昭和十九年日誌 九月 十月
※ 昭和19年9月2日の部分のみテキスト化しました。
二日 晴(土)
「憲法論集」の新体制憲法観六十頁を読み了る。少しくくどいが能く書いてある。帝国憲法に忠実なる意見で、その真剣さが受取られる。新体制の軽浮浅薄を能く言破して餘薀なし。予の永年考ヘ来れるところと全く異りなく、大に共鳴す。
現内閣は政務官制を復活して昨日発表す。内閣の所見といふよりは翼政会の強要ならん。今時こんな余裕を持つことは了解に苦しむ。国民は何んと思つて居るだろう。殊に其の人選を見て、秋の悲哀を感ぜざるを得ず。更に猟官運動の醜を極めたるに至ては言外の沙汰なり。
陰暦十五夜の月晃々として満庭を照らし、新秋の爽かさ言はん方なし、書見を抛つて浮かれ出で、県道知数町を逍遥す。