びぶろす-Biblos:80号(平成30年4月)|国立国会図書館―National Diet Library

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びぶろす-Biblos

80号(平成30年4月)

びぶろす

  • 発行:国立国会図書館総務部
    (National Diet Library)
  • ISSN:1344-8412

3. 平成29年度第103回全国図書館大会(東京大会)第13・14分科会に参加して ―災害から図書館を守り救うために―

支部会計検査院図書館 宮嶋 望帆

1.はじめに

(社)日本図書館協会主催の第103回全国図書館大会1で開催された24分科会のうち、『災害から図書館を守り救うために -人・施設・資料-』をテーマにした第13・14分科会2について報告します。

2. 第13分科会

第13分科会では2名の講師による講演を拝聴しました。

前半の講演では、日本図書館協会図書館施設委員会図書館災害対策委員会委員の川島宏氏が「『施設』を守る-地震・水害・火災に備える-」という題で、図書館が人と資料を災害から守る施設であるための備えについてどうあるべきか、建築士の視点から事例を挙げてお話し下さいました。本来、図書館は自然災害に対し人・資料を守る安全な施設であるべきですが、災害による被害は図書館でも度々発生し、報告されています。しかし、これまで図書館で災害が発生した際に窓口となる組織は長らく存在していませんでした。これを改善すべく2015年12月に図書館災害対策委員会が発足しました。講師の川島氏はこの委員会の一員で、これより前に施設委員会委員として東日本大震災で被災した各所の図書館を訪問し、被害状況報告等をされています。そこで見た現場の情報をもとにして川島氏が作成された、「施設安全のためのチェックシート」をご紹介します。(1)立地の安全性を確認する、(2)建物の安全性を確認する、(3)建物の周辺の安全を確認する、(4)家具類は転倒・転落しないか、(5)落下すると危険なものを見直す、(6)非常時の備えを再点検、の6つです。なお、上記のチェック項目は「東日本大震災に学ぶ」をテーマとした研修会の資料や、図書『みんなで考える図書館の地震対策-減災へつなぐ』3にも掲載されています。

後半の講演では日本図書館協会資料保存委員会委員長、東京都立中央図書館資料保全専門員の眞野節雄氏が「『資料』を守る-そして『救う』、あきらめない志-」という題で、水濡れした資料の救済方法をご教示下さいました。「災害大国」である日本は災害が多く、様々な災害で貴重な図書館の資料が被害に遭ってきました。東日本大震災で大津波の被害にあった資料の救済では、文化庁が「文化財レスキュー事業」を直ちに立ち上げました。しかし、被災した蔵書の中で国や県の指定文化財は救出されたものの、他の資料の多くは放置されました。こういった状況を目の当たりにした眞野氏は、図書館員自らが資料を救出するためのマニュアルを作成することにし、今回は水濡れ時のマニュアルについてお話しされました。水に濡れた資料は48時間以内に対処しないとカビの原因や塗工紙4の貼りつきが生じます。こうした資料は「水道水」でよく洗い、丁寧に乾燥させることで復活するとのことです。眞野氏が作成した「被災・水濡れ資料の救済マニュアル」は動画サイトでも公開されているので、ご視聴をおすすめします。

3. 第14分科会

第14分科会では熊本地震の特別報告、講師による講演、水濡れ資料救済のワークショップを行いました。

特別報告では熊本大学附属図書館から図書館員の廣田桂氏にお越しいただき、平成28年に起きた熊本地震の被害について報告されました。熊本大学附属図書館は中央館・医学系分館・薬学部分館の3館で構成されていますが、被害が大きかったのは上記3館の中で最も新しい医学系分館で、建物自体は新しくても川が近い影響で地盤が軟らかかったため、最も被害が大きかったそうです。地震発生時は防災対策として緊急時の対応等をまとめた「中央館危機管理マニュアル」に基づき、声をかけながら館内を巡回し、利用者を館外へ移動させました。幸いにも人的被害はありませんでしたが、図書館の被害として壁の亀裂・剥落や資料の落下・水損、書架のゆがみや倒壊が挙げられました。熊本大学附属図書館のようにマニュアルがあると、災害発生時にも落ち着いてスムーズな対応が行えるのではないかと思いました。また、資料の落下等で避難路が塞がれる箇所がないかの確認やヘルメットや防犯ブザーを書架付近に設置するなど、避難路が塞がれたときの備えなども必要だと感じました。

次に、日本図書館協会図書館災害対策委員会委員、草津町立温泉図書館の中沢孝之氏による「『人』を守る-そのとき、あなたは-」を題に、もし災害が起きた場合どういった行動がとれるかをワークショップ形式で話し合いました。地震発生後、様々な被害が発生したときに図書館員一人一人がどう動くのか、利用者を安心させるためにどういった声掛けを行うのがよいのか。自分では思いつかないような様々な意見を聞いて、視野を広げるよい機会になりました。

ワークショップでは事前に長時間水につけておいた資料を使って手当を行いました。

(1)水濡れした資料を乾いたタオルで包み、大まかな水分を抜く、 (2)塗工紙に対して1枚ずつ吸水紙を挟む、(3) 塗工紙以外のページは数ページ間隔をあけながら吸水紙を挟む、(4)すぐに吸水紙を取り替える

上記(3)~(4)の作業を繰り返すうちに徐々に水分が抜け、また利用できる状態までに回復させることができました。

分科会の様子 「『人』を守る-そのとき、あなたは-」

4. おわりに

図書館は、自然災害の発生時には資料の落下、書架の転倒、さらに立地によっては浸水などのおそれもあります。

この分科会を通じて、自然災害はいつでも発生しうるという普段からの心構えを持つこと、そして、何よりも人命が第一であり、その上で資料を守ることが大切だということを、改めて実感しました。「災害大国」である日本の図書館で働くすべての図書館員の皆様のご参考になれば幸いです。

(みやじま みほ)

  1. 平成29年10月12日(木)及び13日(金)の2日間にわたり、東京都渋谷区で開催
  2. 平成29年度(第103回)全国図書館大会第13・14分科会報告原稿』日本図書館協会, 2017.
  3. 『みんなで考える図書館の地震対策』編集チーム 編, 日本図書館協会,2012.5,p18-19 [国立国会図書館請求記号:UL511-J19]
  4. コート紙・アート紙など表面にコーティングされた紙

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