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第11回納本制度審議会議事録

日時:
平成16年6月2日(水)午後2時~3時50分
場所:
国立国会図書館 特別会議室
出席者:
衞藤瀋吉会長、合庭惇委員、朝倉邦造委員、安念潤司委員、内田晴康委員、見城美枝子委員、塩野宏委員、清水勲委員、竹内悊委員、鶴田尚正委員、村上重美委員、百﨑英委員、奥住啓介専門委員、杦本重雄専門委員、夏井高人専門委員、野末俊比古専門委員
会次第:
1. 開会のあいさつ
2. 委員の委嘱等の報告
3. 第10回納本制度審議会議事録の確認
4. ネットワーク系電子出版物の収集の課題に関する小委員会の調査審議の経過について
5. 代償金部会における調査審議について(案)
6. 今後の日程(案)について
7. 事務局からの報告
 (1)平成15年度出版物納入状況、平成16年度代償金予算及び平成15年度代償金支出実績
 (2)その他
8. 閉会
配布資料:
(資料1)納本制度審議会委員の委嘱等について
 付:平成16年5月12日・21日付け官報該当部分の写し
(資料2)納本制度審議会委員及び専門委員名簿
(資料3)第10回納本制度審議会議事録
(資料4)ネットワーク系電子出版物の収集の課題に関する小委員会の調査審議の経過について
(資料5)納本制度審議会におけるネットワーク系電子出版物の収集と表現の自由の関係等に関する議論(抜粋)
(資料6)納本制度審議会における調査審議の現況及び今後の要検討事項について[第7回納本制度審議会配布資料8](抄)
(資料7)納本制度調査会答申[平成11年2月22日](抄)
(資料8)ネットワーク系電子出版物小委員会の調査審議について[平成15年3月13日](抄)
(資料9)表現の自由に配慮したネットワーク系電子出版物の収集方法(図)
(資料10)代償金部会における調査審議の合理化について(案)
(資料11)納本制度審議会 今後の日程(案)
(資料12)資料別納入実績(最近3年間)
(資料13)代償金の予算と支出実績(最近5年間)
(資料14)国立国会図書館法(抄)
(資料15)納本制度審議会規程
(資料16)納本制度審議会議事運営規則
(資料17)国立国会図書館法第二十五条の規定により納入する出版物の代償金額に関する件

議事録:
1 開会のあいさつ
会長:  それでは、定刻になりましたので、第11回納本制度審議会を開会いたします。本日は、18名の委員中12名に御出席いただいておりますので、定足数は満たされております。本日は、議事に関連いたしますので、4名の専門委員の方々にも御出席いただいております。それでは、お手元の会次第に従いまして会を進めてまいります。配布資料の説明を事務局からお願いします。
事務局: 〔配布資料について説明。〕
会長: ありがとうございました。資料が全部揃っているかどうか御確認ください。
 
2 委員の委嘱等の報告
会長:  それでは、会次第の2に入りたいと思います。前回の審議会以降、お二人の委員の交替がありましたので、事務局から説明をお願いします。
事務局: 〔資料1に基づいて説明。
 浅野純次委員の委嘱を解き、5月10日付けで白石勝氏に委員を委嘱した。理由は(社)日本雑誌協会理事長の改選に伴い、新理事長に委員を委嘱することとしたためである。白石委員については、併せて、代償金部会所属委員に指名した。
 また、小林辰三郎委員の委嘱を解き、5月20日付けで鶴田尚正氏に委員を委嘱した。理由は(社)日本出版取次協会会長の改選に伴い、新会長に委員を委嘱することとしたためである。
 任期は前任者の残りの任期となるので、いずれも平成17年5月31日までとなる。〕
会長:  本日、白石委員は都合により御欠席ですが、鶴田委員には御出席いただいております。せっかくの機会ですので、ごあいさついただければと思います。鶴田委員、よろしくお願いいたします。
委員:  鶴田です。今回、初めてこういう機会を得ました。出版界にも多くの複雑な問題が出てきておりますが、皆さまのお知恵をお借りしまして、納本制度の改善等のため、務めてまいりたいと思います。
会長:  どうぞよろしくお願いいたします。本日欠席の白石委員には、代償金部会所属委員の指名について、事務局から説明してありますか。
事務局:  お伝えしてあります。
会長:  結構です。
 
3 第10回納本制度審議会議事録の確認
会長:  それでは、会次第の3に移ります。前回の納本制度審議会の議事録の取扱いについて事務局から説明をお願いします。
事務局:  第10回納本制度審議会の議事録は、出席された委員に御確認をいただきまして、了承を得た上で、既に国立国会図書館(以下「館」という。)のホームページに掲載し、公開しております。配布資料2は、それと同じものでございます。万一、誤植その他問題がございましたら、御一報いただきたいと思います。
会長:  問題のある方は、挙手の上、修正等についてお知らせいただきたいと思います。特にないようですので、議事録は確認されたものといたします。
 
4 ネットワーク系電子出版物の収集の課題に関する小委員会の調査審議の経過について
会長:  次に、会次第の4に入ります。これが本日の主たる議題であります。
 ネットワーク系電子出版物(以下「ネットワーク系」という。)の収集につきましては、2年前に国立国会図書館長から諮問を受けました。昨年、審議会としては、ネットワーク系を納本制度に組み入れないで、新たな制度によって収集すべきであるといたしました。そして、収集範囲と方法について、法律上の問題点を検討するため、現在の小委員会を設置しました。
 そこで、小委員会の審議経過につきまして、公文小委員長から報告していただく予定でしたが、都合により本日欠席されていますので、代わって小委員会所属委員のお一人に報告をお願いしたいと思います。
委員:  それでは、小委員長に代わってネットワーク系電子出版物の収集の課題に関する小委員会の審議の経過について、御報告いたします。配付資料4を御覧ください。
1  小委員会は、ネットワーク系の収集範囲と方法について、法制度的な検討を行うことを目的として、第8回審議会で設置されました。現在までに、収集範囲・方法及び著作権の問題について、調査審議してまいりました。
2  小委員会の調査審議の基本的立場等ですが、収集範囲・方法については、国・地方公共団体と私人では、収集目的及び言論の萎縮の問題において異なる考え方が必要と認められますので、これらを分けて検討することとしました。
3
 国・地方公共団体の発行するネットワーク系につきましては、次の3点について検討いたしました。
(1)独立行政法人等、国・地方公共団体の周辺にある法人については、納本制度審議会答申に示されたところに従って、国等と同様に取り扱うことが妥当という結論となりました。なお、この関係で、国等のネットワーク系の収集目的は、国立国会図書館法第24条の「公用」と位置付けることが適当と考えられます。
(2)また、国等のため、発行されたときの扱いについても、従来の出版物と同様です。
(3)収集方法は、私人と異なり、言論の萎縮のおそれへの配慮は不要です。そのため、送信義務又は一定の場合には自動的収集によることとし、過誤により掲載した出版物等について固定拒否事由を設けることとしました。
4
 続いて、私人のネットワーク系の収集範囲と方法に関する審議経過について御報告いたします。
(1)まず、収集目的ですが、国会議員の職務遂行に資することなどのため、文化財の蓄積・利用に資するためということになります。
(2)次に、収集範囲と方法ですが、15年3月に、法的強制を伴う収集の範囲・方法として、学術的情報に限定し、通知義務又は送信義務を課して収集するという方向が審議会に示されました。
 小委員会では、これが法制度的に可能かどうかという観点、平成11年の調査会答申が指摘した言論の萎縮のおそれ等の問題の解決に有効かという観点から、検討いたしました。
①まず、収集範囲については、学術的内容といった出版物の内容に基づいて収集範囲を限定することは、国立国会図書館の任務等から、合理的に説明することは困難とされました。
②次に、収集方法ですが、義務付けを伴う方法を採る場合には、言論を萎縮させないように、固定に関する発行者等の意思を尊重する仕組みが必要です。
 通知義務に基づく自動収集、又は送信義務を課する方法では、意思に反する固定は避けられません。
 そこで、小委員会は、通知義務又は送信義務に代わる仕組みについて、検討いたしました。
 なお、この仕組みは、範囲を限定しないで収集することとなります。
 考えられる仕組みの基本的要素は、2つありまして、一つは、いつ、どのように収集するか、また固定を望まない者は申し出ることなどを事前に公告することです。
 もう一つは、固定拒否の申出に応じて固定しないとすることです。なお、ここでいう申出は、システムを利用した自動的な方法も十分考えられます。③ 以上は、表現の自由に配慮しつつ、自動的収集の長所とされる収集コストの低さと広い範囲のネットワーク系を収集できる収集方法として成り立ち得るというものです。
 小委員会では、法制度の導入に必要なコスト、運用コストを考慮すると、契約による収集とそれほど異ならないとの意見も出されており、最終的な結論とはなっておりません。
5  次に、収集及び利用における著作権の問題について御説明いたします。
(1)著作権法上の権利制限規定の適用があるかどうかは、収集・利用に大きく影響いたしますので、想定される複製、閲覧等の個別の行為について検討いたしました。詳しくは、資料に譲ります。
(2)著作権の制限という観点から、留意すべき点について検討いたしました。
①収集のための複製については、制度的な収集方法においては基本的に立法による権利制限が必要と考えられること、
②国・地方公共団体等については、「公用」という収集目的から、私人に比較して権利制限の必要が高いと考えられること
③そして、私人の著作権制限は、権利制限の趣旨等を踏まえ、必要かつ最小限にとどめるべきことなどです。
 なお、私人の著作権を制限する場合には、利用における損失を視野に入れて、経済的損失を適正に補償すべきかどうかが問題となります。
6  以上のほかに、
(1)除外すべき出版物の範囲
(2)本国内で発行されたネットワーク系をいかに区別するか
(3)発行者の問題等について、検討いたしましたが、詳細は、資料に譲ります。

 以上、小委員会の調査審議の経過について、御報告させていただきました。
 ただいまの報告に関係する資料が用意されておりますので、それらについては、事務局から説明していただければ、と思います。
会長:  ありがとうございました。ただいまの説明にもありましたが、参照すべき資料があるそうですので、これらについて事務局から説明をお願いします。
事務局:  ただいまの小委員会の調査審議経過報告について説明を補足させていただきます。配付資料に沿って説明いたします。
 資料5は、これまでの審議会におけるネットワーク系の収集と表現の自由との関係等に関する議論を議事録から抜粋したものでございます。まず、平成14年3月の第6回審議会では、ネットワーク系の収集と表現の自由との関係、あるいは言論の萎縮効果がもたらされる懸念等が平成11年の調査会答申において示されていることを指摘した上で、表現の自由との関係についての懸念が解消されるほどに国民の意識が変化しているとはなかなかいえないのではないかとの意見が述べられました。
 次に、第7回審議会においては、誤りが訂正されたネットワーク系について、訂正前のものが館において固定され、永久に閲覧されることとなれば、自由な表現を萎縮させるおそれがあることが指摘され、さらに、国の組織がネットワーク系を収集することがどこまで適切なのか、NPOなどの民間団体による収集の方が言論の萎縮のおそれ等の問題は減少するのではないかという意見が示されております。
 資料の6は、審議会における調査審議の現況及びなお検討が必要な事項について、ネットワーク系電子出版物小委員会報告の結論を踏まえて、第7回納本制度審議会において確認された事項です。本小委員会の調査審議と関係する部分だけを抜粋しました。ここに示された事項のうち、今回の小委員会の調査審議経過報告と大きく関係するのは、自由アクセス情報の自動的収集について述べた箇所です。ここでは、「公衆が自由にアクセスできる情報」を自動的に収集する案、いわゆるロボット収集と呼ばれる方法による案について、発行者の意思に反する固定がもたらす人格権の侵害及び自由な言論の萎縮のおそれがあることから、採用が困難であるとされています。しかし、その一方で、この方法については、館により平成15年度に行われるバルク収集の実験の帰趨や他の国立図書館の趨勢もみた上で、最終的な実現可能性を判断することが妥当と述べられています。このように、審議会において、自動的収集という方法が全く否定されたのではないことに御留意ください。
 次にまいります。意思に反する固定の問題が平成11年の納本制度調査会答申において指摘され、平成15年のネットワーク系電子出版物小委員会報告においても確認されたことは、先ほどの報告の中で触れられたとおりですが、これらの答申と報告の抜粋です。
 資料7は、平成11年2月22日の納本制度調査会の答申から、発行者の意思に反する固定と自由な表現の萎縮のおそれについての指摘を抜粋したものです。配布資料の通し頁29頁には、「コンピュータ・ネットワーク上で情報を発信している以上、発信者(著作者等)としても、不特定多数の者が当該情報にアクセスすることについては許容していると考えるのが妥当であろう。しかし、そのような個人による私的利用の範囲を超えて、情報を国の機関に納入するために、媒体への『固定』又はコンピュータへの『固定』を義務づけられた上で、当該機関がこれを永続的に保存し、立法・行政・司法の諸機関をはじめ、広く一般国民の利用に供する等の事態は、発信者(著作者等)が通常予期するところを超えるものであると考えられる。そのため、そのような強制的な『固定』等が当該発信者(著作者等)の意思に反し、人格権との関係で問題となることもあり得よう。そればかりか、そのような義務を課せられることになれば、これが情報の国家管理と受け取られ、自己規制をして表現を抑制したり、そもそも意見の公表自体を控えようとする者が現れることも予想され、結果的に納入義務を課することが言論活動に対する萎縮効果を生じさせ、自由な言論活動等に対する圧力として受け取られるおそれもある。」と述べられています。
   資料の8は、平成15年3月のネットワーク系電子出版物小委員会報告から、本小委員会の調査審議事項を抜粋したものです。特に、本小委員会の調査審議と関係する箇所には下線を付してあります。同報告においては、収集範囲を限定した上で通知又は送信に基づき収集を行う案が示されましたが、なぜこの案を採るのかという点について、同報告の考え方が述べられている箇所を見てまいります。42頁には、上の収集に関する案について、長所と問題点が述べられておりますが、そのうち、長所といたしましては、発行者からの通知に基づくことにより、発行者が認識しないうちに収集されるおそれがなくなること、収集範囲を限定することにより、自由な表現の萎縮のおそれがある範囲を狭めることができることなどが挙げられております。また、44頁では、調査会答申の指摘とそれへの対応について述べられており、発行者の意思に反する固定が人格権侵害や自由な表現の萎縮をもたらすおそれがあるとの調査会答申の指摘に対して、通知及び何らかの収集の範囲の限定により、問題が生ずるおそれの範囲を狭めることができるとされています。収集範囲の限定については、館が有用と認める情報のみを収集する目的で、個々の情報に個別に行政処分を行うことの立法上の問題点(強制収用の可否等)が調査会答申において指摘されていることに対し、収集対象の明確な類型化又は定義が必要であるとしています。本小委員会におきましては、このような前小委員会報告での議論を踏まえて、通知又は送信義務に基づく収集方法や収集範囲を限定することの問題点や、それに代わる仕組みについて検討を行っていただいたわけでございます。
 本小委員会の検討の結果、出版物の内容に基づく収集範囲の限定は法的に説明困難ということになり、対象を限定しないことが妥当であるということになりました。また、通知又は送信義務に基づく収集方法については、意思に反する固定が言論の萎縮をもたらすおそれは、この方法により回避できるとはいえないとされました。そこで、対象を限定せずに収集を行うことを前提として、通知又は送信義務に代わる収集方法が検討されました。検討された方法に基づく仕組みを示したのが、資料9の「表現の自由に配慮したネットワーク系電子出版物の収集方法」の図でございます。固定の前に拒否の意思表示がなかった場合の取扱いが問題となりますが、そのときは、仮の固定を行い、一定期間の再公告の後、拒否の申出があれば仮の固定を行ったものを削除するという考え方がとられております。発行者の固定に関する意思を尊重するために、収集前と後の2回、固定拒否の申出を受け付ける手続を経るということでございます。ここで固定拒否の申出があれば、固定義務が消滅し、仮固定したネットワーク系は削除されます。拒否の申出がなかったネットワーク系は、終局的に固定され、利用に供されることとなります。
 この仕組みは、本小委員会において一つの案として検討されたものでございます。拒否の申出を受け付けるのは、説明いたしましたように、固定の意思を尊重し、表現の自由に配慮するためです。また、館の任務に照らして考えれば範囲を限定せずにネットワーク系を収集する必要があると判断されたわけですが、その場合には、収集コスト減少のため自動的収集によることが想定されております。
 なお、表現の自由への配慮に関して、紙媒体の出版物を納本させることは問題とされないのに、なぜ、ネットワーク系の収集についてのみ固定の意思を問題とするのかという疑問が委員の中から呈されました。この点については、ネットワーク系の特性として、頻繁に改変・更新されることが予定されている一過性のものが多いため、当初から紙等に固定された形で流通する従来の出版物とは異なり、固定の法的な義務付けを行うに当たっては十分な配慮が必要となると説明いたしました。
 しかし、こうした固定拒否を受け付ける方法・仕組みについては、法制度導入や運用のために要する手間や時間を考慮すると、制度によらない契約による任意的な収集方法の場合とさほど異ならないのではないかとの意見も委員の中から示されており、先ほどの調査審議経過報告にありましたように、収集方法に関する小委員会としての最終的結論は得られておりません。
 続いて、先ほどの小委員会の調査審議経過報告の中で、詳しくは資料に譲るとされた点について補足させていただきます。
 まず、収集及び利用における著作権の問題に関する審議の経過についてです。
 資料4の5(1)の図「著作権者の許諾を要する行為・要しない行為」に基づき説明いたします。これは、ネットワーク系の収集及び利用に際して考えられる行為について、それぞれに働く複製権、上映権などの支分権と権利制限規定の適用の有無を検討した上で、著作権者の許諾を要するか否かを整理したものでございます。
 図にありますように、収集の際に考えられる行為のうち、発行者による送信、やむを得ない改変については許諾不要ですが、保存、館による収集等については許諾を要することとなります。また、利用に供する際に考えられる行為のうち、閲覧、プログラムを除く著作物の同一構内におけるLAN送信、やむを得ない改変、著作権法第31条及び第42条の要件を満たす複製については許諾不要ですが、有償の閲覧、館外への送信(プログラム著作物に関しては同一構内のLAN送信も含む)等については許諾を要することとなります。以上申し上げた中で、やむを得ない改変とは、同一性保持権に関わることですが、著作権法第20条第2項第4号の要件を満たすやむを得ない改変については、権利侵害とはならないということです。もちろん、そのほかの改変は、著作者の許諾なしに行うことができません。また、著作権法の規定のうち、図書館における提供のための複製について定めた第31条第1号と、裁判手続・立法・行政のために必要な複製について定めた第42条の要件を満たす場合には、複製に係る許諾は不要と整理してありますが、これらの規定がネットワーク系へも適用されることは想定されておらず、解釈上困難ではないかとの意見も委員の中にはございました。
 以上のような整理の中で著作権者の許諾を要するとされた行為を行うためには、著作者等の許諾を得るか、場合によっては立法により権利を制限することを検討する必要があるということになります。
 次に、その他の問題の調査審議の経過に関し、詳しくは資料4に譲るとされた点について補足させていただきます。
 まず、除外すべき出版物の問題です。収集の範囲を限定しないこととしても、やむを得ない外的な事由により収集範囲から除外すべき出版物があるのではないかと考えられます。典型的には、同一性を保持しつつ複製・再生ができないようなネットワーク系がこれに該当すると思われます。この観点から、データベース等いわゆる動的出版物や放送番組の取扱いが検討されました。
 動的出版物については、特定の時点でのデータベースの収集が意味を有しないとはいえないので、除外事由には該当しません。しかし、データベース事業への損失補償において損害額の評価が適正にできないという問題から除外せざるを得ないことがあるとされました。
 また、放送番組については、インターネット等で配信されており、基本的に他の出版物と同じと考えざるを得ませんが、再利用における特有の問題があることに留意が必要とされました。
 国内発行の基準の問題、つまり、諮問に示された日本国内で発行されたネットワーク系を他からいかに区別するかということについては、ネットワーク系の場合には、外国から送信行為が行われることも可能であり、送信行為の行われた場所が国内かどうかを基準としてよいかが問題となるところです。
 この点については、何をもって基準とするか等なかなか難しい問題があり、制度に明確な規定を置くのかどうかも含めてなお法的検討が必要とされました。
 WAN上の出版物の取扱いについては、第1回の小委員会以来検討されてまいりましたが、規模の大きなイントラネット上の出版物と捉えた上で、これが公表された出版物に該当するかどうかという観点から考えるのが適当であるとされました。この観点からみると、WANは、公表された出版物には該当しないと整理すればよいのではないかということとなりました。
 発行者の問題とは、今の納本制度においては、発行者を出版物の所有者と捉えた上で納入義務を課していますが、ネットワーク系においては情報をサーバから発信するにすぎないプロバイダーも発行者に当たると考えられますので、従来の出版物と同様に考えることはできないのではないかという問題です。この点については、固定の拒否の申出に関する主体は誰か、著作権の制限を受忍すべき者は誰かという観点から考えると、ネットワーク系の制度的収集においては、発行者のみならず著作者も納入義務が課される対象として考慮しつつ、制度を組み立てなければならないとされました。
 以上の補足説明も踏まえて、小委員会の調査審議経過報告を御検討くださいますようお願いいたします。
会長:  ありがとうございました。今の報告・説明からもお分かりのように、難しい問題が多く、小委員会においても、まだ明確な結論が得られていない点があります。国・地方公共団体等のネットワーク系については、概ね方向が定まりつつあるようですが、私人のものにつきましては、まだまだ検討を必要とする問題があるようです。しかし、私人のネットワーク系についても、ここでは制度の一つの案が示されております。これは、館の任務のために必要な収集の範囲、言論の萎縮の回避、あるいは新しい技術の利用によるコスト低減などを考慮した上での案であると考えてよいと思います。それでは、小委員会の調査審議経過報告とそれに続く事務局からの補足説明につきまして、質問等がある委員・専門委員の方は、発言をお願いします。
委員:  資料4の18頁の下から3行目について確認させてください。前小委員会では、収集範囲を学術的な情報に限定して収集するという方向性が示されたとありますが、学術的な情報の中には、言論の萎縮のおそれや人格権の侵害等のおそれがあるものはないと考えてよいのですか。
事務局:  御質問の趣旨は、収集範囲を学術的な情報に限定すれば、言論の萎縮等のおそれを回避し得るのかということと理解してお答えいたします。小委員会の検討では、収集範囲を学術的な情報に限定することが法的に困難であるとされましたので、収集範囲の限定により言論の萎縮等のおそれを回避することはできないということになると考えられます。
委員:  収集範囲の限定だけでは難しいということですか。
事務局:  収集範囲を限定すること自体が難しいということです。難しいという点では、そのとおりです。
委員:  資料4の20頁に、コストや時間・手間を考慮すると、法制度による収集と制度によらない契約による収集とさほど異ならないのではないかとの意見があったとありますが、この点をもう少し具体的に説明してください。資料4にある「制度の実施に先立って各方面に理解と協力を得るという意味でのコスト」、「手続を踏まえて運用することの手間と時間」とは、何を指しているのですか。
事務局:  法制化を行う場合には、法律を制定しただけでは、その実施・運用はなかなかうまくいきません。各方面・関係機関・団体等の理解と協力を得ることが不可欠でございます。収集範囲を限定しない場合には、国民全体に義務を課するということになりますので、国民への周知を行い、その理解・協力を得なければなりません。そのためには、やはり相当のコストを要するということです。
委員:  国民の権利・義務に関わる立法を行う場合、政府部内では、現在、パブリック・コメントの手続を経ることとされており、その制度を通じて関係者への周知が行われます。立法府にはそのような制度はないのですか。そのような制度を考慮しても、相当なコストを要するということでしょうか。
事務局:  パブリック・コメントにつきましては、残念ながら立法府にはそういった制度はないようでございます。したがいまして、出版物の収集に係る義務が課されることについては、国民に対し、関係機関・団体、マスコミ等を通じて広く周知していかなければなりません。ネットワーク系の場合には、従来の出版物と異なり、何をもって関係機関・団体というのか明確でないという問題もあります。以上の点からみて、法制度導入に伴い、それを周知し、必要な理解・協力を得るためには、かなりのコストを要することになると考えられます。
委員:  契約による収集の場合にも相当のコストを要するのですか。現在、館では、ネットワーク系について、契約による収集を行っているときいていますが、その経験からみて、どのように考えられますか。
事務局:  館において行っているネットワーク系の契約に基づく収集実験は、WARP[Web Archiving Project:インターネット資源選択的蓄積実験事業]と呼ばれているものでございます。これは、個別に契約を行って収集しておりますので、それに伴うコストは少なくありません。したがって、収集できる範囲にも限界がございます。その一方で、法制度に基づき網羅的な収集を行うことになりますと、収集範囲を広げることは可能となりますが、それに伴う問題点を解消するために様々な検討を行う必要が生じるということになります。
委員:  契約ではあまり収集できないのですか。
事務局:  WARPでの経験から、契約による収集には限界があると考えているところです。こうしたことも踏まえまして、本小委員会においては、契約ではなく法制度に基づく収集について御検討いただいている次第でございます。
委員:  契約の締結に際して定型的な約款等を用いるとか、検討する余地はないのですか。
事務局:  もちろん、定型的約款を作成することは可能ですが、それを用いても契約により収集できる範囲には限界があるということです。
専門委員:  昨年専門委員をお引き受けしてから、これまで1年余り、検討に参加してまいりましたが、この1年ほどの間だけでも、ネットワーク系をめぐる状況には大きな変化がありまして、更に検討を要すると考えられる問題が現れてきていますので、いくつか指摘させていただきます。
 第1点目といたしまして、先日のワシントン・ポスト紙においても日本でブログが大流行していると報じられておりましたが、ネットワーク上に公表されるブログの急増が挙げられます。ブログは、著作権法の観点からみて、複合的な著作物とでもいうべきもので、誰がどのような権利を持っているのかを判断することが困難です。そのため、ブログを含むネットワーク系の収集に際して、著作権等の権利処理をしようとしても、実際には難しいということになるおそれがあります。複合的な権利を含むコンテンツは、ブログに限らず急激に増大しておりますが、関係するそれぞれの権利ごとにきちんと権利処理を行うことは容易ではありません。複数の許諾・補償の仕組みを組み合わせるなど、実現可能で妥当な方法を検討しておく必要があります。
 第2点目といたしまして、流通手段の問題がございます。これまでは、ピア・トゥー・ピア(P2P)といえば違法なものと考えられてきましたが、最近、適法な流通の一手段としてビジネス等で活用する動きが出てまいりました。遠くない将来、様々なP2Pを通じたコンテンツの流通が合法的に行われる状況になるのではないかと考えられます。そうなれば、出版物がP2Pを通じて流通するようになる可能性は高いでしょう。これまでは、ウェブ上の出版物についてしか議論しておりませんが、P2Pを通じて流通する出版物の取扱いについても検討しておく必要があります。さらに、現在のところ、P2Pとウェブとで相互のコンテンツが行き交う状態にはありませんが、将来的には、両者が入り混じるようになることも考えられます。仮にそうなれば、ロボット収集を行う際、館のロボットがP2Pを通じて公表されていないファイルを複製してしまうこともあり得ます。こうした問題への対応も考えなくてはならなくなるかもしれません。
 第3点目といたしまして、DRM(デジタル著作権管理システム)や自動的課金の問題があります。許諾を受けた者のみが複製したデジタル著作物を利用できるようにコンテンツが暗号化されていたり、不正な複製を行った者を追跡するシステムが稼動していたりする新しい形態のサイトが増えています。暗号化されたコンテンツを収集しても、そのままでは利用できませんから、コンテンツを利用するために暗号鍵の提出を求めることができるのか等を議論する必要が生じるかもしれません。また、追跡システムの稼動しているサイトから館がロボット収集を行うと追跡の対象になってしまうので、この場合についても、どうするのかを考えておく必要があります。さらに、コンテンツを複製すると自動的に課金されてしまうサイトも現れております。自動的に課金されるとなると、収集・利用に対する補償との関係をどう考えるのか、予算的に対応できるのかといった問題が生じます。こうしたコンテンツを収集の対象とするのか、収集対象としないならば、どのように収集範囲を定義づけるのかなどの理論的な検討が必要と考えられます。
 以上の3点がこの1年の間に浮上してきた問題です。将来的には、新たにワーキング・グループを立ち上げるなど、検討の場を設けていただきたいと考えています。
会長:  ありがとうございました。新しい問題が出てきているということです。他に意見はございませんか。
専門委員:  新しく生じてきた問題として、ただいまの3点の御指摘のほかに、データベースの権利の問題を挙げておきたいと思います。データベースの著作物については、著作権法の規定により、既に保護が図られています。しかし、最近では、著作物性の有無にかかわらず、いわゆる額に汗したデータベース、つまり、データの収集等のために一定の投資等のコストを要したデータベースについても何らかの法的保護を与えようという動きが出てきています。既に、EU指令では認められていますし、アメリカでも連邦議会下院に法案が提出されています。我が国では、文化庁、経済産業省において検討が進められており、著作権法による保護を探るだけでなく、不正競争防止法の改正により対応してはどうかという議論もあるようです。こうした流れを踏まえ、これまで著作権法による保護がなかったものも保護するという新たな法制度を視野に入れて議論する必要があります。
会長:  多くの問題を指摘していただきました。事務局として、指摘された問題を小委員会で検討する予定はありますか。
事務局:  小委員会はあと2回開催される予定ですが、2回とも既に調査審議内容は決まっております。その中の議論の進み方等によって日程に組み入れられるかどうか検討してまいりたいとは思いますが、指摘された問題はいずれも館のみでは対応困難な大きな問題であり、日程的にも厳しい状態なので、確約はできかねます。
会長:  他の省庁でも、これらの問題について検討を進めているところがあるかもしれません。そうした場合には、当該官庁と連携することなども考えられます。他に意見がございますか。
委員:  収集について範囲と方法という二つの観点から検討を加えられたわけですが、収集範囲について質問します。収集範囲を限定することにより、言論の萎縮のおそれを回避することは、どうしても困難ということですか。例えば、収集範囲を学術的な情報に限定した上で、事前公告と固定拒否の申出を受け付けるというような仕組みは考えられないのですか。
事務局:  まず、学術的な情報とそうでないものとの区別が難しい点があげられます。また、国会議員の職務の遂行に資するという館の任務、目的から考えますと、国会における審議に必要な情報というのは学術的な情報に限られませんから、そのような収集範囲の限定を法的に説明することが困難です。したがって、収集範囲を限定するのは難しいという結論に至りました。
委員:  事務局の説明は理解できます。しかし、学術的な情報については義務を課すことにより収集して、それ以外の情報は契約により収集するという案を考える余地は全くないのでしょうか。
会長:  本日は、問題提起にとどめるということでいかがでしょうか。他の意見はありますか。
専門委員:  最近の新たな動向に関連して、もう1点申し上げておきたいことがあります。電子ブックについてですが、最近、紙媒体の図書と比べてもほぼ遜色ない製品が出てきました。こうした電子ブックの配信は、基本的にインターネットを通じて行われています。将来的に、紙媒体では発行されず、電子ブックの形態のみで発行され、インターネット経由で配信される出版物が増える可能性があります。その場合において、ネットワーク系については、固定を拒否できるということになっていると、出版社の中から固定拒否の申出を行う者が現れるかもしれません。そうすると、これまで紙媒体の出版物として納入されていた図書と同等の内容を持つ出版物であるにもかかわらず、発行形態が電子ブックとなったために、納入されないという事態が起こり得ます。そうなると、場合によっては、館の役割や使命を果たすことが難しくなることも考えられます。私の理解するところでは、ネットワーク系の収集に係る今回の諮問の対象となっているのは、ネットワーク系の出版物であって、ネットワークに流通する情報すべてではないと思います。出版物とは、当然固定され流通することを前提としており、一過性のものではないと考えられます。学術情報として電子ジャーナルが想定されていたのも、そうした理解があったからではないかと思います。こうした出版物であれば、ネットワーク系であっても、紙媒体の図書等と取扱いを異にする理由はないのではないでしょうか。個人的には、納本制度の枠内で収集対象とすることも可能かもしれないとも思います。電子ブックのような出版物を館が制度に基づき収集できないというのは妥当でないと思います。こうした観点から問題を整理し直し、ネットワーク系の「出版物」の定義・範囲を確定した上で議論した方が実り多い結果が得られるのではないでしょうか。
委員:  45頁の「表現の自由に配慮したネットワーク系電子出版物の収集方法」の図について、行政法的な観点から質問があります。この図に示されたような収集の仕組みを検討されたとのことですが、事前公告については、どのような方法で行うことを想定していますか。一般の国民が誰でも当該の公告にアクセス可能となるような方法を採ることができるのですか。
事務局:  まず官報公示を考えておりますが、実際には一般の国民が官報をいつも見ているとはあまり考えられません。まだ考え方が固まっているわけではありませんが、館のホームページへの掲載など複数の方法を組み合わせて周知に努めることになると考えられます。
委員:  これは、国民の権利の制約につながることですから、義務を課するためには、事前公告が相手方に到達している必要があります。したがって、ネットワーク系に関与する可能性のある人ならばすべて事前公告を見ていることが固定の義務を課する際の前提となります。収集範囲を限定しないとすれば、対象は、すべての国民ということになるでしょう。ですから、事前公告を国民すべてが見られないとなると、その公告は、義務を課される相手方に到達していないということになります。問題となっているのは、財産的権利ではなく人格的権利なので、事前公告が実際に国民の知るところとなっていなければ、形の上で公告を行っていたとしても、所定の手続は踏んだのだから知らない方に責任があるといってよいかどうかは問題ですし、また、固定拒否の申出ができる期間を限定して、その経過後は申出を受け付けないということは、困難ではないかと考えられます。ネットワーク系については、いったんネットワーク上で公開されたのだから、不特定多数の目に触れることは当然に発行者の予想するところであるとはいえるかもしれませんが、どのように利用しても構わないとまではいえないと考えられます。国が固定して保存することには抵抗がある者もいるかもしれません。公告を関係者すべてが見ているといえないとすると、固定拒否の申出は期間の限定なく受け付けることを検討しなければならないかもしれません。少し異なる案としては、消去権、つまり、固定されたネットワーク系を消去する権利を認めた上で、この権利が一定の除斥期間の経過により消滅するという仕組みも考えられなくはありません。しかし、この場合でも、精神的・人格的権利について、除斥期間を設け、期間が経過したから、当然に消滅するといってよいか、十分な検討が必要です。確かに、行政法においては、一定の期間内に必要な手続等が行われなければ何らかの処分の対象となるというような手続は一般的ですが、その場合に対象となっている権利はほとんどが財産的権利です。人格的権利が問題となっているときに、一般的な手続で十分といえるかどうか、慎重に判断しなければなりません。
専門委員:  この図に関連して、申し上げたいことがあります。事前公告を行うに際して、図に示された手続の流れを官報等に掲載するとなると、通常ならば文章のみによる記述となると思います。しかし、一般人にとって、文章のみからこの図のような流れを読み取ることは難しい作業であり、理解できる人は少ないでしょう。知らせ方にも工夫が必要です。国民の権利義務に関することですから、周知という点には気を配っていただきたいと思います。できれば、国民に対する制度についての“education”という観点から、このような図を掲載するなど、分かりやすい説明をお願いします。
会長:  多くの意見をいただきました。小委員会の審議経過報告を行っていただいた委員に申し上げます。こうした意見について、小委員会においてよろしく御検討ください。
委員:  これまでの意見について会長から小委員会での検討のお話がありましたので、小委員長に代わって報告した者として、ここで私からも一言述べさせていただきます。館における資料収集に係る制度について議論すると、どうしても現行納本制度の枠にとらわれた話になってしまう気がしております。しかし、ネットワーク系については、昨年3月の審議会において納本制度に組み入れないということになったので、従来の出版物の延長線上で収集を考えるのではなく、納本制度とは全く別の枠組みを前提として、我が国においてウェブアーカイビングを適法に行うためにはどうしたらよいかという観点から検討を進めた方がよいのではないでしょうか。紙媒体の出版物がどんどんウェブ上へ移行しています。速やかに何らかの収集の手立てを講じないと、これらのウェブ上の出版物は後に残らなくなってしまいます。現在、政府がe-Japan計画を推進しつつある中、ウェブ情報のアーカイビングのような事業には、予算も認められやすいのではないでしょうか。小委員会はあと2回あるということで、その中でできる限りの議論はしたいと思います。
会長:  2年前の審議会で、ウェブアーカイビングの可能性が議論されたことがありました。委員は、積極的な意見であったように思いますが、後退されたのですか。
委員:  後退してはいないつもりです。
会長:  様々な意見が出ましたので、今後、小委員会で検討していただくようにお願いします。事務局も小委員会における検討を補佐してください。これらの意見については、今後の小委員会の検討にまつということで保留いたしますが、小委員会の審議経過報告については、審議会として承りました。
事務局:  一言申し上げます。制度を創設するに当たっては、その時々の状況の中で現実に実現可能なものでなければなりません。ネットワーク系をめぐる社会的状況や技術は、今後、大きく変化することが予想されます。そのため、実施方法の具体的な細部まで答申に盛り込んでいただくことはなかなか難しいかと思いますが、ネットワーク系の収集に係る制度を創設するためにはどうしたらよいのかという基本的な考え方をお示しいただければと考えております。
会長:  現実に実施可能な制度を定めるための基本的な考え方、条件をまとめることができれば、諮問に対する審議会としてのお答えになるのではないかと思います。技術やネットワーク系をめぐる社会各方面の状況などが大きく揺れ動いている現時点では、そのようなお答えの仕方でよしとしなければならないでしょう。それでは、本日いただいた意見等を踏まえて、小委員会として残り2回の審議をお願いしたいと思います。
5 代償金部会における調査審議について(案)
会長:  それでは、会次第の5に入ります。昨年10月の第9回審議会におきまして、小売価各の表示のない図書の代償金に関する代償金部会の報告があり、私のほうから、この種の審議について簡便な方法を考えるよう事務局にお願いしました。事務局で案を作成し、まず部会の了承を得た後、これを審議会として了承することになっていました。それでは、事務局作成の合理化案について説明をお願いします。
事務局: 〔資料10に基づいて説明。
 合理化案として、(1)個別代償金額決定に関する諮問及び代償金部会への付託は、納本制度審議会を開催しないで行うことができること、(2)(1)の事項に関する調査審議のための代償金部会は、原則として、納本制度審議会と同日に開催することが示された。
 この合理化案を実施するにあたっては、関係法規(納本制度審議会規程、国立国会図書館法第二十五条の規定により納入する出版物の代償金額に関する件及び納本制度審議会議事運営規則)の改正は必要ないと認められる。
 なお、現時点では、持回り審議(文書による審議)のための法規(納本制度審議会規程)の改正は想定せず、将来の検討課題とする。他の審議会等の例をみる限り、持回り審議の要件としては、「やむを得ない理由により会議開催の余裕がないこと」又は「緊急性」が必要とされるが、今回の合理化の目的は緊急案件への対応ではない。
 代償金部会所属委員には、予め本案を示し、了承をいただいている。〕
会長:  代償金部会の了承はいただいているということでよろしいですね。ただいまの説明について、何か意見・質問等はございますか。特に意見等がなければ、この案のとおり、この種の案件の審議を行っていただくということでよろしいでしょうか。
全委員:  異議なし。
会長:  それでは、本案は了承されました。よろしくお願いいたします。
 
6 今後の日程(案)について
会長:  会次第の6、今後の日程(案)について、事務局から説明をお願いします。
事務局: 〔資料11に基づいて説明。
 審議会・小委員会・代償金部会とも回数、時期について変更はない。第12回審議会と第13回審議会については、場合によっては1回にまとめられる可能性がある。以前に示した日程からの変更点は、以前は平成17年度以降の欄を平成17年度と平成18年度に分けて日程を細かく記載していたのを、本案では、答申受領後の館における法制化作業等の日程に柔軟性を持たせるため、「平成17年度以降」として一つにまとめて表記したことである。〕
会長:  委員の皆さま、今の日程案でいかがでしょうか。変更の理由は、答申後の館における法制化作業の日程に柔軟性を持たせるということのようです。案をお受けしてよろしいですか。
全委員:  異議なし。
会長:  異議がないようですので、日程案を審議会として了承いたしました。それでは、今後、このスケジュールにしたがって調査審議を進めてまいります。よろしくお願いいたします。
 本日は、せっかくお集まりいただいておりますので、この機会に発言されることがあればお願いしたいと思いますが、何かございますでしょうか。よろしゅうございますか。なければ、会次第7に移りたいと思います。
 
(1)平成15年度出版物納入状況、平成16年代償金予算及び平成15年度代償金支出実績
会長:  会次第の7として、事務局から2件報告があるそうです。まず、第1の、平成15年度出版物納入状況等について報告をお願いします。
事務局:  それでは、出版物納入実績及び代償金の予算と支出実績について、御報告いたします。
 まず、納入実績でございますが、資料12を御覧ください。図書、逐次刊行物及びパッケージ系電子出版物について、納入冊数を示しております。
 平成15年度の冊数を平成14年度と比較しますと、図書では民間出版物・官庁出版物とも、若干の増加となっております。逐次刊行物では、民間出版は、約4.6%の減少、官庁出版については約12.6%の増加となっております。パッケージ系電子出版物につきましては、民間出版のものが14年度から32%の増加となっております。
 次に、代償金予算及び支出実績について御報告いたします。資料13をご覧ください。平成16年度予算は、昨年度と同額の3億9千万円余でございます。ちなみに平成13年度以来同額となっております。平成15年度の支出実績は、3億9,024万8,997円でございまして、支出割合の高い資料についてみますと、パッケージ系電子出版物が1億7千6百万円余で約45%、図書が1億5千6百万円余で全体の約40%を占めております。
 平成15年度の出版物納入状況等についての御報告は以上でございます。
会長:  ただいまの報告に関して、何か質問等はありますか。
委員:  非図書とは何を指しているのですか。
事務局:  館による出版物の分類における区分の一つです。例えば、地図、マイクロフィッシュが含まれます。中には、トランプのカードなどもあります。
委員:  資料13の平成15年度代償金交付内訳のグラフですが、合計が100%ちょうどになりません。
事務局:  四捨五入等によるものだと思いますが、確認いたします。 
委員:  音楽用CDなどは、どこに入るのですか。
事務局:  以前からの経緯で、音楽用CDなどの音盤については、統計上、非図書として分類しております。
会長:  よろしいでしょうか。他に質問がなければ、次に移りたいと思います。
 
(2)その他
会長:  次に、2番目の「その他」について報告をお願いいたします。
事務局:  平成16年2月13日の第10回納本制度審議会におきまして、独立行政法人等の出版物の納入義務の在り方について答申をいただきました。ただいま、その答申に基づきまして、国立国会図書館法の改正作業を行っておりまして、その進捗状況について御報告申し上げます。
 国立国会図書館法の改正につきましては、議員立法として、議院運営委員会から提出していただきますので、現在、衆議院法制局に改正案の審査をお願いしている段階でございます。また、併せて、制度の円滑な実施・運用のため、独立行政法人等や所管省庁などの関係機関に対する説明を行っているところでございます。これまでに説明を終えた機関からは理解が得られたものと考えております。当初、今国会における法案提出・成立を目指すということで、委員の方々には大変迅速に、かつ、しっかりとした調査審議・答申をしていただきましたが、準備の状況、国会の審議状況などから、今国会での法案提出・成立は困難となりました。貴重な答申を受けて、できる限り早急に法制化を図るため、鋭意努力してまいる所存でございます。
会長:  ただいまの報告に関して、何か質問等はございますか。
委員:  議員立法の場合には、例えば、法案が衆議院を通過していても参議院で可決される前に会期が終了してしまえば、政府提出法案と同様に廃案となってしまうのですか。
事務局:  そのとおりです。継続審議の手続を経なければ廃案ということになります。
会長:  それでは、事務局からの報告については、承りました。
 
8 閉会
会長:  以上をもちまして、第11回納本制度審議会の会次第は、すべて終了いたしました。本日は、これで閉会といたします。長時間熱心に御審議いただき、ありがとうございました。
(閉会)

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