公共図書館における 知的障害者への読書サポート 生駒市図書館 髙田叶子、岩谷和子(ボランティア) いこま福祉会かざぐるま 施設長 大谷健太郎、久保和至、宮下大輝氏(利用者) 本日の流れ ・生駒市図書館からの報告  1.生駒市および生駒市図書館について  2.生駒市図書館の読書サポート事業について  3.サービスのこれまで  4.今後の展望  5.ボランティアの思い   ・社会福祉法人いこま福祉会からの報告  ・社会福祉法人いこま福祉会について  ・図書館の活動に参加にあたっての理由と取り組みについて  ・利用者の思い  ・施設職員の思い 【生駒市からの報告】 1.生駒市および生駒市図書館について 生駒市について ・人口約116,000人 ・奈良県の北西端に位置する自然豊かな市。  大阪や奈良の中心部へのアクセスが便利な立地。 ・東西約8.0キロメートル、南北約15.0キロメートルと 南北に細長い形 ・同規模自治体での図書館の比較 (『図書館年鑑2025』より)    蔵書冊数 16位   約646,000冊      貸出数    5位  約1,149,000点     予約件数  8位   180,678件    →市民の高い読書意識 生駒市図書館 ・図書館・室は市内に3館・2室 ・管理形態…直営 ・各館(室)に司書を配置  職員数 25名(臨時職員を除く再任用含む)  うち司書 19名 2.生駒市図書館の読書サポート事業について 取組の概要 ・毎月に1度の館内整理日(休館日)に1時間、図書館を知的障害者の団体に貸し切り状態でご利用いただく。 ・1時間の内訳※1  40分 1対1の代読 or 自由に閲覧  15分 読み聞かせ  5分 貸し出し手続き等 ・各回の参加者(おおよそ)※1  利用者18名(代読利用8名 閲覧利用10名)  施設職員 8名  ボランティア 8名   図書館職員 2名 ※1 ※1社会福祉法人いこま福祉会かざぐるまの場合 代読(だいどく)について ・「聞き手(当事者)が読んでほしい本を代わりにわかりやすく読む」 ・基本1対1で横並びに座る。               ・ペアになって本を選ぶことからスタート。 ・読む本は、自分で決める。自分で決められるようにお手伝いをする。 ・コミュニケーションをとりながら読書の楽しみを共有。  →絵本の読み聞かせとは大きく異なるもの 利用状況 ・市内の8つの団体が月に1度、館内整理日(休館日)に利用  代読を含む利用…2団体(本館1・南分館1)  資料閲覧のみの利用…6団体(本館2・北分館1、南分館1、生駒駅前図書室1、複数管理用1) ・そのほか、依頼に応じて随時施設へ赴き、出張代読を実施 取組の様子 ・スライドに動画を添付 3.サービスのこれまで 開始までの流れ  藤澤和子教授(びわこ学院大学)からのお声がけ  ↓  令和3年5月 施設の方との出会い  ↓  令和3年8月 月に一度の館内整理日開放を開始   ↓       令和4年3月 ボランティア養成講座を開始(3日連続講座)  ↓        令和4年6月 開放事業の見学・ステップアップ講座の実施  ↓       令和4年7月 全体ミーティングの実施   ↓  令和4年10月 1回の実施開始(この形態のまま、現在に至る) ボランティアの受け入れ ・知的障がい者のための読書サポート講座(びわこ学院大学 藤澤和子教授によるプロデュース) ・休館日開放および読み聞かせの様子の見学 代読のステップアップ講習会(座学・実践) ・社会福祉法人いこま福祉会かざぐるまによるレクチャー ・全体ミーティングの実施       取り組みを始めてみて ・スタート時の思い ・実際に実施した感想 ・図書館の変化   ・本の分類サイン、同線などの見直し・改良   →一般の利用者さんにとっても利便性が向上    より開かれた図書館に  ・通常開館日の生活介護施設の団体利用   →職員の意識の変化  ・庁内機関との連携の幅の広がり 4.今後の展望 今後の展望 ・館内整理日以外の日/施設利用をしていない方への 読書サポートサービスの提供  →まずは曜日を決めて実施できないか検討中 ・新たなボランティアさんの育成  →来年度、講座を実施予定 ・新たな取り組みのアイデアを大切に  例えば…ご本人からの提案での 利用者による読み聞かせの実施 →共生社会の実現に対して示すことができる図書館の可能性の一つ 5.ボランティアの思い ボランティアの思い ・参加を決めた際のこと ・参加して思うこと ・今後について 【社会福祉法人いこま福祉会からの報告】 かざぐるまの実践報告 図書館訪問 3年間の活動について 社会福祉法人いこま福祉会 法人理念 「障害のある方々に、地域生活において必要とするサービスを総合的に提供・支援することにより、次のような地域生活の実現を目指す」 ○障がいがあっても、またその程度が重くても、地域の中で地域の一員として暮らすことができる当たり前の社会。 ○障がいのあるなしに関わらず、地域社会を構成し、社会を支える一人として、自尊心と自立心を持って暮らすことのできる社会。 社会福祉法人いこま福祉会  障がいのある方々に地域生活において必要とするサービスを総合的に提供・支援することにより、障がいがあっても地域の一員として暮らすことが当たり前の社会を目指しています。 ・日中活動の場  ・かざぐるま(生活介護)  ・工房 結(就労継続支援B型・生活介護)  ・喫茶ゆうほ~(就労継続支援B型)  ・かざぐるまえ~る(生活介護)  ・きこり(生活介護) ・生活の場  ・共同生活援助(グループホーム)   ・一歩の家(男性7名)   ・ポピー(女性6名)   ・クローバー(女性6名)   ・ラベンダー(女性4名)   ・たびだちの家(男性4名)  ・福祉ホーム   ・おかりなの家(19名) ・相談支援  ・生活支援センターかざぐるま(相談支援(生駒市委託)、計画相談、社会生活力を高めるプログラム(サロン、料理教室、研修)) ・居宅サービス  ・デイケアセンターかざぐるま(居宅介護・通院介助、行動援護・移動支援、短期入所、日中一時支援)  ・地域生活支援拠点等事業 社会福祉法人いこま福祉会の取り組み 「働く」  知的に障がいのある112名の利用者が法人内の事業所で日中の活動を送られています。ひとりひとりのペースや持っている力を発揮してもらいながら、やりがいと達成感、できたことへの喜びを日々感じながら取り組んでいます。 「暮らす」  市内に5か所のグループホームと20床の福祉ホームがあり、メンバーがそれぞれの暮らしを営んでいます。高齢化の課題にも向き合い、ひとりひとりが健康に安心して暮らせる場を提供しています。 「踏み出す」  生駒市の知的障がいのある方々の相談を受ける生活支援センターや一人暮らし体験、緊急時の受け入れ、一人暮らしの生活相談などを担う地域生活支援拠点事業に取り組んでいます。 「憩う」  メンバーの余暇の時間を大切に、想いをうまく表現できない方がどうしたら楽しんでもらえるかを考えて余暇の企画や時にゆっくりと過ごす時間、場所を提供しています。 「支え合う」   地域の一員として地域に支えてもらうばかりではなく、私たちが地域の役割を担って支えになることを目指して様々な地域公益事業に取り組んでいます。 図書館の活動に参加、協力しようと思った理由 ・かざぐるでは、開かれた施設として地域の中にとけ込み互いに支え合って生きていくことを目指している。   @大きく2つあります。まず一つは、障がい者のことを知ってもらう機会になると思いました。そして2つ目は、障がいを持つ人たちの生活がより豊かなものになるために、図書館という場所が活用できるのではないかと思いました。 代読の実習でメンバーが参加した時の工夫 @現在読書サポーターとして活動していただいているサポーターの方々に、まず予め参加するメンバーの障害特性を伝えておくことは大切なことでした。  例えば多動の人がじっとしてられない場合は、無理に戻ってもらおうとせず、戻ってくるまで待ってもらうことや、聴覚過敏の人には、大きな声や音が聞こえない配慮をお願いすることや、逆に難聴の人にはゆっくりとはっきりと特に声のボリュームには配慮をお願いするなどがあり、さらに自閉症のスペクトラムの人には独特なこだわりやコミュニケーションの難しさへの配慮をお願いするなどがありました。 @パートナーを決める時には、異性の人との関わりが難しい人もいるのでそれも事前に伝えて、対応を考えなくてはなりません。 @参加後には、職員がヒヤリ・ハットのミィーティングをおこない、次回への注意点・配慮点を確認し合っています。        さまざまな障害の特性 ・障害特性の多様性   その人に合わせた関わりをもつことで互いが尊重できる。 @例えば血液型でその人の性格を判断するような事とは違い、同じ障害名であってもそれぞれの 人にそれぞれの理由や特性があります。アスペルガーの人はコミュニケーションを取ることが苦手、ADHDの人は空気を読めないなどとよく言われますが、皆自分で我慢したり、人に合わされています。自閉症の人は、視覚、聴覚、臭覚、触覚が過敏な人が多く、ルーティンなどのこだわり行動もありますが、しんどさを我慢したり、わかってもらえない辛さを抱えています。それは一人一人皆違っています。私たちは、それぞれの個性を知り、それらに合った関わりを持つことで、お互いが尊重できると思います。 本人の思い @利用者のお一人から「自分も読み聞かせをやってみたい!」との声がありました。  ここにいる宮下様です。  宮下様から自己紹介~  【Q&A】    〇本を読むことは好きですか?    〇どんな本が好きですか?    〇本は一人で読みますか?    〇初めて図書館に行くよ!と聞いた時はどんな気持ちでしたか?    〇読書サポーターさんに本を読んでもらうのは、どんな気持ちですか?    〇図書館に行くのは楽しいですか?        【図書館訪問 参加メンバーのアンケート】   〇図書館が楽しいのは、どうしてですか? 答え・読みたい本を借りて休憩時間に読むことが楽しみ   ・職員との外出が楽しみ   ・アニメの本を読める   ・絵本を読んでもらえるのが楽しみ   ・いろんな本の中から好きな本を探すのが面白い   ・好きなサポーターに会えることが楽しみ   ・仕事の息抜きになる   ・ホームページに写真を載せてくれるので楽しみ 〇図書館があまり楽しくないのは、どうしてですか? 答え・うるさい人がいる   ・不安になる    読み聞かせ体験の様子  本人が他の人にも読み聞かせをしてみたいと言われてから、段階を追って取り組みました。  ではここからは、宮下様が読み聞かせをするまでの本選びからどんな風に読んだらよいかを・・・など練習の様子をまた続けて動画でご覧いただきます。 動画  宮下様 取り組みの様子             図書館訪問への職員の思い  図書館に行くことで公共施設でのメンバーの様子やどんな本に興味があるのかなど、その人の内面をさらに知ることができ、日頃の支援に活かされると思う。 @例えば動物の本に興味があれば、休憩時間などで、動物の話をしたり、DVDを見たり、その人のリラックスや知的好奇心を豊かにできることにも繋がり、私たち職員とのコミュニケ―ションにも役立っています。 @これからの活動として、マンネリ化しない工夫、例えば「動物が好きだから動物の本」と決めつけずに他にも違う興味を探せるようにしていたいと思っています。 @メンバー1人1人の自己選択、自己決定の機会を増やしていけたら・・・とそんなことを心がけていきたいです。 図書館事業について、良かったことやこうしてほしい要望、希望など  私達が(障がい者の人が)図書館におもむくだけでなく、参加しにくい人のために移動図書館が来てくれることもありました。  現在は特定の日の利用となっていますが、将来的には、読書サポーターさんをはじめ、障がい者の人たちへの利用環境がさらに整い、健常者と同じようにいつまでも本を読みたい時に図書館が利用できることが私達の願いです。