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第26回 関西館資料展示「お!べんとうの本」

第26回関西館小展示チラシ
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外出時の携帯食を指していた弁当は、江戸時代に大いに発達し、幕の内弁当に代表される、娯楽と結びついた“楽しむための弁当”が生まれました。弁当文化は、さらに発展を遂げて現代に至ります。家庭の弁当では、栄養価が高く、美しい盛り付けのレシピが数多く考案され、最近は“キャラ弁”が人気です。駅弁はご当地の味覚で日本人の旅行を盛り上げてきました。コンビニ弁当は現代人には欠かせません。さらに近年、日本の弁当が海を越え、“Bento”として人気を呼んでいます。

小さなお弁当箱から広がる豊かな世界。本展示では「旅と弁当」「弁当のレシピ」「弁当の科学」「弁当と文化」の4つのテーマに沿って、多彩な本や雑誌100点をご紹介します。

また、関連イベントとして、朝倉敏夫氏(立命館大学食マネジメント学部長、同学部教授)による講演会「食文化研究と「弁当」~日韓の比較を例にして~」 も実施します。ぜひご聴講ください。

展示資料紹介

※【 】内は当館請求記号

旅と弁当
(1) 『木曽街道六拾九次』 英泉, 広重 画, 信栄堂, 大正9-10【123-279】

木曽街道六拾九次之内伏見

『木曽街道六拾九次』は19世紀前半に、渓斎英泉と歌川広重により描かれた浮世絵木版画の連作です。江戸・日本橋と京・三条大橋を結ぶ中山道の69か所の宿場と出発地点の日本橋の合計70枚で構成されています。画像は伏見宿(現・岐阜県可児郡御嵩町)を描いた1枚で、旅人が木陰で一休みし、弁当を頬張っている様子が描かれています。なお、画像は原本(広重 画『木曽海道六拾九次之内伏見』【寄別2-2-1-5】)をデジタル化したものですが、会場では大正時代の複製版を展示します。

(2) 「평양 도시락·서울 담배 시베리아에서 뒤섞이다(平壌の弁当・ソウルのたばこ シベリアで交わる)」박흥수 글·사진 掲載誌『한겨레 21 』통권1074호 (2015.8.17), pp.40-45【Z23-AK28】

韓国の週刊誌『한겨레 21(ハンギョレ21)』に掲載された、鉄道旅行記です。鉄道オタクの著者は、念願のシベリア鉄道横断旅行の道中で、外貨稼ぎに出てきた北朝鮮の労働者たちと同室になります。その労働者たちに勧められ、一緒に食べたお弁当は、彼らを送り出す平壌の家族が作ったもの。海苔巻きや、おかずがぎっしり詰まったお弁当の写真が掲載されています。

弁当のレシピ
(3) 『家庭鮓のつけかた』 小泉清三郎 (迂外) 著, 大倉書店, 明43.7【246-213】

家庭鮓のつけかた

明治時代に出版された家庭向けの寿司レシピ集です。定番の太巻き寿司、稲荷寿司の作り方はもちろん、握り寿司の作り方まで掲載されています。言葉遣いが平易で、図も分かりやすく、今でも十分使えそう。ハム(又はコールドミート)を具にし、胡椒を効かせた「肉類細巻」はモダンで、明治時代にすでにこんなレシピがあったことに驚かされます。

(4) 『決戦食生活工夫集』 神奈川県食糧営団 編, 産業経済新聞社, 昭和19【596-Ka43ウ】

決戦食生活工夫集

戦況が悪化し、食糧難が深刻化していた昭和19年に刊行されました。配給物資に加え、野菜の皮、茶がら、魚の骨などこれまでは食用とみなされなかった材料を使い、いかに栄養のある食事を摂るか、についてまとめています。第5章「學童べん當の作り方」では、いわしのでんぶ、混ぜご飯といった弁当向けレシピが紹介されていますが、いろんな食材を混ぜ込んで子どもにはなるべく栄養価の高いものを食べさせたい、という涙ぐましい努力が垣間見えます。

弁当の科学
(5) 『弁当惣菜実売調査盛りつけのヒント : 厳選555品収録』 日本食糧新聞社, 2017.4【Y94-L37229】

東京、大阪、そして北海道など約2,000店舗を取材し、約1,500品を購入試食、そこから555品を厳選した「メニューヒント集」です。一つ一つの商品に対し、「実用性」「経済性」「オシャレ」など6つの項目を5段階評価しています。さらに「見どころ」として、料理そして盛りつけ・容器に関して所感が述べられています。

(6) 『市販弁当類における細菌汚染と黄色ブドウ球菌の増殖抑制に関する研究』 池亀公和 著, 1996【UT51-96-Y40】

関西館では、特徴的な資料群の一つとして、国内博士論文を所蔵しています。こちらの博士論文は、食中毒の原因菌としてよく知られる「黄色ブドウ球菌」を対象として、市販弁当類の汚染実態、同菌と他の菌との競合あるいは拮抗作用、カテキン類やナイシンの同菌抑制作用などを検討したものです。このような研究の積み重ねがあってこそ、私たちは安心して市販弁当を食べられるのでしょう。

弁当と文化
(7) 『弁当箱 : 特種製紙コレクション 宴と旅の器』 荒川浩和 編著, しこうしゃ図書販売1990.10【KB16-E510】

佐野美術館の特別展として公開された、特種製紙株式会社が持つ弁当箱コレクションの図録です。弁当箱が293点収録されており、古いものは江戸時代まで遡ります。材質はつややかな漆塗りから、木、金属、陶器までさまざまです。またその形態も、酒器と重箱、小皿などが一体となった提重(さげじゅう)や、鯛やひょうたんを象った弁当など、幅広いバリエーションがあることが分かります。比較的素朴なものから、絢爛豪華なものまで広範囲にわたるコレクションを楽しめる一冊。

(8) 『幕の内弁当の美学 : 日本的発想の原点』 栄久庵憲司 著, ごま書房 1980.1 【EC211-126】

著者の栄久庵憲司氏は、キッコーマンの卓上醤油びんのデザイン等を手掛けた著名な工業デザイナーです。多元的なものの一元化という日本的な美の創造方法が「幕の内弁当」に象徴されているとの着想から、幕の内弁当をキーワードに、造型における日本的な発想とは何か、また、その日本的な造形論が拓く未来について論じています。

日時 2019年 8月22日(木) ~10月15日(火) 9:30~18:00  ※日曜・祝日・9月18日は休館
会場 国立国会図書館 関西館 地下1階 総合閲覧室
参加費 無料
お問い合わせ先 0774-98-1341 (関西館資料案内)