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第47回科学技術関係資料整備審議会議事録

日時:
平成19年2月13日(火)午後3時00分から午後5時00分まで
場所:
国立国会図書館 東京本館総務課第一会議室
出席者:
科学技術関係資料整備審議会委員 10名
長尾眞委員長、朝倉均委員、岡﨑俊雄委員、沖村憲樹委員、倉田敬子委員、坂内正夫委員、塚原修一委員、土屋俊委員、名和小太郎委員、藤木完治委員
野依良治委員は欠席。
館側出席者 13名
館長、副館長、総務部長、調査及び立法考査局長、収集部長、書誌部長、資料提供部長、主題情報部長、関西館長、総務部企画課電子情報企画室長、同部会計課長、主題情報部副部長、同部科学技術・経済課長
会議次第:
1. 開会
2. 国立国会図書館長挨拶
3. 新委員紹介
4. 報告及び懇談
 (1)平成18年度における科学技術情報整備に係る現況
 (2)国立国会図書館「第二期科学技術情報整備基本計画」策定について
 (3)国立国会図書館「第二期科学技術情報整備基本計画」に係る平成18年度の進捗状況について
   i)科学技術関係の電子情報の蓄積・提供について(電子図書館関係)
   ii)科学技術情報提供の拡充その他の施策について
 (4)懇談
5. その他
6. 閉会
配布資料:
科学技術関係資料整備審議会 会議次第
科学技術関係資料整備審議会委員および幹事名簿
科学技術関係資料整備審議会 座席表
科学技術関係資料整備審議会規則
科学技術関係資料整備審議会議事規則

資料1 平成18年度における科学技術情報整備に係る現況(PDF: 161KB)
資料2-1 国立国会図書館「第二期科学技術情報整備基本計画」の策定について(PDF: 74.4KB)
資料2-2 第二期科学技術情報整備基本計画(PDF: 185KB)
資料2-3 第二期科学技術情報整備基本計画の素案との対照表(PDF: 132KB)
資料2-4 科学技術関係資料整備審議会「電子情報環境下における国立国会図書館の科学技術情報整備の在り方に関する提言」(PDF: 325KB)
資料3 国立国会図書館「第二期科学技術情報整備基本計画」に係る平成18年度の進捗状況について-科学技術関係の電子情報の蓄積・提供(電子図書館関係)-(PDF: 1.0MB)
資料4 国立国会図書館「第二期科学技術情報整備基本計画」に係る平成18年度の進捗状況について-科学技術情報提供の拡充その他の施策について-(PDF: 156KB)

参考資料1:「科学技術をめぐる政策課題2007」(PDF: 654KB)(『調査と情報-ISSUE BRIEF』第563号)
参考資料2:「学術情報基盤の今後の在り方について(報告)」(PDF: 1.6MB)(平成18年3月23日 科学技術・学術審議会 学術分科会 研究環境基盤部会 学術情報基盤作業部会)(藤木委員より机上配布)

議事録:
1 開会
長尾委員長: それでは第47回科学技術関係資料整備審議会を開催いたします。
まず、国立国会図書館長のご挨拶をお願いいたします。
 
2 館長挨拶
黒澤館長: 開会に先立ちまして、一言ご挨拶を申し上げます。
本日はご多忙のところ、万障繰り合わせていただき、ご出席いただきまして、本当にありがとうございます。また、日頃いろいろ、ご指導、ご協力いただき、この際、お礼申し上げたいと思います。一部、委員の異動があるようでございますけれども、後ほどご紹介いただけるものと存じます。
当館は、昨年6月、お手元にも配布いたしております「第二期科学技術情報整備基本計画」というものを策定いたしました。これは、前回「素案」の形で皆様方にお見せいたしまして、その際いろいろご意見を頂戴したことを念頭に、館内で検討のうえ策定いたしたものでございます。 この基本計画につきましては、ただいま申し上げましたように、前回の審議会でご意見を頂戴したわけですが、前々回の審議会で、「電子情報環境下における国立国会図書館の科学技術情報整備の在り方に関する提言」というのをいただきました。その際にも、いろいろな角度から、先生方からご議論いただいたところを踏まえまして、作成いたしたわけでございます。そういう点につきましても、改めて感謝の意を表したいと思います。
また、この基本計画を遂行するうえで、特に意を留めなければいけないのが、国の「第3期科学技術基本計画」、これは昨年3月28日に閣議決定されたものでございますが、この中でも当館のことに触れまして、研究情報の利用環境の高度化を図るうえで、情報基盤整備に係る当館の役割等について、大変期待を込めた文言があるわけでございまして、そのような期待に応えるためにも、この我が方の基本計画の推進にも、強く邁進していかなくてはならないと考えているところでございます。
本日の審議会では、ただいま述べました「第二期科学技術情報整備基本計画」とその進展についてのご報告をさせていただきまして、そのうえで、委員の先生方より、その内容、進め方等につきまして、種々ご意見を頂戴したいと考えております。言うまでもなく、先生方は高いご識見を有されているわけでございまして、このような貴重な機会を、私どもの方では、十分活用してまいりたいと思っているところでございます。限られた時間ではございますが、是非大所高所から、活発なご意見を賜ることができれば、幸いでございます。簡単ではございますが、お礼方々、ご挨拶に代えさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 
3 新委員紹介
長尾委員長: どうもありがとうございました。それでは、新委員がおられるわけでございますので、事務局からご紹介いただけますか。
岡田主題
情報部長:
はい。まず、日本原子力研究開発機構理事長、岡﨑俊雄先生です。
岡﨑委員: 岡﨑でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
岡田主題
情報部長:
次に、文部科学省大臣官房審議官、藤木完治先生でございます。
藤木委員: 藤木でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
委員長: どうもありがとうございました。
 
4 報告及び懇談
<報告>
委員長: それでは、「報告及び懇談」に移ります。報告(1)から(3)までにつきまして、国立国会図書館の方からご説明をいただきまして、それから議論をしてはどうかと思いますので、よろしくお願いいたします。
岡田主題
情報部長:
(1)「平成18年度における科学技術情報整備に係る現況から(3)「国立国会図書館『第二期科学技術情報整備基本計画』に係る平成18年度の進捗状況について」について、ご報告いたします。
(報告略。資料1、2、3、4参照)
報告は以上でございます。
<質疑及び懇談>
委員長: ありがとうございました。報告事項(1)について何かご発言はございますか。
朝倉委員: 資料1の4ページに文部科学省科学研究費補助金研究成果報告書(科研費報告書)というのが書いてあるのですが、厚生労働省でも厚生労働科学研究費補助金で大量の出版物が出ているのですが、これの所蔵に関してはどのように対応しているのでしょうか。最近は、エビデンスに基づくいろいろなガイドラインが厚生労働省の報告書に掲載されて、特定疾患の難病に非常に役立っているのですが。
内海収集部長: いま先生が仰った資料につきましても、いま細かい数字は記憶しておりませんが、収集の対象とさせていただいております。
委員長: 他にいかがでしょうか。この同じ4ページの、例えば博士論文で、国内・海外とありますが、その件数が平成18年の4月から11月に9,800件、あるいは445件と書いてありますが、これは来たものをいただくというだけ、パッシブなやり方なのか、あるいはしっかり集めようという意志があってやっておられるのか、そこを聞きたいですね。
岡田主題
情報部長:
国内の博士論文については、基本的に大部分を収集しております。海外については、選択的に収集しています。
土屋委員: ただ、国内のものについて、送ってくださいというように国立国会図書館が学位を取った方に連絡しているわけではなくて、黙っていても送られてくるわけですね。
岡田主題
情報部長:
特に学位を取った人に、送ってくださいということを言ってはいないと思います。
土屋委員: おそらくまだ依然として、昭和50年の「大学局長通知」という通知の下に収集されているのだろうと思うのですが。
委員長: 問題なのは、国立も私立も含めた大学全体について、本当に全て博士論文が国立国会図書館に納入されているのかどうかということですね。
生原副館長: 国内の博士論文につきましては、狭い意味での納本ということではなくて、文部科学省との取り決めに基づき、各大学から国立国会図書館に送られてきますので、網羅的に収集できているというふうに考えております。海外のものにつきましては、予算の範囲内で、主だったものを選択的に収集しております。
委員長: なるほど。分かりました。
土屋委員: 科研費報告書に関しても、黙って送ってくるのを待っているだけですね。いま仰ったように、文部科学省、おそらく現在は日本学術振興会だと思うのですが、同振興会と特に協定などがあるわけではないだろうと思うのですが、その点どうでしょうか。
内海収集部長: 協定があるかどうかははっきりと分かりませんが、科研費報告書については、網羅的に収集するという状態になっております。網羅的と申しましても、必ずしも全て入ってくるということではございませんが、重要な収集対象というふうにしております。
土屋委員: 網羅的であるけれど全てが入ってこないというのは、矛盾しているような感じがします。
委員長: 国立国会図書館に行けば必ずそういうものが見られるという安心感が国民に与えられるためにも、一層システムが整備されるといいのでしょうが。
土屋委員: いまの時代ですから、科研費報告書が国立国会図書館だけにあるのがいいのかどうかよく分からないのですが、ほとんどのものがすぐに電子的な媒体で出てしまうわけですから、それを利用可能な状態にしておく必要はあるだろうとは思います。国立国会図書館が収集して公開するのに3年かかるというのはやはり非常に困りますので、その点については何とかしなければいけないのだろうと思います。
委員長: 文部科学省とか国立情報学研究所では、科研費報告書等を全て収集して誰でも使えるというようにはしていないのでしょうか。
坂内委員: 科研費報告書のアブストラクト、800字程度の報告書については、国立情報学研究所が日本学術振興会と作らせていただいて現在計52万件あり、数ヶ月でアップするようにはしています。国立国会図書館で収集しているのは本体冊子ですから、タイアップしなければいけないと思いますが、そのアブストラクトについては日本学術振興会に報告書がある限り全部いただいて、かなりの迅速性で利用できるようになっています。
藤木委員: 文部科学省全体で、科研費報告書だけではなくて、いろいろな研究成果についてはアーカイブ化をするということで、データベース化とともに電子情報化しているわけですが、先ほどご説明がありましたように、情報技術はどんどん変遷、進化していきます。電子情報そのものの定着性もありますし、不安定性ということもありますので、永久的なアーカイブ化等について、国立国会図書館の方でされているものとの連携がとても大事だと思っております。前半のいろいろな研究成果のアーカイブ化につきましては、私も文部科学省でありながら全貌を申し上げられず、正確な知識も持ち合わせておりませんが、かなりのものについては文部科学省の中でいろんな機関が電子情報化し、データベース化して持っておりますので、そのレベルで国立国会図書館の方の電子情報システムと連携するということは、この収集件数の多少とは別に、きちんと進めていかなくてはいけない、というふうに思っております。
土屋委員: この点については大学図書館長との懇談会の中でも報告してきたのですが、大学の方ではここ2、3年にわたって、機関リポジトリという形で大学ごとに、各大学の資料は電子的に利用可能な状態にしておくという比較的組織だった取り組みをしているので、それとの連携も当然必要だろうと思います。これは、科研費報告書だけの話ではなく、全般にということです。また、メタデータなどをいろいろ作られていますが、いろいろな機関がお作りになるとあまり意味がない話になってしまいます。同様に、国立国会図書館は自館だけで標準化と仰ることも多いのですが、他機関が使用しないあまり意味のない標準化をされることがしばしばあるようなので、そのあたりに少々危惧を持ちます。
委員長: 他に何かあるでしょうか。
土屋委員: 別件でよろしいですか。資料1の5ページに、電子ジャーナル30,400種とあります。この数字は少し多過ぎる気がするのですが、どのように計算しているのでしょうか。普通、いまは200万論文、2万4千タイトル存在すると言われているのですが。
岡田主題
情報部長:
この電子ジャーナル数の中には、中国学術雑誌全文データベース等も入っております。
土屋委員: 学問の世界ではあまりカウントしないようなものも入っているということですね。
もう一つよろしいでしょうか。同じく資料1の6ページなのですが、インターネット経由による資料複写申込サービスというのは、提供自体は依然として基本的に郵送で行なっているということなのだと思うのですが、いまどき郵送で行うというのはおかしいので、それを何とか打開しなければならないだろうと思います。大学間に関しては、日本の権利者および海外の権利を代行している方たちとの話し合いで、ある程度電子的な手段を使って送信できるようにしています。つまり、利用をもっと増やしたいのであれば、もっと本文の提供サービスを改善しなければならないのではないかと思います。著作権が問題であるというのは分かるのですが、そこを何とかするのが国立国会図書館ではないかと思うのですが。
和中資料
提供部長:
先生もいま仰ったとおり、やはり著作権法のところがネックとなっております。大学図書館間、あるいは大学図書館内などで行われているものを調査いたしましたが、全国民を相手に対して行うのは、現段階では著作権法上不可能と判断し、そこでいま止まっているところです。さらに検討はしていきたいと思っておりますが、それ以上のことは申し上げられない状況です。
土屋委員: 例えば科学技術情報はやはり鮮度が重要ですし、またオープンアクセスジャーナルのように、電子的な情報の利用可能性の向上を積極的に推進するという動向が世界的にはいくつか展開しているわけです。その中で紙の複写で満足している我が国の状況は、歯痒いものがあると言わざるを得ません。できない理由を考えるのは簡単で、著作権と言えば済んでしまうというのはよく分かるし、その理由付けは私もよく使うのですが、何とかならないものでしょうか。
朝倉委員: 医薬関係でも非常に問題になっていますが、結局、欧米の一流出版社が多くのタイトルを確保しており、それで商売が成り立っておりますので、その出版社と各図書館の個別の交渉で成り立っていて、そこに所属する職員以外は一切外からアクセスできません。これにはいろいろな問題があると思いますが、相手は欧米の資本主義ですので、もう限界だと思います。
名和委員: 私は多少著作権絡みの仕事をしてきた者ですから申し上げますが、著作権の中で学術情報の議論というのは、全体から見ますと極めてマイナーな問題なのです。他のメディアに関する著作権管理団体が、国際的に圧力集団を作ってジュネーブ等でロビー活動しているという状況から見て、学術分野の著作権に関する圧力のかけ方というのは非常に小さい、ということは申し上げておきます。
土屋委員: 確かに商業出版社によるものもあるわけですが、商業出版社のかなりのところが、例えば大学のWebサイトで雑誌論文等の本文公開をしていいかと聞くとOKと言う、というふうになりつつあります。数え方によっては90何パーセント以上がOKを出しているという状況があるので、そういう大きな流れの中でも紙の送付というものをメインに考えているという発想自体を、少し考え直していただきたいというふうには思います。
それと、いま名和先生にご指摘いただいた点に関連してお聞きしたいのですが、「第二期科学技術情報整備基本計画」中、IIIの1として「関係機関との連携・協力の拡充」とあるのですが、これについて具体的にどのような拡充があったか、あるいは失敗したものも含めてどのようなことを試みられたかというのを、教えていただきたいのですが。この項目は最初に計画が策定された時から、言っただけになってしまいそうだなという気がしていたのですが。
委員長: 関係機関との連携・協力の拡充というのは、大学との協力関係がスムーズに行っているのかどうかということも含めてですね。
土屋委員: そうです。
委員長: あるいは、国際的な連携も含めてどういうふうな努力がなされているのか、なされるべきかという点もありますね。
植月
電子情報
企画室長:
IIIの1では事項を5点挙げてあるわけなのですが、電子情報関係で申し上げますと、まだ現在はポータルの構築、それからデジタルアーカイブシステムの構築という段階で、これらと並行しながら進めていこうとしています。まだ広く働きかけるというような形ではできていないのですが、国立情報学研究所、あるいは科学技術振興機構とポータルでの協力等についてはすでに話し合いを行っているところです。その話し合いの中でインターフェイスの標準化、あるいはメタデータをどういうふうに扱ったらいいか、という話をさせていただいているところです。電子情報の長期保存、網羅的な収集のためには、制度化の壁があるわけなのですが、この領域に関しては、各府省、地方公共団体等に対して、WARPの拡充・拡大についてのお願いをしていこうとしている段階であります。
土屋委員: ただそのポータルに関して申し上げると、科学技術振興機構の方でも科学技術関係のポータルを作っているわけですし、国立情報学研究所の方も、こちらは別に科学技術に限らないわけですがCiNiiを作っているわけです。そのような状況を見ると、いまさら国立国会図書館でポータルを作って何をやりたいのかという気もします。
植月
電子情報
企画室長:
その点についてはご意見をもっと詳しくいただきたいという気はするのですが、例えば国立情報学研究所の方で、当館の目録も統合的に検索することによって近代デジタルライブラリーにワンストップで到達することができるということもありえるわけですし、CiNiiのいろいろなコンテンツに当館のポータルから入ってきた利用者がワンストップで到達するということもありえるわけです。以上のようなことは、国のアーカイブに対していろいろな窓口から便利に到達することができるという意味では、利便性の向上であるというふうに考えているのですが。
土屋委員: 必ずしも各ポータルの内容が重複してはいけないということを申し上げているわけではないのですが、ポータルの開発がいろいろな機関でばらばらに進んでいるという印象は、少なくとも大学のユーザーからは感じられるので、そのへんを何とかしていただきたいということです。これは別に国立国会図書館だけが悪いのではなくて、国立情報学研究所、科学技術振興機構も同罪かもしれないのですが。
沖村委員: それは文部科学省の責任もあるのではないですか。研究振興局が、図書館の政策も含めて文部科学省全体の情報政策を統合されていますから。つまり国全体の組織がないということが問題で、国立国会図書館も文部科学省もそれぞれ電子情報整備の施策を進めているわけです。ですからそこをもう少し緊密にしていただかなければと思います。
坂内委員: それぞれ重複があって、ばらばらに進んでいるというのは、国立情報学研究所と国立国会図書館についても、国立情報学研究所と科学技術振興機構についてもそうです。それぞれミッションに従って、例えば全文のアーカイブ、論文のアーカイブでも予算を工面して行っているのですが、全体としていつまでにどれだけを終えなければならないか、というグランドデザインがないのです。つまり、いつになったらどこまでやれるのか、全体で何をしなければならないのかが必ずしも明確になってないのです。各機関が連携してターゲットを明確にして、役割分担なり何なりを明示して効率化を図る、ということがいま大事なのではないかというふうに思っています。
委員長: そういう意味では、資料2-1の「第二期科学技術情報整備基本計画」の最後のあたりにそのような観点がきちんと入って、総合的に調整がうまくいくといいのでしょうね。
坂内委員: そうですね。この計画はおそらく我々国立情報学研究所が書いても科学技術振興機構が書いても類似のことが書かれることになってしまうので、やはり日本としてこれだけのものをやろうというデザイン、各機関がいつまでに何をやらなければならないかということを、国際的な連携も含めて進めていかないといけないと思います。もちろん現在でも現場レベルでは、重複のないように一生懸命に作業をしているのですが。私自身も土屋先生と同じ感想を抱いておりまして、現在電子化されたジャーナル、あるいはサイエンスデータなどに基づいて研究開発なりいろいろな政策が展開されているという状況の中で、日本だけが非常にスピードが遅いと思います。ですからやはり、いまあるリソースをつなぎ合わせて、連携しあってスピードアップを図るということが大事かなという気がしておりますので、是非それはご一緒にさせていただきたいと思います。
沖村委員: この問題は、是非総合科学技術会議に取り上げていただきたいと思います。国のグランドデザインについては、「第3期科学技術基本計画」でも少し触れているのですが、これを具体的にどうするかというところまでは触れていません。国立国会図書館も各府省もそうですがこの分野の話は最近ものすごく変動していますから、その変動を前提に、総合科学技術会議で取り上げていただきたいと思います。
坂内委員: 総合科学技術会議には「第3期科学技術基本計画」の中で、こういう基盤の大事さというのを1ページくらいかけて謳っていただいたのですが、総合科学技術会議の日常的なミッションは研究開発の予算であって研究開発ではないのです。ですから、私は議員にも随分回って基盤の大事というのを申し上げたのですが、いま沖村さんも仰ったようになかなか具体的に進んでいかない。本格的な検討は次のフェイズだとは思うのですが、是非やっていただかないといけないと思います。
藤木委員: 文部科学省ということで発言させていただきます。これは確かに府省横断的な問題であるし、先ほど朝倉先生からありましたように厚生労働省関係のいろんな関係の情報とも絡んできますし、農林水産省とも関係があるわけですし、全府省的な問題でもあるうえに、行政と立法府を跨るさらに大きな枠組みの問題でもあると思いますので、総合科学技術会議というのは一つの考え方だと思います。最近総合科学技術会議もいわゆるお金を取るという問題だけではなくて、制度的な問題にも随分踏み込んでいろいろと議論されておられますので、せっかくこのような場でこのような議論をいただいたわけですので、私どもの方からも、少し総合科学技術会議と相談してみたいと思いますが、国会の方からも、そういう問題提起を行政府の方に投げかけていただければ、国全体の電子情報整備のグランドデザインの策定が進む一歩になるのではないかと思います。
委員長: 総合科学技術会議の議員も新たになられましたし、各方面からそういう声を届けるというのも大事かもしれませんね。
土屋委員: もちろんそうしていただかないと困るのですが、実際には待っていられないということもあります。我が国の場合、電子情報整備に関してのステークホルダー、関与しそうな機関は決まっていると思うので、ともかく少しでも合意を取れるところで仕事をするなり、全体のターゲットを決めるなりという議論をしていただきたいと思います。つまり総合科学技術会議が動くまで何もしないというのは、よろしくないのではないかと感じます。
委員長: 誰かイニシアティブを取って作文でもしていただかないといけませんね。
他にどうでしょう。資料の1は終わりにして次の方へ移っていったらいいと思いますが。何でも結構です。
坂内委員: それでは、これまでの議論に関連することですが、インターネットの資源蓄積に関してです。今年から文部科学省においても、長尾先生のところにおいても、経済産業省においても、インターネット上の有益な情報をいかにして活用できるかというプロジェクトが始まっているので、その動きともこれは無縁ではないと思うのです。ですから、即座に連携しましょうということではないのですが、WARPも次の段階に広げていく時に、そういういろいろな現在の施策とか研究開発プロジェクトの成果をうまく取り入れるというようなことができるといいのではないかという気はします。
委員長: そうですね。何か話のチャネルがあるといいのですが。
倉田委員: WARPに関してなのですが、今後もやはりこういう選択的な形での収集をお続けになるつもりなのでしょうか。もしそうであるなら、いま資料を見せていただいていますと、焦点がよく分からないなという気持ちがどうしてもしてしまうのですが。インターネットの情報は、量が莫大ですから。国によっては選択的ではなくとにかくスナップショットとして全部残すのだという考え方もあるわけですが、国立国会図書館はそうではない方向で行くというのは一つの方針だと思います。つまり、国の機関として残すべきものは何で、そこだけを収集するというのも一つの考え方なのかなと思うのですが、こちらの資料を見るとそうでもなくて、いろいろと手を広げていきたいというようにも見えます。WARPは、今年から実験ではなく事業になられたということですから、そのへんをどのようにお考えなのかをお聞かせいただければと思います。
植月
電子情報
企画室長:
インターネット資源蓄積の制度化についてはここ数年来追求してきているわけですが、いろいろな状況の下で、いろいろな考え方もある中でスムーズには進んでいないというのが現状であります。それで、そういう制度化への努力は続ける一方で、現行下で可能な収集方法で事業を本格的に進めていくという必要はあるだろうと考えておりまして、どのような対象をどのような優先順位で収集していくのかということについては大枠での方針を固める予定であります。基本的な考え方としましては、日本国内のものを原則とするということはあるのですが、国政審議に資する内容のもの、国会・中央省庁および独立行政法人、またこれはいままであまりやっていなかったのですが地方公共団体等の公的機関が発行するもの、大学等の学術研究機関が発行する学術的価値が高いもの、というふうに考えて、それらを中心に充実させていくということを考えております。様々な状況の中で以上挙げたものを中心に充実させていくとともに、消失の危険性の高いもので長期的に保存する必要性の高いものについて重点的に収集していく、というのが現在の方針です。WARPについてはいつまでも実験事業ということではなくて、今後本格的に位置づけをしていこうというものであります。
吉永総務部長: もう一言付け加えさせていただきます。WARPの実験事業から本格的事業への移行ということについてはいまの植月電子情報企画室長の発言のとおりでございます。インターネット資源蓄積については、当館としては、あくまでも網羅的な収集ということ、法制化して収集するということを大きな考え方としては持っております。2年ほど前に納本制度審議会からその点についての答申をいただきまして、法制化についてはいろいろ努力してきているのですが、様々な困難な問題、特に著作権法に違反している等違法なものも全てを収集するのかということと、それを当館がインターネットで発信するのかというところが、解決しきれておりません。いまその点について関係機関等と協議させていただいておりまして、当館は平成21年度にWARPの、デジタルアーカイブの本格的な提供を開始するところでございますが、その時期までに法制的なところは調査、精査してもらいたいというふうに考えております。
インターネット資源蓄積については、諸外国でもいろいろと試みられているようですが、やはり先に述べたような点について難しい問題を抱えていて、法制化までは完了しているが現実的に集めきれていない、あるいは提供しきれていないというケースもあると聞いておりますので、そのような各国の事例も参考にしつつ、当館がどのような形で実現できるのかということを考えていきたいと思っております。また、当館では文化財としての全体的なネットワークの収集と位置づけている当事業については、政治、あるいはこのような審議会の支援を受けながら進めていく大きい事業であると考えておりますので、そのあたりの情勢も見極めながら、今後の方向性を検討していきたいと考えております。
土屋委員: 少し極論になってしまうかもしれないのですが、よろしいでしょうか。資料3の9ページで、インターネット情報について「サイト単位+著作単位」としているのですが、この意味はかなり大きいのではないかというふうに感じます。つまり、WARPが実験的な事業として開始された時代には、インターネットで流通する情報というのはサイトごとに無秩序に置いてあって、それをユーザーが持っていくというイメージが非常に強かったと思うのですが、現在インターネットというのはもう少し進化して、様々な情報をやり取りする中立的な媒体になってきていると思います。そのような状況下では、例えば収集する時の単位として、著作というのは適切なのではないかと思うわけです。そう考えた時に、サイトと著作というのが必ずしも馴染まないという感じがします。あそこのウェブサイトを持ってくれば保存できる、ウェブから他のところにリンクが張られていたりするのは難しい、というような話をおそらく5年ほど前にしていたのだと思うのですが、現在は状況が変わって、権利情報を付随させた著作物というものが、電子的な著作物の一つの単位として確立しつつあり、そちらの方を収集の対象にするとかつてとは随分違ってきているだろうと思うわけです。現実に例えば、大きな出版社が世界的にデータを提供しようとする場合には、どのサイトからというのは全く関係なくて、インターネットワイドのキャッシングネットワークというものを使って、世界中のどの地域にいても2秒以内にダウンロード可能というのを目標にしてサービスを行うわけです。当然、サイトという概念は何の意味も持たなくなってしまうわけですが、しかしその場合でも、その出版社の雑誌の何ページから何ページに載った、何々というタイトル、誰が書いたものということは、きちんとした意味を持つのです。そしてそれは、まさに収集に値するだろうと思うのです。
それで、極論というのはどういうことかと申しますと、サイト単位はもう止めたという決着を付けずに、それプラス著作単位という形で移行してしまうということでは、後々禍根を残しそうだなという気が少しするわけです。つまり、本格運用体制に入ったというふうには仰るのですが、捨てるものを捨てて本格体制に入ったのだろうかという点が非常に気になるわけです。ひどく抽象的な議論にしてしまい申し訳ないのですが、以上の点につき、もしご意見を教えていただければと思うのですが。
植月
電子情報
企画室長:
WARPでは電子雑誌とサイト単位で集めているわけなのですが、それだけでいいというふうにはいままで考えておりませんでした。納本制度審議会の答申でも、どのようなものを集めたらいいのかという点については、やはり国立国会図書館は内容を区別して収集するのではなくて、包括的に集めることが大事だとされていたと思いますが、それを受けて、当館では網羅的な収集ということを考えてきたわけです。現在でも、広い範囲のものを収集して保存することが必要だろうと考えているわけで、ポータルは、利用者のために様々な情報を様々な場所から集めてきて提供するというものではあるのですが、やはり国立国会図書館のミッションは、世の中に公開された、何らかの意義のあった、世の中に影響を与えた情報を収集して保存し、将来にわたって提供していくということなのだろうというふうに考えております。つまり当館は、捨てるものを捨てるという選択は現時点では為しえず、網羅的な収集を志向しなければならないと考えております。国立国会図書館におけるインターネット資源蓄積というのはまだまだ過渡期にあるのだという認識でいるわけです。
サイトと著作単位という点について申し上げますと、平成10年度の頃はそもそもサイト自体収集する、もの的に収集するなどという大それた考え方は持っておらず、著作単位で収集するというようなことを最初は考えていたわけです。現在は、サイト自体も収集できるような技術、情報環境が揃ってきたということがありますし、どこまで集めるべきかという区別、区分を国立国会図書館が行うということ自体が難しいという事情もあって、サイト単位で収集する、しかも網羅的に収集するという考え方が出てきています。ただその方法で個別の著作物を効果的に利用できるかということになると、やはりそれは難しいだろうと思います。倉田先生も仰いましたが、スナップショットという考え方でその時期のウェブのあり方、情報通信のあり方の一断面を記録するという点では、網羅的な収集の仕方というのも必要だろうというふうに考えており、一方著作単位へのアクセスという点については、著作単位に認識しそれを長期保存の技術で手当てしていくということが必要だろうというふうに考えているわけです。以上、あまりお答えになっていないかもしれませんが。
沖村委員: 質問があります。このウェブサイトというのはホームページのことですか。
植月
電子情報
企画室長:
はい。例えば国立国会図書館で申しますと、公式ホームページのトップページ以下一連のものということになります。
沖村委員: いわゆる図書館法上に言う図書とは全く別のものですよね。膨大な情報量になってくると思うのですが、そのようなものの収集をする必要があるのでしょうか。
吉永総務部長: ご質問の件については各所から様々な意見があります。やる必要があるのかというご意見と、やはり文化の諸断面として集めるべきだというご意見と。この点は合意が取りきれていない部分で、当館も苦労しているところです。この点につき認識を一致させるために、当館が広報等の手段を用いて動くべきかどうか、動くとすればどのようになのか、というのが、今後急速に詰めていくべきところではないかというふうに考えております。
委員長: ここでの議論から外れるかもしれませんが、こういうふうに画像データとか様々なものがデジタルアーカイブになってますます使われていくようになった時に、ネットワーク環境はどうなるのでしょうか。国立情報学研究所のネットワークを使うのでしょうか。
坂内委員: それは使っていただければ。
委員長: その流れだともうネットワークがパンクしてしまい、どうにもならなくなる危険性もありますね。
名和委員: 情報の、保存すべきあるいは利用すべき情報の範囲、対象をどこまで広げるかという議論になっていたと思うのですが、学術情報や著作権絡みの仕事をしている立場から言いますと、まず目先の問題として、学術情報と例えば新聞、週刊誌、小説とを比較すると、同じ冊子体のメディアでありながら著作権の扱いがそれぞれ違うということがあります。慣行が違うし、法律の下にある細かいルールが違うのです。学術情報については、オープン化、社会の共有財産という発想があるわけですが、そのような発想は他の著作物にはまずありません。そのような不統一、多様性をどうするかという議論があるのだと思います。国立国会図書館はいま仰ったようにあらゆる物を収集するという発想ですから、ここからここまでは学術情報だというように、学術情報の最も望ましいルール化を提案しても、そのとおりには動けないこともあるのだろうと思います。そのあたりは細かく議論を進めないと先へ進まないのではないかと思います。一方、最近、法律で公開を強制される情報は、著作権法上の束縛から外そうという制度ができたわけです。例えば特許法、あるいは薬事法に関わるものについては、コピーを自由にするということです。ですから学術情報についても、このようなことがルール化できれば、一歩進むのではないかと思います。ただ、それが国立国会図書館の役割なのかどうかは分かりません。
土屋委員: まさに先ほどの話に戻ってくると思うのですが、いまの話については、文部科学省が何か言えば皆がそうするというものではないと思います。ですから、もう少しきちんとしたテーマを決めた場を設定して議論を進めないといけないのではないかと思います。お互いに役割分担するというようなことができるようにしていかないと、いま名和先生が仰ったような細かい議論というのはスタートできないのではないかという感じがするのです。押し付けあっているだけという感じもしますが、どうぞよろしくお願いします。
委員長: 他に何かありませんか。
朝倉委員: 科学技術資料全体のデジタル化に際して、用語はどのように標準化されているのでしょうか。医学関係については、医学中央雑誌刊行会を中心にして関連する用語を統一しているのですが、他の技術関係も同様に、用語がうまく統制されていないと検索が十分にできないのではないかと思います。そのあたりは他の科学ではどのように進めているのでしょうか。
沖村委員: 科学技術振興機構で、科学技術全般の全分野について、シソーラスを開発させていただいております。医学分野は少し医中誌と重複しているのですが、とにかく全般にわたっています。
土屋委員: また暴論で申し訳ないのですが、もう統一などいらないのでは、とも思うわけです。どれほど統一してみても、皆間違えるのであり、変に統一してしまうと間違ったものが引っかからなくなります。それに対し、例えばGoogleでは、間違えた綴りを入力すると、‘Did you mean ~’、これが聞きたかったのですかという聞き返しをしてきます。1種類しか出てきませんので現時点ではまだ実用性に乏しいのですが、仮にあれがリスト等の形で出てくればそれで十分だということがあります。さほど統制を取らなくてもかなり検索できてしまうというのが電子的な情報の時代ではないか、という気がするわけです。つまり、情報の絶対量が多いということの持つ意味が、ようやく出てきたのだろうと思います。標準化するなとは申しませんが、標準化をしてからスタートする必要は必ずしもないのではないかという気がするのです。
沖村: 先生の仰るようなご意見も多く、いま科学技術振興機構で開発している大規模辞書には、様々な分野で使われる用語を全て盛り込むつもりです。一方で、シソーラスについてもご要望は多いので、併用していただけるようにシソーラスはシソーラスで作っていこうと考えております。
名和委員: 一般的なことでよろしいですか。国民のための学術情報ということが謳われている以上、学術情報をそのまま非専門家の国民が読んで分かるかという議論はあろうかとは思うのですが、その議論とは別に、常に間違いのない学術情報にアクセスする条件を作っていく必要があると思うのです。学術雑誌を見ていますと、最近は撤回記事のアナウンスが非常に多いと感じます。その分野の方がご覧になれば、ああこれは撤回かと資料を手繰っていけるのだと思うのですが、一般の国民が見た時には、それが撤回されたかどうか分からないということが生じると思います。この論文は撤回された、ということが雑誌の購読者以外の人にも分かるようなデータベース、案内のデータベースを作るのは国立国会図書館の果たすべき役割の一つではないかと私は思うのですが、いかがでしょうか。
土屋委員: 撤回というのはwithdrawalということですよね。
名和委員: そうです。インパクト・ファクターの高い雑誌であってもretractionが頻繁に掲載されていますね。
土屋委員: 電子的な情報になった時に撤回というのは非常に怖くて、昔は売り切った、売り渡したものを撤回するにはもう一回撤回と言う必要があったのですが、いまは出版社がすり変えたり消したりするということが可能になってしまっています。ですから、例えば電子ジャーナルを国立国会図書館で導入されていても、例えばあれは剽窃だということで、出版社が黙って消してしまっている場合があるだろうと思います。そうすると、撤回したという事実すら残らないということになります。名和先生の仰った案を具体的にはどのように実現するのか私には分かりませんが、ともかく撤回の問題は重要だと思います。
委員長: 他に何かありませんか。
土屋委員: 一つだけよろしいですか。大学図書館の世界で中で図書館のサービスということを議論すると、必ずGoogleの脅威、すなわちサービスのスタイル、ビジネスモデル等、全てにおいて図書館とは異なっているということが話題になります。先ほど名和先生が、学術情報についてはオープン化、社会の共有財産という了解があるということを仰いましたが、実際にはGoogleの場合には、これはGoogle Scholarも含めてですが、基本的に利用者が費用負担しないというモデルがすでにできています。無料というのがどこまで続くか分かりませんが、少なくとも現状では数年間持っています。一般利用者にとっては、国立国会図書館のサービスもGoogleのサービスも費用負担しないという意味では全く同じであるわけです。そのうえで、どちらの方が多くの情報がありそうかということになると、変なものもあるかもしれないがGoogleの方がはるかに多くある、というふうに普通の人は考えると思います。今日話題にされなかったということは、国立国会図書館はそういうことについて全く脅威と感じていないのでしょうか。その点を少し伺っておきたいのですが。
生原副館長: Googleについては世界の国立図書館界でも、どう対応していくか、対処していくか、考えていくかということが非常に熱い議論の対象になっています。ただ、やはり各国の国立図書館には、納本制度ということで資料を集めていく、学者・研究者だけということではなく、一般市民、広く国民の様々な利用ニーズ、情報ニーズに応えていくという使命があります。つまり、特化したくてもできない、切りたくても切れないということがあります。先ほどサイト単位か論文単位かという議論がありましたが、例えばサイト単位については次のようなことがありました。ここのところ政府の方針で地方自治体の合併が強力に進められてきて、放っておけばこの間まで存在した町や村のホームページがなくなっていく、永久になくなっていくという事態があったわけですが、我々はこれを緊急事態と考え、自治体のサイトを極力収集してきたのです。この例からも、国立国会図書館はもうサイト単位では集めない、というような切り方がどこまでできるのか疑問に思います。つまり、GoogleはGoogleで商業ベースでの仕事を徹底的にしていくのだろうと思うのですが、そこで国立図書館としてギブアップできるのかと自問すると、やはりしてはいけないのだろうと考えるわけです。利用者層、所蔵資料、その特性を十分踏まえた対応の仕方ということを考えていかなければならないのではないかと私は思っておりますし、またヨーロッパの国立図書館では、ヨーロッパの文化の多様性、独自性というものを十分踏まえたデータベース作りなり情報環境構築に努めなければならないのではないかという問題提起もされております。確かに、Googleをどう考えるか、というような問題設定の仕方をここではしておりませんけれども、当然私どもは情報環境の変化、商業ベースでの情報環境戦略というものを踏まえたうえで、国立国会図書館の今後のあり方を模索していくべきであると考えており、引き続き各国の対応等も勉強しながら検討していきたい、というふうに考えております。
 
5 その他
委員長: ありがとうございました。そろそろ時間も近づいてきましたけども、何か他にご発言はございませんか。それでは懇談の議論はこのへんにしておきまして、5番のその他で何かございませんか。
岡田主題
情報部長:
特にございません。
 
6 閉会
委員長: これで閉会してよろしいでしょうか。それでは皆さん方どうも長時間ありがとうございました。

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