第三章 暦の中のことば

干支①六十干支(ろくじっかんし)

暦注の多くは陰陽五行説(いんようごぎょうせつ)という古代中国の思想や易から発生し、月日に当てられるようになったもので、その大きな柱となるものが干支です。

干支(えと)は、十干(じっかん)と十二支(じゅうにし)の組み合わせです。

十干はもともと、甲、乙、丙、丁…と、日を順に10日のまとまりで数えるための呼び名(符号)でした。10日ごとに、「一旬(いちじゅん)」と呼び、3つの旬(上旬、中旬、下旬)で1ヶ月になるため、広く使われていました。

古代中国では、万物はすべて「陰」と「陽」の2つの要素に分けられるとする「陰陽説(いんようせつ)」と、すべて「木」、「火」、「土」、「金」、「水」の5つの要素からなるとする「五行説(ごぎょうせつ)」という思想がありました。これらを組み合わせて「陰陽五行説」といい、やがて陰陽五行説を「十干」に当てはめるようになりました。また、日本では、この「陰」と「陽」を「兄(え)」と「弟(と)」に見たて、「兄弟(えと)」と呼ぶようになりました。

一方、十二支は、もともと12ヶ月の順を表わす呼び名でしたが、やがてこれらに12種の動物を当てはめるようになったものです。

十干
十干 音読み 五行 陰陽 五行陰陽 訓読み
こう 陽(兄) 木の兄 きのえ
おつ 陰(弟) 木の弟 きのと
へい 陽(兄) 火の兄 ひのえ
てい 陰(弟) 火の弟 ひのと
陽(兄) 土の兄 つちのえ
陰(弟) 土の弟 つちのと
こう 陽(兄) 金の兄 かのえ
しん 陰(弟) 金の弟 かのと
じん 陽(兄) 水の兄 みずのえ
陰(弟) 水の弟 みずのと
十二支
十二支 音読み 訓読み 五行
ちゅう うし
いん とら
ぼう
しん たつ
うま
ひつじ
しん さる
ゆう とり
じゅつ いぬ
がい

干支の組み合わせ(十干と十二支の組み合わせ)は60通りあり、六十干支と呼びます。これが一巡すると還暦となります。例えば、「甲」と「子」を組み合わせた「甲子」は、「こうし」、「かっし」または「きのえね」と読みます。

六十干支
番号 干支 音読み 訓読み 番号 干支 音読み 訓読み
1 甲子 こうし きのえね 31 甲午 こうご きのえうま
2 乙丑 いっちゅう きのとうし 32 乙未 いつび きのとひつじ
3 丙寅 へいいん ひのえとら 33 丙申 へいしん ひのえさる
4 丁卯 ていぼう ひのとう 34 丁酉 ていゆう ひのととり
5 戊辰 ぼしん つちのえたつ 35 戊戌 ぼじゅつ つちのえいぬ
6 己巳 きし つちのとみ 36 己亥 きがい つちのとい
7 庚午 こうご かのえうま 37 庚子 こうし かのえね
8 辛未 しんび かのとひつじ 38 辛丑 しんちゅう かのとうし
9 壬申 じんしん みずのえさる 39 壬寅 じんいん みずのえとら
10 癸酉 きゆう みずのととり 40 癸卯 きぼう みずのとう
11 甲戌 こうじゅつ きのえいぬ 41 甲辰 こうしん きのえたつ
12 乙亥 いつがい きのとい 42 乙巳 いつし きのとみ
13 丙子 へいし ひのえね 43 丙午 へいご ひのえうま
14 丁丑 ていちゅう ひのとうし 44 丁未 ていび ひのとひつじ
15 戊寅 ぼいん つちのえとら 45 戊申 ぼしん つちのえさる
16 己卯 きぼう つちのとう 46 己酉 きゆう つちのととり
17 庚辰 こうしん かのえたつ 47 庚戌 こうじゅつ かのえいぬ
18 辛巳 しんし かのとみ 48 辛亥 しんがい かのとい
19 壬午 じんご みずのえうま 49 壬子 じんし みずのえね
20 癸未 きび みずのとひつじ 50 癸丑 きちゅう みずのとうし
21 甲申 こうしん きのえさる 51 甲寅 こういん きのえとら
22 乙酉 いつゆう きのととり 52 乙卯 いつぼう きのとう
23 丙戌 へいじゅつ ひのえいぬ 53 丙辰 へいしん ひのえたつ
24 丁亥 ていがい ひのとい 54 丁巳 ていし ひのとみ
25 戊子 ぼし つちのえね 55 戊午 ぼご つちのえうま
26 己丑 きちゅう つちのとうし 56 己未 きび つちのとひつじ
27 庚寅 こういん かのえとら 57 庚申 こうしん かのえさる
28 辛卯 しんぼう かのとう 58 辛酉 しんゆう かのととり
29 壬辰 じんしん みずのえたつ 59 壬戌 じんじゅつ みずのえいぬ
30 癸巳 きし みずのとみ 60 癸亥 きがい みずのとい