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トップ > 刊行物 > びぶろす > 77号(平成29年7月)

びぶろす-Biblos

77号(平成29年7月)

びぶろす

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412
5. 【特集:海と図書館】
海で測って海を知る ~海上保安庁海洋情報部「海の相談室」を訪問して

国立国会図書館総務部支部図書館・協力課 吉間 仁子

はじめに

海洋の利用は、海運や水産業、資源開発、マリンレジャー等様々な目的で行われており、必要な情報もその利用法により異なります。

主に海上交通の目的に使われる航海用海図は一般的に「海図」と呼ばれ、紙海図と電子海図があります。以前、海図を作成している海上保安庁海洋情報部の方に紙海図について説明していただきました1が、ほかにも海上保安庁では、日本沿岸付近及び離島の周辺海域の、精密な海底地形や地質構造など測るなどして、様々な情報を調査し、提供しています。

今回の『びぶろす』の特集にあたり、海上保安庁海洋情報部「海の相談室」を訪問し、海洋情報とは何か、海洋情報はどのように調査され、利用者に提供されているのか、概要を伺いました。

1. 海洋情報とは

海洋情報とは、海洋で観測・調査・モニタリングを行って得られる情報の総称です。海洋権益の確保や海上の安全確保といった目的のほか、海洋環境の保全や防災のためにも多くの機器や技術を使い、調査を行っています。

航海や港湾工事のために利用する海事関係者、学術調査・研究活動のために利用する研究者、洋上風力発電などの海洋構造物の影響評価を行う環境コンサルタントの方やヨット、釣り、潮干狩りなどのレジャーに利用する一般の方など様々な方が利用しています。

2. 海洋情報の調査

海洋情報を得るために、海上保安庁では多様な調査を実施しています。

2.1 地形を測る
2.1.1 海底地形調査

港湾や航路を含む、日本周辺海域の水深を、音響測深機などを用いて測定し、海底の地形を明らかにしています。マルチビーム音響測深機は海底に向け音波を扇状に照射し、反射して戻ってきた音波の経過時間から深さを測り、サイドスキャンソナーは音波の強弱を濃淡表示することによって海底の状況を画像としてとらえることができます。海底の状況は、砂、泥、岩など場所により異なります。音波探査を行うことで沈没した船や落下物、海底の活断層なども見えてきます。

また、最近では音波以外にレーザー光線を使用して航空機から測深する方法も用いて、高密度の水深データを効率よく集めて海底地形を把握しています。

マルチビーム測深で得られた山口県萩市沖の海底地形

サイドスキャンゾナーで得られた沈没船周辺の海底状況

2.1.2 海底地殻変動調査

日本はたびたび地震による被害を受けてきました。これらの地震の多くは「プレート境界地震」と呼ばれるタイプの地震です。

このため、複数のプレートの境界である日本海溝や南海トラフ沿いの陸側プレート上に海底基準局を設置して、GPSと海中での音響測距技術を組み合わせた海底地殻変動観測システムを構築して、プレートの動きを探っています2

宮城県沖・福島県沖の海底は、平成23年(2011年)3月の東北地方太平洋沖地震前には、西から西北西の方向に動いていましたが、地震発生後には逆の東南東の方向に動いていることが、こうした調査によって観測されました。

2.1.3 海域火山調査

南方諸島及び南西諸島の海域にある火山島や海底火山の活動を、航空機により定期的に監視しています。

最近では西之島が火山活動を活発化させ、島の面積が拡大しました。

火山活動の沈静化を見計らっていち早く測量を行い、平成29年6月末には航海用海図『W1356 西之島』と海底地形図『6556-8 西之島』を刊行しました。調査成果を共有し、同時に国土地理院からは地図を刊行しました。

西之島の噴火 平成27年(2015年)1月(東京の南方約960km) 及び 福徳岡ノ場の噴火 平成22年(2010年)2月(東京の南方約1200km)

2.1.4 測地観測

人工衛星にレーザー光線を当て、その反射光が戻ってくる時間を測ることにより、全地球面上での日本の位置の測定を行っています。国際共同観測にも参画しており、国際的な位置座標系の構築に貢献し、GPS衛星などの各種測地衛星の軌道の確定にも貢献しています。

2.2 海の水を測る
2.2.1 潮汐

潮汐とは、月や太陽の引力などにより海水が移動することで、潮の満ち引きのことです。干潮と満潮は1日1回または2回満ちたり引いたりを繰り返しています。験潮所を設置して、その時刻と変化の大きさを測定しています。潮汐観測のデータは、潮汐の推算、水深測量時の補正、海流変動の調査に使われるほか、津波の把握にも利用されています。

2.2.2 潮流

潮流とは潮汐(潮の干満)に伴って海水が移動する流れです。干潮と満潮と同じように1日1回または2回、周期的にほぼ180度変化します。

狭い海峡においては流れが速くなり、船舶の操船に大きく影響を及ぼすので、船舶交通量の多い海峡や港湾付近等において流速計(超音波を発出し反射波から流れの向き、強さを計測する機器)を使用して潮流観測を実施し、その成果を潮流図や海図などにより提供しています3。流速計は海底に設置するものと、海面のブイにぶら下げるものがあります。

2.2.3 海流

海流とは、自転・公転の影響による地球規模で起きる海水の水平方向の流れのことで、寒流と暖流があります。船舶に取り付けた超音波流速計、短波レーダー、AOV(自律型海洋観測装置)や投下式水深水温計を使い、日本周辺海域で海流観測(流れの向きや強さの観測)を行っています。

得られた海流・水温のデータを航海安全のための基礎情報として広く提供するとともに、捜索・救助及び防災活動に必要となる漂流予測を行うための情報として利用しています。

2.2.4 海氷

1月頃にサハリン沖で発生し、オホーツク海沿岸に到達する流氷は、漁船などの船舶にとっては危険な障害物となります。そのため、毎年12月下旬から翌年4月下旬までの期間、第一管区海上保安本部に「海氷情報センター」を開設し、航空機による観測やレーダーによる海氷観測結果を解析して「海氷速報」(海氷の分布図)を作製し、毎日提供しています。

2.2.5 海洋汚染調査、放射能調査

測量船や巡視船により、海水及び海底堆積物を採取し、油分、PCB、重金属、有機スズ化合物などの調査を行っています。また、核実験や核廃棄物の海洋投棄などの影響により生じる人工放射性物質の化学分析を行っています。

採泥作業 及び 重金属分析作業

3. 海洋情報の提供

おおまかに、刊行物(紙及び電子)とインターネットによる提供があります。

3.1 刊行物

船舶の安全航行に不可欠な海図航海用海図のほか、海の基本図、航空図4、水路書誌などを刊行しています。航海用海図も港泊図、海岸図、航海図、航洋図及び総図と、目的によって分類される主題図になっています。表1に示すように、用途に応じた多くの種類の刊行物があります。

表1 水路図誌等の種類と刊行版数(平成28年末現在)5

3.2 インターネットによる提供
3.2.1 日本海洋データセンター(JODC)

海上保安庁は日本海洋データセンター(JODC)を設置し、独自に収集した情報に加え、国内外の海洋調査機関によって得られた情報・データも合わせて一元的に収集・管理し、インターネット等を通じて国内外の利用者に提供しています。日本海洋データセンターは、ユネスコ政府間海洋学委員会が推進するプロジェクトである国際海洋データ・情報交換システムにおける日本の代表機関です。

3.2.2 海洋情報クリアリングハウス

国内の各機関がそれぞれ保有し提供している海洋情報やデータを容易に検索し利用できるよう、それら海洋情報の概要や入手方法などの所在情報をデータベース化し、インターネットを通じて提供するシステム、海洋情報クリアリングハウス(愛称「マリンページ」)を運用しています。

3.2.3 海洋台帳

国や地方自治体等が海洋調査で取得した情報をはじめ、海洋の利用状況を把握する上で必要となる自然情報(海底地形や海流等)、社会情報(訓練区域や漁業権区域等)等を一元的に管理し、提供する海洋台帳を運用しています。約100項目の情報6をユーザが地図上に重ね合わせて閲覧できます。

3.2.4 ホームページによる提供

そのほか、海上保安庁海洋情報部のホームページでは、リアルタイム験潮データ、潮流推算、海洋速報、海流推測図、海氷速報、津波防災情報、大規模流出油関連情報(ESIマップ)や海域火山データベースなど、いろいろな情報を提供しています。

4. 海洋情報について質問するには

海上保安庁海洋情報部「海の相談室7は、研究者や仕事で海に携わる方だけでなく、広く一般の方々が利用できます。潮汐・海流・水深・水温といった海のデータや、海図や水路図誌に関する相談を受け付けています。現行の海図・水路図誌、過去の海図・水路図誌、海外の一部の図誌等の閲覧は、希望する資料を事前にお問い合わせください。

また、併設の「海洋情報資料館」では、デジタル機器やコンピューターがなかったころの海の深さや流れ、満ち潮・引き潮を推算する方法や、当時の海洋調査や海の測量に使われた機器、日本で最初に作られた海図などを展示しているほか、最新の海洋情報業務を紹介するパネルを展示しています。

また、全国11ケ所の各海上保安本部にも「管区海の相談室」があり、「海の相談室」に準じたサービスを提供しています。

5. おわりに

今回「海の相談室」で説明を伺い、海上保安庁では、広い日本周辺の海で様々な海洋調査を行い、最新海洋情報をもとに、海図等の水路図誌を刊行していることがわかりました。

また、日本海洋データセンターをはじめ、海洋情報クリアリングハウス、海洋台帳の管理・運用を行い、利用者の目的に合わせて利用しやすい海洋情報の提供を行っていることも知りました。

末文ではありますが、支部海上保安庁図書館、支部海上保安庁図書館海洋情報部分館、「海の相談室」の皆様には貴重な時間を割いてご説明いただくとともに、図表をご提供いただきました。深く感謝いたします。

(よしま さとこ)

  1. 海上保安庁海洋情報部航海情報課「海図について~安全な航海のための必須アイテム~」『びぶろす(特集:地図を読む)』70号(平成27年10月)参照
  2. 海底地殻変動観測. 海上保安庁海洋情報部.
    英国の科学雑誌「Nature」電子版(平成28年5月24日)に、南海トラフ巨大地震想定震源域のプレートの固着状態の研究成果が掲載されました。
    Yusuke Yokota et al. Seafloor geodetic constraints on interplate coupling of the Nankai Trough megathrust zone. Nature.534(7607) (Jun 16, 2016), p.374-377. [国立国会図書館請求記号:Z53-A28]
  3. 海を拓く』海上保安庁海洋情報部, 2016. [請求記号:Y111-L3014]
  4. 水路図誌に航空図が含まれているのは、古くは海軍時代にさかのぼり、当時日本において正確な図面を作成・印刷できる機関が海軍水路部と陸軍陸地測量部しかなかったためです。1930年代、海軍にはいち早く航空機が導入されましたが、それらを運行するための書誌資料を作成するのも、作図印刷ノウハウのある海軍水路部が担うこととなり、それが民間にも作図印刷技術が浸透した現在まで続いています。
  5. 『海上保安レポート』2017, 海上保安庁編, p.104. [請求記号:Z71-F779]
  6. 背景図(白地図、海底地形図など)、海洋情報(水深、海上気象、海流、水温、塩分等)、海洋再生エネルギー情報、環境情報(湿地、干潟、海獣類生息地等)、インフラ情報(海底ケーブル、海底輸送管、洋上風力発電等)、船舶通航量、海事情報(沈船、港湾区域、漁港区域等)、社会情報(漁業権設定区域等)など。
  7. 開館時間は、併設の「海洋情報資料館」とも日・月・水・金曜日の10:00~17:00。

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