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書誌データの基本方針と書誌調整:書誌調整連絡会議

平成23年度書誌調整連絡会議報告

2012年1月27日(金)、国立国会図書館(東京本館)において「平成23年度書誌調整連絡会議」を開催しました。この会議は、国内の書誌調整に関する情報の共有と意見交換により、書誌データの作成及び提供の充実と発展に資することを目的として、定期的に開催しているものです。
今年度は「RDA、その動向、構造及び課題整理」と題して開催しました。AACR2(英米目録規則第2版)の後継であるRDA(Resource Description and Access)は、FRBR(書誌レコードの機能要件)及びFRAD(典拠データの機能要件)を基盤として、利用者の視点から従来の目録法の見直しを図り、デジタル情報資源のメタデータとの調整を行い、さらに、図書館以外のコミュニティ(文書館、博物館等)との連携も視野に入れた、従来の枠組みを超えた目録規則です。2010年6月の刊行後、米国議会図書館(LC)で導入テストが行われる等、海外では採用に向けた検討が進められています。RDAへの対応も含めた国内の目録の方向性について意見交換を行い、国立国会図書館の課題を整理する目的で、今回のテーマを設定しました。

平成23年度書誌調整連絡会議 出席者

金沢 美都子
早稲田大学図書館資料管理課
河野 江津子
慶應義塾大学メディアセンター本部
高橋 菜奈子
国立情報学研究所学術コンテンツ課
谷口 祥一
筑波大学大学院図書館情報メディア研究科教授
藤原 秀之
早稲田大学図書館資料管理課長
渡邊 隆弘
帝塚山学院大学人間科学部情報メディア学科准教授
和中 幹雄
大阪学院大学国際学部教授

(以上敬称略、五十音順)

(国立国会図書館)

金箱 秀俊
収集書誌部長
加藤 浩
収集書誌部副部長収集・書誌調整課長事務取扱
佐藤 尚子
収集書誌部司書監
大柴 忠彦
収集書誌部収集・書誌調整課課長補佐
清水 悦子
収集書誌部収集・書誌調整課課長補佐
中山 正樹
電子情報部長

<聴講者>(国立国会図書館)

大塚 奈奈絵
収集書誌部主任司書
山地 康志
収集書誌部主任司書
田中 智子
収集書誌部収集・書誌調整課課長補佐
石渡 裕子
収集書誌部国内資料課長
堀 純子
収集書誌部逐次刊行物・特別資料課長
小林 一春
収集書誌部外国資料課長
山崎 幹子
収集書誌部外国資料課課長補佐

*参加者の所属及び肩書きは、全て会議開催当時のものです。

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開会挨拶

金箱秀俊(収集書誌部長)

国立国会図書館では、平成19年度の書誌調整連絡会議で議論していただき策定した「書誌データの作成・提供の方針(2008)」を再整理・具体化した「国立国会図書館の書誌サービスの新展開」に基づき、事業を進めてきた。2012年1月には、大規模なシステムリニューアルによって「国立国会図書館サーチ(NDLサーチ)」が統合的な検索サービスの出発点となり、また「国立国会図書館典拠データ検索・提供サービス(Web NDL Authorities)」も正式公開となるなど、次の段階に上がるときとなった。
本年の書誌調整連絡会議のテーマとしたRDAは、利用者の視点、デジタル情報資源のメタデータとの調整など、これまでの枠組みを超えた目録規則である。情報と意見の交換を通じ、有意義な会議としたい。

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報告(1): RDAの概説と動向

渡邊隆弘(帝塚山学院大学准教授)

1.RDA策定の経緯

AACR2 2002年版策定後「AACR3」の草案が考えられたが、2005年4月に批判を受けて撤回され、名称が「RDA」と変更された。2007年10月の会議で全体を抜本的に再構成して、2010年6月にRDA Toolkitが刊行された。1997年にFRBR、2009年にICP(国際目録原則覚書(国立国会図書館デジタルコレクション))、2010年にRDA、2011年にISBD(国際標準書誌記述)統合版が公表されて、英語圏では新しい目録の概念モデル、原則・標準、規則がほぼ出揃ってきたといえる。

2.RDAの規則構造

RDAはFRBRに沿った構造となっている。FRBRは四つのユーザータスク「発見」「識別」「選択」「入手」を根拠として、「実体」「属性」「関連」の三つがキーワードとなる「実体関連モデル」を用いている。RDAもこれに合わせる形で「実体があってそれぞれに属性・関連がある」規則構造となっており、前半のセクション1~4で実体の属性、後半のセクション5~10で実体間の関連を扱っている。

3.RDAの特徴

  • AACR2では、書誌レコードに「標目」「参照」を記録することになっており、規則上に典拠レコードがでてこなかった。RDAでは、著作、個人、概念等を「実体」として設定し、「属性」を設定して「関連」をつけていくというように、典拠レコードが書誌レコードと結びつくことが明確に位置づけられ、典拠情報の地位が向上している。
  • セクション1と2で資料の物理的側面(体現形・個別資料の属性)と内容的側面(著作・表現形の属性)を分離し、「資料種別」の概念を再編成している。次世代OPACなどで「FRBR化」が注目されていることもあり、内容的側面をこれまでよりも重視している。
  • 「属性」と「関連」を明確に区別し、「関連」を重視している。典拠形アクセスポイントを用いる方式とともに、識別子による関連表現も想定している。さらに「関連指示子」という形で関連の種類を細分化していく手法をとっていて、曖昧さのないデータ表現が図られている。
  • 従来、注記や「その他の形態的細目」に記録していたものを、RDAでは個別のエレメント に独立させた。また転記によらない項目では値の語彙リストを用意しており、目録規則で定義・管理される語彙が増強された。
  • 構文的側面(区切り記号法やエレメントの順序)はRDA本体では扱わず、付録にISBDなどとのマッピングをつけている。意味的側面に特化することで、RDF(Resource Description Framework)などの、ウェブ標準の構文規則を用いる可能性が広がった。
  • 機械可読性の向上を意識している。RDA本体には含まれていないが、「エレメント分析」という、エレメントごとに値の性格や用いるスキーマを整理した、アプリケーションプロファイルのもとになるような文書も作成された。
  • あらゆる資料種別への対応ということで資料種別概念の整理はされているが、ネットワーク情報資源への対応はAACR2の2002年版で一応なされていたので、それを超える何かがあるかについては疑問を感じる。
  • 図書館以外のコミュニティへの相互運用性を高めるために、アーカイバルな資料を意識して「家族」という実体を追加したが、どこまで実効性があるか。
  • 国際性を追求するために英語圏偏重を是正し、用いる言語・ 略語を見直している。

4.動向

  • 2011年6月にRDA導入テストの結果が公開された[1]。様々な課題が示されており、LC等における導入は2013年1月以降になると思われる。
  • 2008年からRDA/MARC Working Groupにより、MARC21フォーマットの改訂作業が行われている。2011年、LCは「書誌フレームワークの変革」に向けた取り組みに着手し、”General Plan”を発表して、MARC21に代わるフォーマットの検討を開始し、Linked Dataを重視し、RDFを注視していく方向性を示している。
  • 2007年からDCMI(Dublin Core Metadata Initiative)とのタスクグループにより、RDA語彙プロジェクトが行われている。RDAをセマンティック・ウェブで利用可能な資産にすることを目的として、様々な語彙にURIを付してRDFで表現し、オープンなメタデータレジストリに登録している。

[1] Testing Resource Description and Access (RDA)
http://www.loc.gov/bibliographic-future/rda/(参照2011-02-17)
[参考文献]
渡邊隆弘「新しい目録規則(RDA)から得られるもの:機械可読性の視点から」『図書館界』No.63(2)(通号359),2011.7,p.114-121.

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報告(2): FRBR/FRADからみたRDAそしてMARCフォーマット

谷口祥一(筑波大学大学院教授)

1.RDAの位置づけ

RDAの適用に当たっては、RDAが規定していない部分を、別の形で決めて採用する必要がある。初期段階では、レコード設計やデータ項目設計、エンコーディングフォーマット等についてはMARC21改訂版が採用されるであろう。

2.FRBR/FRADからみたRDA

RDAが依拠するモデルは基本的にはFRBR/FRADに等しいが、FRBRにはない著作と体現形の間の関連を記録するためのエレメントが設けられているなど、部分的に異なる点がある。
FRBR属性とRDAエレメントは概ね対応しているが一部例外がある。例えば、FRBRでは表現形が著作のタイトルとは違った自立的なタイトルを持ちうるとしているが、RDAでは表現形のタイトルを「著作のタイトル+何らかの付加事項」という形で表している。
利用者タスクについて、FRBRでは個別のエレメント、属性、関連ごとに細かい対応付けを行っているが、RDAは章ごとの大きな括りで利用者タスクを想定している。またRDAでは、体現形のエレメントは、あくまでも体現形に関わる利用者タスクの達成だけを意図しているという、モデルとして安定した形に整理している。

3.RDA実装シナリオの選択肢:MARC21レコード、あるいはRDAレコード?

RDAが規定している範囲で最も重要な選択肢は、どの範囲内の著作、表現形あるいは関連著作、関連表現形を記録するのかという点である。RDAには際限がないため、実際にどの範囲まで記録するかは個々の作成機関等で決める。
RDAが規定していない範囲での選択肢としては、レコード設計の問題がある。RDA Database Implementation Scenarios というJSC (Joint Steering Committee for Development of RDA)のドキュメントにシナリオがある。「シナリオ2.リンクされた書誌・典拠レコード」はMARC21改訂版による実装という現実的なシナリオである。書誌レコードの中に、体現形の情報以外の個人、表現形、著作等の情報が混在した形のレコードになる。このシナリオでもRDAレコードを表現できてはいるが、RDAの特徴を十分に活かせているとは言い難い。「シナリオ1.リレーショナル/オブジェクト指向データベース構造」は、実体ごとのレコード作成とリンクによる実装というシナリオである。どちらのシナリオを採用するかで、実体間のリンク様式が異なってくる。シナリオ2では、「書誌レコード(体現形等) → 典拠レコード(個人等)」、「典拠レコード(著作、表現形)→典拠レコード(個人等)」というリンクとなるが、シナリオ1では、著作、表現形レコード から個人等レコードへのリンクとなり、体現形とはリンクしない。同様に主題の表現について、著作レコードから概念等レコードというFRBRに依拠したリンクにするのかどうか、RDAでは何も決めていない。

4.まとめ

日本目録規則(NCR)改訂の際に、RDAとどこまで距離をとるかが一つ大きな検討課題である。わが国の出版慣行、資料固有の特性を反映することは必要だが、戦略的に考えると基本的にRDAに沿うことが望ましい。
RDAに対応したレコード設計、エンコーディング方式について、LCによる次世代の書誌フレームワークの検討結果も注視していかなければならないが、当面、MARC21改訂版を念頭に置いて検討を始めてはどうか。
既存のシステムの手直しが必要となるが、枠組みはそれほど変わらないので、非常に大きな改変とはならないであろう。その裏返しではあるが、採用による即効的な効果、特に利用者側での大きなメリットに関してはあまり期待できない。可能性はそれほど大きくないと思われるが、著作・表現形コントロール、あるいはそれに対応する記録の作成という部分の組織化を図れば、現在のOPACとは異なる新たなものを提供できるかもしれない。
我々は検討に着手して、欧米の主要な国に遅れることなくRDAを採用すべきである。

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報告(3): RDA適用に向けての国立国会図書館の課題整理

大柴忠彦(収集書誌部収集・書誌調整課課長補佐)

NDLではRDAについて特に検討を行ってきたわけではない。今日がスタートである。

1.適用目録規則

現在NDLでは、主として和資料にはNCR、洋資料にはAACR2を適用している。日本図書館協会(JLA)目録委員会でNCRの改訂を検討しており、「『日本目録規則』の改訂に向けて」によると、新NCRはICPに準拠し、RDAについては長所を取り込むとしている。新NCR適用へ向けて、当館も準備を進める必要がある。
AACR2を適用している資料群については、OCLC等のデータをコピーカタロギングして、目録作成に活用している場合が多い。LCが2013年からRDAを適用すると、コピーソースにRDAを適用しているデータが増えていく。AACR2からRDAへの切り替えも、喫緊の課題として検討する必要がある。
資料群によって適用する目録規則を分けていることについて、是非を考える必要がある。また、従来の目録は単に文字列で書誌的事項を列挙していたにすぎなかったが、RDAを適用することは、「関連」を重視し、目録を、相互に関連するデータをリンク付けしたものへと変化するよう促す。全ての資料群にRDAを適用するという選択肢も踏まえて、今後当館が適用する目録規則を考えていかなければならない。

2.典拠コントロール

RDAの特徴として典拠コントロールの重視が挙げられる。現在当館では、著者名典拠コントロールは基本的に全国書誌収録データと古典籍資料で行っている。主題の典拠コントロールは和図書のデータのみ行っており、タイトル標目としての統一タイトル典拠コントロールについては、実施していない。今後は典拠コントロール適用範囲の拡大や、統一タイトル典拠コントロールが重要になると考えられる。

3.システム

新NCR、RDAに対応していて、典拠コントロールを効率よく確実に実施可能な入力システム、詳細な数多くのエレメントを効率よく入力できるシステムが必要とされるであろう。また、効率よい目録作成をしていくために、ツールの電子化も必要である。
さらに、新NCR、RDAに対応したOPAC等の提供システムが必要である。 MARCにかわる書誌の交換流通のフォーマットも考えていかなければならないが、当館にはその先行例があると言える。2012年1月から本格提供された「国立国会図書館サーチ」(以下「NDLサーチ」)である。
NDLサーチに格納されているデータは、MARC形式ではなくDC-NDL(国立国会図書館ダブリンコアメタデータ記述)で、URIを基底にリンクしていてRDFで記述している。したがってNDLサーチは、LCが新しい書誌フレームワークとして視野に入れているLinked Dataあるいはセマンティック・ウェブに対応した書誌データを提供していると言える。またNDLサーチには、関連語の表示やFRBR化した関連書誌の表示といった機械による仕組みがある。
多少のノイズは許容してNDLサーチのように機械で疑似FRBR的な形での書誌の表示を行っていくのか、あるいは人手をかけてきちんと関連付けをしていくのか、費用対効果も考慮しつつ考える必要がある。

4.おわりに

来年度、当館では新しい書誌データの作成及び提供に係る方針を策定する予定である。新方針を考えていく中で、RDAは一つの大きなポイントとなるとみている。

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質疑応答・自由討議

1.RDAの日本での導入について

  • RDAは概念的すぎて、具体的なレコードを思い浮かべないと理解しにくい。
  • RDAをMARC21で用いるのは、現在のタグでは難しいだろう。改訂の必要があるのではないか。日本固有の資料にRDAを充てるかNCRを充てるかは悩ましいところである。
  • レコード設計を独自に行っている機関がRDAと協働していくのは難しいだろう。

2.書誌コントロールと機関連携について

  • 国立国会図書館と大学図書館との連携がされていないという日本特異の状況がある。NDLは公共図書館や大学と問題を共有していかないといけない。また、ユーザーの指摘やユーザーが作成したデータを逆流させる仕組みを作ることはできないか?
  • NDLでは1月からMARC21を導入し、NDLサーチではDC-NDLでデータを持っている。RDAがXMLに対応し、安定すれば、これを内部で持つことになる。RDAが普及するのであれば、実装できるスキーマであってほしい。
  • 書誌データの質を高めるために、典拠コントロールは重要である。実現は困難であるかもしれないが、雑誌記事索引においても典拠コントロールできればなお高品質と言える。
  • 学術論文の世界では、ORCIDなどのプロジェクトもある。そういうところと関わっていくべきではないか。
  • 典拠作成も外部機関と連携していく必要があるのではないか。LCも行っていることである。
  • NDLは来年度からVIAFに参加する予定である。これは典拠の国レベルの連携と言ってよいのではないか。

3.書誌レコードの付加価値について

  • 書誌レコードは図書館専売ではない。書誌レコード同士の競争の中でどのように付加価値をつけて作っていくか。たとえば主題や著者名典拠は、やはり図書館が進めていくべきである。
  • 昨年度の会議でも話が出たが、完全な書誌の公表を前提とするのではなく、「どこまでできているか」を明らかにした上で未完成の書誌でも公表していくことが重要である。

4.利用者について

  • 図書、古典籍、さらにネットワーク情報資源に加えて、典拠を一元的に管理するのは困難である。RDAを採用し、今までのデータと今後のデータを共存させていった場合、利用者にわかりやすく見せられるのだろうか。
  • NDLサーチやNDL-OPACのログを見ても、詳細な検索ではなく、簡易検索が多い。メタデータや項目を詳細にするよりも、コントロールしていく方が大事なのではないか。
  • インターネットでの検索も一単語だけで行われることが多く、図書館は検索システムの背後で効果的な検索になるようにコントロールしていかねばならない。

5.NDLへの期待

  • 現在のシステムとほとんど同じなのに、器だけ変えて「RDA対応した」というふりをするのはやめた方がよい。NDLもRDAを適用するならば実質を伴ってほしい。
  • NDLのここ数年の活動は、昔に比べれば素早さがある。気を緩めず、スピードアップを図ってもらいたい。

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まとめ

加藤浩(収集書誌部副部長収集・書誌調整課長事務取扱)

RDAは、目録機関、図書館界の大きな注目を集めているが、既存の目録との継続性を念頭に置きつつ実務に落としていくところに困難がある。フォーマット及びシステムを含めてセットと考え、確実に検討しなくては、RDAの目指す方向を実現できないということが、会議を通じて確認できた。
また、典拠コントロールの一層の拡充等については、コストの問題がどうしても出てくる。そうした中で、どのレベルまで追い求め、競争力のあるデータを作成していくかが、今後の課題となる。
NDLでは書誌データ作成と提供に関わる新方針を来年度いっぱいかけて検討・策定し、我が国全体の書誌調整に貢献したいと考えている。今後ともご協力を再度お願いしたい。

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