図書館の障害者サービスにおける著作権法第37条第3項に基づく 著作物の複製等に関するガイドライン 2010年2月18日 2013年9月2日別表一部修正 2019年11月1日一部改定 国公私立大学図書館協力委員会 (公社)全国学校図書館協議会 全国公共図書館協議会 専門図書館協議会   (公社)日本図書館協会 (目的) 1 このガイドラインは,著作権法第37条第3項に規定される権利制限に基づいて,「視覚障害その他の障害により視覚による表現の認識が困難な者」(以下このガイドラインにおいて「視覚障害者等」という)に対して図書館サービスを実施しようとする図書館が,著作物の複製,譲渡,公衆送信を行う場合に,その取り扱いの指針を示すことを目的とする。 (経緯) 2 2009(平成21)年6月19日に公布された著作権法の一部を改正する法律(平成21年法律第53号)が,一部を除き2010(平成22)年1月1日から施行された。図書館が,法律改正の目的を達成し,法の的確な運用を行うためには,「図書館における著作物の利用に関する当事者協議会」を構成する標記図書館団体(以下「図書館団体」という。)は,ガイドラインの策定が必要であるとの意見でまとまった。そのため,図書館団体は,著作者の権利に留意しつつ図書館利用者の便宜を図るために,同協議会を構成する権利者団体(以下「権利者団体」という。)と協議を行い,権利者団体の理解の下にこのガイドラインを策定することとした。 (本ガイドラインの対象となる図書館) 3 このガイドラインにおいて,図書館とは,著作権法施行令第2条第1項各号に定める図書館をいう。 (資料を利用できる者) 4 著作権法第37条第3項により複製された資料(以下「視覚障害者等用資料」という。)を利用できる「視覚障害者等」とは,別表1に例示する状態にあって,視覚著作物をそのままの方式では利用することが困難な者をいう。 5 前項に該当する者が,図書館において視覚障害者等用資料を利用しようとする場合は,一般の利用者登録とは別の登録を行う。その際,図書館は別表2「利用登録確認項目リスト」を用いて,前項に該当することについて確認する。当該図書館に登録を行っていない者に対しては,図書館は視覚障害者等用資料を利用に供さない。 (図書館が行う複製(等)の種類) 6 著作権法第37条第3項にいう「当該視覚障害者等が利用するために必要な方式」とは,次に掲げる方式等,視覚障害者等が利用しようとする当該視覚著作物にアクセスすることを保障する方式をいう。  録音,拡大文字,テキストデータ,マルチメディアデイジー,布の絵本,触図・触地図,ピクトグラム,リライト(録音に伴うもの,拡大に伴うもの),各種コード化(SPコードなど),映像資料のサウンドを映像の音声解説とともに録音すること等 (図書館間協力) 7 視覚障害者等のための複製(等)が重複することのむだを省くため,視覚障害者等用資料の図書館間の相互貸借は積極的に行われるものとする。また,それを円滑に行うための体制の整備を図る。 (複製の品質) 8 図書館は第6項に示す複製(等)の質の向上に努める。そのために図書館は担当者の研修を行い,技術水準の維持を確保する。図書館団体は,研修に関して積極的に支援する。 (市販される資料との関係) 9 著作権法第37条第3項ただし書に関して,図書館は次のように取り扱う。 (1)市販されるもので,次のa)~d)に示すものは,著作権法第37条第3項ただし書に該当しないものとする。    a)当該視覚著作物の一部分を提供するもの    b)録音資料において,朗読する者が演劇のように読んだり,個々の独特の表現方法で読んでいるもの    c)利用者の要求がデイジー形式の場合,それ以外の方式によるもの d)インターネットのみでの販売などで,視覚障害者等が入手しにくい状態にあるもの(ただし,当面の間に限る。また,図書館が入手し障害者等に提供できるものはこの限りでない。) (2)図書館は,第6項に示す複製(等)を行おうとする方式と同様の方式による市販資料の存在を確認するため,別に定める「著作権法第37条第3項ただし書該当資料確認リスト」を参照する。当該方式によるオンデマンド出版もこれに含む。なお,個々の情報については,以下に例示するように具体的にどのような配慮がなされているかが示されていることを要件とする。   また,販売予定(販売日を示したもの)も同様に扱う。    (資料種別と具体的配慮内容)     例:音声デイジー,マルチメディアデイジー(収録データ形式),大活字図書(字体とポイント数),テキストデータ,触ってわかる絵本,リライト (3) 前記(2)の「著作権法第37条第3項ただし書該当資料確認リスト」は日本図書館協会のサイト内に置く。日本図書館協会は、その情報を適時確認し更新を行う。出版社などが新たに販売を開始した場合は日本図書館協会に連絡することにより、このリストに掲載することができる。 (4)前記(2)の販売予定の場合,販売予告提示からその販売予定日が1か月以内までのものを「提供または提示された資料」として扱う。ただし,予定販売日を1か月超えても販売されていない場合は,図書館は第6項に示す複製(等)を開始することができる。  (5)図書館が視覚障害者等用資料の複製(等)を開始した後に販売情報が出された場合であっても,図書館は引き続き当該複製(等)を継続し,かつ複製物の提供を行うことができる。ただし,公衆送信は中止する。 (ガイドラインの見直し) 10 本ガイドラインは,社会状況の変化等に応じて随時見直し,改訂を行う。その際は,「図書館における著作物の利用に関する当事者協議会」における検討を尊重する。 (附則) 1 2018(平成30)年5月25日に公布された著作権法の一部を改正する法律(平成30年法律第30号)(平成31年1月1日施行)に合わせ、ガイドラインの一部を修正することとした。 以上 別表1 視覚障害 聴覚障害 肢体障害 精神障害 知的障害 内部障害 発達障害 学習障害 いわゆる「寝たきり」の状態 一過性の障害 入院患者 その他図書館が認めた障害 別表2  ※ガイドラインに基づき,図書館職員が「視覚障害その他の障害により視覚による表現の認識が困難な者」を判断するための一助としてこのリストを作成する。以下の項目のいずれかに該当する場合は,図書館の障害者サービスの利用者として登録ができる。(本人以外の家族等代理人によるものも含む) 利用登録確認項目リスト チェック欄 確認事項 身体障害者手帳の所持 [  ]級(注) 精神障害者保健福祉手帳の所持  [  ]級 療育手帳の所持 [  ]級 医療機関・医療従事者からの証明書がある 福祉窓口等から障害の状態を示す文書がある 学校・教師から障害の状態を示す文書がある 職場から障害の状態を示す文書がある 学校における特別支援を受けているか受けていた 福祉サービスを受けている ボランティアのサポートを受けている 家族やヘルパーに文書類を読んでもらっている 活字をそのままの大きさでは読めない 活字を長時間集中して読むことができない 目で読んでも内容が分からない,あるいは内容を記憶できない 身体の病臥状態やまひ等により,資料を持ったりページをめくったりできない その他,原本をそのままの形では利用できない 注 (身体障害者手帳における障害の種類)視覚,聴覚,平衡,音声,言語,咀嚼,上肢,下肢,体幹,運動-上肢,運動-移動,心臓,腎臓,呼吸器,膀胱,直腸,小腸,免疫など(身体障害者福祉法別表による)