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びぶろす-Biblos

78号(平成30年1月)

びぶろす

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412

04. 欧米の国立図書館における資料の処分について

国立国会図書館収集書誌部収集・書誌調整課 藤田 えみ

1.はじめに

多くの国立図書館において自国の資料の恒久的な保存は重要な任務とされています。一方で保管スペースをどのように確保するかが大きな課題となっています。資料の処分は満架対策と資料管理コスト抑制のために講じられる手段の一つです。

筆者は2017年1月末から2月にかけて欧米の国立図書館を訪問し、資料の収蔵と処分について直接お話を伺う機会を得ました。本稿では、筆者が訪問した米国議会図書館、米国国立医学図書館、英国図書館、デンマーク王立図書館における処分の方針と実態についてご紹介します。

2.処分方針と実態

2.1. 米国議会図書館(Library of Congress : LC)

LCは世界最大の蔵書数を誇る図書館です。

トーマス・ジェファソン館外観

LCでは、本拠地(キャピトルヒル)の書庫のスペース不足により2014年8月から国内刊行図書の複本を処分するプロジェクトを実施しています。なお、少なくとも1部は蔵書として保管しています。

プロジェクトにおける処分の基準は、(1) 1950年から2011年までの間に刊行された資料であること、(2)全米の11以上の図書館で所蔵されていること、(3)大量脱酸処理を行っていないこと、(4)本拠地の書庫にあること、です。

まず(1)について、「1950年」は書庫のスペースに対応して設定した基準になります。(2)は保存図書館として、全ての資料についてWorldCat1で全米の所蔵状況の調査を行い、所蔵機関が10未満であれば処分の対象にしません。(1)で「2011年まで」と対象を限定しているのは、OCLCデータベースに反映されるまでの期間を考慮したためです。(3)は過去に脱酸処理を行った資料は元々長期保存が想定された資料であるため、(4)はタイトルによっては本拠地の書庫と遠隔地(メリーランド州フォートミード)の書庫に1部ずつ保管されていますが、遠隔地の書庫の資料は処分の作業のために取り寄せる手間がかかることから、本拠地の書庫にある資料を処分対象とすることにしたとのことです。

基準に照らし処分の候補になった資料は書庫から抜き出して作業室の書棚に配置し、各主題の選書担当官がその書棚から処分すべきでない資料を選定します。そこで選定されなかった資料について目録データベースの更新、除籍印の押印を行い処分しています。

処分方法は他機関への寄贈です。寄贈に当たり、NPOのリストを基に国内の約50の機関に寄贈に関する通知を出したところ希望する機関がなく、海外に通知を出したところアフリカと中国から希望があったため、両国の機関に寄贈しています。両機関からの反応は大変好意的であったとのことでした。

LCは国内刊行図書の複本のほかに、マイクロ化済み新聞原紙も処分の対象としています。多くの新聞について最初は紙媒体で入手していますが、マイクロフィルムの購入後、もしくはマイクロ化後はマイクロフィルムを永久保管の対象とし、原紙は特別なコレクション(18世紀の国内の新聞等)を除いて出版地に関係なく処分しています。その理由としては、酸性紙である新聞原紙を永久保管するには非常にコストがかかること、マイクロフィルムは長期的な保存が可能であると証明されたメディアであることが挙げられます。処分方法は、まずは寄贈先・交換先を探し、相手が見つからなかった場合に廃棄しているとのことです。

2.2. 米国国立医学図書館(National Library of Medicine : NLM)

NLMは世界最大の医学図書館です。

米国国立医学図書館外観。国立衛生研究所のキャンパス内に位置する。

NLMは蔵書構築マニュアル(Collection Development Manual)2004年版の中の保管方針の項目で処分方針を記載しています。処分方針では目録からタイトルを抹消することである除籍(withdrawal)と、複本等の余剰資料や館内利用目的で受け入れた資料等を取り除くことである除架(weeding)についてそれぞれ方針を記載し、最後に処分方法について記載しています。

まず除籍について、(1)資料の主題が収集方針において収集対象の範囲内になく、他機関での収集がより適切であると思われる場合、(2)資料が蔵書としての基準を満たさない場合 、(3)資料の状態が複写や保管が困難な程悪化しており、より良い状態の資料との差替えも不可能な場合のいずれか、もしくは複数の基準に該当する場合に資料は除籍の対象になりうるとしています。除架については、(1)複本で利用率が低く、保管を正当化できなくなった場合、または一方の資料の状態が重複するもう一方の資料より劣っている場合、(2) 累積版を受け入れた後の分冊版、(3) 旧式化した、もしくはあまり望ましくないフォーマットの資料の場合に除架の対象になりうるとしています。処分方法の項では、除籍もしくは除架の対象になった資料はできるだけLC等の他の米国政府の機関に移管することが望ましい、といった内容を記載しています。

処分方針は以上のように定めていますが、実際のところ、NLMでは資料をほとんど処分していません。処分方針において処分の対象になりうるとしている複本も通常は収集しておらず、紙媒体からオンラインに移行した雑誌についても古い紙媒体の資料を処分することは行っていないとのことでした。

2.3. 英国図書館(British Library : BL)

BLの起源は1753年に設立された大英博物館まで遡り、世界有数の蔵書数を誇ります。

セントパンクラス館外観。セントパンクラス駅隣。

BLは蔵書構築方針(Collection Develop-ment Policy)の「保管と処分」(retention and disposal)の項で処分について記述し、その下位に処分方針(Deaccessioning policy)を置いています。この方針は、処分可能な資料と処分すべきでない資料を明確にすることでBLが納本資料を長期保存するという法的義務を確実に果たすこと、処分のプロセスをBL内で統一すること、処分された資料の監査証跡を確実に確保することを目的として策定されました。

処分方針は英国図書館法(British Library Act 1972)の関連規定を記載したパートAと、2003年2月に英国図書館理事会により承認された補足方針を記載したパートB、実施と権限について記載したパートCから成ります。方針の主軸となるパートBでは納本資料、旧植民地の納本資料、複本、外国資料、貴重資料についてそれぞれの方針を記載しています。このうち、条件付きで処分が可能としている資料は複本と外国資料です。複本は購入目的を達成した後、処分するとしています。外国資料については、BLの主要な責務が国内刊行資料の長期保存にあることから、BLにおいて適切な代替サービスが存在し、出版国において当該資料に対し長期保存のための措置がとられていることを認めることができた場合に、外国資料の原本を処分することができます。また、この決定は資料の保管コストを勘案して行われるとしています。

この方針に基づき、昨年BLは閲覧室で不要となった複本や執務参考用資料を処分しました。

また、BLは大規模な資料の処分を過去に2回実施しています。一つは1990年代後半に実施した外国刊行新聞原紙(1850~1980年代)、もう一つは2008年から2009年に実施した米国実用特許明細書(1859~1999)です。

外国刊行新聞原紙は、BLの新聞図書館2のスペースが不足したことから、マイクロフィルムもある当該資料が処分の対象にされました。この処分の実施時にはまだ前述の処分方針が策定されていなかったため、担当者によると、処分は英国図書館法に沿って行われたと思われるとのことでした。処分方法は、まず出版国の機関に対し寄贈を行い、その後寄贈の希望がなかった資料が廃棄されました。外国刊行新聞原紙を処分したのはこの1回だけであり、現在再度行う計画はないとのことです。

米国実用特許明細書は、処分方針に従い、まずアメリカのコレクションの欠号を埋めるためアメリカに提供され、残りは廃棄されました。

2.4. デンマーク王立図書館(The Royal Danish Library

デンマーク王立図書館は国立図書館とコペンハーゲン大学図書館の機能を併せ持つ、北欧最大の図書館です。2017年1月1日にはオーフス国立・大学図書館との統合を果たしました。オーフスはコペンハーゲンに次ぐ国内第2の都市で、オーフス国立・大学図書館は2部目の資料が納本される納本図書館として機能していました。

ブラックダイアモンドと呼ばれる新館。コペンハーゲンに位置し、観光地としても有名。

デンマーク王立図書館では、書庫のスペース不足により3年間で3,200万ページの新聞をデジタル化し、2部目の新聞を処分するというプロジェクトを実施しています3

デンマークで発行された新聞は納本法により2部納付されなければならないと定められており、プロジェクト実施前まで紙媒体を2部、紙媒体の1部目から作製したネガフィルムを1部保管していました。保管場所は紙媒体の1部目がオーフスの近くのスカイビュー(Skejby)、2部目が主にコペンハーゲンの西インド倉庫(the West Indian Warehouse)で、それぞれ利用に供されることがありました4が、西インド倉庫は古い施設で新聞の保管にも適していないことから、新しい新聞保管用の施設の建設が検討されるようになりました。しかし新施設の建設には膨大な費用がかかることから、より少額な費用でデジタル化を行うことによりデジタル画像を利用できるようにし、2部目は処分対象とすることになりました。西インド倉庫は将来的には廃止される予定です。

デジタル化は予算と時間の制約上、原紙からではなく、ネガフィルムから行われました。デジタル化の選定基準は、現在まで継続して発行されていること、もしくは廃刊されていても重要なタイトルであること、マイクロ化されていること、利用者の需要等です。

処分の基準は、貴重な資料でないこと、紙媒体の2部目であること、紙媒体の1部目からネガフィルムが作製されていること、ネガフィルムからデジタル化されていること、1部目の状態が問題ないことです。前述のとおりデジタル化はネガフィルムから行われるため、保管対象である1部目がネガフィルム原本かつデジタル化原本に該当します。

処分のプロセスは、まずスカイビューにおいて全ての紙媒体の新聞(1部目)の有無と状態を調査し、1部目が見当たらなかった場合、1部目の状態が良くなかった場合、デジタルファイルの質が十分でないと評価された場合に、西インド倉庫等にある2部目をスカイビューに移送しました。次に、博物館・図書館等の文化的な機関を対象に処分候補新聞のリストをホームページ上で提供し、要望があれば寄贈することとしました。最終的にどのくらい要望があるかは筆者が訪問した時点では不明でしたが、対象タイトルに地方新聞も含まれていることから地方の公文書館からの要望が多いとのことでした。また、ノルウェーとドイツの新聞はそれぞれの国の図書館にコンタクトをとり、ドイツのハンブルクの大学図書館に数タイトルの新聞を寄贈しました。最後に、要望がなかった新聞は、紙の質によりリサイクル可能なものと不可能なものに分け、不可能なもののみ焼却する予定とのことです。

今後、スカイビューにある残りの新聞も今回と同様の方法でデジタル化を行い、2部目は処分する想定です。ただ、マイクロ化されていない古い新聞約2,000万ページについては紙媒体から直接デジタル化を行うことが想定され、紙媒体1部、デジタル情報1部を保管することになるだろうとのことでした。

3.おわりに

本稿では国立図書館における資料の処分について取り上げましたが、今回の訪問時、どの国立図書館においても書庫施設の増設や、固定書架から集密書架への変更等、満架対策に取り組んでいることが印象的でした。大規模な処分に関しては書庫の排架状況を勘案し、関係者間で処分基準を十分に検討した上で実施しており、慎重な姿勢が伺えました。

最後に、お忙しい中、訪問先で対応してくださった皆様に深く感謝の意を表します。

(ふじた えみ)

  1. OCLCが運営する世界規模の総合目録データベース。参加館の資料の所蔵状況が登録されています。
  2. ロンドン北部のコリンデールにありましたが、2013年11月8日に閉館しています。(http://www.bl.uk/press-releases/2013/november/british-library-newspaper-library-at-colindale-closes
  3. デジタル化は2017年5月に完了する予定とのことでした。
  4. 基本的にはマイクロフィルムの利用が推奨されていました。

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