史料にみる日本の近代 -開国から戦後政治までの軌跡-

報告書

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【1コマ~5コマ】

報告書 追ての分
両大臣内申済

旧自由党員懇親会を開くに付準備の為め相談会を開く。其景状左の如し。

予て報道したる如く今夜旧自由党員の首なる者及地方より出京したる有志者、見光社に会合して大政党組織に関する準備を協議したり。今夜会せし者は星亨、林包明、高橋基一、荒川高俊、加藤俊吉、山田勇治、鈴木昌次(不詳)、岩田徳義、広瀬重正多々羅真光(如何なる文字を書くや未詳、因て音を通するのみ)、中嶋又五郎、山田善作外五名(姓名未詳)なり。
右諸士会合の前に於て、星氏発議者となり左の数条を議決したり。但し此議決は確定の者にあらず、来る廿四日の大会に提出し其節会員の意見に依り変異するものとす。
〇今夜議決したる数条は廿四日の懇親会場に於て衆庶の前に呈露する者も毫も忌憚するものにあらず、而して機密に関する件は廿四日後真正有志者のみにて之を議すると云ふ、
其今夜議決したる者は左の如し
〇今回大懇親会を開くの目的は、苟も代議政体を欲する者は、其何人を論せず、其何党たるを問はす広く之を団集し、共に政治上に運動する事を協議するものとす。
〇広く全国の有志者を団集するに付、之れが総領を議定して之を廿四日会合の諸士の前に差出する事
広く全国の有士者を会合し、共に政治上に運動するに名義を付する事、其名義は仮りに全国有志会と号する事
〇本会成体を為すまてに三四会は東京に開設する事、然る後各地方に輪次開会する事
次会は来二十年五月東京に開設する事、但し来廿年五月東北に開設する東北有志会は東京の会と衝突せしめさる事
〇会場は浅草井生邨楼とす、会費は七拾銭とし、其不足は有志者より之を補充する事
〇開会は午前十時とし、午後三時迄右の数条を討議に付し、其れより宴会を開く事
〇廿四日の会を新聞に広告する事、及ひ諸士より其知己友人へ通知する事
〇本会は単に旧自由党を以て組織するにもあらず、又改進党を以て組織するにもあらす、旧自由党にまれ改進党にまれ、苟も代議政を欲する有志者は広く之を会集する目的なるを以て、旧自由党及ひ改進党共に政談大演説会を開設する事
〇右に付旧自由党よりも弁士を派出し改進党よりも出す事、其人員は改進党より島田三郎、藤田茂吉、尾崎行雄、田口卯吉、旧自由党よりは星亨、高橋基一、林包明、中江篤助、荒川高俊等とす、国友会よりは末広重恭外三名を出席せしむる事、尤演説者は確定の者にあらず、多少変換あるへし
〇右改進党及国友会よりの弁士即ち島田、田口、尾崎、末広の四氏を誘導するの任は林包明なりとす、其余は高橋基一周旋する事なり
〇予て旧自由党と改進党とを合同せんとして改進党へ談判中なれとも未た確答なきを以て、今回更に高橋基一を以て之を周旋せしむる事、藤田茂吉より高橋へ云ふには、両党合同の議は賛成なれとも公然たる会には大隈重信は出席せず、然し茶飲み話し位の小集会には出席すと申したるを以て旧自由党員より首なる者を出席せしめ、改進党よりも首なる党員を出席せしめんか為め、高橋を以て、旧自由党員より誰々出席するに依り、貴党に於て可然人物を出席せしめよと云はしむる事、而して先方承知せば小集会の時日を定むる事、但し先方に於ては後藤象次郎、大江卓、陸奥宗光の如き名家出席せは吾改進党よりも大隈重信始め出席すべしとの答なるを以て、吾方にて後藤以下出席すと云事を高橋に云はしむる事(星氏は後藤宅へ参り御出席下さるかと云ひたるに、必す出席すと云ひしと)
〇二十日迄には各地方より悉皆出席するに付、廿四日前

【6コマ~8コマ】

に小集会(後藤大隈等の会と異なり)を開く事
〇機密会は廿四日後に回す事
右数条を議決したり
〇機密会とは他なし今回組織の大会の目的は、二十三年国会設立するも到底完全なる者にあらさるを以て、之に出席せしむる議員を完全なる者を撰出せんとする事、及ひ政党の政力に依て内閣大臣を黜陟する事を約すにあり。然し之れを公然議するは妨礙せらるるに依り、是の計画は小集会にて議する事となしたるなり。
〇今夜林包明の招介に依りて星と林有造と面会したり。
〇土佐の議論は社会も無形の団結あるを以て此有様にては有形のものを組織するに至らすと云ふにあり、広瀬重正この議を提出せしに星氏に大に攻撃せられたり。前年まては高知も社会の為めに尽力したれとも数年已来一人も尽力する者なし、広瀬君看よ、誰れか今日高知にて社会の為めに尽力するや、蓋し一人もなかるべし、故に吾輩今日に尽力せずんは社会は益々退歩の状に至るへし云々と二人して大舌戦を為したり。
〇今夜地方より上京したる者は四五名参会したるのみ、即ち有名なる盛岡の鵜飼節郎、多々羅真光、鈴木昌司、山田善作等なり
〇十四日出発にて仙台より菊田、植邨、菅嶋外四名上京、仙台の県会議員にして有名なる村松亀三郎は今回の会の性質漠然たりとて異論を唱へたり。岩手より石塚三五郎と云ふ者去る十一日発足にて上京せり。
〇栃木の旧党員塩田奥造、田村順之助、中山丹次郎、榊原経武、野沢四郎左衛門の四名は来る十八日出立上京す。
〇栃木の親睦会は在京に会あるを以て名士出会する能はさるを以て、十七日に開くへきなれとも延会したり。
〇加波山諸士の父兄は明後十七日一同帰郷す。
〇高知県よりは片岡健吉上京、集会に臨む筈なりと云ふ。
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