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びぶろす-Biblos

78号(平成30年1月)

びぶろす

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412

07. 【各国在日図書室紹介】
日本ロシア語情報図書館紹介 ―誰でも利用できるロシア語専門図書館―

日本ロシア語情報図書館 牛島 優子

創設の基礎資料とその後の収集について

日本ロシア語情報図書館は、日本で唯一誰にでも公開されている、ロシア語文献を所蔵する専門図書館です。そして、公立図書館でも財団・社団法人でもない民間の図書館です。

1953年の創設(当時「日ソ図書館」)から今年で64年目となります。その頃は渋谷区千駄ヶ谷の木造二階建の建物の中にありました。それは、まるで童話の中の小さなおうちのような建物でした。

旧日ソ図書館の建物

創設時の蔵書の基礎となったのは、2か所からの寄贈図書でした。一つは、連合国の戦後処理機関である対日理事会ソビエト代表部「読書室」から日ソ親善協会1に寄贈された、ロシア語書籍・新聞・雑誌等約1万点です。もう一つは、ソ連国際図書公団からの日ソ翻訳出版懇話会2へ送られてきた膨大な新刊ロシア語書籍です。

寄贈を受けた、日ソ親善協会と日ソ翻訳出版懇話会は図書館設立準備会を発足し、広範な募金活動を行い、「日ソ図書館」の創設に至りました。この建物に、日ソ親善協会、日ソ学院3などのソ連関係の団体が集結し、日ソ友好運動のセンターが形成されます。

その後は、日ソ協会とソ日協会間で毎年交わされる文化協定の中の「図書交換」のおかげで、ロシア語の新聞・雑誌・百科事典類・全集等を多く入手できました。さらに図書交換の相手として、国立レーニン図書館(現ロシア国立図書館)を始めいくつかの主要な図書館が加わり、ほぼ現在の蔵書の核が出来上がります。この「交換」はソ連側からの入超状態で、こちら側にとっては有難いシステムでした。ソ連邦崩壊(1991年)後、残念ながらこのシステムは崩れ、交換の相手は図書館だけとなりましたが、現在も雑誌交換(日本語雑誌とロシア語雑誌)の形で細々と続いています。

蔵書構成について

このような創設時の事情とその後の資料収集方法が図書交換という変則的なシステムであったため、蔵書の9割が、ロシア語図書(約6万冊)、ロシアの新聞(15種)、ロシアの雑誌(50種、バックナンバー150種)となっています。残りの1割が、ロシア・ソ連関係の和書及びロシア語からの翻訳書(約1万冊)です。なお蔵書の分類は、資料の主流がロシア語のため、創設当初からソ連時代の「州図書館用図書分類表」に従って行っています。

資料種別としては、各分野にわたる各種百科事典、辞典、手引き、便覧、統計資料類を中心に収集されています。単行本も社会科学、文学、歴史、芸術を中心に揃えています。ロシア文学・ソビエト(諸民族文学を含む)文学作品の代表的な作家の全集・選集類は多数。文芸評論(特にソ連時代)は、種類の多い文芸雑誌も含めて、利用者が最も多い分野でした。美術、音楽、演劇、映画、エストラーダ4等の芸術分野の蔵書も多様で多数。さらにかつてのソ連邦構成共和国の民族語/ロシア語、ロシア連邦内の諸民族語/ロシア語の辞書や諸民族文学や歴史文献が充実しているのは、友好運動が基盤のユニークな図書収集のなせる業です。

資料の主流がロシア語文献であると、利用者がロシア語のできる研究者、学生等に限られます。そこで、「広く対ロシア・対旧ソ連・対ユーラシアの関心に応える」5という創設時からの図書館の基本方針をふまえ、一般の人たちにも利用しやすいように、ヴィジュアルに訴える資料の収集にも努めてきました。例えば、イコン画から現代にいたる膨大な絵画集、ロシアの民芸・民族衣装の美しいアルバム、美味しそうな写真入りのロシア料理本等です。そして、豊かなロシア文化を代表するロシア文学の翻訳作品、ロシア音楽(楽譜を含む)についての本、昔から日本で親しまれているロシアの民話・絵本、更に日露交流・抑留・領土問題など日露・日ソ関係に関わる日本語書籍も珍しいものがたくさんあり、大いに利用されてきました。

他に、図書館と関わりの深かった方からの蔵書の寄贈から生まれた「個人文庫」があります。

館内の様子

現状

現在は、会員から納められる会費6を原資として運営されています。所蔵資料は、研究者、専門家、専門の学生、マスコミ関係者は勿論、一般の人たちにも利用されてきました。しかし、主にインターネットの普及によると思われますが、会員も一般の利用者も年々減少し、図書館経営は非常に厳しく、新しい資料の受入れも難しくなっているのが実情です。

しかし、ソビエト時代から収集された資料は貴重で、他の機関では所蔵していないものも数多くあります。現在のロシアを知る上でもソ連時代の考察は不可欠ですが、まだまだ十分に行われているとは言えないようです。ソ連・ロシアの研究や、その実際に触れたい人たちのために当館は、新たな資料収集の交渉、収蔵書のデーターベース化など様々な努力をしていきたいと考えています。

(うしじま ゆうこ)

開館時間、利用方法など
開館:火~金、午後1時~5時
休館:土、日、月、祝日他
住所:〒156-0052 東京都世田谷区経堂1-11-2
Tel. 03-3429-8239 Fax. 03-3425-8616
E-Mail:biblio@m3.dion.ne.jp
URL:http://www.tokyorus.ac.jp/jrsl/
・会員:会費6000円/年、貸出可
・非会員:入館料200円、館内閲覧可

  1. 民間の日ソ友好団体。後に発展改組され日ソ協会、現日本ユーラシア協会
  2. ソビエト図書の正常な翻訳出版を目的とする団体で、ロシア語翻訳者と出版社が会員。
  3. ロシア語専門学校、現東京ロシア語学院
  4. 軽演劇、軽音楽、バラエティーショー(『岩波ロシア語辞典』1992年版)
  5. 「当館の基調は広く対ソ関心に応えることが第一であるため」と、金子健, 小林昇「わが図書館を語る(22):日ソ図書館」『窓』ナウカ, 22. 1977.9, p.51-55. [国立国会図書館請求記号:Z21-388] にあります。
  6. 世田谷区経堂への移転時1977年より会員制度を導入。図書館の資料を有効に活用し、財政的基盤を共に支えていただくための制度。

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