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科学技術関係資料整備審議会

科学技術関係資料整備審議会諮問・答申

第18回科学技術関係資料整備審議会における諮問事項に対する答申

国立国会図書館長
岸田實殿
科学技術関係資料整備審議会
委員長 緒方富雄

諮問事項
諸外国における科学技術情報サービスの活発化にかんがみ、わが国においても情報流通体制の整備充実が緊要であるが、これに対して、国立国会図書館はいかに対処すべきか

答申
 昭和53年1月25日、第18回科学技術関係資料整備審議会において、諮問をうけた標記の件に関する本審議会の意見を、次のとおり答申いたします。

一 科学技術一次資料の収集

 諸外国において刊行されている科学技術雑誌の数は、近年著しく増大しており、その利用も拡大している。このため、各国の国立図書館や情報機関は極力その収集範囲の拡大をはかり、また、それを効果的に提供する努力を続けているが、なかでも、英国図書館の貸出局においては科学技術雑誌約4万5,000種を収集して、科学技術分野における情報の需要を、ほとんど完全に満足させるようになっている。
 しかるに、わが国においては、最大のサービス機関たるべき国立国会図書館において所蔵する科学技術関係の外国雑誌は1万2,000種の少数であり、しかも、そのうち現在継続受入れの分は約半数の6,000種にすぎない。また、国内の大学、研究機関における収集状況についてみれば、その総計は1万 5,000種であって、英国図書館における約4万5,000種の3分の1という、まことに憂慮すべき現状である。
 したがって、電子計算機による情報処理技術が進歩し、確実迅速な検索が国内において可能となったにもかかわらず、必要な一次資料の不備のため情報の需要を満しえず、折角の情報検索の効果を失わしめるものとなっている。
 このような事態は、わが国の科学技術情報体制の著しい弱勢を端的に示しているものであり、国内における一次資料の広範かつ集中的な収集は、まさに緊急の課題である。
 国立国会図書館が、科学技術の一次資料を集中統一的に網ら収集すべきことは、すでに昭和32年1月21日衆議院議院運営委員会の決議等において、また、昭和36年当初から数次にわたる本審議会の答申において、強く要請されているところである。それ以来、国立国会図書館は、その目的達成のため鋭意努力してきたが、予算上の制約により、前記の要請に応えるにはなお程遠い現状である。しかしながら、多種多様な科学技術一次資料の蓄積という点、およびそれらの資料を広く利用者に提供する公開性という点を考えれば、これまで不十分とはいえどもそれらを実現してきた国立国会図書館が、この責務を負担するために最もふさわしく、かつ効率的な機関であり、また国家的要請を実現するに最も確実な機関であることは明らかである。
 よって、国立国会図書館は、その責務の重大なるを痛感して、すみやかに科学技術一次資料を集中網ら的に整備し、もってわが国における中心的存在となるべきである。
 当面の目標は、およそ次のように設定するのが妥当である。

  1. 外国雑誌4万5,000種の収集
     科学技術全部門にわたり、英国図書館と同程度のものをすみやかに収集する。そして、この収集計画の際には、創刊雑誌の増加および年々の価格の上昇に対する財政的配慮が十分になされなければならない。
  2. 技術レポートの充実
     アメリカ政府研究開発レポートに代表されるいわゆる技術レポートの収集については、国立国会図書館はわが国で最も整備された機関であるが、なおかつ、各国で刊行されているものの20%は収集されていない。これを早急に補なうことにより、技術レポート類の完全な整備をはからねばならない。
  3. 学位論文等の収集
     外国学位論文は、国内で他に一括収集する機関がないので、国立国会図書館は現在の範囲を拡大して、各分野にわたり網ら的に収集すべきである。また、国際会議資料等についても同様である。

二 科学技術二次情報の提供

 電子計算機と通信網による二次情報の提供は、諸外国において大規模に実施されつつあり、わが国においても、日本科学技術情報センターをはじめ諸機関において実用化の域に達している。国立国会図書館は、これらの国内関係諸機関と協力しつつ、その組織網の要としての役割を果すべく努力をするとともに、その収集資料を活用するため、現在の業務機械化を強力に推進し、迅速化をはかって、内外の要請にこたえなければならない。とくに、次の事業の充実をはかる必要がある。

  1. 国立国会図書館所蔵欧文雑誌目録のうち、科学技術部門のものを迅速に刊行し、配布すること。
  2. 雑誌記事索引の科学技術編を改善充実すること。とくに
     イ. 国内で刊行されている科学技術雑誌(欧文誌を含む)を網ら的に採録すること。
     ロ. 刊行の迅速化をはかり、当面月刊を実現すること。
  3. 技術レポート、外国学位論文、国際会議資料等の受入速報を、迅速確実に刊行し、配布すること。
  4. 国内における各種の二次情報サービスについて、常にその動向を把握して、関係者にその情報を提供すること。

わが国の研究情報の海外への提供

 わが国で刊行される学術研究情報は、年々大きな数量に達している。これらの一部分は、国際的な二次情報サービスにより諸外国に報知されているが、大半は、ほとんど海外に知られる機会をもたないままになっている。このような事態を改善し、わが国の科学技術情報を諸外国に提供するために、いかなる方法をとるべきかについて、国内一次資料の最も豊富な収集機関である国立国会図書館が、関連情報機関とともに調査検討することは、極めて有意義であり、その結果の実施についても、同館が中心的役割を果すことを期待する。
 以上の施策を実施するために、国立国会図書館は、画期的な予算上の措置を講ずベきである。

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