改正することが出来る。 それでは貴族院を甚だ薄弱不安な位置に置くことになつて、皇室の藩屏としての職責を充分に果させることが出来ない。衆議院に左右せられるやうでは、二千五百年来、皇室の藩屏として国政に尽瘁して来た、公卿大名の高貴性が失われて由々しいことになる。仍つて衆議院の手の及ばない勅令を以て貴族院の組織権限を定めようといふので、貴族院組織権限法を改めて「貴族院令」とした。 これに依つて衆議院の容喙を免れはしたものの、更に一考すれば政府官僚に左右せられる余地がある。 「勅選議員が政府の意の儘にならぬから、これを廃止することにしよう」 「伯子男爵議員が多すぎるから、これを半減しよう」 といふやうな意見が政府部内に起つて、新に勅令案を作り、それを上奏して御裁可になれば、貴族院の知らない間にその組織権限が侵されることになり、一たび勅令で出てしまへば貴族院の手では容易に恢復できないことになる。 それでは、折角、衆議院に対する一議政府として、憲法によつて認められた貴族院でありながら、時の内閣の意見次第で左右せられることになつて、これまた皇室の藩屏としての職責を充分に果さしめる所以ではない。 そこで一時はこれを憲法の条章に掲げて、 貴族院ハ貴族院令ノ定ムル所ニ依リテ皇族華族及勅選議員ヲ以テ組織ス 但此ノ勅令ノ改正ハ貴族院ノ議ヲ附ヘシ といふことにしやうかとまで考へたのであつたが、さうまでしなくとも貴族院令の中で、貴族院令の改正には貴族院の同意を要する旨を明記すればよいではないか、といふことになり、幾たびか論議を尽した後に、 将来此ノ勅令ノ条項ヲ改正シ又ハ増補スルトキハ貴族院ノ議決ヲ経ヘシ と、貴族院令の末尾(第十三条)に加へたのである。かくして貴族院令は衆議院の議に付する法律でもなく、また内閣の勝手に改廃する勅令でもなく、貴族院の議を経べき勅令といふ、空前絶後、たつた一つの特例的な勅令として、御裁可を仰ぐことになつた。 貴族院及び衆議院の構成人員 かくまでに貴族院を確保したのは、一朝有事の際に、民議に偏せず、政府に諂はず、立法府として、また皇室の藩屏として、公平無私の立場を堅持させるためである。従つて構成分子も、人民の投票でなく政府の任命でなく、華族という歴史的に優越尊貴な階級を代表して出る者を本体とする。政府と人民とから超越してゐて、政府の擅断・民党の過激を制馭して、国家の安危を担ふべきもの、仍つてその組織構成に就いては各国の上院、特に英吉利上院の制度を参照すると共に、また伯の起草した「衆議院議員選挙法」と睨み合せて研究した。 帝國憲法改正私案(大池委員)[昭和20年12月22日提出](秘) 憲法改正ハ之ト一体不離ノ関係ニ在ル議院法ノ改正ト相俟ツヘキモノナルモ憲法ニ関シ私案及提出候也 大池委員 松本委員長 殿 帝国憲法改正私案第一章第七条 天皇ハ帝国議会ヲ召集シ其ノ開会閉会及下院ノ解散ヲ命ス但シ同一原因ニ依リ重ネテ下院ノ解散ヲ命スルコトヲ得ス (註)貴族院ナル封建的名称ヲ避ケ貴族院及衆議院ヲ上院及下院ト改メムトス 第八条 天皇ハ公共ノ安全ヲ保持シ又ハ其ノ災厄ヲ避クル為緊急ノ必要ニ由リ帝国議会閉会ノ場合ニ於テ法律タルノ効力ヲ有スル緊急勅令ヲ発スルコトヲ得 緊急勅令ヲ発セムトスルトキハ両院ヨリ選出セラレタル各同数ノ委員ヨリ成ル常設ノ審議会ニ諮問スヘシ 緊急勅令ハ次ノ会期ニ於テ帝国議会ニ提出スルコトヲ要ス若議会ニ於テ承諾ノ議決ニ至ラサルトキハ政府ハ速ニ将来ニ向テ其ノ効力ヲ失フコトヲ公布スヘシ 緊急勅令ヲ以テ法律ヲ廃止変更シタル場合ハ前項ノ失効公布ノ時ヨリ曩ノ法律ハ其ノ効カヲ回復スルモノトス 緊急勅令ハ次ノ会期前ニ之ヲ廃止シタル場合ニ於テモ亦之ヲ帝国議会ニ提出スヘシ (註)下院解散セラレタル場合ハ緊急勅令審議会委員ノ下院議員ハ後任者ノ選任セラルル迄在任スヘキ旨議院法ニ規定スヘシ 第九条 天皇ハ法律ヲ執行スル為ニ又ハ法律ノ委任ニ依リ命令ヲ発シ又ハ発セシム但シ命令ヲ以テ法律ヲ変更スルコトヲ得ス (註)所謂独立命令ヲ廃止セムトス 第十条 天皇ハ行政各部ノ官制及官吏ノ俸給ヲ定メ及官吏ヲ任免ス 但シ此ノ憲法又ハ法律ニ特例ヲ設ケタルモノハ各々其ノ条項ニ依ル
第十三条 天皇ハ戦ヲ宣シ和ヲ講シ及諸般ノ条約ヲ締結ス但シ他国ノ攻撃ヲ受ケタルニ非ル場合ニ於テ戦ヲ宣シ、法律ヲ以テ定ムルヲ要スル事項ニ関ル条約及国ニ重大ナル義務ヲ負ハシムル条約ヲ締結スル場合ハ帝国議会ノ協賛ヲ経ルヲ要ス 第十四条 削除 第十五条 天皇ハ勲章及其ノ他ノ栄典ヲ授与ス 第二章第十九条 「文武官」ヲ「官吏」トス第二十条 日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ従ヒ国家ヲ防衛スル義務ヲ有ス 第二十二条 日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ居住移転及営業ノ自由ヲ有ス 第三十条 「相当ノ敬礼ヲ守リ」ヲ削除ス 第三十一条 削除 第三十二条 削除 第三章第三十三条 帝国議会ハ上院及下院ノ両院ヲ以テ成立ス第三十四条 上院ハ構成法ノ定ムル所ニ依リ勅任セラレタル議員ヲ以テ組織ス (註)上院構成法ニ依リ皇族(勅任ニ依リ終身議員トス)勅任議員(任期制ヲ採ル)及被選議員(華族及職能代表等一定数ヲ選出ス)ヲ以テ組織セムトス之等ハ凡テ法律ニ譲リ憲法ニ列挙セサルハ憲法改正ノ煩ヲ避クル為ナリ 第三十八条 政府及両議院ハ各々法律案ヲ提出スルコトヲ得 (註)前条ニ依リ両院ノ法律案議決権ヲ規定スル要ナシ 第三十九条 第二項 以下左ヲ加フ 下院ニ於テ三分ノ二以上ヲ以テ可決スルコト引続キ二回ニ及ヒタル法律案ハ上院二於テ之ヲ否決シ又ハ議決スルニ至ラサルコトヲ得ス 前項ノ場合上院ニ於テ修正ヲ為シタル為両院協議会ニ於テ成案ヲ得サルトキハ下院ノ議決案ヲ以テ成立セルモノトス 第四十条 但書ヲ削除ス (註)意味不明ナルモノアリ今日迄実例ナク且ツ削除ニ依リ支障ヲ生スルコト無カルヘシ 第四十二条 帝国議会ハ三箇月ヲ以テ会期トス但シ政府ニ於テ必要ト認メタルトキ又ハ各議院ノ決議アリタルトキハ勅命ヲ以テ之ヲ延長スヘシ (註)議院ニ会期延長及次条ニ於テ臨時議会ノ要求権ヲ認ムルトキハ特ニ会期ヲ長期ニ規定スルノ要ナカルヘシ 第四十三条 臨時緊急ノ必要アル場合又ハ各議院ノ総議員三分ノ一以上ノ要求アル場合ニ於テハ常会ノ外臨時会ヲ召集スへシ 臨時会ノ会期ハ勅命ニ依リ之ヲ定ム 第四十四条 第二項ヲ左ノ如ク改ム 下院解散ヲ命セラレタルトキハ上院ハ同時ニ閉会セラルヘシ (註)議院法第三十六条ノ「閉会」ヲ「閉院式」ト改ムヘシ 第四十五条 下院解散ヲ命セラレタルトキハ新ニ議員ヲ選挙セシメ解散ノ日ヨリ三箇月以内ニ帝国議会ヲ召集スヘシ 第四十八条 両議院ノ会議ハ公開ス 但シ政府ノ要求又ハ議員ノ発議ニ依リ其ノ院ノ決議アリタルトキハ秘密会ト為スコトヲ得 第五十三条 両議院ノ議員ハ現行犯罪又ハ内乱外患ニ関ル罪ヲ除クノ外会期中其ノ院ノ許諾ナクシテ逮捕監禁審問セラルルコトナシ 会期中議員ノ家宅ヲ捜索シ又ハ物件ノ押収ヲ為サムトスル場合ハ其ノ院ノ許諾ヲ得ヘシ 会期前ニ於テ逮捕セラレタル議員ハ其ノ院ノ要求アルトキハ会期中之ヲ釈放スヘシ 第五十四条 「何時タリトモ」ヲ削除ス 第四章第五十五条 国務各大臣ハ天皇ヲ輔弼シ国務並ニ軍ノ統帥ニ就キ其ノ責ニ任ス凡テ法律勅令其ノ他国務並ニ軍ノ統帥ニ関スル詔勅ハ国務大臣ノ副署ヲ要ス 国務各大臣ハ政府ノ一般的政策ニ付テハ帝国議会ニ対シ連帯シテ其ノ責ニ任シ其ノ主管事務ニ付テハ各々其ノ責ニ任ス 第五十六条 削除ス 第六十一条 行政官庁ノ違法処分ニ依リ権利ヲ傷害セラレタリトスル者ハ法律ノ定ムル所ニ依リ司法裁判所ニ出訴スルコトヲ得 第六章第六十四条 第二項ヲ左ノ如ク改ム予算ノ款額ニ超過シ又ハ予算外ノ支出ハ予備費ヲ以テ之ヲ為シ後日帝国議会ノ承諾ヲ求ムルヲ要ス (註)責任支出ヲ禁セムトス 第六十五条 予算ハ前ニ下院ニ提出スヘシ 上院ハ下院ヨリ送付セラレタル予算ニ付テハ増額ノ修正ヲ為スコトヲ得ス 第六十六条 皇室経費ハ現在ノ定額ニ依リ毎年国庫ヨリ之ヲ支出ス 将来増額ヲ要スル場合ハ帝国議会ノ協賛ヲ要ス若減額セムトスル場合ハ勅命ニ依リ帝国議会ノ議ニ付スヘシ 第七十条 第二項ヲ左ノ如ク改ム 前項ノ場合ニ於テハ緊急勅令審議会ニ諮問シ且ツ次ノ会期ニ於テ帝国議会ニ提出シ其ノ承諾ヲ求ムルヲ要ス 第七十一条 帝国議会ニ於テ予算ヲ議定セス又ハ予算成立ニ至ラサルトキハ予算成立ニ至ル迄ノ間政府ハ前年度ノ予算ノ範囲内ニ於テ実行予算ヲ作成シテ之ヲ施行スヘシ 前項ノ場合ニ於テハ会計年度開始後速ニ帝国議会ヲ召集シ当該年度ノ予算ト倶ニ之ヲ帝国議会ニ提出シ其ノ承諾ヲ求ムヘシ 実行予算ハ当該年度ノ予算ニ編入セラルヘシ 第七章第七十三条 第二項トシテ左ノ如ク挿入ス両議院ハ各々其ノ院ノ総員三分ノ一以上ノ賛成ヲ以テ憲法改正ノ議案ヲ提出スルコトヲ得 現行第二項ヲ第三項トシテ左ノ如ク改ム 現行第二項ノ「此ノ場合」ヲ「前二項ノ場合」ニ改ム 第七十四条 第二項トシテ左ノ如ク挿入シ現行第二項ヲ第三項トス 摂政ヲ置クノ間苟シクモ皇位継承ノ順序ニ変更ヲ加フルコトヲ得ス 第七十五条 削除 第七十七条 ニ左ノ新条文ヲ追加ス 憲法ニ関スル疑義ハ憲法裁判所之ヲ決ス 憲法裁判所ノ構成ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム (註)枢密院ヲ廃止シタル結果憲法争議ヲ決スル必要アリ 参考 衆議院ニ於テ従来主張セル常置委員会制度 議院法第二十条ヲ改正シテ次ノ条項ヲ加ヘムトス 第二十条 各議院ノ委員ハ全院委員常任委員特別委員及常置委員ノ四類トス 第二十条ノ二 全院委員以下現行第二項及第三項 第二十条ノ三 常置委員ハ左ノ事件ヲ審査スル為議院ニ於テ選挙シ次ノ常会ニ於テ改選セラルル迄其ノ任ニ在ルモノトス 一、議院ニ於テ閉会後引続キ審査ヲ要スト議決シタル議案 二、閉会中政府ニヨリ審査ヲ要求シタル議案 常置委員会ハ審査スヘキ議案ノ有無ニ拘ラス政府ニ出席ヲ求メ其ノ所管ニ属スル事件ニ付説明ヲ求メ又質問ヲ為スコトヲ得 第二十条ノ四 前条第一項第二号ノ議案ハ両院各別ニ之ヲ提出スルコトヲ得 常置委員会制度ヲ認ムル場合修正ヲ要スル関係条文左ノ如シ 第十二条 第二十条 第二十一条 第二十二条 第二十三条 第二十八条 第三十五条 第四十六条 帝國憲法中會計關係規定改正案(中村委員)(昭和20年12月17日)(秘) 帝国憲法中会計関係規定改正案昭和二〇、一二、一七 中村委員第十三条 天皇ハ諸般ノ条約ヲ締結ス但シ(法律ヲ以テ定ムルヲ要スル事項ニ係ルモノ又ハ)国庫ノ負担トナルヘキ事項ヲ定ムルモノハ帝国議会ノ協賛ヲ経ルヲ要ス 第六十六条 皇室内廷ノ経費ハ特ニ常額ヲ定メ毎年国庫ヨリ之ヲ支出シ増額ヲ要スル場合ヲ除ク外帝国議会ノ協賛ヲ要セス 第六十七条中「憲法上ノ大権ニ基ツケル既定ノ歳出及」ヲ削ル 第六十九条ニ左ノ二項ヲ加フ 予備費ヲ以テ予算ノ外ニ生シタル必要ノ費用ニ充ツル場合ニ於テハ帝国議会ノ常置委員会ニ諮問スヘシ 避クヘカラサル予算ノ不足ヲ補フ為ニ又ハ予算ノ外ニ生シタル必要ノ費用ニ充ツル為ニ予備費外ニ於テ支出ヲ為ス場合ニ於テハ帝国議会ノ常置委員会ニ諮問スヘシ 第七十条第一項中「能ハサルトキハ」ノ下ニ「其ノ常置委員会ニ諮問シテ」ヲ加フ 第七十一条 予算成立ニ至ラサルトキハ政府ハ会計法ノ定ムル所ニ依リ暫定予算ヲ調製シ予算成立ニ至ル迄之ヲ施行スヘシ 憲法改正綱領(未完稿)(古井嘱託)[昭和20年12月22日提出](秘) 憲法改正綱領(未完稿) (古井嘱託)第一 改正ノ目標(イ)ポツダム宣言ノ履行、即チ本宣言ノ趣旨ニ則リ政治ノ徹底的民主主義化ヲ図ルコト(ロ)ポツダム宣言ニ於テ残サレタル天皇制ノ問題ニ関スル国民ノ信念ヲ宣明シ之ヲ確乎不動ナラシムルコト (附記)暫定憲法ノ考方ヲ採ラズ 第二 改正要旨(一)国称「大日本帝国」ヲ「日本国」ニ改ム (二)国体 天皇制ヲ堅持ス 但シ天皇ハ統治ノ実権ヲ行使セラレザルノ趣旨ヲ強化ス (三)政府 (イ)統治ノ実権ト責任トヲ内閣ニ集中ス 即チ、右天皇ニ対スル関係ノ外、所謂統帥権ノ独立ヲ否認シ、又天皇神別ノ機関ニ付テモ枢密院ヲ廃止ス(后段尚検討) (ロ)議院内閣主義ヲ確立ス (四)議会 所謂大権事項ヲ制限シ議会ノ権限ヲ強化ス(尚検討) (五)国民 国民ノ政治上ノ特権ヲ打破シ及国民ノ権利及自由ノ尊重ヲ徹底ス(后段尚検討) (六)其ノ他 各般ニ渉リ民主々義ノ趣旨ヲ徹底ス 第三 改正順序(イ)今次衆議院議員総選挙ニ関シ、憲法改正ヲ議シ就中天皇制ニ対スル国民ノ信念ヲ表明スベキ衆議院ヲ作ルコトガ其ノ目的ノ一ナル趣旨ヲ闡明スルコト(ロ)特別議会ニ於テ貴族院改革案ヲ提出シ、衆議院ト相俟ツテ国民ノ自由真正ナル意思ヲ表明スベキ議会ノ体制ヲ整フルコト (ハ)貴族院ノ構成ヲ新ニシタル後、貴衆両院ヲ根幹トシタル憲法改正審議会ヲ設ケ其ノ審議ヲ経ルコト (ニ)最後ニ、臨時議会ヲ召集シ憲法所定ノ手続ニ依リ改正案ノ議決ヲ経ルコト (備考)本改正順序ヲ安固ナラシムル為、政府部内ニ於ケル研究略々一段落トナラントスル此ノ機会ニ於テ之ニ付聯合軍司令部ノ諒解ヲ取付クルヲ極メテ必要トス 若シ此ノ措置ニ出ヅルヲ躊躇スルニ於テハ、寧ロ本改正順序ハ之ヲ放棄シ、専ラ拙速主義ニ依リ、特別議会ニ於テモ憲法改正案ヲ付議スル迄ノ決心ヲ整へ置クノ要アリ [憲法第61条改正案](奥野委員)[昭和20年12月22日提出](秘) 奥野委員 一、憲法第六十一条ヲ左ノ如ク改ム(イ)行政官庁ノ違法処分ニ依リ権利ヲ傷害セラレタル者ハ法律ノ定ムル所ニ依リ司法裁判所ニ出訴スルコトヲ得(ロ)行政官庁ノ違法処分ニ依リ権利ヲ傷害セラレタリトスルノ訴訟ハ法律ノ定ムル所ニ依リ司法裁判所其ノ裁判権ヲ有ス (ハ)司法裁判所ハ行政官庁ノ違法処分ニ依リ権利ヲ傷害セラレタリトスルノ訴訟ニ付亦裁判権ヲ有ス 別案二、第六十一条 削除(裁判所構成法ニ第一案ト同趣旨ノ規定ヲ設クルコト)備考行政裁判所ヲ司法裁判所ニ統合スル場合ニ於テハ行政訴訟事件ハ控訴院ヲ第一審トシ大審院ヲ上告審トスル二審制トスルコト憲法改正試草(佐藤委員)(昭和21年1月3日)、憲法改正試草(追加一)(佐藤委員)[昭和21年1月3日](秘) 憲法改正試草 二一・一・三 佐藤委員(各顧問委員ノ試案ヲ参看セリ)大日本帝国憲法中左ノ通改正ス 第三条 天皇ハ統治権ノ行使ニ付責ヲ負フコトトナシ 天皇ノ身位ハ侵スヘカラス 第七条 天皇ハ此ノ憲法又ハ議院法ノ定ムル所ニ依リ帝国議会ヲ召集シ其ノ開会閉会及停会並ニ衆議院及審議院ノ解散ヲ命ス 第八条第一項中「閉会ノ場合ニ於テ」ノ下ニ「帝国議会ノ常置委員会ニ諮詢シ」ヲ加フ 第九条 天皇ハ法律ヲ執行スル為ニ又ハ憲法上ノ大権ヲ施行スル為其ノ他行政ノ目的ヲ達スル為ニ必要ナル命令ヲ発シ又ハ発セシム但シ命令ヲ以テ法律ヲ変更スルコトヲ得ス 第十条 天皇ハ官吏ヲ任免ス 第十一条 天皇ハ諸般ノ条約ヲ締結ス(シ其ノ公布ヲ命ス) 法律ヲ要スル事項ニ関ル条約及国ニ重大ナル義務ヲ負ハシムル条約ノ締結ハ帝国議会ノ協賛ヲ経ルヲ要ス但シ公共ノ安全ヲ保持スル為緊急ノ必要ニ依リ帝国議会閉会中締結ヲ要スルモノニ付テハ第七十条ノ例ニ依ル 第十二条 天皇ハ戦ヲ宣シ及和ヲ講ス 戦争ノ開始ハ帝国議会ノ協賛ヲ経ルヲ要ス但シ他国ノ進攻ヲ受ケタルニ因リ戦争ヲ開始スルトキハ此ノ限ニ在ラス 第十三条 天皇ハ (勲章其ノ他ノ)栄典ヲ授与ス (第十四条 天皇ハ恩赦ヲ命ス) 第十四条及第十五条ヲ削リ第十六条ヲ第十四条トシ第十七条ヲ第十五条トス 第二章中第十八条ヲ第十六条トス 第十九条中「文武官」ヲ「官吏」ニ改メ同条ヲ第十七条トス 第十八条 日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ従ヒ国土防衛其ノ他ノ公共ノ役務ニ服スルノ義務ヲ有ス 第二十一条ヲ第十九条トシ以下第二十七条迄順次二条宛繰上ク 第二十六条 日本臣民ハ信教ノ自由ヲ有ス 安寧秩序ヲ保持スル為必要ナル制限ハ法律ノ定ムル所ニ依ル 第二十九条ヲ第二十七条トス 第三十条中「相当ノ敬礼ヲ守リ」ヲ削リ同条ヲ第二十八条トス 第三十三条中「貴族院衆議院」ヲ「衆議院審議院」ニ改メ同条ヲ第三章章中ノ第二十九条トス 第三十五条ヲ第三十条トス 第三十一条 審議院ハ審議院法ノ定ムル所ニ依リ選挙セラレタル議員及勅任セラレタル議員ヲ以テ組織ス但シ勅任議員ノ定数ハ総議員ノ三分ノ一ヲ超ユルコトヲ得ス 第三十六条ヲ第三十二条トシ第三十七条ヲ第三十三条トス (第三十八条ニ左ノ但書ヲ加へ同条ヲ第三十四条トス 但シ審議院法ノ改正案ハ衆議院之ヲ提出スルコトヲ得ス) 憲法改正試草(追加一)(佐藤委員)憲法改正試草(追加一) 佐藤委員第三十九条ヲ第三十五条トシ第四十条ヲ第三十六条トシ 第四十一条ヲ第三十七条トス 第三十八条(現四十二条)帝国議会ノ会期ハ三箇月以上トシ勅命ヲ以テ之ヲ定ム 第三十九条(現四十三条)臨時必要アル場合ニ於テハ常会ノ外臨時会ヲ召集スヘシ其ノ会期ハ勅命ヲ以テ之ヲ定ム 第四十四条第二項ヲ左ノ如ク改メ同条ヲ第四十条トス 両議院ノ一解散ヲ命セラレタルトキハ他ノ議院ハ当然閉会ス 第四十一条(現四十五条)衆議院解散ヲ命セラレタルトキハ勅命ヲ以テ新ニ議員ヲ選挙セシムヘシ 第四十二条(現四十五条)審議院解散ヲ命セラレタルトキハ勅命ヲ以テ新ニ議員ヲ選挙セシメ及新ニ議員ヲ勅任スヘシ 第四十三条(現四十五条)衆議院又ハ審議院解散ヲ命セラレタルトキハ解散ノ日ヨリ二箇月以内ニ帝国議会ヲ召集スヘシ其ノ会期ハ勅命ヲ以テ之ヲ定ム 第四十六条ヲ第四十四条トシ第四十七条ヲ第四十五条トス 第四十八条但書中「政府ノ要求又ハ」ヲ削リ同条ヲ第四十六条トス 第四十七条(現四十九条)両議院ハ国務大民不信任ノ決議又ハ其ノ他ノ事件ニ付各々天皇ニ上奏スルコトヲ得 第五十条ヲ第四十八条トシ以下順次第五十四条迄二条宛繰上グ 第五十三条 帝国議会ニ常置委員会ヲ置ク 常置委員会ノ組織及職権ハ議院法ヲ以テ之ヲ定ム 第四章 第五十五条ヲ第五十四条トス 第五十六条ニ左ノ但書ヲ加へ同条ヲ第五十五条トス 但シ帝国議会ノ協賛又ハ帝国議会常置委員会ノ諮詢ヲ経ベキ事件ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ |