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二〇、一〇、二七
一、調査ノ目的ハ憲法改正ノ要否及必要アリトセバ其ノ諸点ヲ闡明スルニ在ルカラ、先ツ憲法全般ニ亙リテ内外ノ立法例、学説等ニ関スル研究ヲ為シ十分ノ資料ヲ備ヘ以テ極メテ慎重ニ調査ヲ遂ゲントスルモノデアル。
二、上述セル次第デアツテ、調査ノ具体的範囲等ハ初ヨリ確定セルモノデハナイカラ、寧ロ官制ニ依ルモノニ非ザル調査会ヲ設置スルコトトシタ。
従テ名称モナイノデアツテ仮ニ命名スレバ憲法問題調査委員会トデモ称スベキデアラウ。
三、調査ノ目的ハ前ニ述べタ通リデアルカラ、委員ニハ専ラ憲法関係ノ最モ堪能ナル学者ヲ依頼スルコトトシ、又調査ノ目的ノ性質上之ヲ成ルベク少数トスル方針ヲ建テ、既ニ、宮沢俊義氏(東大教授)河村又介氏(九大教授)清宮四郎氏(東北大教授)ノ三教授、石黒武重氏(枢密院書記官長)楢橋渡氏(法制局長官)入江俊郎氏(法制局第一部長)佐藤達夫氏(法制局第二部長)ニ委員ヲ嘱託シタ。尚向後必要ニ応ジ之ヲ増員スルコトモアルベク、又別ニ若干名ノ補助員ヲ依頼スル考デアル。
四、前項ノ委員ノ外、憲法学ノ泰斗タル碩学若干名ニ顧問トシテ調査ノ指導ヲ乞フ考ヲ以テ既ニ清水澄氏(帝国学士院会員)美濃部達吉氏(同上)野村淳治氏(東大名誉教授)ノ三博士ニ依頼シタ。尚ホ佐々木惣一氏(帝国学士院会員)ニモ顧問ヲ依頼スルツモリデアルガ未ダ面談ガ出来ヌタメ遅レテ居ル。
五、以上ニ述べタ様ナ組織ヲ以テ直ニ調査ヲ始メルノデアルガ其ノ目的ハ第一項ニ述ベタ通リデアルカラ、此ノ調査委員会ヲ以テ直ニ改正案ノ起草ニ当ラウト云フ考ハナイノデアル。若シ改正案作成ノ必要ガ生ズレバ其ノ起案ハ審議会ノ設置等如何ナル方法ニ依リテ之ヲ為スヤハ今日ヨリ全ク予定シ難イトコロデアル。而シテ此ノ委員会ノ調査研究ハ如何ナル時期ニ改正案ノ作成ガ必要ト為ツテモ多少ナリトモ御役ニ立チ得ル為メ局部的ニ分割シテ、深イ研究ヲ行フ方法ニ依ラズ、仮令浅クトモ全般ニ亙リテ研究ヲ為シ、時ノ許ス限リ漸次深ク掘リ下ゲテ行キ以テ出来得ル限リ完全ナル成果ヲ挙ゲタイト思ツテ居ル次第デアル。
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