視覚障害者等用データ送信サービス 送信承認館向け利用ガイド Ver.20240105 国立国会図書館 このガイドは、国立国会図書館(以下「NDL」といいます。)の視覚障害者等用データをご利用になる図書館等のご担当者様向けに作成したものです。各送信承認館において、ダウンロードしたデータを利用者に提供する際の実務的な手引きとなっていますので、これから送信承認館としての参加をご検討される図書館等のご担当者様も、参考になさってください。 サービスの概要については、NDLのホームページもあわせてご参照ください。 (https://www.ndl.go.jp/jp/library/supportvisual/supportvisual-10.html)    目次 1 はじめに 2 サービスの対象 3 検索 4 送信承認館が利用者に提供するサービス 5 データの取扱いについて 6 その他参考情報 1 はじめに 1.1 遵守すべき法令等  国立国会図書館の「視覚障害者等用データ送信サービス」(以下「本サービス」といいます。)は、次の法令等に則って実施しています。   ・著作権法(昭和45年法律第48号)主として第37条 https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=345AC0000000048 ・著作権法施行令(昭和45年政令第335号)主として第2条 https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=345CO0000000335 ・国立国会図書館視覚障害者等用資料送信及び貸出規則(平成25年国立国会図書館規則第6号) https://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/laws/pdf/a5342.pdf    また、図書館等における著作権法第37条第3項の運用指針を定めたものとして、「図書館の障害者サービスにおける著作権法第37条第3項に基づく著作物の複製等に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」といいます。)があり、NDLもこのガイドラインに準拠しています。 https://www.jla.or.jp/library/gudeline/tabid/865/Default.aspx 各送信承認館におかれましても、これらの法令等に基づきサービスを実施いただくことになります。 1.2 本サービスで利用できるデータ 本サービスでは、次のようなデータをご利用いただけます。 それぞれのデータの提供件数については、視覚障害者等用データ送信サービス(図書館等向け案内)(https://www.ndl.go.jp/jp/library/supportvisual/supportvisual-10_02.html)をご参照ください。 各データの特徴等については、別紙1「視覚障害者等用データの基礎知識」をご参照ください。 データの概要 データ種別:音声DAISY データの概要:目次のテキストデータと、全文の音声データを収録したファイル。構造化されているので見出し単位の頭出し等ができる。 再生環境:DAISY再生ソフトがインストールされたPC、スマートフォン・タブレット端末やDAISY専用再生機器 データ種別:マルチメディアDAISY データの概要:全文のテキストデータと音声データ、画像データを含み、それらを同期して再生できるファイル。音声DAISY再生環境では、音声DAISYとして利用することができる。また、文字の大きさ、色及びフォント、背景色等を自由に変えることができる。構造化されているので見出し単位の頭出し等ができる。 再生環境:DAISY再生ソフトがインストールされたPC、スマートフォン・タブレット端末や、DAISY専用再生機器 データ種別:テキストDAISY データの概要:全文のテキストデータを含むファイル。文字の大きさ、色及びフォント、背景色等を自由に変えることができる。合成音声で読み上げて利用することができる。構造化されているので見出し単位の頭出し等ができる。 再生環境:DAISY再生ソフトがインストールされたPC、スマートフォン・タブレット端末や、合成音声が利用できるDAISY専用再生機器 データ種別:電子書籍(EPUB) データの概要:全文のテキストデータを含むファイル。文字の大きさ、色及びフォント、背景色等を自由に変えることができる。構造化されているので見出し単位の頭出し等ができる。 再生環境:EPUB閲覧ソフトがインストールされたPC、スマートフォン・タブレット端末やEPUBに対応し、合成音声が利用できるDAISY専用再生機器 データ種別:音声付き電子書籍(EPUB) データの概要:電子書籍(EPUB)に録音音声を加えたデータ形式。音声以外の機能や使い方は電子書籍(EPUB)と同じです。 再生環境:「EPUB3 MediaOverlays」を再生可能なEPUB閲覧ソフトがインストールされたPC、スマートフォン・タブレット端末 データ種別:透明テキスト付PDF データの概要:PDFファイルの一種で、紙資料をスキャンしたデジタル化画像と、テキストデータを1つのファイルとしてまとめたファイル形式。テキストは透明であるため、目に見えないが、スクリーンリーダーで読み上げることが可能。 再生環境:PC、スマートフォン・タブレット端末やPDFに対応し、合成音声が利用できるDAISY専用再生機器 データ種別:WORD(DOCX) データの概要:マイクロソフト社が提供する文章作成ソフトWord形式のデータ。 再生環境:PC、スマートフォン・タブレット端末やWordに対応し、合成音声が利用できるDAISY専用再生機器 データ種別:プレーンテキスト データの概要:全文のテキスト。「国立国会図書館デジタルコレクション」が提供するデジタル化資料(画像データ)から、OCR(光学的文字認識)処理により作成したテキストデータも含む。合成音声で読み上げて利用することができる。拡張子は.txt。構造化されていないので頭出しはできない。コピー&ペーストが容易。 再生環境:PC、スマートフォン・タブレット端末、合成音声が利用できるDAISY専用再生機器など データ種別:点字データ データの概要:全文のテキストを点字データ専用の形式で保存したファイル。拡張子は.BESや.BSE。 再生環境:点字ディスプレイやPC 1.3 送信承認館において必要な環境 本サービスでは、インターネットからデータをダウンロード又は再生(ストリーミング再生)していただきます。そのため、送信承認館においてはインターネットに接続され、ブラウザがインストールされたPCが必要です。必要最低限の環境はこのPCのみですが、送信承認館においてどのように利用者にデータを提供するか(サービスの実施方法)によって、さらに必要となるソフトウェアや機器があります。本書の4をご参照ください。 2 サービスの対象 2.1 機関(送信承認館)  本サービスは、著作権法施行令第2条第1項に列挙されている図書館等のうち、視覚障害者等へのサービスを実施されている図書館等を対象としています。本サービスの対象となりうる機関かどうかは、送信承認館としてご申請いただいた際に、NDLで確認をさせていただきます。 2.2 個人(送信承認館を通じてデータを利用される利用者) 本サービスのデータを利用できるのは、著作権法第37条第3項において「視覚障害その他の障害により視覚による表現の認識が困難な者」と規定される方(以下「視覚障害者等」といいます。)に限られます。具体的には、ガイドラインの別表1に例示されている状態にあって、視覚著作物をそのままの方式では利用することが困難な方です。必ずしも、障害者手帳を所有している方に限られません。 読書が困難な状態には、さまざまな状態がありますので、各人に応じた個別の判断が必要です。法令及びガイドラインに照らして、本サービスの対象に該当するかどうか(本サービスのデータを提供してよいかどうか)は、各送信承認館の責任においてご確認いただく必要があります。 3 検索 本サービスは、国立国会図書館障害者用資料検索「みなサーチ」(https://mina.ndl.go.jp/)でご利用(検索・ダウンロード)いただきます。操作説明は別紙2「データ検索操作」をご覧ください。 なお、送信承認館のPCのインターネット接続がフィルタリングソフトやファイアウォールで制限されている場合は、「mina.ndl.go.jp」を接続許可ドメインとして追加ください。 4 送信承認館が利用者に提供するサービス 本サービスのデータは、送信承認館での貸出や館内閲覧にご利用いただけます。ここでは、貸出と館内閲覧のサービス実施フローの例をお示ししますが、必ずこのとおりに実施する必要はありません。各送信承認館の体制や設備環境に合わせて、サービスメニューや実施フローをご検討ください。 4.1 貸出(又は譲渡) ○送信承認館で必要となる設備環境 ・インターネットに接続できる事務用(職員用)のPC ・複製したデータを利用者に届けるための各種媒体(CD-R、CD-RW、USBメモリ、SDカード等) ※利用者から預かった記録用媒体に格納する場合は不要です。 ※CDの場合、PCによってはデータ書き込み(ライティング)ソフトウェアが必要な場合があります。   ・送信承認館でデータの動作確認をする場合は、各種再生ソフトウェア 無償ソフトの例:  DAISY …AMIS  https://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/software/amis3_1_4.html  DAISY,EPUB …EasyReader  https://yourdolphin.com/en-gb/EasyReader-App  点字データ…点字ビューア (Braille Viewer)  https://hp.vector.co.jp/authors/VA049672/viewer.html EPUB …THORIUM READER  https://www.edrlab.org/software/thorium-reader/ ○送信承認館での貸出サービスのフローの例 流れ @検索  利用者の動き:自宅のPC等でみなサーチを検索するか、送信承認館に検索を依頼して、利用したい資料(データ)を特定する。  留意点:検索のみであればログインは不要です。 A利用申請  利用者の動き:送信承認館に、特定したデータの利用を申請する。  利用申請を受理する。  送信承認館の職員の動き:どのような再生環境で利用する予定か(どのような媒体に格納する必要があるか)をヒアリングする。  留意点:2.2を参考に、対象となる利用者かどうかをご確認ください。 Bダウンロード  送信承認館の職員の動き:事務用PCでみなサーチを開き、送信承認館に付与されたID/PWDでログインし、申請があったデータを検索・ダウンロードする。 C複製  送信承認館の職員の動き:利用者の再生環境や要望に合わせた媒体等に複製(格納)する。  留意点:別紙3「DAISYのデータ複製操作」参照 D貸出  送信承認館の職員の動き:媒体を利用者に貸出(又は譲渡)する。  留意点:別紙4「データの貸出について」参照 E返却  利用者の動き:点字用郵便等により、借り受けた媒体を返却する。 4.2 館内閲覧 ○送信承認館で必要となる設備環境 ・インターネットに接続できる利用者用のPC(音声読み上げソフトがインストールされていることが望ましい。) ※データをCDに格納してから館内閲覧に供する場合は、インターネットに接続できる必要はありません。 ・各種再生ソフトウェア ストリーミング再生(音声DAISYとマルチメディアDAISYのみ)する場合 ストリーミング再生に対応しているソフトウェア(Net-PLEXTALK、MyBook Neo) ダウンロード後に再生する場合 無償ソフトの例:  DAISY …AMIS(https://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/software/amis3_1_4.html)  点字データ…点字ビューア(https://hp.vector.co.jp/authors/VA049672/viewer.html) ※ダウンロードしてから再生する場合は、圧縮されたファイルを解凍するなどの操作が必要となるため、PCに不慣れな利用者には、ストリーミング再生よりも手厚い支援が必要です。 ・ヘッドフォン ・(各種再生用機器) DAISYや点字データを再生するための各種機器が市販されていますが(別紙1 「データの基礎知識」参照)、高価なものが多く、図書館で買い揃えるのは難しいかもしれません。利用者が個人で購入する場合には、日常生活用具の給付制度(購入代金の一部又は全額について国と自治体が補助する制度)が適用できる場合があります。   ○送信承認館での館内閲覧サービスのフローの例 @利用申請  利用者の動き:送信承認館を訪れ、本サービスの利用を申請する。  送信承認館の職員の動き申請を受理する。  留意点:2.2を参考に、対象となる利用者かどうかをご確認ください。 Aログイン  利用者の動き:館内に設置された利用者用PCでみなサーチを開き、送信承認館に付与されたID/PWDでログインする。  留意点:ID/PWDは利用者に見られないようにしてください。無操作で長時間経過するとログオフすることがあります。 B検索・再生  利用者の動き:みなサーチを操作して目的のデータを検索・再生する。  送信承認館の職員の動き必要に応じて操作支援をする。  留意点:音が出ますので、ヘッドフォン等が必要です。 Cログオフ  送信承認館の職員の動き:利用が終了したら必ずログオフする。 5 データの取扱いについて ダウンロードしたデータについて、送信承認館において「できること」と「できないこと」は次のとおりです。「できること」に掲げられた全てのサービスを実施する義務はありません。送信承認館のサービス方針等に応じて、サービスメニューを策定ください。   5.1 できること(ただし、いずれも、視覚障害者等に提供する目的で行う場合に限られます。) 1 複製 ・同じタイトルを複数の媒体に複製することも可能。(一度に複数のリクエストがあるタイトルの場合等) ・利用者の再生環境に合ったデータ形式と媒体での複製が必要。 ・利用者の持込媒体に複製することも可能。ただし情報セキュリティには要注意。 ・複製物を蔵書化することも可能。(繰り返しリクエストがあるタイトルの場合等) 2 貸与 ・複製したデータを格納した各種媒体の貸出が可能。 ・図書館等への貸出(例えば、都道府県立図書館から市町村立図書館等への貸出)は可能ですが、その場合は、送信承認館の責任において、当該図書館等が著作権法施行令第2条第1項に該当する機関であることをご確認ください。 3 譲渡(著作権法第47条の7) ・複製したデータを格納した各種媒体の譲渡が可能。ただし、各自治体の物品管理(譲与)規定との整合性に要注意。 4 メール送信 ・複製したデータを視覚障害者等にメール添付で送付することが可能。ただしDAISYについては、一般にデータ容量が大きいので推奨しません。 5.2 できないこと 1 又貸し等 ・利用者による行為は当該利用者の責任において行うものであり、送信承認館が責任を負うものではありませんが、貸出や譲渡の際に、次の点について利用者への注意喚起をお願いいたします。 @又貸し(送信承認館が本サービスの該当者であることを確認していない者への)ができないこと。 A視覚障害者等以外に利用させることはできないこと(特に、コピー& ペーストがしやすく視覚障害者等以外にも利便性が高いテキストデータには要注意)。 2 データの改変 著作権者には無断で改変されない権利(同一性保持権)があるため、原本の著作権者の権利侵害に当たるようなデータの改変はできません。著作権者やデータ製作機関への敬意をもって取り扱ってください。 ※ダウンロードしたデータを素材として新たな視覚障害者等用データを製作することは可能です(例えば、ダウンロードした音声DAISYを素材としてマルチメディアDAISYを製作することなど)。その場合は必須ではありませんが、元データの製作館にご一報いただくと良いかと存じます。 3 商用利用 複製物を譲渡する場合に、媒体や送付に係る実費相当を徴収する場合は除きます。 6 その他参考情報 6.1 個人としての登録について 本サービスは、送信承認館を経由せずに、個人(視覚障害者等の方)に直接ご利用いただくこともできます。その場合は、当該ご本人がNDLに視覚障害者等として利用者登録をしていただく必要があります。なお、視覚障害者等としての利用者登録は18歳未満の方でも登録ができます。 詳しくはNDLのホームページをご案内ください。 ホーム > 障害のある方へ > 視覚障害者等用データ送信サービス(視覚障害者等個人の方向けのご案内) (https://www.ndl.go.jp/jp/support/send.html) ホーム?>?障害のある方へ?>?視覚障害者等用データ送信サービス?> 視覚障害者等用データ送信サービスの利用者登録について(初めて登録する) (https://www.ndl.go.jp/jp/support/pd_touroku.html) 6.2 利用を停止する場合について 著作権法第37条第3項「ただし書」では、著作権者や出版者等の権利者自らが、視覚障害者等が利用可能なデータ形式(DAISY等)で著作物を提供(販売等)している場合は、同項に定める複製や公衆送信はできないこととされています。 NDLでは、本サービスで提供しているタイトルの音訳版等の出版状況を定期的にチェックし、この「ただし書」に該当することが判明したタイトルについては、提供(配信)を停止しています。したがって、「以前は使えた(あった)のに使えなくなった(なくなった)」というデータが発生することがあります。 6.3 参考文献 図書館における障害者サービス(著作権法との関係等)に関しては次の資料が参考になります。ぜひご一読ください。 『障害者サービスと著作権法 第2版』(JLA図書館実践シリーズ ; 26) (日本図書館協会障害者サービス委員会, 著作権委員会 編 日本図書館協会, 2021.1) (https://www.jla.or.jp/publications/tabid/87/pdid/p11-0000000562/Default.aspx) ガイド終わり