ホーム > 資料の収集 > 科学技術情報整備審議会 > 議事録 > 第8回科学技術情報整備審議会議事録

第8回科学技術情報整備審議会議事録

日時:
平成28年7月12日(火)午後2時から午後4時まで
場所:
国立国会図書館東京本館 総務課第一会議室
出席者:
科学技術情報整備審議会委員 9名(欠席3名)
西尾章治郎委員長、竹内比呂也委員長代理、倉田敬子委員、児玉敏雄委員、佐藤義則委員、戸山芳昭委員、濵口道成委員、藤垣裕子委員、村山泰啓委員
(石田徹委員、板倉康洋委員、喜連川優委員は欠席。)
館側出席者 15名
館長、副館長、(幹事)総務部長、調査及び立法考査局長、収集書誌部長、利用者サービス部長、電子情報部長、関西館長、国際子ども図書館長、(陪席)総務部企画課長、総務部会計課長、収集書誌部主任司書、利用者サービス部副部長サービス企画課長事務取扱、(事務局)利用者サービス部科学技術・経済課長、電子情報部副部長電子情報企画課長事務取扱
会議次第:
  1. 開会
  2. 館長の挨拶
  3. 新委員の紹介
  4. 新幹事の紹介
  5. 委員長の選任
  6. 委員長代理の指名
  7. 報告及び懇談
    • (1)第四期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画の策定
    • (2)国のデジタルアーカイブ連携における国立国会図書館の果たす役割
    • (3)懇談
  8. 閉会
配付資料:
(参考資料) (机上配付 参考資料)
議事録:
1. 開会
石渡利用者サービス部長:
ただ今から第8回科学技術情報整備審議会を開催します。
この度は、委員就任を御快諾くださいまして誠にありがとうございました。また、御多忙なところ、当審議会に御出席くださいましてありがとうございます。
本日の審議会ですが、現在、委員長が空席となっておりますので、委員長選任までの間、暫定的に幹事である私、石渡が進行役を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。
本日は、日本商工会議所専務理事の石田徹委員、文部科学省大臣官房審議官の板倉康洋委員、国立情報学研究所長の喜連川優委員が所用のため欠席されています。
お手元の会議次第に従って会を進めさせていただきます。
開会に当たり、館長の羽入が御挨拶申し上げます。
2. 館長の挨拶
羽入館長:
皆様こんにちは。お暑い中、御参集くださいまして誠にありがとうございます。私は4月に館長に着任したばかりですが、どうか忌憚のない御意見を賜りますようお願い申し上げます。
先ほど利用者サービス部長が御礼を申し上げましたように、委員の皆様には大変御多忙な中、本審議会委員をお引き受けいただきまして、誠にありがとうございます。また、本日は、大変御多用中のところ、本審議会に御出席くださいまして、恐縮に存じます。
本審議会では、昨年と一昨年の2年間にわたりまして、当館の第四期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画(以下「四期計画」)策定のための提言をまとめていただきました。本日は、この内容を踏まえ、それを実行に移すべく私どもが昨年度末に作成した基本計画を御紹介しまして、皆様の御意見・御助言を賜りたいと思っております。この提言には「イノベーションを支える『知識インフラ』の深化のための提言」というタイトルが付いていますが、大変意義深く、当館の取り組むべき事柄について要点をまとめていただいたことを感謝しております。
この5月には、国の知的財産戦略本部において、「知的財産推進計画2016」が策定されました。この中に「国立国会図書館サーチ」の記述がございます。これについても後ほど御説明しますので、当館がなすべきことについて御意見をいただけますと大変ありがたく思います。また、当館が国のデジタルアーカイブ連携の中でどのような役割を果たすべきか、果たすことができるのかということについても、御意見を賜りたいと思っています。
4月に着任して以来、当館が立法府の組織であるということを何かにつけて強く感じることがあります。必ずしも全てが可能なわけではないとしても、当館のなすべき役割は何か、その辺りのお知恵もいただければ大変ありがたく思います。皆様の忌憚のない御意見を賜りますよう、お願い申し上げまして、挨拶とさせていただきます。本日はどうぞよろしくお願いします。
3. 新委員の紹介
石渡利用者サービス部長:
それでは、会議次第の「3. 新委員の紹介」に移ります。委員名簿を資料1として配付しておりますので御覧ください。
今期から、石田徹日本商工会議所専務理事、板倉康洋文部科学省大臣官房審議官、西尾章治郎大阪大学総長、これまで専門委員をお願いしていた村山泰啓情報通信研究機構統合ビッグデータ研究センター研究統括が新たに委員に御就任くださっています。御新任の各委員に、一言ずつお言葉を頂戴したいと思います。
西尾委員:
大阪大学の西尾です。よろしくお願いします。「第5期科学技術基本計画」が策定されて、今年度から始まっています。その中では超スマート社会やSociety5.0ということが言われていますが、そのようなイノベーションを支える「知識インフラ」の深化ということがますます重要となってきているのではないかと思います。今後どう推進していくかという部分を本審議会で議論させていただきたいと思います。
村山委員:
情報通信研究機構の村山です。一昨年度から専門委員をさせていただいて、議論の一端を拝見しておりました。今回は委員として参画させていただくということで、改めて御礼申し上げます。私自身は内閣府のオープンサイエンスに関する検討会のメンバーとして、国際的に進んでいる研究データや専門的なデータの共有、利用、オープン化などに関する議論を国の中で進めていく立場であったわけですが、日本が図書館というものをどう捉えていくかということが正に国際的にも重要な視点であろうと感じておりました。こうした議論に参加させていただけるのは非常にありがたいと思っております。国際的には、資源や人材が枯渇していく中で既に、文献と研究データを等しく人類の知的財産として、どうやって活用していくかという議論がなされています。そうした時に、少しでもお役に立てればと思います。よろしくお願いします。
4. 新幹事の紹介
石渡利用者サービス部長:
引き続いて、会議次第の「4. 新幹事の紹介」に移ります。委員の活動を補佐する幹事を御紹介します。幹事には当館の部局長等が任命されています。
当館内の人事異動に伴い、幹事に異動がありましたので御報告します。本吉国際子ども図書館長が前回の審議会以降に新たに幹事に任命されました。
本日は、幹事のほかに、羽入館長、網野副館長、審議会事務局の職員が同席しています。どうぞよろしくお願いします。
5. 委員長の選任
石渡利用者サービス部長:
それでは会議次第の「5. 委員長の選任」に移ります。前回まで委員長を務めてくださいました安西祐一郎先生が退任されましたので、お手元の参考資料1「科学技術情報整備審議会規則」第2条第5項の規定に従って、委員長を委員の皆様の互選により選任していただきたいと思います。どなたか御推薦いただけないでしょうか。
竹内委員:
せん越ではございますが、御経験・御見識の点から西尾委員が最もふさわしいと考えますので、御推薦申し上げます。
石渡利用者サービス部長:
ただ今、竹内委員から西尾委員を委員長にと御推薦いただきました。委員の皆様の御異議がないようでしたら、西尾委員に委員長をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
全員:
異議なし。
石渡利用者サービス部長:
当審議会の委員長は西尾委員にお願いしたいと思います。西尾委員長には委員長席に移動していただき、これ以降の議事を進めていただきます。西尾委員長よろしくお願いします。
西尾委員長:
ただ今委員長に御指名いただきました。審議会の委員になったばかりの者が委員長を務めさせていただくのは誠にせん越ではありますが、文部科学省の委員会等においては羽入館長にいつも助けていただいてばかりですので、こうした機会に少しでもお役に立てればと思います。また、委員の皆様と審議会を是非有効なものとすることができればと思います。何とぞ御協力のほどよろしくお願いします。
6. 委員長代理の指名
西尾委員長:
それでは、会議次第の「6.委員長代理の指名」に移ります。審議会規則第2条第7項の規定に従い、委員長が不在の場合に委員長に代わって審議会を運営するために、私としましては竹内委員に委員長代理をお願いしたいと思います。御異議ありませんか。
全員:
異議なし。
西尾委員長:
委員長代理は竹内委員に決定しました。
竹内委員長代理:
よろしくお願いします。
7. 報告及び懇談
西尾委員長:
それでは、会議次第の「7. 報告及び懇談」に移ります。事務局から報告をお願いします。
(1)第四期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画の策定
竹内科学技術・経済課長:
(資料2-1、資料2-2及び資料3に基づき説明)
(2)国のデジタルアーカイブ連携における国立国会図書館の果たす役割
川鍋電子情報部副部長電子情報企画課長事務取扱:
(資料4に基づき説明)
西尾委員長:
ありがとうございました。ただ今の2件の報告に対する内容的な質問等ありましたら、懇談の前にいただければと思います。いかがでしょうか。
倉田委員:
四期計画に関しては既に何度か説明していただいていますし、審議もしてきたのである程度分かるのですが、「国のデジタルアーカイブ連携における国立国会図書館の果たす役割」に関して分からない点があります。資料の最初にある「デジタルデータ(メタデータ、サムネイル/プレビュー)の利用条件等」について、メタデータ自体のオープン化については既にいろいろと言われてきていますが、サムネイル/プレビューの利用条件等の課題というのがよく分かりません。これはサムネイルを表示するようにしましょうという意味ですか。
田中
電子情報部長:
条件を明示したうえで、表示することができることを目指すという意味です。
倉田委員:
ここで言っているサムネイルはテキストベースのものですか、それとも書籍の表紙の写真なども含むのですか。
田中
電子情報部長:
書籍であれば書影のようなものです。また、博物館・美術館を含めていますので、コンテンツそのものを表すアイコンのようなものを想定しています。
倉田委員:
例えば博物館資料の場合、デジタルアーカイブの中に写真資料もありますが、その写真資料自体という意味ではないということですか。
田中
電子情報部長:
写真資料そのものには、簡単に利活用できない部分があります。ここでは、権利上自由に使える範囲にある、検索で表示するための小さく精度の粗いアイコンなどを想定しています。
倉田委員:
中身を類推できるものということですね。それを使うには現在はかなり難しい状況なのでしょうか。
田中
電子情報部長:
分野にもよりますが、博物館・美術館の世界では依然として難しく、まだそれを共用しようという合意には至っていません。
倉田委員:
Europeanaにせよ、アメリカのDPLA(Digital Public Library of America)にせよ、制約はあるとしても、少なくともライセンス表示は明記しようということで合意がなされ進んでいると思うのですが、その辺りはいかがでしょうか。
田中
電子情報部長:
実務者協議会が目指している方向も、まずは関係者間で了解し得る範囲のガイドラインを作れないかというものです。それが一つの目標です。
倉田委員:
基本的にはCC0を目指すのでしょうか。
田中
電子情報部長:
必ずしもCC0だけではなく、条件を明示するCC-BYも含めています。
児玉委員:
四期計画を実行するための、予算や人員といったリソースは大丈夫なのですか。
田中
電子情報部長:
既に予算化されて実施している事業を更に拡充するという部分もありますが、平成29年度に新たに予算要求して実現していく部分も含まれています。
児玉委員:
予算に合った計画にしなければいけないという側面もあります。
田中
電子情報部長:
御指摘のとおりです。既存の事業の合理化を徹底した上で、新規に要求していく部分は必要ですので、見直しも含めて来年度の予算要求に向けた精査をしているところです。5か年の計画の中で、これから順次、優先順位を付けて実現していきたいと考えています。
西尾委員長:
四期計画の取組を全部実行しようとすると膨大な予算が必要です。この審議会としては「ここからまず優先的にやるべきではないか」ということを国立国会図書館に進言するべきでしょう。
佐藤委員:
「国のデジタルアーカイブ連携における国立国会図書館の果たす役割」の最後に出てくるジャパンサーチ(仮称)(以下「ジャパンサーチ」)というのはおそらく国立国会図書館が主体となって発展させるものだと思うのですが、先ほど紹介のあったガイドラインは、誰が主体となって、どういう枠組みの中で整備しようと考えているのですか。
田中
電子情報部長:
ジャパンサーチは必ずしも当館が単独で担える事業ではありません。国全体としての主体の形を作っていただいて、その中で、私どもがやってきた国立国会図書館サーチを国の統合ポータルへ発展させていただきたいと考えています。ガイドラインにつきましても、府省協議の中で策定するものですので、関係府省で策定していただき、当館はそれに協力したいと考えています。
西尾委員長:
府省庁間で協議する場は設定されていますか。
田中
電子情報部長:
デジタルアーカイブの連携に関する関係省庁等連絡会を内閣府の知財事務局が主催しており、総務省、経産省、文科省が参加しています。そこに私どもも参加しています。
西尾委員長:
それは年に何回くらい開かれるのですか。
田中
電子情報部長:
昨年の9月に発足して、現時点ではまだ2回しか開催されていませんが、この後数回開かれる予定です。
藤垣委員:
配布資料には「メタデータ」という言葉が何度も出てきます。42ページに例が出ていますが、「カフカ」というのは固有名詞ですからメタデータとは言わないと思うのですね。一次情報に対して違うレベルで何らかの集約をしてこそメタデータと言うわけです。「メタデータ」で何を指すかについては、この審議会で過去にも何度か議論しましたが、その整理は今どうなっているのでしょうか。
田中
電子情報部長:
ここで言う「メタデータ」は基本的には書誌情報に類するもので、コンテンツそのものを指し示し、かつ定義された項目に限定されています。本であれば書名、著者名、件名などを一定の形で標準化したデータがメタデータとなります。
藤垣委員:
本の本体が一次情報で、その書誌情報がメタデータということですね。分かりました。
竹内委員長代理:
ジャパンサーチに展開していくのは大変望ましいことだと思うのですが、先ほどの佐藤委員の御質問に対する回答と資料での記述の間にやや違和感を感じました。39ページの「日本型連携モデルの検討」の中に、アグリゲーター的機能やメタデータの集約に関する記載があり、最終的には国立国会図書館サーチに集約すると書かれています。これがジャパンサーチに展開していくのだろうと理解したのですが、そうすると先ほどの回答とややずれています。その辺りの議論の背景について御説明をお願いします。
田中
電子情報部長:
国立国会図書館サーチといろいろなアーカイブをつないでいくのが、アーカイブ連携の中心になります。しかし、そうやってできあがっていく大きな実体を当館が単独で担うということは決定していませんし、それが国全体として望ましいかどうかについては議論があるところです。どういう形で運営していくかという議論には留保した部分がありますが、それはそれとして集約は進めていきたいと考えています。
西尾委員長:
苦しい立場なのはよく分かります。
佐藤委員:
先ほど藤垣委員からメタデータに関する御質問がありましたが、この場合の「メタデータ」は単なる書名や著者名、あるいは発行元といったものだけではなく、デジタルコンテンツですから、猶予期間などの様々な入手条件を含めたメタデータが重要になってきます。したがって、例えば、書名や著者名などのメタデータについてはAPIで提供して連携することでよいのかもしれませんが、入手条件に関するメタデータについては集約しないと機能を果たさなくなる可能性があります。メタデータという言葉の定義がまだ曖昧であることが今後の展開を見えにくくしているので、整理した方がよいと思います。
西尾委員長:
先ほどの説明にあったレベルのことなのか、佐藤委員の御指摘のようにいわゆるシンタックスだけでなくセマンティクスまでを含むものなのか、何か御見解をいただける状況ですか。それとも今後詰めていくのですか。
田中
電子情報部長:
分野によってかなり状況が違います。配付資料に書いているような束ね役は、日本では図書館以外の分野ではほとんど成立していません。利活用のために必要なメタデータの標準化や分野を越えた摺り合わせも十分できていないのが現状です。ガイドラインでは、御指摘の点を意識して検討したいと思います。
西尾委員長:
メタデータの属性に何を設定するかということについても対象分野ごとに議論が必要かもしれません。そういう考えの下でメタデータを捉えているということを明確にメッセージとして出した方が、議論する際に混乱しないと思います。
竹内委員長代理の御質問に対しては、国立国会図書館が前面に出てどんどん進めてはどうかと、多くの委員が思っているのではないでしょうか。いろいろなステークホルダーとのバランスを考えながら調整を進めているのだろうと思いますが、国立国会図書館にリーダーシップを発揮してほしいと思っています。
濵口委員:
最近オープンサイエンスやオープンアクセスの問題が急速に展開していますが、特にオープンアクセスの対象となる分野やコンテンツはどれくらいのものを抱えているのでしょうか。また、それをどういうマネジメントで実現しているのでしょうか。膨大な量があるのではないかと思うのです。国立国会図書館が扱うのは研究誌だけでなく多様な分野のものになりますので、どこまでを含めてやっていくのかという基本構想についてもう少し聞かせてください。
竹内科学技術・経済課長:
現在電子的な形態で流通している雑誌等の学術コンテンツのうち、例えば、学協会誌は科学技術振興機構(以下「JST」)のJ-STAGEをプラットフォームにして発信されていますので、この部分については役割分担して、当館ではなくJSTで保存していただいています。このように、電子的な学術コンテンツについては、関係機関と分担して国全体として保存するという方針で進めています。オープンアクセス誌については、全てを当館で保存しているわけではありませんが、当館で保存していないものも含めて、利用者に提供する必要がありますので、リンクリゾルバという仕組みを使って、ナビゲーションを行っています。資料の23ページにありますように、国内外合わせておよそ5万タイトルのオープンアクセス誌にリンクリゾルバを使って案内しています。
西尾委員長:
オープンアクセスの場合、研究データの収集・保存・提供となると、大学・大学図書館・国立情報学研究所(以下「NII」)・JST・学協会・国立国会図書館の間で、他機関が持っているデータへナビゲートできるという以前に、そもそもそれぞれのデータをどこがどうやって責任をもって保存・提供していくのかについてきちんとすみ分けておかないと混乱が起きます。今後、関係機関が横の連携を取りながら、国として漏れが生じないようにする必要があります。この審議会としては、国立国会図書館に対して、どの部分に対応していくべきかというガイドライン的なものを示すことが大事だと思います。
濵口委員:
データのリポジトリをどう整理してオープンアクセス化していくかという問題についてはまだ混乱した状態ですので、是非国立国会図書館にイニシアチブをとってほしいと思います。それから、オープンアクセスにはグリーンOAとゴールドOAがありますが、戦略的にどちらをとっていくかについても議論するようお願いします。
戸山委員:
私も同意見です。前回、喜連川委員からも話がありましたが、これからビッグデータの解析などをやっていくことを考えると、入口を広げて何でも入れればよいというわけではなく、データの選別が重要になってきます。オープンにした場合に不適切なデータがたくさん入ると、違った結果を導いてしまうことがあるからです。そこをしっかりやる手段をとっておかなければいけません。
村山委員:
研究データについては一言で語り切れる状況ではないということは申し上げておきたいと思いますが、データリポジトリの問題について混乱しているというのはそのとおりです。海外で学術データ、特に公的研究資金による研究データ資産のリポジトリの整備が進んでしまうと、日本の研究者が作った研究データにも海外のサイトに行かなければアクセスできないという状況が生じ得ます。日本は戦略的にコンテンツ保存の資金は海外に頼るということなのか、それとも情報資産は日本が自らの資金で確保すべきなのか、困難な判断が求められます。各機関の戦略や横のつながりも重要で、議論していかなければいけません。しかしそこへ行く前段階として、メタデータの話も混乱しているという状況があります。研究データの場合は、書籍に比べて格段に不均一であり複雑となります。各分野にそれぞれの作法が存在し得ますし、そうでなければ動かない部分も出てきますので、ベストプラクティスを少しずつ積み重ねていく必要があり、米国やEUでは少しずつ進めているという状況であると理解しています。
質問ですが、科学技術情報やその他の知的コンテンツを検索する場合に、日本の中のコンテンツだけを最大限活用したとしてもおそらく限界があります。学術論文誌がほぼ海外にあることを考えても、海外の情報と日本の情報を有効に組み合わせて使ってこそ日本の向上が可能と思います。海外の検索システムにはEuropeanaを始めとしていろいろなものがありますが、ジャパンサーチはそういったものとの相互運用・相互利用、あるいは標準化について、お考えがあればお聞かせください。まずは日本として整備するのが先決であって、海外との接続は今後検討するようなお考えでしょうか。その辺りの筋書きや見通しについて聞かせてください。
田中
電子情報部長:
具体的な検討は残念ながらまだ十分になされていません。将来的にEuropeanaなどと接続するという議論を聞くことが時々ありますが、今回の動きの中ではまだ直接的に検討されていません。ただ、例えば、私どもは中国・韓国の国立図書館と連携して、CJKのプロジェクトとして、それぞれのポータルサイトを相互に接続することについて5年ほど検討を続けてきています。
村山委員:
具体的な海外との連携は今後ということですが、DOIを始めとした識別子に関しては基本的には国際標準に則る、あるいは相互接続できるような形で進められていると思います。国立国会図書館独自の識別子もありますが、そこのマッピングも視野に入れて議論されていたというように記憶しています。
田中
電子情報部長:
識別子については、国際的な相互利用を前提として、日本でもジャパンリンクセンターが進めています。
西尾委員長:
検索しようとしたときに海外に行ってからとなると、日本としてその分野におけるプレゼンスをどう示せばよいのでしょうか。そういうことが海外主導でどんどん決められるのは果たして国益上よいことなのでしょうか。提供されるコンテンツに関しても、例えば学術外交をしようとしたときに、研究データをどれだけ日本から発信しているのかということは重要視されるでしょう。そういう観点からすると、今は重要な局面で、ある種のターニングポイントになってくるのではないかと思います。先ほどからいろいろ出ている話がより加速度的に進むことを期待しているわけですが、その中で、児玉委員から御指摘があったように、予算が苦しい中でどうやっていくのかということについてトータルに考えなければいけない状況でしょう。
(3)懇談
西尾委員長:
まずは四期計画の中の取組に焦点を絞って懇談したいと思います。机上配付の参考資料について、事務局から説明をお願いします。
竹内科学技術・経済課長:
(机上配付の参考資料A、参考資料B及び参考資料Cについて説明)
西尾委員長:
ありがとうございました。この三つの参考資料は、今後の議論をする上で参考になればということで机上配付をお願いしました。
「知識インフラ」という言葉については、「第4期科学技術基本計画」について審議されていたときに、国立国会図書館の長尾元館長を中心として、私も参加していろいろ議論した経緯があります。そのときに、情報分野として「知識インフラ」という言葉を強く打ち出していこうということになりました。その時思っていたのは、研究者や大学関係者のみならず、納税者である国民の誰もが簡単にアクセスできて、国にある全てのアーカイブがネットワーク化されていて、ある種のキーワードを入力するとデータを全部横串に検索して、関連する情報を容易に知ることができるような社会を創っていくことが大事だということでした。「知識インフラ」にアクセスすれば、科学がどういう方向に進んでいて、それに対して国がどんな施策を考えているのかということまでを知ることができるような、国民の立場に立った「知識インフラ」を作っていくことが、今後、科学技術立国では重要なのではないかということです。「知識インフラ」の構築を「第4期科学技術基本計画」で打ち出そうといろいろなところでロビー活動をして、この言葉を計画の中に入れていただきました。
国立国会図書館の四期計画の中では、その「知識インフラ」を深化させるということを大きな柱としています。参考資料Aを見ると、メタデータの集約と提供の中で「知識インフラ」の理念が実現されていくように思われますので、この計画についていろいろと懇談ができればと思います。
倉田委員:
「知識インフラ」とは何かということがまだ具体的には見えてないという気がします。身近な例を挙げますと、インターネットが出てきて、Googleが出てきたというのは、やはり大きな転換点だったと思うのです。おそらくそれまでは一般の人が何か情報を探すということはほとんどなく、研究者や専門家が図書館に行って目録を引いて、時間をかけて探していました。そのプロセスの経験を持っているのが専門家であるという認識がありましたが、今はそうではなく、Googleに何か入れれば何かが必ず出てくるという世界になりました。しかしそれでは十分ではないということは専門家であれば誰でも分かっているわけです。ではGoogleに対抗できるような形で、図書等のこれまで私たちが重要視してきた情報と、ウェブサイトに載っている有象無象のものを関連付けた上で提供できるような「知識インフラ」に向かうには、具体的にどこから進むのがよいのでしょうか。今回の提言の内容は全部重要ではあるのですが優先順位を付けなければいけないとなると、コアになるのはやはりきちんとデジタル化して整理する部分ということでしょうか。しかし、もうそれで手一杯ですと言われてしまうとそれで終わってしまうのです。やはりできることならそこからもう一歩踏み出していただきたい。その時、ではどこに行くのかというと、例えば本日配付されている参考資料も数年したらおそらく探せなくなってしまうと思うのです。現在のようなメタデータが付けられているだけでは、その後の多様な利用に活用できないのが現状です。以前であれば、こういう灰色文献はどこかに埋もれて、受け取った委員の人しか持っていないということが珍しくありませんでした。しかし今は、インターネットにならこういうものが結構転がっているのです。しかも、国立国会図書館サーチでは出てこないのにGoogleだと出てきたりします。要するに、出版されたものだけではなく、インターネット上の資料について、学術情報に関連するものや、せめて国や政府、地方自治体の資料類に関してもう少し整理できないものかということは強く感じています。
西尾委員長:
倉田委員の御指摘は、インターネット上の情報を「知識インフラ」がどういう形で提供することが検索する側にとってより大きな意義を持つのかということ、そのことを踏まえて「知識インフラ」の整備について考えていく必要があるということだと思います。インターネットは20世紀から21世紀への技術上の最大の贈り物の一つと言ってよいと思いますが、それを我々のこういう活動の中でどう活かしていくのか、ということでしょう。
藤垣委員:
この懇談の冒頭に、西尾委員長から、国がどんな政策をしているかということを溜めておくのも「知識インフラ」であるというお話がありましたが、確か3年前にこの審議会でも、国でどういうことを議論してきたかのアーカイブを作ることについて議論したかと思います。実は、国会に限らず各種の審議会・委員会がやっていることについては、インターネット上で各種の議事録が公開されています。例えば、科学技術・学術審議会の議事録は文部科学省のホームページにあります。ただ、国の政策の全体像を見たいといったときに何らかの形で、メタデータによってリンクすることは可能なのだろうかという問いが、西尾委員長の問題提起と倉田委員の御指摘をつなげると浮かんでくるように思いました。
西尾委員長:
メタデータによっていろいろなものを上位のレベルで関連付けて、ある種のネットワークとして見せることができれば、検索する側により豊かな情報として提供することができるのではないかということですね。これができると「知識インフラ」としては意義が大きいのではないかと思います。抽象的で恐縮なのですが、国民の側に立って考えたときに、行政側でどういうことが行われているのかが立体的な形ではっきり分かるものが今後構築されると素晴らしいと思っています。
佐藤委員:
参考資料Aの図は国内で生産された学術情報を保存する枠組みだと思うのですが、先ほど村山委員から御指摘があったように、グローバルに流通している情報と国内の情報をどのように結びつけていくかという視点が抜け落ちがちです。具体的に言うと、識別子という観点では、ISNI(International Standard Name Identifier)が国際的に推進されています。その中身の一つはORCIDでして、これは学術論文の著者、研究者の識別子です。それからもう一つ、VIAF(Virtual International Authority Files)は各国の国立図書館が作ってきた著者名典拠ファイルを国際的に束ねて一つにしたものです。ORCIDとVIAFを更に上で束ねてISNIが作られているという構図で、アメリカの図書館関連のNPOであるOCLCがそれをホストしています。国立国会図書館がこれまで蓄積してきた大量の著者名典拠ファイルと、ORCIDあるいはISNIを今後どのように関係付けていくのかということは、この図を発展させるための大きな基盤になると考えます。しかしこの辺りについては、私も関わりました提言においても実はきちんと整理されていません。今後整理しないと、グローバルに流通する情報と国内の情報との接合に支障を来すのではないかと少し危惧しています。
西尾委員長:
この問題は、国立国会図書館だけでできるのかというよりも、国全体としてどう考えていくのかということになろうかと思うのですが、そういう方向性を出していくためには、どこでどうオーソライズして進めるのがよいのでしょうか。
濵口委員:
JSTもオープンサイエンス化を進めています。また、論文のリポジトリについてもオープン化の方向でいろいろ議論しているわけですが、あくまでもファンディングエージェンシーとしてカバーしている領域に留まっています。ここが現時点での限界だと思います。国内の学会誌についてはかなりしっかりカバーできていてオリジナルデータがあるのですが、国際的なジャーナルとどうリンクさせていくかについては方針が固まっていないのが現状です。アブストラクトを紹介する程度に留まっています。国際的な潮流の中にも出版社を中心として動いている流れとアメリカ政府中心の流れとがありまして、ここに戦略的にどう関わっていくのかが問題です。最終的なゴールは利用者の利便性とコストの低下にありますので、ある程度は方針が見えるのですが、きちんと議論するプラットフォームをどこで作るのかがまだ見えていない段階だと思います。
西尾委員長:
羽入館長は現時点ではどのようにお考えですか。
羽入館長:
プラットフォームを作るということは必要であろうと思いますが、当館は立法府に属していますので、こちらが何か指示をするという立場にはありません。ただ、実際にどこが動くかは別として、単にプラットフォームとして議論の場を提供するということではなく、国立国会図書館として絵を描くということは必要ではないかと考えています。とはいえ実際に動かなければ意味のないことですので、どこがどう実行に移していくかということは大きな問題です。それともう1点、当館の難しいところは、先ほどの皆様の御意見は理解できるのですが、こちらはデータの価値付けをする立場にはないということがあります。
村山委員:
私が研究データ同盟(Research Data Alliance)などの国際コンソーシアムに入って見ているのは、かつてインターネットエンジニアリングタスクフォース(Internet Engineering Task Force)でTCP/IPのやり方を決めてきたような緩い合意形成のプロセスです。国際科学会議(International Council for Science)も、18世紀、19世紀からブリュッセルやパリでアカデミー同士が合意形成の場を作ってやってきた歴史を持っています。どの国がイニシアチブをとっても喧嘩になりますので、欧米では全体の合意形成を苦しみながらやってきたのだなということをよく感じます。そういう背景がありますので、今進められている研究データに関する合意形成にしても、日本からの参加者のほとんどはよく分からないと思います。そういうぐちゃぐちゃした、訳の分からないところから、皆で使えるものを抽出するという作業は、おそらく日本人にはあまり経験がないのではないかと思います。そういう、どこの国がイニシアチブをとっても喧嘩になる状況での合意形成と、各省庁がそれぞれイニシアチブをとっている情報資産をどうやってインターオペラブルにしていくかという状況は非常に似通っています。どこかの機関が主体になってその責任で全部やるという思想ではなくて、皆が平等な立場で、誰かが誰かに義務を課すことができない状況で、どうすれば全体がうまく動くメカニズムを作って合意形成できるかということを、日本がそろそろ世界のフロンティアに立つ国の一つとしてやらなければいけないフェーズに差し掛かっているのではないかと感じています。
倉田委員:
正にそのとおりで、これをどこかがやってほしいと言ってもどこもできないと思うのですね。でも、例えばORCIDの番号を付けることを考えると、助成機関は、助成の条件としてORCIDを求めることもできるのではないでしょうか。科研費でしたら科研費研究者番号なしでは申請できないわけですから。そういう形で、個々の論文に必ずORCID等の識別子が常に付いて典拠の情報が確実になるというのは、検索に際して重要なポイントであると思います。
最近図書館でディスカバリーサービスが流行していて、いろいろなものが全部探せるようになってきています。つまり図書館の検索システムも、蔵書目録だけではなく、いろいろなものと合わさらなければいけないということです。方向性としては間違っていないと思うのですが、ディスカバリーサービスは研究者には大変評判が悪いのです。なぜかというと検索結果を見ても訳が分からないからです。国立国会図書館サーチも使っているのですが、時々もう嫌になってしまいます。何でも出てくるというのは埋もれてしまうということでもあるわけです。つまり、何にでもアクセスできる基盤は必要なのですが、それがあった上で、検索結果をもう少し見やすくする工夫がないとインフラとして広がっていかないと思います。残念ながら現在の、検索結果の画面の左側に出てくる区分程度では探し切れないですね。
逆に言えば、学術情報において、どういうものが出てくれば、先ほど西尾委員長が言われたように立体的に見えるかというのは重要なポイントで、何か見えてくれば、専門家ならそこから更に探しますし、素人なら表面だけ見て終わりますが、それで十分なのです。検索や表示の在り方について考えていく際に典拠のファイルが重要です。これは国立国会図書館が営々と築いてきた重要な資産ですから、リンクトデータなり、何らかの形で表に出していく工夫を積極的にやってほしいと思います。
西尾委員長:
国立国会図書館への要望がありましたが、いかがですか。
田中
電子情報部長:
メタデータをカバーする範囲を広げるというところには注力してきていますので、それをいろいろなGUIやサービスを組み合わせて利用できる基盤として、使いやすいインターフェイスを作るということを今後は第一義的に進めていきたいと思っています。実はこれから館内利用者向けのインターフェイスについて検討していくのですが、今までは探せなかったものも含めてどういう範囲をカバーするかということと、また、書誌情報とリンクさせることによって付加価値が出てくる関連情報、例えば目次情報や解題ですが、そういった情報を分かりやすく構造化して提示すること、あるいは全文検索によって本文までを深掘りしていけるといった機能について議論するつもりです。それらの機能と使いやすいインターフェイスを組み合わせて、サービス向上を実現したいと考えています。
西尾委員長:
四期計画の概要のうち、「恒久的保存のための主な取組」についてもう一歩踏み込んだ議論をしたいと思います。例えば、「④オープンサイエンスにおいて果たすべき役割」については、今後計画を遂行していくために明確にしておく必要があります。また、「利活用促進のための主な取組」に関しては、先ほどから「①多様なコンテンツのメタデータの統合的検索機能の提供」について意見が出ていますし、「④コンテンツを利用しやすくするための制度整備」の1点目にある、関係府省等と連携してコンテンツ関係の制度整備をどのように進めていくのかという問題や、あるいは「⑤国立国会図書館のデジタル情報資源の利活用の促進」の1点目にあるデジタル資料の海外への提供という問題、これは提供だけではなくどう関連付けるかというグローバル化の問題だと思うのですが、この辺りに関する意見も多々出ているかと思います。そして、先ほど羽入館長からお話がありましたが、国立国会図書館の立ち位置というものが、我々が議論する上でも重要なものとして出てきています。そういう意味で質問したいのですが、参考資料Bに記載がある「国際的動向を踏まえたオープンサイエンスに関する検討会」というのは、内閣府の検討会のことですか。
竹内科学技術・経済課長:
そうです。
西尾委員長:
司会役を務めている者としては、先ほどからたくさん出ている貴重な意見がここで閉じてしまうと本当にもったいないと感じています。内閣府の検討会にも国として受け止めていただくことはできるのでしょうか。先ほどの村山委員の御意見が本当に大事だと思うのです。どこかが責任を押しつけられて実行するという問題ではなくて、お互いがコンフリクトする関係を何とか調整しながら一歩一歩前に進めるということを行っていかないと、我々はもう取り返しのつかないことになると思います。私の経験では、そういうことについてはヨーロッパが長けていて、喧々諤々の議論はするのですが、ちゃんと一歩ずつ前に進んで行くのです。ところが日本では、方向性がまず出ないと、その後がなかなか進まない。つまり日本は、How to doには優れているけれども、What to doから議論していくとなると混乱してしまうところがあります。それでもヨーロッパのような流れを作っていくにはどうやっていけばよいのでしょうか。
羽入館長:
とても難しいとは思いますが、まずは、この審議会の審議結果として国立国会図書館が承ります。国立国会図書館としてそれを何らかの形で実現するためにどういう方法があるかということを考えさせていただきたいと思います。
西尾委員長:
私も難しい問題だとは認識しているのですが、本当に貴重な御意見ですので、何らかの形で活かせればと思います。
竹内委員長代理:
先ほどの議論はどちらかいうと日本の利用者が情報探索を行うという視点からの議論だったと思うのですが、国のデジタルアーカイブという観点から考えると、逆に日本の外にいる利用者が日本のデジタルリソースにどのようにアクセスしていくかということについても検討しておかなければいけないと思います。国立国会図書館が持っている多くのデジタル資料を有効に使うための環境整備をきちんと考えることが、今後ジャパンサーチが有効に機能する上でのベースとなるのではないでしょうか。少なくとも現在の国立国会図書館サーチは国外ではほとんど使えないというのが実際の声であろうと思っているのですが、それを改善すれば、日本の様々なデジタルアセットへの入口としてきちんと機能するようになると考えます。
西尾委員長:
海外から国立国会図書館にどんどんアクセスしてくるような、魅力的な仕掛けをどのように設けることができるかという問題ですね。海外からのコンテンツの輸入超過に対して、コンテンツの輸出をどうするかという観点も大事だと思います。
国立国会図書館がデジタルコンテンツの収集・保存・提供において果たす役割が参考資料Aに明確化されているという解釈でよいのかどうかについても、検討の材料にしていただきたいと思います。
児玉委員:
国立国会図書館のコアコンピタンスと言いますか、国立国会図書館でなければならない理由は何なのでしょうか。膨大なデータベースを持っているサービス業という印象もしてきたのですが。
西尾委員長:
国立国会図書館の主となるミッションは何かということですね。
羽入館長:
国立国会図書館のメインの使命は国会の審議に資することです。そのために、国内で作られた知的資産の全てを国立国会図書館が集めて公平に提供するということが基本です。納本制度によって成り立っている図書館であることもその裏付けとなっています。
網野副館長:
これは国立国会図書館法という法律で規定されています。第一義的な目的は、国会議員の調査・研究に役立てる、つまり国会審議を補佐するということでして、また、それを妨げない限りで、と同法の中には書いてあるのですが、国民に最大限の奉仕をすることとなっています。国内の情報資源を網羅的に集めて組織化し、それを国民に提供するわけですが、究極の目的は国会審議を補佐するということです。
児玉委員:
理解できました。しかしそうすると資料の内容とミスマッチするところがあるように思うのですが。例えば地方発信や海外発信のための入口の提供などです。これらは国会関係の仕事を妨げない範囲でやるのでしょうか。私はもっと広げてよいと思います。
田中
電子情報部長:
法律に基づいて資料を収集しそれを残すということから敷衍されるのは、いつまでもそれを利用できる形で保持するということです。それは私どもの役割として最後まで残ってくるところです。参考資料Aの図の中でも、長期的保存という部分を日本の中で第一義的に担うところとしては、私どもがその中心になるのではないかと自認しています。
竹内委員長代理:
参考資料Aはデジタル学術情報に関するものとしてかなり限定して書かれているのだろうと思いますが、ここに書かれていない最も大きなものとして、商業的に流通する電子書籍があります。これまでこの審議会の中でも何度か議論が出てきましたが、現時点では学術情報ではなくても50年後には学術情報になる可能性があるものというのはたくさんあるわけです。そのことを踏まえて、法律に基づいてあらゆる出版物を集めるという観点からすると、この図に決定的に欠けている部分を、国立国会図書館、あるいは我々はどう考えるのか、そこをきちんと議論するべきではないかと思います。
羽入館長:
私もそのことが気になっていました。商業的な電子書籍・電子雑誌に関してはクリアすべき様々な課題がありますので、現在、検討の途上にあります。
網野副館長:
電子書籍・電子雑誌については、商業的なものも含めてこれから収集の対象としていくことを検討している最中でして、国内で生産された知的資産についてカバーしようという点では紙の出版物と変わりありません。ただ、諸外国でもそうですが、出版社等との関係は非常に気を遣うところですので、その利益に配慮しつつ、電子書籍等については全てカバーしようという考え方です。
竹内委員長代理:
国立国会図書館は最終的に誰のためにこれを収集しているのかという視点はどうしても必要でして、個人的には、少し権利者に気を遣い過ぎではなかろうかと思わないでもありません。多方面に気を遣いながら、何とか良い形に落ちつくようにと本当に苦労されていることは十分理解していますが、長期的な利用者という視点を是非入れてほしいと思います。
西尾委員長:
今日はいろいろと貴重な意見を多々いただくことができました。四期計画は是非とも強力に推進していただきたいと思います。また、今後ますます大事になってくる国のデジタルアーカイブの連携に関しても同様です。この審議会は、国立国会図書館のサポーターとして、今後きちんと支援していくという立場から意見を述べています。ここでの審議がうまく活かされていけば、我々としては非常にありがたいと思っています。どうかよろしくお願いします。
予定していた議事は全て終了しました。事務局から連絡事項等ありましたらお願いします。
(事務局から事務連絡)
西尾委員長:
本当に、どうもありがとうございました。
(閉会)

このページの先頭へ