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第9回納本制度審議会議事録

日時:
平成15年10月22日(水)午後2時5分~4時
場所:
国立国会図書館 館議室
出席者:
衞藤瀋吉会長、合庭惇委員、朝倉邦造委員、内田晴康委員、見城美枝子委員、塩野宏委員、清水勲委員、高橋真理子委員、竹内悊委員、紋谷暢男委員
要約:
(1)社団法人日本出版取次協会会長の交代により金田万寿人委員の委嘱を解き、新たに小林辰三郎委員を委嘱した旨の報告が事務局からあった。
(2)塩野代償金部会長から、代償金部会における調査審議の経過及び議決に関する報告があった。
(3)黒澤館長から独立行政法人等の出版物の納入義務の在り方に関する諮問があった。
(4)上記諮問事項を調査審議するため、「独立行政法人等の出版物納入義務に関する小委員会」が設置され、衞藤会長が同小委員会小委員長に塩野宏委員を、所属委員には小幡委員、高橋委員及び百﨑委員を指名した。
(5)ネットワーク系電子出版物の収集の課題に関する小委員会(第1回)の終了、映画フィルムの収集等に関する文化庁との協議の経過及び政府・与党のデジタルアーカイブ構想について、事務局から報告があった。
会次第:
1. 開会のあいさつ
2. 委員委嘱等の報告
3. 代償金部会における調査審議の経過及び議決に関する報告
4. 諮問(独立行政法人等の出版物の納入義務の在り方について)
5. 独立行政法人等の出版物納入義務に関する小委員会の設置について
6. 今後の日程(案)について
7. 事務局からの報告
配布資料:
(資料1)納本制度審議会委員の委嘱等について
(資料2)納本制度審議会委員及び専門委員名簿
(資料3)第8回納本制度審議会議事録
(資料4)平成15年6月30日付け納本制度審議会答申(写し)
(資料5)平成15年6月25日付け諮問書(写し)
(資料6)平成15年10月22日付諮問書(写し)
(資料7)独立行政法人等の定義
(資料8)「公用」及び「国際的交換の用」について
(資料9)独立行政法人等の出版物納入義務に関する小委員会の設置について
(資料10)納本制度審議会 今後の日程について(変更案)
(資料11)ネットワーク系電子出版物の収集の課題に関する小委員会(第1回)の終了について
(資料12)平成11年2月22日付け納本制度調査会答申(抄)
(資料13)政府及び与党のデジタル・アーカイブ構想について
(資料14)国立国会図書館法(抄)
(資料15)納本制度審議会規程
(資料16)納本制度審議会議事運営規則

議事録:
1 開会のあいさつ
会長:  今日は秋雨の中おいでいただきありがとうございます。
 出席委員は10名となります。定足数を満たしておりますので、この会を開きたいと思います。
 なお、小林辰三郎委員は新任の委員ですが、今回やむをえない事情で御欠席です。審議会の事情を知悉なさるために、日本出版取次協会事務局長が、オブザーバーとして出席させてほしいという御希望がございました。御異議なければそうさせていただきたいと思います。よろしゅうございますでしょうか。
委員:  異議なし。
会長:  では、配布資料の説明を事務局からお願いします。
事務局: 〔配布資料の説明〕
 資料は(資料16)までございます。(資料1)、(資料2)は委員の委嘱等の報告関係のもの、(資料3)は前回の納本制度審議会の議事録、(資料4)、(資料5)は6月に開かれました代償金部会関係の資料、(資料6)から(資料8)までは今回の諮問関係の資料、(資料9)は小委員会の設置に関する資料、(資料10)は納本制度審議会の今後の日程案としてお諮りするもの、(資料11)から(資料13)までは事務局からの報告に関わる資料、(資料14)から(資料16)までは法規・関係条文でございます。さらにお手元には、納本規定の抜粋の小冊子があります。
 
2 委員委嘱等の報告
会長:  委員の委嘱等の報告ですが、事務局からお願いします。
事務局: 〔平成15年9月1日付けで金田万寿人委員が解嘱され、小林辰三郎委員が委嘱されたことを説明〕
 社団法人日本出版取次協会会長の改選が平成15年7月31日付けでございましたので、これに伴う解職、委嘱でございます。9月1日付けで前日本出版取次協会会長の金田万寿人様への委嘱が解かれ、新しく同会長の小林辰三郎様へ委員の委嘱がなされました。官報に、9月1日付けで発令がなされたという公示が掲載されております。以上が委員の委嘱等に関する報告であります。
会長:  会次第にはございませんが、ここで、今年6月の第8回納本制度審議会の議事録の取扱いについて、事務局から説明していただきます。
事務局: 〔前回出席委員の確認を経て、納本制度審議会議事運営規則の規定に基づき、当館のホームページに公開したこと及び配布資料に同一内容のものを付したこと〕
 議事録につきましては、議事運営規則第16条に基づき、前回出席された委員、専門委員皆様方の御確認、御了解を得まして、当館ホームページ上において既に公開させていただいております。
 
3 代償金部会における調査審議の経過及び議決に関する報告
会長:  次に、会次第の3に入ります。前回の審議会では、代償金に関する諮問があり、これを代償金部会に付託いたしました。その後、部会の議決を経て、この6月30日付けで納本制度審議会の答申が国立国会図書館長に手交されております。
 本日は、議事運営規則の規定に基づき、部会における調査審議の経過と議決について、塩野部会長から御報告をいただきます。
部会長:  それでは御説明いたします。26ページの諮問書のとおり、図書の代償金額について、前回の審議会の付託を受けて、代償金部会で審議いたしました。代償金部会でございますが、5名の部会委員から成り、私が部会長を仰せつかりました。全員が常に出席したのではありませんが、定足数はすべて満たしております。平成15年6月25日の第3回代償金部会、同30日の第4回部会と2回にわたり、諮問事項の調査審議を行いました。第3回部会で、事務局側から資料の説明を受けて、それに基づき、第4回部会で議論をいたしまして議決を行ったわけでございます。
 小売価格の表示のない図書の代償金額について調査審議した前例は非常に少く、昭和35年8月の代償金審議会において1件取り扱ったことがあるということです。記録によりますと、当時の考え方は、まず印刷・製本等に要した実費を当時の平均的と思われる積算基準により算出し、これを納入者の申し出た価格と比較検討して、妥当な代償金額を見出すということです。このケースでは、積算基準による金額を上回る納入者の申出額を代償金額とすることとなったわけです。
 その後、規則の変更、改正もございましたので、今回の事案では、代償金に関する規定であります国立国会図書館法第25条第3項の「通常要すべき費用」の解釈として、いわゆる生産費用(利潤を含まない製作費用から販売経費までの総経費)を製作部数で除した額であるという考え方に従いました。これは、平成11年2月及び7月の『納本制度調査会答申』において確認された考え方でございます。なお、御承知のようにこの答申は直接にはパッケージ系電子出版物を対象としておりますが、生産費用説をとることについては図書等と同じ考え方に基づくものであるとされておりますので、結局は図書についても同じ考え方をとってよいということになります。
 次に、生産費用を構成する諸要素として、出版の企画、印刷、製本、販売に要する費用がございます。具体的な事案においてどのような要素を考慮すべきかを確定することといたしました。自費出版などの様々な出版形態があることから、諸要素の範囲もその形態に応じて変わりうるということでございます。ここで確定されました生産費用の諸要素につきましては、出版当時の積算基準により、同じ部数・体裁の出版を行うのに必要な経費を算出いたします。これが生産費用の原則的な基準となるわけでございまして、通常ですと基準額の範囲で発行者の申し出た金額を代償金額とするということになります。
 ただし、代償金のそもそもの考えに立ち戻ってみますと、昭和24年5月の衆議院図書館運営委員会におきまして、当時の金森国立国会図書館長が、普通の物差しではいかないものにつきましては、特別に考慮して、実際の当事者に何らの損害を及ぼさないように決めたいという発言をしておられます。また、国立国会図書館長の告示である「代償金額に関する件」において、特に小売価格の表示のないものについては納本制度審議会に諮って個別に定めるという趣旨も勘案しなければならないわけでして、生産費用説を機械的に当てはめるのは、本件のような場合には親しまないことになります。つまり、小売価格の表示のない図書等の特別の場合の代償金額は、特別の事情を考慮する必要があります。こういうふうに考えまして答申では、客観的画一的な事情(生産費用説)により難い場合に当たるか、特別の事情が存するかどうかを判断することになりました。何が特別の事情かは難しいところですが、例えば納入者が図書等に特別の感情を持っている場合や当該図書が値上がり等により特別な価値をもっている場合が例として考えられます。本件図書に客観的基準すなわち生産費用説を適用した結果、3,708円という金額が算定されました。そして、特別な事情が存在するかどうかについて、納入者から提出された資料その他の調査から判断したところ、特に考慮すべき特別の事情は存在しないということになったわけでございます。
 部会ではこの考え方に基づきまして、本件図書の代償金額は、郵送費用を除き、納入者が申し出た額であり、客観的基準を下回った額である2,921円とすべきであるという結論を得ました。これが答申案として部会所属委員のうち出席委員全員(塩野部会長、合庭委員、浅野委員、清水委員)の賛成によって議決されました。答申案の扱いですが、第8回納本制度審議会において会長から、部会の議決をもって審議会の議決とするとされましたので、答申案を元に答申が作成され、6月30日付けで国立国会図書館長に手交されたという次第です。
 それから部会において、個別に定める事案の取扱いについて多少議論をいたしました。今回の納入者については長い間お待たせしたわけですけれども、1年に1回は諮問を行うように事務局に要請したわけでございます。その場合、納入者の同意を得るよう努めることは前提となりますし、緊急を要する場合など不都合が生じる場合にはその都度諮問して審議することも考慮することになります。以上が、代償金部会における調査審議の経過及び議決に関する御報告でございます。
 ここから後は私の意見・感想になりますけれども、この2,921円を支払うのに2回会議をいたしましたが、費用対効果はいかがなものかという気がいたしました。できれば、年に1回開催する場合はこれを何かの会議とあわせて行うとよいと思います。今回は本当に久しぶりのことということで、あえて2回正式の会議を開かせていただきましたが、今後は別のやり方をとることも可能と思います。事例が重なりますと、あえて5名全員が集まらなくともよいというやり方も考えていいかと思います。これは私の感想ですが、一言申し上げさせていただきました。
 価格の算定等出版に関する事項については、部会出席委員の御指導に従いながら答申案を作成した次第です。
会長:  ありがとうございました。本当に短い期間で大変複雑な御審議をしていただきました。答申を読んで、こんなに細かく議論しなければならないのかと驚きました。代償金を必要として献本される御本人にとっては大事な問題だということで、このように特別な規定を設けて、代償金部会で独自に決定し、納本制度審議会の決定ということにしたわけです。
 これがモデルとなって、審議をすぐ済ませられるような形にできないものかと思います。そういう決定の仕方ができないものかということをお諮りしたいと思います。
 こうしたケースは10年に1度くらいでしょうか。
事務局:  前回は昭和35年ですから、約40年ぶりとなります。今までのところ、価格のない資料は基本的には寄贈していただくことで問題なく経過しております。今後ともこういうケースが度々起こるとは私どもも考えておりません。
 今回は、非常に綿密にやっていただきましたので、考え方等については今回で路線が敷かれております。今後は、個別具体的なところで特別な事情があるかどうかということだけを勘案すれば、問題は簡単に処理できると認識しております。今回は代償金部会を2回開いていただきましたが、次回以降は簡単なやり方で進められると思っております。
会長:  これが起こったときにも、これはまれなケースだから二度と起こらないのではないかと申し上げたことがあるのですが、万一起こった場合には、非常に簡便にしかも納得がいくように処理ができる方式について事務局で原案を作っていただけますか、それとも会長のもとで作りましょうか。
事務局:  私どものほうで原案を作ります。
会長:  思いつきを議論しても切りがございませんので、部会長の意をくんで事務局で原案を作っていただき、ここで、それを規則等の改正という形で取り上げたいと思います。よろしゅうございますか。
部会長:  代償金部会の運営のあり方については、案をまず部会にお見せいただきたいと思います。部会で了承した上で会長に御承認いただくという段取りがよいかと思います。
事務局:  そうさせていただきます。
会長:  簡便化する方向で規則等を改正したいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
委員:  私は、所用で前回出られなかったので経緯が分からないのですが、価格のないものが今後出回る可能性は大いに出てきています。独占禁止法上の再販売価格は、今はよろしいのですが、政策としては将来、販売価格を書かないやり方に行こうという動きになっています。今後、販売価格のないものが出てくるということを意識して対策を練っておく必要があると思います。
委員:  私は出版社の者ですけれども、本の定価を決める場合には各社各社で原価を計算しておりまして、例えば印税は10パーセント、広告費が10パーセント、流通つまり取次と書店のマージンがこのくらい、直接原価の紙・印刷はこれくらいとあって、それに刷り部数によって定価が違ってきます。この本の定価は安くしよう、あるいは高くしようというのは多少ありますが、定価のない本というのは自費出版であるとか製作部数が限定されているとか何か特殊な事情があると思います。
 今は、本の値段は同一価格でしか売られていませんが、これには消費者団体の反対も強いので先行きは分からないところです。定価を書かないことは、出版社としてはありえないと考えています。今後、このようなケースにどう対応されるおつもりなのかという気がしております。
事務局:  今回の件で図書に定価がついていないのは、知人、家族等に配ることを目的に作られたものだからです。これを国立国会図書館に納本する場合に代償金がほしいということです。こういうケースでは、これまでは基本的に御寄贈いただいてきました。
 再販価格については、別の問題であると思います。重要な御指摘をいただいたと思っております。
会長: この件に関して、事務局から報告があるそうですので、よろしくお願いします。
事務局:  今回の図書の納入者に対しては答申が出た後、すぐに代償金の支払いをいたしまして、答申の趣旨について御本人に書面で通知申し上げました。普通、行政手続でそのように行われているようですので、理由を開示し、こういう理由でこういう金額をお支払いすると通知いたしました。
 
4 諮問
会長:  ただ今、黒澤館長と大滝副館長が入室されます。当審議会に対しまして、諮問があるとのことですので、その諮問を受けることとします。
館 長:  諮問に先立ちまして、先日、代償金に関する答申をいただいておりますので、そのお礼と御説明をさせていただきます。6月の第8回納本制度審議会において諮問させていただきました小売価格の表示のない図書の代償金額の件については、6月30日付けの答申をいただきました。おかげさまで速やかに懸案を解決することができました。個別具体的な問題ではございますが、代償金の本質にかかわる重要な問題であると認識いたしております。お忙しい中、集中的に御審議をいただきました塩野部会長をはじめ、部会所属委員の皆様方の御尽力に感謝申し上げます。
 続きまして、本日の本題でございます諮問の件に移らせていただきます。お手元に配布いたしました(資料6)を御覧下さい。諮問事項は、納本制度において、独立行政法人、国立大学法人及び地方独立行政法人が発行する出版物の納入義務はいかにあるべきか、また特殊法人、地方公社等の法人が発行する出版物の納入義務はいかにあるべきかということでございます。
 このような諮問を行うに至った理由を御説明申し上げます。まず、現行の納本制度におきましては、国、地方公共団体の出版物の納入義務は、「公用」又は「国際的交換の用」のために納入させること、複数部数を納入すべきこと、代償金の交付を要しないこと等いくつかの点において私人の納入義務とは異なっております。従来から、国とは別の法人でありながら国の事務と密接な関係を持つ事務を行う特殊法人、政府関係法人と呼ばれる法人が存在しております。同様に、地方におきましても、地方行政事務に相当する事務、事業を行う公社等がございます。最近、行政機関、特殊法人等の独立行政法人化が進み、平成16年度には100を超える独立行政法人と89の国立大学法人が設置され、地方にも地方独立行政法人が設置される予定でございます。これらの法人の設置、人事、財政及び運営については国等が相当程度関与しております。また、その出版物は政府出版物として国等の発行する出版物と同等の性格を持つものが多いと考えております。現行の法律の解釈といたしましては、これらの法人を国等の概念に含めることは困難と考えますが、これらの法人に国等と同様の出版物納入義務を課すことが適当かどうかという観点から納本制度の在り方を検討していただきたいと存じます。この場合、個々の法人を見ますと国等の関与の程度には差が見られることから、一律に国等の納入義務と同等とすることが適当かどうかということについて検討していただきたいと考えます。
 来年度には、予定されている独立行政法人化がほぼ完了し、国立大学法人、地方独立行政法人が設置されることから、この問題は当館にとりまして喫緊の課題と考えております。時間的に大変厳しいことと存じますが、ここに調査審議をお願いする次第でございます。以上が理由でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、諮問書を会長にお渡しします。よろしく御審議の程お願いします。
会長:  確かに、諮問を承りました。納本制度にとって必要不可欠の問題ですので、これから勉強させていただきまして、後ほど答申を差し上げます。
〔館長、副館長退場〕
事務局: 〔資料(7)及び(8)について、説明〕
 諮問事項は先程館長が読み上げたとおりであります。諮問理由につきましては、館長の口頭説明では独立行政法人と特殊法人等を一緒に説明させていただきました。納本制度のあり方について、これらの独立行政法人等につきまして、国あるいは地方公共団体と同等の納入義務を課することが適当かどうかということについて御審議をいただきたいという趣旨でございます。
 (資料7)は独立行政法人等の定義、(資料8)は国立国会図書館法第24条における「公用」及び「国際的交換の用」という用語の意義についての資料でございます。
 (資料7)ですが、独立行政法人通則法第2条に独立行政法人に関する定義があり、国立大学法人、地方独立行政法人は、独立行政法人と類似したものとなっています。特殊法人の定義は形式的なものですがいくつか立法例があります。地方公社には、さまざまなものがありますが、設置の根拠法を有する土地開発公社等の定義は資料のとおりです。
 (資料8)には、国立国会図書館法第24条における「公用」の意義が、「国会議員の職務の遂行に資するため、行政及び司法の各部門に対する奉仕のため並びに一般公衆に対する奉仕のためその他図書館事務の遂行のため必要と認められる目的」、つまり、国会図書館法第2条等に書かれている国立国会図書館の任務に関する規定と同じであることが示されております。「国際的交換の用」とは、外国の政府出版物や大学等研究機関等の出版物を入手するために、代わりにわが国の政府出版物などの出版物を交換で送付するということでございます。国立国会図書館法制定当時は条約への加入はなかったわけですが、昭和60年に「出版物の国際交換に関する条約」、「国家間における公の出版物及び政府の文書の交換に関する条約」が発効いたしまして、当館はその条約における国の交換機関の役割を担っております。
 国際交換には包括交換、特定交換、選択交換の3種類があり、特に包括交換は非常に大きな割合を占めております。外国刊行資料が国際交換を通じて入手される割合としましては、図書の17.7%、逐次刊行物の28.2%、マイクロ資料の21%、光ディスク・CD-ROM等の40%強を占めております。これらの主な資源が政府出版物でございます。
 
5 小委員会の設置
会長:  今後、独立行政法人等を納本制度にいかに位置付けるべきかという問題については、法的観点から専門的に検討が必要な事項でありますから、やはり小委員会を作らざるを得ないと思います。そこで、「独立行政法人等の出版物納入義務に関する小委員会」の設置の提案をいたしたいと思います。
 また、この小委員会に属すべき委員として、小幡委員、塩野委員、高橋委員及び百﨑委員の四人を指名いたします。今日、小幡委員と百﨑委員は欠席されておりますが、お二人からは既に了解を得てあります。小委員長には塩野委員を指名いたします。
委員:  「ネットワーク系電子出版物の収集の課題に関する小委員会」の委員を務めている関係で、諮問の範囲を確認させていただきます。諮問では「独立行政法人等が発行する」となっておりますが、国立国会図書館法では、「国の諸機関により又は国の諸機関のため」に発行された場合と規定されております。独立行政法人「のため」に発行された場合も含めて考えるのか、それとも単に独立行政法人等が「国の諸機関」という言葉に含まれるのかについて検討すればよいのでしょうか。それとも、「のため」にという言葉が含む範囲については、改めて「ネットワーク系電子出版物の収集の課題に関する小委員会」で検討すればよろしいのでしょうか。そのあたりはどういう区分けになるのでしょうか。
事務局:  国立国会図書館法第24条では、民間の主体が国の諸機関のために発行した場合に国の諸機関が納入義務を負うと規定されております。委託により発行し、国が買上げをしているといった場合が考えられます。
 諮問では、国の諸機関が発行したものと表現しておりますが、当然「国の諸機関のため、発行された」場合も想定して調査審議をお願いしたいという趣旨です。
会長:  小委員長、よろしゅうございますか。
小委員長:  私は諮問の調査審議を行う小委員会を受け持つ立場ですから、国立国会図書館がそういう趣旨の諮問をするということであれば承ります。
会長:  そういう了解で進めたいと思います。
委員:  館法の文言に「国際的交換の用」とあり複数部数納入することとされていますが、これまで実績として、どのくらいの部数を納入させてきたのですか。相当な部数である感じがいたしますが。
事務局:  当館に備える分を除きますと、一番多いものですと、中央省庁については、最大で30部納入させています。20数部を数か国に送っているものもございますし、国立大学については、館長の定めるところにより5部となっております。3か国くらいに送っているのが普通だと思います。中には1か国ということもあり、ばらつきはあります。大体の傾向は以上のような数字になると思います。
委員:  独立行政法人自身で国際交換を行っている例はないのでしょうか。
事務局:  条約に基づく交換は、当館が国の交換機関ですので、責任を持って行っております。大学等で大学同士で交換している例はいくらでもございますし、独立行政法人が対応する機関と交換しあっているのもいくらでもあると思います。しかし、これらは制度によるものではないと理解しています。
委員:  2部納本するだけでも大変な分量だと思いますが、その中にはパンフレットなどだけでなく分厚い本もあるのではないでしょうか。今後の蓄積などの問題も絡むのではないかと思い質問しました。
会長:  国立大学が外国の大学と契約を結び、なるべく等価交換になるように書籍の交換契約を結んでいるところは非常に多いわけですが、国立国会図書館としてはそういう交換は私的なものとみるわけですね。
事務局:  そのように考えております。条約に基づいた制度としての交換でなく、個々の主体が契約ベースで行っているものと理解しております。
会長:  大学間の交換である著書が10冊納められ、それに加えて国立国会図書館からも納められるという例もあるわけですね。あまり好ましくないことと思いますけれども、今日は理解だけしておきます。
委員:  この答申の内容の広がりと申しますか、他への波及があるので、御参考までに申し上げたいと思います。ここにいわれていることとほとんど同じことが、図書館法第9条に書いてありまして、公の出版物の収集ということで、「政府は、都道府県の設置する図書館に対し、官報その他一般公衆に対する広報の用に供せられる印刷庁の刊行物を2部提供するものとする。国及び地方公共団体の機関は、公立図書館の求めに応じ、これに対して、それぞれの発行する刊行物その他の資料を無償で提供することができる」という条文があります。この第9条は、配布を受ける側からすると大変ありがたい制度ですけれども、特に近年無視されております。図書館が必要といっても独立採算でやっているのであげるゆとりがないといわれます。今回の諮問は国立国会図書館に対してであり、公共図書館を対象とする図書館法と話の中身は違いますけれども、この国にしっかりとした情報や知識の記録を将来のために確立しておこうと考える点では同じだと思います。これからの審議がどうなるか、私は非常に気にしております。あまりたくさんいろいろなものが送られてきても困るということはありましょうし、その他いろいろ具体的な問題はあろうと思います。しかし、先ほど申しました図書館法第9条が、経済的理由から無視される傾向があって、これは非常に困ることです。そこで、国立国会図書館への納本ということは、おそらくこのことを考え直す場合の前例にもなると思いますので、その辺りを御審議の時にお含みいただければという気持ちを持っております。
会長:  難しい問題だと思いますが、よろしくお願いいたします。
事務局:  私どももこれまで、独立行政法人になる前の特殊法人や認可法人の取り扱いについて非常に難しい問題を抱えてきましたが、基本的には第24条中の国と同等と扱ってきました。しかし、国であると判断してよいか難しい部分もあり、このたび既に独立行政法人に移っている機関については、従前の例に倣って納本していただきたいとお願いし、複数部数の納本確保に努めてきているのですが、中には自分のところは国の機関ではなくなったので、1部でお願いしたいというところもあります。そうしたケースでは、必要であれば当館が購入して国際交換の用に供することもしております。
 独立行政法人への移行がほぼ完了したところで改めて、これらは第24条中の国に入れるべきなのか第25条のいわゆる民間なのか、独立行政法人についてどのように区分けをすべきかをここで御審議いただくことは、当館にとって重要なことであると認識しております。
委員:  今回の審議の範囲に関係すると思いますが、「国の諸機関」に当たるかどうかの解釈論をしようということなのでしょうか。それとも、この条文でいう「国の諸機関」には当てはまらないので、別途法改正も含めて考えようということでしょうか。
 直観的に申しますと、「諸機関」ですから、特殊法人等の法人を含むようにははなはだ読みにくいと思います。解釈論にとどまる趣旨の諮問であるのか確認したいと思います。
事務局:  先程、館長からも口頭で触れさせていただきましたが、解釈論としては、国とは別の法人について館法第24条に含めて解釈するのは難しいと思いますので、立法論、制度改正論を見据えて議論していただきたいということです。
会長:  今、県にしても、市にしてもPR雑誌を各課で勝手に出したり、その時々で薄いパンフレットを印刷したりしています。私は複数の県と関係があったものですから、毎日のように資料が来ています。国立国会図書館ではそういう資料をすべて受けているわけですね。県も市も村も送っているわけですね。
事務局:  実務としては、リーフレットを図書館資料に含めて扱うのは事務的に困難ですので、納入は見合わせております。ある程度のページ数がある小冊子までを図書館資料として扱わせていただいて、それ以外は各資料室なり事務のところで利用できるものは利用させていただいていますが、永久に保存する図書館資料としては扱っておりません。
会長:  映像は機械に入力できますけれども、紙の場合は映像と違って、そうはいかないと思って質問したわけです。
 本日のところは小委員会の設置をお認めいただきまして、今後の小委員会での議論の進展に待ちたいと思います。よろしく御審議をお願いします。
 
6 今後の日程(案)
会長:  次は今後の日程でございます。事務局から今後の日程案について説明をしていただきます。
事務局: 〔今後の日程(案)について説明〕
 (資料10)を御覧ください。6月にも同様の資料をお示しいたしましたが、今回新たな諮問がなされた関係で、そのための審議会の日程を新たに加えた点が変更点でございます。来年度から独立行政法人が出そろい、国立大学法人も設置されることから、来年度に制度改正を行いたいという希望をもっております。そのために、小委員会を年内に1、2回開催していただき、第10回納本制度審議会において答申をいただければありがたいと考えております。このような考えに基づきまして、今後の日程案を作成させていただきました。備考欄は、制度改正を予想した場合のスケジュールでございます。周知・実施準備期間が必要となると考えますので、16年度当初からの制度改正は難しく、16年度後半以降に改正された制度を実施したいと考えております。小委員会では非常に短期間の間に難しい問題を審議していただくことになるかと思いますが、あくまで案、予定でありますので、御意見を賜りたく存じます。
会長:  この日程については、御了承いただきたいと思います。
 
7 事務局からの報告
会長:  続いて、事務局からの報告が3つございます。
 第1は、「ネットワーク系電子出版物の収集の課題に関する小委員会」(第1回)の終了についてです。公文委員が本日どうしても出席できないということで、事務局に御説明をお願いいたします。
事務局: 〔ネットワーク系電子出版物の収集の課題に関する小委員会について説明〕
 (資料11)を御覧ください。なお、公文小委員長にはこの件について御了承をいただいております。開催された日時は9月25日で、だいぶ活発に審議が行われまして2時間を超えました。
 出席した委員、専門委員は資料に掲載されている7名でございます。
 調査審議内容は、6月の審議会において再確認されました審議事項のうち、1回目の小委員会において審議されることとされた、国及び地方公共団体の発行するネットワーク系電子出版物の収集範囲・方法であります。2回目の小委員会においては、学術的な内容の情報の収集範囲・方法に関する審議を予定しております。
 ここに調査審議内容の細目と概要を列挙しております。「(1) 国及び地方公共団体の定義・範囲」では、1番において、現行の納本制度での独立行政法人等の取扱いを決めてから、それと同じ基準を用いることが適当であるとして、納本制度審議会において審議されることが適当であるとの結論に至りました。地方公共団体についても同様でございます。3番の「国等のため、発行した」、つまり民間が発行した場合で国の機関のために発行した場合については非常に議論がございまして、「国の諸機関」の範囲、国の機関と同等に扱う範囲を画定した後で改めて検討することとなりました。国等の発行する出版物につきまして、通知の必要性、送信義務を課した場合送信を行う際に生じる問題点、最適な収集方法について議論をいたしまして、いわゆる人格権侵害や表現の自由を萎縮させるおそれを減少させる必要に基づく、あるいは収集範囲に該当するかを判断するための通知は必要ではないとされました。実務的に、通知に類似した手法を採用することは構わないとされました。送信義務については、民間に対する場合とは異なり、送信義務を課すことも適当であるとされました。自動的収集については、送信義務よりも負担が少ない方法であるため、館の判断により実施することができるとされました。収集の頻度、どういったタイミングで集めるかという難しい問題についても議論が行われ、第2回の小委員会において引き続き検討されることとなりました。特別な留意が必要とされるデータベースにつきまして、そもそもデータベースとは何かという難しい問題があるわけですが、適切な更新維持に多大な資源を要することからデータの収集にとどめることを基本とする、また商業的なデータベースについてはデータの収集も行わないということとなりました。「(4)収集範囲から除外すべき出版物」としましては、放送番組、WAN、イントラネット上の出版物につきまして除外すべき理由の精査をいたしました。放送番組につきましては、3月までに存在した小委員会の方で放送法による収集に委ねるという結論が出されておりますが、その理由を詳細化しましたところ、その論旨を分かりやすくするため、再度吟味することになりました。
 イントラネットにつきましては、収集対象としないことは前の小委員会において既に結論として出されております。今回WANを付け加えたわけですが、WANとインターネットの区別については難しい部分があり、引き続き検討する予定です。第2回の調査審議内容としましては、学術的な出版物と通知等のあり方について調査審議をお願いする予定です。
 小委員会としての今後の日程としましては、本来第2回の小委員会を12月に開催する予定でおりましたが、今回の第9回納本制度審議会において諮問が提出され、独立行政法人等についての審議がなされると了承されましたので、そこでの審議を先行させる必要から、日程を若干変更し、第2回の小委員会を来年1月に開催することといたしました。このような内容で第1回の小委員会は終了いたしました。以上報告でございます。
会長:  もっと緻密な議論があったのだろうと思いますが、内容は要約していただきました。私から一つ事務局にうかがわせていただきますが、データベースの収集について、データベースそのものを収集せず、データの収集にとどめるとなると、コマーシャルなデータベースの場合、大変な金額がかかると思いますが、予算で取るつもりでしょうか。
事務局:  商業的なデータベースについてはデータの収集も行わないということになっております。したがって、ここで考えているのは国等の発行するデータベースと学術的データベースです。例えば電子ジャーナルのデータベースがあるとしますと、電子ジャーナルの単位で集めるということを想定しております。
会長:  実は質問がたくさんあるのですけれども、小委員会でいずれ御判断なさることでしょうから、後の質問は省略いたします。
委員:  私は所用で第1回の「ネットワーク系電子出版物の収集の課題に関する小委員会」に出席できませんでした。(4)収集の範囲から除外すべき出版物の2番のところで、WANとインターネットの区別について、なお検討を要するとありますが、具体的にはどのようなことが議論されたのでしょうか。
事務局:  WANもインターネットも公衆回線を用いて通信を行うという点では同じであって、インターネットはインターネットプロトコルを使っているだけで、本質的にはWANとインターネットは同じだという指摘がありました。私どもがそこの認識がございませんでしたので、ただ今調査中のところでございます。
委員:  WANとインターネットが同じという考え方は初めて聞きました。具体的に、霞ヶ関WANはファイアーウォールで厳重に防御されていて、インターネット経由では侵入できないですね。WANとインターネットは、議論の余地なく異なるものだと私は理解しております。
事務局:  事務局側で引き続き調査しまして、次回に議論したいと考えております。
会長:  次回の小委員会に引継ぎをお願いいたします。二つ目の報告は、映画フィルムの収集等に関する文化庁との協議の経過についてであります。新聞記事などである程度御存知の方もいらっしゃるかと思いますが、ここで改めて事務局から正確な情報をいただきたいと思います。
事務局:  この件につきましては、本年6月の第8回納本制度審議会におきまして、4月に文化庁の「映画振興に関する懇談会」が出しました提言「これからの日本映画の振興について」において、映画フィルムの納入の義務付けを行う必要があるという指摘がなされまして、関係機関である当館と文化庁との間で協議を進めることになったという報告をさせていただきました。これについては、資料の12ページ後半を後ほど御参照ください。
 これを受けまして、7月と8月に文化庁文化部芸術文化課との間で協議を行いました。先方の要望は、現行国立国会図書館法を根拠にして映画フィルムを収集し、国立近代美術館の一部門でありますフィルムセンターにおいて保存して利用に供するというものでございました。これに対しましては、当館が、納入により収集した資料を一貫した利用・保存まで責任を負うべきであり、他機関に移すことでは責任を果たせないことになるという問題を指摘したところでございます。
 文化庁側のこの要望以外の選択肢としては、劇場公開用の映画フィルムを行政側で収集し、それ以外の一般に頒布されている教材用等の映画フィルムについては当館が収集・保存し利用に供するという、双方での一種役割分担的な案を文化庁との協議のそ上に乗せまして検討しているところであります。国において映画フィルムの保存を国全体としてはかる課題の早期解決、フィルムセンターにおける映画収集の実績が既にあるという現状、代償金の問題等を総合的に判断しますと、こちらから協議の俎上に乗せた案も妥当性があると考えている次第です。特に、頒布目的で複製されたものという出版物の要件を満たすかどうかという点について、劇場公開用映画フィルムには微妙なところがありますので、そういう性格を考慮しますと、切り分ける考えにも合理性があるのではないかと考えております。
 平成11年の納本制度調査会の答申(資料12、40ページ)の付言として、館は映画フィルム関係機関と十分な協議を踏まえて網羅的収集機関としての役割を果たすのが望ましいという御意見をいただいております。この御意見と今の考え方との関係につきましては、文化庁、フィルムセンター、映画フィルム製作者団体と協議のうえで役割分担がなされまして、国全体として網羅的収集が果たされれば許容されるのではないかと考えております。この案も含めまして、今後文化庁との協議を踏まえまして、改めて審議会にお諮りすべき問題であると考えております。以上、前回の報告以降の経過につきまして報告させていただきました。
会長:  過去の実績としては、フィルムセンターと文化庁と国立国会図書館では量的にはどれくらいの違いがあるのですか。
事務局:  フィルムセンターは、今21,000本の映画フィルムを所蔵しているということです。当館はゼロです。文化庁自体は政策立案機関ですので、フィルムはまったく持っておりません。実施機関としてのフィルムセンターがすべて持っております。
会長:  フィルムセンターは文化庁の傘下にあるのですか。
事務局:  以前は、下部機関でしたが、今は独立行政法人国立美術館の一部門として置かれておりまして、課レベルの付属施設的なものです。
会長:  国立国会図書館の交渉相手は、文化庁ではなくフィルムセンターの方々ですか。
事務局:  提言は文化庁からなされましたので、まず文化庁を相手方とし、フィルムセンターの担当者も交えまして、一体となって協議しております。
会長:  官庁同士で十分な協力ができるようによろしくお願いいたします。第3の報告に移らせていただきます。政府及び与党のデジタル・アーカイブ構想についての報告を、事務局の方お願いいたします。
事務局: 〔デジタル・アーカイブ構想の概要について説明〕
 総務部企画・協力課電子情報企画室から、(資料13)に沿って「政府及び与党のデジタル・アーカイブ構想について」の内容を紹介させていただきます。「(1)経緯」としまして、平成13年に政府・IT戦略本部が「e-Japan戦略」を策定し、これに対応して自由民主党政務調査会内に「e-Japan重点計画特命委員会」が組織され、その下にデジタル・アーカイブ小委員会が設けられました。今年この小委員会は8回ほど開催されており、6月18日の同小委員会において、関係省庁からデジタル・アーカイブ関連の取組みに関する報告があり、当館からもデジタル・アーカイブの取組みについて報告しました。この結果が取りまとめられ、7月29日に「デジタル・アーカイブの推進に向けた申し入れ」として自民党のe-Japan重点計画特命委員会へ報告され、その後、自民党の政務調査会から政府へ要請がなされました。
 (2)以下が要請の内容であり、「デジタル・アーカイブの推進に向けた申し入れ」であります。その抜粋を資料に掲載しました。デジタル・アーカイブはインフラであり、これを通じて、コンテンツの「創造→蓄積・保存→利活用→更なる創造」のサイクルを確立することが有用であるとして、早急に実施すべき重要施策としていくつか柱立てがされております。まず、「国立デジタルアーカイブ構想」の推進では、1番目に、国は、公共機関が保有するデジタル・コンテンツに、国民・企業が簡便にアクセスできるようにするため、関係府省(国立国会図書館、独立行政法人を含む。)が構築するデジタル・アーカイブとそれらのネットワーク上の統合ポータルサイトからなる「国立デジタル・アーカイブ」構想を推進すること、とされています。2番目に、関係府省等は、公共的なコンテンツ・情報のデジタル・アーカイブ化を一層推進することとありますが、民間に関係することで当館には関係ありませんので省略します。3番目に、関係府省等は、各アーカイブ間の互換性の確保・標準化に協力すること、4番目に、国は、「国立デジタル・アーカイブ」構想において次の点に取り組むこととして、1点目として、「文化遺産オンライン」、「アジア歴史資料センター」等と連携し、道しるべとしての役割を果たす、2点目として「国立国会図書館は、関係府省等の協力のもと、「国立デジタル・アーカイブ」の統合ポータルサイトを運営するとともに、国が保存し国民に提供すべきコンテンツのアーカイブ化に努めること、また、関係府省はその際に生じる課題の検討と解決にも協力すること、3点目として、デジタル・アーカイブに関する国際的な動向と整合性を図り、諸外国との連携に努める、とされています。5番目に、国は、デジタル・アーカイブとそのネットワーク化の推進に向けて、長期保存技術、メタデータ技術、検索方式等、必要な研究開発を推進すること、とされています。
 第3に、「ジャパン・ウェブ・アーカイブ」構想の推進として、1番目に、インターネット時代の知的財産であるウェブページのアーカイブ化について、関係府省等の協力のもと、国立国会図書館を中心に、公立図書館、NPO等の参加を得て、ネットワーク上の総合ポータルサイト「ジャパン・ウェブ・アーカイブ」構想を推進すること、2番目に、国は複数の主体によるウェブ・アーカイブが相互に連携し、一つのウェブ・アーカイブとして機能するように研究開発、技術確立を図ること、3番目に、ジャパン・ウェブ・アーカイブ」構想においては、欧米の最新事例を踏まえた世界最先端のものを目指すこと、また、収集に当たっては、欧米諸国、近隣アジア諸国との連携・協力に努めること、とされています。
 第4番目の「その他」では、統一的かつ整合的なデジタル・アーカイブ政策を推進するために、内閣官房を中心として関係府省等の間の調整・連携を効果的に行うこと、とされています。以上が自民党からの要請として政府に働きかけられたものでございます。
 「(3)府省の動向と当館の取組み」としまして、1つ目に、文化遺産情報化推進戦略―これは「文化遺産オンライン構想」と俗に呼ばれております―があり、これは文部科学省と総務省が共同で推進しているものでございます。コンテンツは文部科学省が作成しております。総務省では6月に「デジタル資産活用戦略会議」を立ち上げまして、デジタル資産を社会、経済、文化等の多様な活動に活用するための方途を総合的に検討しているということです。総務省の方から当館へ、この会議への参加要請がありまして、6月30日に開かれました第1回の会議では、当館でのデジタル・アーカイブとウェブ・アーカイブにおける活動を報告しました。
 2つ目に、関係府省の16年度分の予算要求の例でございます。内容は、まだはっきり分かっていないので項目だけですが、文部科学省では「文化遺産オンライン構想」、「知的資源の電子的な保存・活用を支援するソフトウェア技術基盤の構築」が挙げられ、額が要求ベースで挙げられております。(ウ)、(エ)では、総務省からアーカイブコンテンツのネットワーク利活用の促進及びウェブ情報のアーカイブ化の促進が挙げられており、これらについては総務省と当館の間で何らかの実験の協力をしていくことについて今後話し合いを進めていく予定でおります。
 当館の取組みとしましては、既に各方面で御紹介させていただいているとおり、明治期図書等の電子化と提供、WARP、D-navi等の実験・提供を行っているということでございます。
会長:  ここに省庁の間の難しい問題が起こっているわけでございます。一部新聞にも大きく出ましたが、当審議会としてこれにどう対処すればいいのか、御意見等がありましたら事務局にお伝えいただきたいと思います。
 総務省が考えていることはこの審議会で考えていることとかなりオーバーラップしますね。横の連絡はどうなっているのでしょうか。
事務局:  総務省は、コンテンツそのものの構築を行うところではなく、いろいろな関係機関に働きかける立場にあります。Webに関しては、当館はアーカイブをするところであり、総務省はアーカイブの技術的な支援・標準化に関する技術開発支援といった役割を果たすことになると思います。
 横の連絡とおっしゃいましたが、今年度については直接の実験の協力には至っていませんけれども、来年度になりますと、何らかの形で技術的な実験協力をすることになると思います。
会長:  学術情報センター設立の場合などを思い起こしますと、総務省が独立した機関を作るという方向にはならないですか。
事務局:  総務省としては、そのようには考えていないと思います。行政省庁全体をとりまとめていく内閣官房と協調しながら、総理府は行政省庁全体の情報管理と技術基盤整備を行うと思いますが、自らの活動をそれ以上に広げていくことは考えていないだろうと思っております。
会長:  統一的な収集機関ということになりますと、国立国会図書館と仕事の上で重複しませんか。
事務局:  今後デジタル・アーカイブを作成しそれを共有していく面では、重複する部分は多いと思います。また文部科学省・国立情報学研究所(NII)で、メタデータの標準化に関して実績をあげております。行政省庁、学術情報に関する情報を一元的に集め、それを見せていく話になっていきますと、当館が行うにせよ「文化遺産オンライン構想」で行うにせよ、そうした技術が必要になっていきます。
 そういうわけで総務省も文部科学省も必要な分野で技術面で協力しあって、全体のコーディネートをどこかが行っていくということになると思います。
 これをまとめるのは内閣官房となっていますが、内閣官房自体は具体的な作業についてはあまりよく知らないと思いますので、どこが具体的にリーダーシップを持ってまとめていくかということが一番大きな課題であると認識しております。
会長:  国立国会図書館は、技術や人物を持っているわけですね。
事務局:  持っていたいと考えております。これらが最大の課題であると考えております。
委員:  デジタル・アーカイブをめぐる動きは、総務省以外に経済産業省にもあります。予算規模は小さいですが、ユネスコの動きもあります。
 自民党の政務調査会における構想では、デジタル・アーカイブの定義もなしに、インターネット上を流通している日本発信のデータをなんとかしよう、なおかつ海外への情報発信を高めようなどといわれています。納本制度との関連で、ウェブ上の情報をどう収集するかを国立国会図書館なりの決め方で決めていけばよいと思います。政府予算で瞬間風速的に予算がつくとしても、きちんと継続的にやっていくのは、デジタル・ライブラリーの実績のある国立国会図書館でしょう。納本制度審議会としては、インターネット上のデータについての国立国会図書館にふさわしい収集・保存方法という問題について、地道に議論していけばいいのではないかと思います。
会長:  総務省に予算がつくと、予算を消化するためにその事業が自ずと膨らんでいくことになります。そういうところが新しい方向への流れの中心になることは今までしばしば起こったことです。与党の力によって、古くは成田空港、新しくは六ヶ所村の核融合実験施設が建設された例がございます。国立国会図書館の予算が削られていき、国立国会図書館が扱うのは、紙の本だけでよかろうとなるのではないかと私は非常に心配しております。き憂に終わるとよいのですが、[官庁の担当者間の]横の連絡がまだ十分ではないように思えます。
事務局:  自民党の案の中にも触れられていますが、デジタルの世界やウェブの世界はどこか一つの機関で完成するものではありませんので、全体で協力してやっていくことになります。その際、国立国会図書館としてどこの部分を担うのかが問題であり、館としては、国の知的生産物を永久に保存するという使命の延長線上において当館がすべきことは何かと模索しており、今、まず政府出版物・学術的なものを網羅的に収集してアーカイブ化し、利用・提供に供したいという考えの中で進めております。これは政府・与党においても十分に認識していただいているところと思います。「大きな嵐」が来て納本制度審議会の調査審議が不要となってしまうということは、今の段階では想定されないと思っております。
 
8 閉会
会長:  以上をもちまして、第9回納本制度審議会の会次第は、すべて終了いたしました。
 非常にお忙しい方が多いので、審議会の開催日を決めるのに事務局は大変苦労しておりますけれども、今後とも御協力をお願いいたします。どうもありがとうございました。
(閉会)

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