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展示にあたって

「博物誌」に明確な定義はありませんが、ここでは動植鉱物そのものの記述はもちろん、衣食住や医薬・文学・趣味などの面からの叙述も含めて、広く「博物誌」と呼ぶことにします。

博物誌は、先祖がどのような動植物を衣食住や医療に用いていたのか、四季の景物として和歌や俳句に詠んできたのか、園芸品や飼い鳥として愛好してきたのか等々、人と自然との関わりを記録した文化史であり、生活史です。それはとりもなおさず、日本文化の歩みを現代の私たちに伝えてくれる文化遺産にほかなりません。一方で、博物誌はかつての自然がどれほど豊かだったかを雄弁に物語っており、これは私たちが現在・未来の自然環境について考える際の、貴重な環境資料にもなることでしょう。

この電子展示会では、とくに江戸時代の博物誌をご紹介します。江戸時代の日本では、博物誌やその周辺の書物が数多く著されました。その後、大火や戦災による損失はあったものの、なおもおびただしい数の資料が現在に伝わっていることは、あまり知られていません。なかでも国立国会図書館は、白井文庫と伊藤文庫を中核として数千点もの資料を所蔵しており、日本博物誌の宝庫といえます。

今回の展示は、そのなかでも動植物画を中心に構成しました。また、これまであまり知られていなかった資料や、希少な資料をなるべく多く示すように心掛け、とくに小野蘭山、栗本丹洲、毛利梅園、伊藤圭介など、江戸博物誌で有名な人々に関わる資料を多く展示するようにつとめました。なお、鉱物関連の資料や、動植物でも医学・薬学・農業分野の専門書や救荒書は割愛しました。

本展示は序章と3章からなる構成になっており、総展示資料数は約180点です。各章の内容は次のとおりです。

描かれた動物・植物 江戸時代の博物誌の構成
序章: 博物誌資料について
博物誌資料について注意を要する点を、いくつかの実例で示しました。
第一章: 江戸博物誌の歩み
江戸時代の博物誌に大きな影響を与えた漢籍『本草綱目』の伝来から幕末までを、17世紀・18世紀・19世紀に区切って、おおよそ年代順に配列しています。
第ニ章: 独自の園芸の展開
当時世界一の水準だった日本の園芸品の数々と、この時期に海外から持ち込まれた草木を紹介します。
第三章: 珍禽奇獣異魚
当時の人々を驚かせた珍鳥や奇獣、逆に当時は珍しくなかったけれども、今日では希少になった動物を紹介します。

限られた数の展示ですが、今回の展示を通して、日本にはこのような博物誌資料が豊富に残っていることを知っていただければと思います。

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