メインタイトル「国立国会図書館東京本館書庫見学動画」 この動画では、国立国会図書館東京本館の書庫をご紹介します。 はじめに。 東京本館は、本館と新館、二つの建物から成り、それぞれに書庫があります。 国立国会図書館東京本館の断面図。 東京本館は、地上6階建ての本館と、地上4階地下8階建ての新館から成る。 本館と新館は、地上1階から4階までの各階が、渡り廊下でつながっている。 本館は建物の中央部分が17層に分かれており、この部分が書庫である。 それ以外の部分は事務・閲覧スペースである。 新館は地下が書庫、地上が事務・閲覧スペースである。 本館書庫は主に図書を収蔵しており、収蔵能力は約450万冊です。 本館書庫。 高さ約2メートルの書架が並んでいる。 書架には図書が並んでいる。 新館書庫は、主に雑誌と新聞を収蔵しており、収蔵能力は約750万冊です。 新館書庫。 高さ約2メートルの書架が並んでいる。 書架には雑誌が並んでいる。 今回はこのうち、新館書庫をご案内します。 国立国会図書館東京本館の断面図。 新館の地下の書庫が、黄色い枠で囲まれる。 新館書庫の概要。 まずは、新館書庫の概要をご説明します。 新館書庫は全て地下に配置されています。 新館断面図。 地下は8階まであり、その深さは約30メートル。 各階の広さは東西約135メートル、南北約43メートルです。 書庫を地下に配置する利点として、次のようなものが挙げられます。 一つは、地震の際に揺れが少なく、資料の落下などの被害が抑えられること。 もう一つは、書庫内が外気の影響を受けにくく、効率よく温度や湿度の管理ができることです。 新館の建設にあたっては、国会議事堂周辺の景観を保ちつつ、書庫スペースを確保する必要がありました。 また、書庫は、通常の建物より重い荷重に耐えられる必要があります。 調査の結果、地下約30メートルのところに非常に硬い地層である東京れき層があることが判明したことから、建物をこの地層の上に置き、かつ書庫を地下に配置することになりました。 書庫を地下に置くにあたり、防水対策には万全を期しています。 まず、書庫の周囲の壁面は外壁と内壁の二重構造とし、壁同士の間には空間を設けています。 この空間があることで、地下水による書庫の浸水を防ぐことができます。 また、地下の外壁と最下層の床、さらには地上1階の床に防水を施し、書庫内への浸水を防いでいます。 新館書庫。 壁面に、高さ約1.4メートルの扉が付いている。 扉を開くと、扉の約1メートル奥にコンクリートの外壁がある。 この扉が付いている内壁と外壁の間の空間は、左手奥まで十数メートルにわたって続いている。 書庫の中央部には、地下8階まで自然光が差し込む光庭(ひかりにわ)を設けています。 光庭があることで、書庫で働くスタッフの心理的負担を軽減するだけではなく、停電時の備えにもなっています。 地下8階中央部。 壁で四方を区切られた空間がある。 壁のうち三面はガラス張りで、そのうちの一面に扉がある。 扉の向こうには、幅約8メートル、奥行き約6メートルの中庭のような空間がある。 空間の地面はタイル張りになっている。 光庭から上を見上げると、最上部には、横幅は光庭と同じくらい、縦幅は3倍くらいの天窓がある。 天窓から太陽光が差し込んでくる。 書庫の環境維持。 書庫の中では、資料の保存に適した環境を維持するため、様々な取組を行っています。 まずは温度や湿度の管理です。 書庫内の温度や湿度が適切でないと、カビの発生や資料の劣化の原因になります。 そのため、温度は22度、湿度は55パーセントを目安に、年間を通じて大きな変化がないように調整しています。 表紙にカビが発生した図書と、湿気でページが波打っている図書のイラスト。 また、照明の光に含まれる紫外線も資料の劣化を早める原因になります。 書架の上の天井。 天井に設置された蛍光灯が、書架を照らしている。 そのため、低紫外線タイプの蛍光灯を使用し、必要なときだけ点灯するようセンサーで制御しています。 書架と書架の間の通路。 蛍光灯が消えて暗くなっている。 職員が通路に入っていくと、センサーが反応し、蛍光灯が点灯する。 職員が目当ての資料を見つけて、手を伸ばす。 加えて、書庫への立入りは、通常、書庫管理や資料管理などの担当者のみに制限されており、立ち入る際には、靴カバーや内履きを使用します。 これは、外履きに付いた小さな虫やカビなどを書庫に持ち込まないようにするためです。 書庫につながるエレベーターの入口。 エレベーターの上下ボタンの上には、「許可なく書庫への立入を禁止します」と書かれている。 職員が、袋状の青い靴カバーを靴の上から付け、靴をすっぽり覆う。 別の職員が、外履きを内履きに履き替える。 靴カバーを付けた職員が、書庫に向かうため、エレベーターの中に入る。 なお、書庫内にはガスを用いた消火設備を設置しています。 水による消火は、図書館資料に甚大な被害を与えるだけではなく、鎮火後の復旧にも多大な時間と労力を要します。 書庫内の消火用ガスボンベを保管している部屋。 部屋の奥には、高さ1.8メートルほどのガスボンベが数十本並んでいる。 こうした取組で、資料を長く保存できるように努めています。 資料はどのように収蔵されているのか それでは、書庫の中で資料がどのように収蔵されているのか、いくつか例をお見せしましょう。 まずは新聞です。 新聞は、散逸や破損を防ぐ目的で、このように製本して保存しています。 背表紙を手前にした状態で、新聞が書架に横向きに置かれている。 職員が書架から大きな冊子を取り出し、台の上に置く。 冊子は複数部の新聞をまとめて製本したものである。 置かれた冊子はベージュ色の表紙と赤い背が付けられている。 冊子の表紙の大きさは、一般的な新聞紙の一面程度で、厚みは約3センチメートルある。 また、書架に置く際には横向きにし、紙がそれ自体の重さで折れたりたわんだりするのを防いでいます。 書架は1段の幅が約10センチメートルで、製本された新聞が1段につき2冊収納されている。 書架がずらりと並んだ書庫。 職員が、書架と書架の間にできた通路を通って奥に進んでいく。 新館書庫のうち、約半分は書架が可動式となっており、これを集密書架と呼びます。 書架を動かして通路を設け、資料を取り出しますので、通路を書架ごとに設ける必要がありません。 通常の書架の場合と比較するとおよそ2倍の収蔵能力があります。 書架と書架の間はぴったり閉じており、通路や隙間がなく、書架に並んでいる本も見えない。 職員が書架の側面にある緑色のボタンを押す。 ボタンを押した書架と、その書架より右にある書架が、ゆっくりと右側に動く。 左隣の書架との間に徐々に隙間が空く。 書架が動いている間、緑のボタンは点滅している。 書架と書架の間が約1メートル開くと、動いていた書架が止まり、ボタンの点滅も消える。 続いては、マイクロフィルムです。 資料を縮小撮影して保存するためのフィルムのことを、マイクロフィルムと呼びます。 巻かれた状態のロールフィルムや、シート状のマイクロフィッシュなどがあります。 机の上に、2種類のマイクロフィルムが左右に並んで置かれている。 右側にあるマイクロフィルムは、ロールフィルムである。 ロールフィルムは直径約10センチメートルのリールに巻かれた黒いフィルムで、隣にある箱にしまった状態で保管する。 左側にあるマイクロフィルムは、マイクロフィッシュである。 マイクロフィッシュは、縮小された文字や絵を印刷した、透明のシートである。 マイクロフィッシュの大きさは、縦約10センチメートル、横約15センチメートルである。 このように、専用の機械を使って読みます。 利用者が、ロールフィルムを、専用の読取機であるマイクロリーダーにセットする。 ロールフィルムをマイクロリーダー左側の軸にはめ込む。 ロールフィルムの端を引っ張り出し、読取機本体のガラス板の下を通す。 利用者は画面に表示されたロールフィルムの画像を見る。 ここは、マイクロフィルムのネガフィルムを保存する、マイクロ保存庫です。 マイクロ保存庫は、温度18度、湿度25パーセント前後に保たれています。 ロールフィルムの箱が並んだ集密書架。 書架の側面には、書架を動かすための手回し式のハンドルが付いている。 書架には、マイクロフィルムのネガフィルムが、箱に入った状態で並んでいる。 紙の資料からマイクロフィルムのような別の媒体の資料を作製することを、「媒体変換」といいます。 媒体変換によって、利用による原本の劣化を防ぐことができます。 当館では、平成20年度まではマイクロ化を中心に、平成21年度以降は原則としてデジタル化することで、媒体変換を進めてきました。 特に、デジタル化した資料については、当館ウェブサイト『国立国会図書館デジタルコレクション』で公開しています。 著作権など権利状況に問題がないことが確認できたものは、広く一般に公開しており、ご自宅などからもご覧になれます。 『国立国会図書館デジタルコレクション』トップ画面。 検索窓に「梅園草木花譜」と入力して検索ボタンを押す。 検索結果が表示される。 検索結果から目的の資料を選択。 資料の画像が表示される。 1枚目の画像は表紙で、書名が書かれている。 2枚目の画像には目次が書かれている。 3枚目の画像には秋の草花の絵が描かれている。 資料が利用者に届くまで 最後に、書庫内の資料が利用者に届くまでの流れをご紹介します。 利用者が館内の端末で資料の利用を申し込むと、書庫内のプリンターから申込票が打ち出されます。 スタッフは申し込まれた資料を書架から取り出します。 利用者が、館内の利用者用端末の前に座っている。 利用者が、資料検索・申込サービス「国立国会図書館オンライン」で資料を検索し、申し込む。 場面が変わり、書庫の中。 職員が、書庫内のプリンターの前に立ち、打ち出された紙(申込票)を手に取る。 職員は申込票を持って書架に向かい、利用者から申し込まれた資料を書架から取り出す。 資料はトレイに載せられ、地上階にあるカウンターまで搬送設備で運ばれます。 搬送設備があることで、効率的に資料を運ぶことができます。 職員が、ベルトコンベアの、片方の端の手前に立っている。 ベルトコンベアの大きさは、幅約40センチメートル、長さ約3.5メートルである。 職員の左脇には、床から約1.3メートルの高さにベルトコンベアの操作盤がある。 ベルトコンベアには、青いトレイが載っている。 トレイの大きさは、幅約40センチメートル、奥行き約60センチメートル、深さ約20センチメートルである。 ベルトコンベアのもう片方の端は、書庫の壁面と繋がっている。 壁面には、幅約40センチメートル、高さ約30センチメートルの開口部があり、そこに金属製の扉が付いている。 このベルトコンベアを含む、資料を書庫の外へ運ぶための設備を、搬送設備という。 職員は書架から持ってきた資料を青いトレイに載せる。 職員が操作盤のボタンを押すと、ベルトコンベアが動き出す。 青いトレイは、ベルトコンベアで金属扉の方に向かって運ばれる。 青いトレイが金属扉の前に来るとベルトコンベアが止まり、金属扉が上に引き上げられるようにして開く。 再びベルトコンベアが動き、青いトレイが壁の奥に入る。 入りきったところで、金属扉が閉まる。 こうして、資料が利用者の手元に届きます。 資料が載ったトレイが、雑誌カウンター奥のベルトコンベア上に届く。 ベルトコンベアの前で待機していた職員が、トレイから資料を取り出す。 職員は資料を机の上に置き、資料に貼付されたバーコードを読み取る。 職員は資料をカウンターに持っていき、利用者に手渡す。 利用者は資料を受け取る。 受け取った資料は、閲覧室などでご利用いただけます。 利用者が、閲覧室で資料を閲覧する。 また、著作権法などの定める範囲内で複写も可能です。 資料の申込方法や複写の手続について、詳しくは、国立国会図書館東京本館利用案内動画「資料の利用申込み」編及び「資料の複写手順」編をご覧ください。 利用者が、複写カウンターで、職員に資料と複写申込用紙を手渡す。 職員は資料と複写申込用紙を確認して受け取る。 終わりに 国立国会図書館は、資料を国の貴重な文化的資産として長期的に保存するとともに、現在と未来の利用を確かなものとするため、様々な取組を行っています。 本館書庫の書架。 新館書庫の書架。 マイクロ保存庫の書架。 国立国会図書館デジタルコレクションの画面。 ご紹介した新館書庫の様子から、当館の様々な取組についてご理解いただければ幸いです。 新館書庫地下8階の光庭から、天窓をゆっくりと見上げる。 場所が変わり、国立国会図書館東京本館の外観。 屋根の上には青空が広がっている。