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トップ > 国立国会図書館について > 科学技術情報整備審議会 > 議事録 > 第52回科学技術関係資料整備審議会議事録

第52回科学技術関係資料整備審議会議事録

日時:
平成23年1月19日(水)午後2時00分から午後3時48分まで
場所:
国立国会図書館 東京本館総務課第一会議室
出席者:
科学技術関係資料整備審議会委員、専門委員 10名
有川節夫委員長
喜連川優委員、倉田敬子委員、鈴木篤之委員、塚原修一委員、土屋俊委員、時実象一委員、戸渡速志委員、中村利雄委員、大隅典子専門委員
(相川直樹委員、北澤宏一委員、坂内正夫委員は欠席。)
館側出席者 15名
館長、副館長、総務部長、調査及び立法考査局長、収集書誌部長、資料提供部長、主題情報部長、関西館長、国際子ども図書館長、総務部企画課長、同部企画課電子情報企画室長、同部会計課長、収集書誌部主任司書、主題情報部副部長、同部科学技術・経済課長
会議次第:
1. 開会
2. 国立国会図書館長挨拶
3. 新委員及び専門委員の紹介
4. 議題
 「国立国会図書館における今後の科学技術情報整備の基本方針に関する提言」(案)について
5. 報告
 第三期科学技術情報整備基本計画の策定について
6. 閉会
配布資料:
第52回科学技術関係資料整備審議会 会議次第
科学技術関係資料整備審議会関係者名簿(平成23年1月19日)
第52回科学技術関係資料整備審議会 座席表

(資料)
国立国会図書館における今後の科学技術情報整備の基本方針に関する提言(案)(PDF: 435KB)
国立国会図書館における今後の科学技術情報整備の基本方針に関する提言(附属資料)(PDF: 1.29MB)

(委員提出資料)
時実委員提出資料(PDF: 177KB)

(参考資料)
・基本方針検討部会の検討経過等について
・第二期科学技術情報整備基本計画
・科学技術関係資料整備審議会規則
・科学技術関係資料整備審議会議事規則

議事録:
1.開会
有川委員長
(以下、委員長):
ただいまから第52回科学技術関係資料整備審議会を開催します。開会に当たり国立国会図書館(以下、NDL)の長尾館長から挨拶があります。
 
2.国立国会図書館長挨拶
長尾館長: 今日は年度末のお忙しい中を皆様方にお集まりいただき、誠にありがとうございます。この一年間いろいろな形で今後の科学技術情報整備の基本方針にご尽力いただき、NDLのやるべきことを明らかにしてくださったことを大変有り難く御礼申し上げます。特に部会員の皆様方には、部会の外に何回も様々な形でご相談させていただき、この基本方針案を詳細に検討し、お作りいただいて今日に至ったわけですが、NDLの行き先がこれではっきりしたと思っております。今日はその最終的な案をご審議いただきます。ご検討よろしくお願いします。
 
3.新委員及び専門委員の紹介
委員長: 本日は相川直樹委員、北澤宏一委員、坂内正夫委員が所用等のため欠席です。続いて、委員の退任と就任を報告します。日本原子力研究開発機構理事長の交代により、岡﨑俊雄委員が退任され、鈴木篤之氏が委員に就任されています。また、文部科学省大臣官房審議官の交代により倉持隆雄委員が退任され、戸渡速志氏が新たに委員に就任されました。また、前回の審議会を受け基本方針検討部会を設置しましたが、専門委員として、東北大学大学院医学系研究科教授の大隅典子先生に加わっていただきました。昨年度から審議会委員に加わり、部会員でもある東京大学生産技術研究所教授の喜連川優先生は今回が初めての出席です。大隅専門委員は遅れるとのことですので、鈴木委員、戸渡委員、喜連川委員に、一言ずつお言葉を頂戴したいと思います。
鈴木委員: 日本原子力研究開発機構の鈴木と申します。よろしくお願いします。NDLはこれまで利用させていただくばかりだったのですが、これを機会に少しでもお役に立てればと思います。
戸渡委員: 文部科学省の研究振興担当の審議官をしております、戸渡と申します。どうぞよろしくお願いします。私どもの方でも研究成果の情報発信と流通体制の整備が喫緊の課題であると認識しております。今後ともNDLと十分連携を取りながら、そういった取組の推進を図っていければと思っています。
喜連川委員: 東京大学の喜連川と申します。どうぞよろしくお願いします。私の専門は情報系、とりわけデータベースが専門ですが、デジタルライブラリーは必ずしも得意ではなかったので、部会員にさせていただいて非常に勉強になりました。有り難く感じています。また、若い頃はこのNDLをかなり頻繁に利用していたファンでありまして、何かお役に立てれば幸いです。
委員長: それではNDLの方にも異動があったようですので、吉本主題情報部長から紹介をお願いします。
吉本主題情報部長: NDL内の人事異動に伴い、総務部長が田屋幹事、調査及び立法考査局長が塚本幹事、収集書誌部長が網野幹事、資料提供部長が池本幹事、主題情報部長が私、吉本に交代しました。前回の審議会は昨年2月にありましたが、その後の異動の紹介は以上です。関西館長の中井幹事と国際子ども図書館長の齋藤幹事は引き続き出席しておりますので、よろしくお願いします。
 
4.議題
委員長: それでは議題に入ります。議題はお手元の資料1にあります。昨年度の審議会で、「今後の国立国会図書館の科学技術情報の整備の在り方」について懇談し、基本方針検討部会を設置して検討を行うことが了承されました。この基本方針検討部会はこれまで4回開催しましたが、部会員の方々には、それ以外にもいろいろな形でご尽力いただき、本日お手元に配布している「国立国会図書館における今後の科学技術情報整備の基本方針に関する提言」(案)を取りまとめていただきました。本日はこちらを議論いただき、確定したものを最後に長尾館長に手渡すことにしたいと思います。
それではまず、基本方針検討部会の検討経過について、吉本主題情報部長から報告をお願いします。また、先般、国の第4期科学技術基本計画の答申が出ましたが、この中でのNDLの関連部分についても併せて報告をお願いします。
吉本主題情報部長: 参考資料1に基づき報告します。三点あります。一点目は部会設置の経緯、二点目は部会の審議経過、三点目は国の第4期科学技術基本計画策定への対応です。
一点目の部会設置の経緯は、昨年2月4日開催の第51回審議会で、今後のNDLの科学技術情報整備の在り方について議論をお願いしました。そのポイントは、大きく三つに要約できます。第一は、国の第4期科学技術基本計画の動きに呼応するようにして、課題解決型の科学技術・イノベーション活動を進めていく上で国レベルでの基盤整備が必要であるということです。第二は、日本の学術雑誌のデジタル化の遅れの指摘や、NDLが行っている所蔵資料のデジタル化、インターネット資料収集の進め方について議論がありました。第三に、以上をまとめる形で、学術情報のデジタル化における他機関との協力の重要性と「知識インフラ」構想の下での連携推進が必要であるという認識をいただきました。そのような認識の下、国全体の科学技術情報をめぐる環境が大きく変化する中で、NDLが果たすべき役割を再検討するという目的で、今後の科学技術情報整備の方針について検討を行うための基本方針検討部会の設置が決定されました。部会は、部会長に倉田先生、部会員に喜連川先生、大隅先生というメンバーで、その検討経緯が「(2)部会の審議経過」になります。こちらが二点目です。
基本方針検討部会の会合は4回行われました。第1回は倉田先生の報告、2回目は喜連川先生と大隅先生の報告の後、基本方針の骨子案の検討に入りました。その後、3回、4回と基本方針案の検討を続け、この4回にとどまらず、メールも含めて多くののやり取りにより議論が行われました。
三点目である「(3)国の第4期科学技術基本計画策定への対応」については、昨年の審議会の後すぐ、2月23日に総合科学技術会議に設置された基本政策専門調査会(略称、基本専調)で長尾館長が「知識インフラ」について報告しました。この基本専調及び総合科学技術会議で議論した結果、平成22年12月24日付けで答申(「科学技術に関する基本政策について」に対する答申)が決定しました。その中に「知識インフラ」が記載されました。諮問第11号という形でまとめられていますが、参考資料1では、この中のNDLの関連部分を引用しています。直接、間接ありますが、大きく分けて三か所あります。一つは、「IV 基礎研究及び人材育成の強化」の部分です。研究情報基盤の整備の項目に、「NDLや大学図書館が保有する人文社会科学も含めた文献、資料の電子化及びオープンアクセスを推進する」という形で言及されています。もう一つは、「知識インフラ」が、「横断的な統合検索、構造化、知識抽出の自動化を推進する」目的のために、「研究情報全体を統合して検索、抽出することが可能な『知識インフラ』としてのシステムを構築し、展開する」と盛り込まれています。次に、「V 社会とともに創り進める政策の展開」の中で、直接の言及ではないが、「(1)国民の視点に基づく科学イノベーション政策の推進」という項目の中に「国は、科学技術に関する政策の立案を担う側と研究開発を担う側の連携を深めるため、国会議員や政策担当者と研究者の対話の場づくりを進める」とあり、この「国は」の中に含まれる形で調査及び立法考査局の活動などが想定されています。このような形で、NDLについての言及があります。以上です。
委員長: 続いて提言の内容について、倉田部会長から報告をお願いします。
倉田委員: 「国立国会図書館における今後の科学技術情報整備の基本方針に関する提言」(案)に関して報告します。資料1に「提言」(案)があります。資料2の附属資料は「提言」(案)を作成するにあたって関連するデータや事例をまとめたもので、こちらは大部なものなので個別の紹介ではなく、関連するところを随時参照いただければと思います。
では「提言」(案)の目次をご覧ください。全体を5章構成としました。「基本方針の位置づけ」、「国立国会図書館の科学技術情報整備の評価」、「学術情報流通の整備を巡る諸外国の状況」、提言の中心となる「『知識インフラ』構築の必要性」とし、この知識インフラ構築の必要性を踏まえた上で、NDLが特に近々で果たすべき役割を提言する「国立国会図書館が今後果たすべき役割」という構成になっています。
「1 基本方針の位置づけ」から説明します。いくつかの点で、今までの提言とは違うものとなっています。平成16年度までの提言では期間を定めており、NDLの情報整備の計画が対応できる形となっていましたが、この「提言」(案)はNDLの基本方針ですので、特に期限を定めないことが一つの大きな特徴と考えています。3年、5年先にこれが全てできることを期待しているわけではなく、もっと広い視野に立った上で基本方針を考えてはどうか、といった形での提言にしています。そのために、現在はまだNDLのサービスの中心は印刷物であることは重々承知の上で、あえて電子情報資源に焦点を当て、そこに絞った「提言」(案)としています。もう一つは、昨年末に出された国の第4期科学技術基本計画の方向性と対応することを目指した形としていることです。
次に第2章で、NDLの科学技術情報整備の評価を行いました。具体的には、NDLの第二期科学技術情報整備基本計画に基づき、それがどこまで到達できたかを見ることになりますが、この「提言」(案)では、それに個別に言及するのはあまりにも煩雑ですので、主要な点、具体的、典型的な点に関してのみ評価を行う形にしております。より詳しくは、附属資料の第2章「国立国会図書館の科学技術情報整備の評価」でこれまでの実施状況に関して、データを図表中心にまとめているので、こちらをご覧ください。「提言」(案)第2章では、「主要な成果」とは何かについて、特に三点挙げています。一つは、電子情報資源収集のためにどういう形で法整備が進んだかという点になります。これまで「インターネット情報選択的蓄積事業(WARP)」として、NDLではインターネット資源の収集をしてきたわけですが、国立国会図書館法改正により、平成22年4月からは本格的な「インターネット資料収集保存事業」という形になりました。附属資料2頁の図1をご覧いただければお分かりになると思いますが、平成21年度末から平成22年9月末までに提供量が急激に増えているのは、こういった形での環境整備が整った成果と考えています。次に、主要な成果の二つ目、所蔵資料のデジタル化に関しても一定の推進が図られたと評価しています。これは附属資料の3頁と4頁ですが、基本的には明治から昭和戦前期までの国内刊行図書を収録した画像データベースである近代デジタルライブラリーの収録件数が非常に伸びており、12頁の図11にあるとおり、これに対するアクセス数もそれなりに増えているということは、評価に値すると考えています。平成21年、22年度に関しては、大規模デジタル化が進められ、国内刊行図書は平成22年度末までに21%を超えるデジタル化が図られるという点は、一つの大きな成果であると考えています。保存のための所蔵資料のデジタル化を著作権者の許諾なしで行えるように著作権法の改正がなされたことも、重要な点であったと考えています。三つ目は、書誌データ、ないしその環境が整備された点です。電子情報資源の保存のために必要な管理用の書誌データの基準が普及するという点では不十分かもしれませんが、公開されたという点は重要であったと考えています。それから、平成22年度からは、OCLCを通じて書誌データ400万件以上が公開されたことは、世界的に見ても意義があると考えています。
一方で、このような成果がありながら、課題は大きいと考えています。海外の電子ジャーナルの提供が遅れている点など、個別に細かい点まで挙げると書ききれないので、あくまで主要な課題として、三点にまとめました。一つは、以上の成果を踏まえながらもなお、日本の科学技術関係資料のデジタル化は進んでいないという点です。一例として挙げた、学術雑誌に関してデジタル化率が4割未満というデータが示すように、デジタル化が遅れていることは確かです。後述する第3章の諸外国の例では、学位論文に関して諸外国は非常に進んでいます。しかし、日本ではデジタル化がまさに端緒についたばかりで、その点でも課題は多いと考えています。二番目に、インターネット上の情報源の収集に関して、収集される情報の範囲が非常に限定的であるという点は非常に大きな問題であると考えています。例えば、国立大学のウェブサイトは収集の対象になっているが、私立大学のサイトは許諾のあるものしか集められません。私人がインターネットを通じて公表する情報に対しても今後は検討を進めていただきたいと考えています。そして、これら全てを総合的に考えた際に、電子図書館事業全体をどういう方針で運営していくのかという点に関して、難しい点が多いと感じています。今後できるだけ機動的に、臨機応変な形での事業運営をどのような形でやっていけるかが大きな課題ではないかと感じました。
このようなNDLの情報整備の在り方を踏まえた上で、諸外国における状況を、第3章でまとめました。これに関しては、附属資料14頁以降で、国立図書館等国の機関が行っているデジタル化等に関する事例をまとめています。「提言」(案)では、特に五つのポイントに沿ってまとめています。一つは「電子情報資源の収集」で、これは、インターネット上の資源をどの程度収集しているのかということになります。各国それぞれ事情は様々でも、主要国に関しては一定の法整備をした上で収集を進めています。ただし、今のところ文献相当のものにとどまっているものも多く、法整備等で各国はかなり苦労しており、それほど進んだ状況ではないと考えています。二番目に、「学術雑誌等のデジタル化の推進」ですが、これは各国かなり進んでいると考えています。電子ジャーナルの保存プロジェクトとして有名なオランダ王立図書館の例を始め、CLOCKSS、Porticoといったプロジェクトが動いています。日本では国立情報学研究所(以下、NII)がCLOCKSSに参加していますが、NDLの取組みはまだです。国内学術雑誌のデジタル化に関して、欧米だけでなく中国を始めアジアの国でもデジタル化が進んでいる中で、日本は遅れていると言わざるを得ません。学位論文のデジタル化は、アメリカ、英国では相当進んでいますし、ヨーロッパ各国もそれなりに進めていると考えています。三番目は、所蔵資料のデジタル化で、日本でもそれなりに進めていますが、特に学術雑誌以外の新聞、歴史的な資料等に関しては、諸外国は様々な形で進んでいます。さらに学術情報のオープンアクセス化についてどのような取組があるかに関しても主要国についてまとめました。アメリカではNIH(米国国立衛生研究所)のPubMed Centralを始めとするオープンアクセスの動きが大きなものと考えています。最後に、いわゆるポータルサイトに触れました。ポータルサイトという言葉自体が人によって使い方がまちまちで、実際の活動としても何を指してポータルサイトと言うのか問題があるとは思いますが、ここでは、データベースも含めた電子情報資源へのナビゲーションを果たすサイトの例としてどんなものがあるかという観点で取りまとめました。個別の事例の紹介は煩雑になるので今回は省略しますが、この章は附属資料を含めてこのように取りまとめました。
第4章「『知識インフラ』構築の必要性」、ここからが「提言」(案)の中心部分になります。前述した電子情報資源に関してのNDLの整備の状況と諸外国の整備の状況とを踏まえた上で、より広い文脈で一体何が必要かを考えたときに、やはり科学技術研究の現在の動向を無視して話は始まらないということで、「知識インフラ」に行きつきました。科学技術研究の現在の状況に関しては、喜連川先生、大隅先生から、それぞれ分野の動向と資料や情報の使い方、利用の状況に関して報告いただき、このようにまとめました。現在の研究の動向として非常に特徴的なのは、大規模なデータを扱うようになったこと、その加工、処理といった点でコンピュータなしでは考えられないこと、さらにそれを共有して使っていかなくては効率的ではないということです。今後の研究に活かすようなある種のサイクルが必要であるという点では、共通意識はあると思います。これは、個別のプロジェクトレベルでは実現されており、その例として、「提言」(案)では「地球観測データ統合・解析システム」、国際塩基配列データベースを説明しました。ほかにも世界的には様々なプロジェクトが動いており、特にビッグサイエンスといわれる分野では、このようなプロジェクトは決して稀なことではありません。だたし、これらは、国レベル、世界レベルの基盤として考えれば、まだどこも実現できていません。各国でこのような情報基盤への関心は強く、それを目指したプロジェクトが始まっています。「提言」(案)では、その中でも進んでいると考えられる米国科学財団(NFS)の「cyberinfrastructure」のプロジェクトを紹介しています。第4期科学技術基本計画でも「文献から研究データまでの学術情報全体を統合して検索・抽出が可能なシステム」として、長尾館長が提唱した「知識インフラ」の構築が明確に謳われたことは、そのような意識の表れと考えています。
では、この「知識インフラ」構築の目的は何かというと、多様な形態の情報を多くの人がアクセス可能な状態にする、というのがまず第一点です。それを具体的にどう実現していくかを考える段階で、「データ」「情報」「知識」という言葉を定義してみました。これらには様々な定義が可能であろうと思いますが、ここでは、「データ」は未加工のものを指す、「情報」はそこから何らかの解釈をして表現されたもの、基本的には学術雑誌論文や図書といった文献を典型的なものを指す、と定義し、「知識」はそれがさらに体系化されたものとしました。これらを「知識インフラ」ではどう扱っていくかというと、当然この三つ全てを対象としたいが、具体的にどう扱っていくかをその場その場で考えていかなければならないだろうということです。文字テキストだけではなく音声、画像、プログラミングなど多様な表現形式をどう扱っていくかを考えなければならないし、ある種標準化した形で分析、加工していくときにどのような形式が考えられるのか、タグやリンク、視覚化といったものをどういった形で組み合わせていくのがよいか、そして最終的には、生産・流通・アクセス・処理・再生産という知識の循環をいかに成し遂げることができるかが大変重要な点になると考えています。こうした「知識インフラ」は、基本的には研究者を対象とするものだとしても、国民各層のあらゆるレベルからのアクセスにできるだけ応えられるようにすべきであり、それが専門家と市民双方向のコミュニケーションを支える基盤になるということです。「知識インフラ」構築に向けては、これが国レベルで必要なプロジェクトであるという認識を広め、関係する諸機関が集まって協議する場を作ることが第一歩で、そのためにNDLが中核として動いていただきたいというのが基本的な考え方です。
この「知識インフラ」の中で、NDLに果たしてほしい役割について取り上げたものが第5章です。まず、「『知識インフラ』構築における課題」ですが、ここには特に個別の課題が書いてあるわけではなく、課題の洗い出しから始めなければならないほどの大きなプロジェクトであると考えています。意識の問題として根本的に考え方を改めなければならない必要があるということです。まず、電子情報資源の技術の変化は印刷資料に比べて、格段に速く、そのスピードに対応した研究開発を継続的に行っていく体制を作るためには、多くの人達の知恵が必要になります。また、これまで図書館は、研究成果としての論文や図書だけを扱ってきましたが、「知識インフラ」を構築していくためには、研究プロセスにまで入り込んでいかねばなりません。現段階では、図書館が研究プロセスに入り込むことは無理でも、研究プロセスを含めた形での「知識インフラ」構築のためにNDLに何ができるのか、という考え方が必要です。これまでNDLが進めてきた資料の収集と保存を土台に、電子情報資源に関しても収集と保存を確実に進めていくことが第一歩であると考えます。その上で、NDLには「知識インフラ」構築の中核になっていただきたい。従来からある各国の国立図書館や国立の機関等との協力関係を通じて、電子情報資源に関する共同研究、情報交換等を行う等グローバルな連携を推進してほしいと考えています。
「知識インフラ」は、国レベルでのこれまでにない協力体制を組んでいかなければ実現できないものです。とは言っても、遠い将来のことではなく近い将来で今直ぐ進められることもあると考えており、それを第5章(2)で七点にまとめました。一点目は、学術雑誌、学術図書、学位論文といった、印刷物のデジタル化です。科学技術振興機構(以下、JST)、NIIを始めとして、個々の学会・大学等でのデジタル化も進んでいます。これらを有機的に連携させ、足りない部分に関してNDLとして何ができるか考えていただきたい。特に文字テキスト以外の部分に関しては、学術情報でも画像音声の表現及び公表ということが始まっているので、検討を開始すべきではないかと考えています。二点目は、デジタル化のための環境整備です。例えば、標準化活動が挙げられます。特に電子情報資源を今後収集、保存していくために必要な標準化に関して、関係機関との協力を進めてほしいと思います。三点目は、電子情報資源の管理・保存です。今後電子情報資源の刊行形態や刊行主体は様々になると予想されます。電子情報資源に関しても最後の拠り所はNDLになるとすれば、長期保存のための技術的、社会的課題に対し取り組む必要があります。今までのような出版者との関係だけでは、立ち行かなくなる可能性があります。四点目は、電子情報資源の利活用の促進です。具体的には、既存の電子情報資源に対するナビゲーションです。とりわけ政府関係の資料に関しては、印刷物の時代から公表されない、いわゆる灰色文献(gray literature)が多く、これらが電子情報資源になることによって公開が進むと思われるため、優先的に進めてほしい部分です。また、NDLが保有する電子情報資源について、一般の人々が情報やデータそのものを利活用できる形での提供ということも盛り込みました。五点目は、従来の所蔵資料・サービスと電子情報資源との有機的連携です。電子情報資源の話に焦点を当てていますが、印刷物の収集、保存も止めては困ります。利用者にとっては、紙でも電子情報資源でも求めるものを入手することが重要なので、その連関が必要です。六点目は、利用情報の解析と利活用です。既に商業的なサイト等では、「おすすめ」「ランキング」という形で利用情報を活用した情報提供が始まっています。図書館はこれまでこうした利用情報に関しては、保守的というべきか、非常に慎重に取り扱ってきた部分がありますが、このような情報について今後活用できる形での提供を考えてはどうかという趣旨です。利用者の利便性の増進や学術研究対象として活用できる有用な情報であると思います。もちろん個人情報を消すなどの加工等が必要です。七点目は、知識インフラの中核としての社会的な機能の展開です。「知識インフラ」の意義を社会に普及し、プロジェクトを実現するためには、国民全体の理解を進める必要があります。このNDLの社会的な機能とは、国会議員と研究者のコミュニティをつなぎ、政策に最新の科学技術の動向を反映させることと、国民が学術情報に容易にアクセスできる環境を適切に整備することであると考えています。
委員長: それでは、今説明いただいた「国立国会図書館における今後の科学技術情報整備の基本方針に関する提言」(案)について、皆様方からご質問、ご意見をいただきたいと思います。
その前に、大隅専門委員がみえたので、一言自己紹介をお願いします。
大隅委員: 東北大学の大隅です。この度専門委員をさせていただきました。私にとっても大変勉強になることが多々あり、今後に活かしたいと思います。よろしくお願いします。
委員長: ありがとうございました。今日は「提言」(案)に対する意見をいただいて、若干の修正等の必要があれば、修正を行った上で、提言として確定し、審議会から長尾館長へ手交することを予定しております。建設的なご意見をお願いします。なお、「提言」(案)について、時実先生からご意見をいただいており、「時実委員提出資料」として配布しています。本日の倉田先生のご説明を受けて、理解が進んだ点もおありかとは思いますが、時実先生、資料について説明をお願いします。
時実委員: 提言としては、非常に立派なものだと思います。骨子全体については賛成します。私の意見は適宜取捨選択していたければと思います。
第一点目は、2頁に「科学技術振興機構の調査によれば、日本の科学技術関係資料のデジタル化率は4割未満」とありますが、私の調査では、英文誌については79.7%とかなり進んでいます。一方で和文誌は29.0%とかなり低い状況です。続いて、4頁の「商業出版社刊行電子ジャーナルの保存プロジェクト」については、カナダのオンタリオ州でコンソーシアムプロジェクトがあるので、ご参考までにということです。また、4頁から5頁にかけて、中国国家図書館の例が出ています。これは、提言で中国国家図書館の話を中心に書いているので抜けたのだと思いますが、CNKIとWanfangDataとVIPという三つの非常に大きな電子雑誌のプロジェクトがあり、9,000タイトルの雑誌が電子化されています。日本と比べて非常に進んでいますので、ご参考にしていただければと思います。学位論文も17万件のデジタル化が進んでいる状況です。また、10頁の電子情報資源の識別子の付与・登録機関に関しては、今後はデータの記述方法についても考えるべきだと思います。「XML DTDなどの記述形式の標準化」を追記してはいかがでしょうか。XML DTDは、学術雑誌・書籍の分野ではアメリカのNLMなどが世界的な評価を得ております。この辺りについては、「関係諸機関と連携し」との記述を加えてはどうかと思います。11頁の「(4)電子情報資源の利活用の促進」に関しては、研究者名の同定が最近話題になっており、NII、JSTも行っているので、こちらについて一言触れてはどうかと思います。また、同じく(4)について、国だけではなくメディカルオンラインなど民間も学術雑誌の電子化を頑張っています。これまでは国の機関が話題の中心でしたが、民間との協調もこれから予想されるため、連携について追記してはどうかと思います。以上は、これまでの議論を踏まえていないものですので、必要に応じて取捨選択していただければと思います。
委員長: 貴重なご意見をありがとうございました。データ等も時実先生の最近の調査、研究を踏まえて提供いただきありがとうございます。時実先生からのご提案は、本日の会議の議事録に残すと同時に、NDLの第三期科学技術情報整備基本計画の中で取り上げることも考えられますし、また、提言の附属資料を補強するために使うことも考えられます。私からの意見を申し上げますと、最後の指摘に関しては、民間とは距離を置く方がよいのではないかと思います。最近は民業圧迫なども指摘されるところですので少し注意をした方がよいと思います。XML DTD等は大変重要なご指摘であると思います。ただ、全体を通してあるところでとどめておいて、あまりテクニカルなことまで入らない方がよいと思います。倉田先生、何かありますか。
倉田委員: 時実先生、ご意見ありがとうございます。基本的には、事例等に関しては附属資料でご覧いただきたいということと、11頁ではNDLでできそうなことを中心に書いた次第です。当然ほかでもやっていることもあるかと思いますが、あえて入れなかったという経緯があります。その点がアンバランスに受け止められたのかと思います。その辺りは皆様のご意見を受けて、必要なら提言の修正もあり得ると考えています。私も民間については扱いが難しいと思います。他の全部に関わることですが、民間との連携をうまくやるというよりは、民間がやらない基盤的な部分をやるべきであると思います。民間はそれを活用するという方向でまとめるのがよいと思います。
土屋委員: 民間との関係ですが、時実先生のご指摘はかなり重要だと思います。メディカルオンラインは原文をスキャンしたPDFを使っていて大変綺麗です。ビジネスモデルとしても成り立っています。彼らは学会の動向、出版界の動向も理解していると思います。デジタル化は最初からやめてしまってもよいと思います。もう民間である程度できているものは見守ればよく、民間でできない基盤を国が下支えするといったとき、世界的に見ても民間ができないことを国が資金を出してできるものでしょうか。民間でできないことを国の資金で行うというとき、最近は税金の使い方という議論になる。リターンの見えないものに税金を使われるのは困るという風潮が最近強いと思います。民間が動くということはリターンが見えるから動くのだと思います。そこを今までみたいに国がしっかり下支えするという議論だけで済むのかということについて、大丈夫かという疑問があります。その点、雰囲気を明るめに書かれてはどうかと思います。表現は難しいですが考えていただきたい。
委員長: 国、この場合はNDLが行うことによって永続性が保障されるということが非常に大事だと思います。そういう意味で「基盤」という表現がされるのだと思います。民間が圧倒的な事業を進めていて、例えばGoogleの活動などがありますが、そういったことをある程度位置づけておく必要があるとは思います。しかし、そうするとなると網羅的に新たな調査をする必要があるかもしれません。
土屋委員: 例えば、なぜGoogleに任せないのか疑問です。Googleにやってもらえば無料でできます。データがGoogleに渡って情報が吸い取られてしまうという点はありますが、自分が書いたものを出せば、Googleで無料でデジタル化ができて蔵書にできてしまうのです。大学でGoogleとデジタル化を行う場合にはそういう仕組みになっています。今まではお金がかかっていたものが無料でできるということは、国民から見て、賢い税金の使い方だと言われても仕方ないといえます。そうではなく、少しずつでも予算を取ってきてNDLが蔵書を自分で電子化するということに、どういう文化的、政治的な意義があるのかを明確に述べないとならない。Googleにはやらせないという理由を説明する必要があると思います。民間との関係については考える必要があり、今までの国が下支えするという論理だけでは済まないのではないかと思うのです。この辺りの書きぶりの検討をお願いしたい。
委員長: 何かご意見はありますか。
喜連川委員: ご指摘の点は、皆さん心の中では強く感じているところですが、これはあえて取り上げない方が現状では妥当ではないかと熟慮した結果、部会では提言(案)のとおりの扱いになったと理解しています。まさに同じことが1,300億円のスーパーコンピュータにも言えます。どうして1台しか売れないものに国税を投入するのか、というのと非常に似ています。土屋先生からGoogleの問題についてご指摘いただきましたが、昨今のYahooがマイクロソフトではなく、Googleと連携したことで、情報の操作の問題が非常に大きな課題として上がってきています。そういう中で、学術雑誌などはそれほどバイアスをかけるインセンティブはないかもしれないけれども、ポテンシャルとしては極めてリスクが大きい。デジタル化だけをアウトソースするというのはよいのかもしれないが、リポジトリとしては国家基盤が持つことが重要になっていると多くの識者が言っています。このことを、白黒はっきり書くというのは、ちょっと待った方がよいのではないか、ここで踏み込んだ表現をすることは、やや時期尚早になる可能性があると思います。
土屋委員: あともう一点。全体的に少し気になったのですが、提言ですから何を言ってもよいのだとは思いますが、NDLがやるべきことが大きすぎるように思いました。NDLができるところはやって、全部できない部分についてはNDLが連携の中心になりなさいと。一方で、この審議会の基礎になっている科学技術文献収集の予算は10億円くらいありますが、これを使って何をするのかが提言からは見えない。この点についてこれでよいのかと疑問を少し感じました。
委員長: 倉田先生いかがですか。
倉田委員: 本来、予算規模に合ったものとして、この程度のことは考えていくべきということや優先順位付けというものが必要であるとは思います。ただ、今のこの時期にそれを提言してもあまり意味がない、NDL内部で議論すればよいと考えた次第です。部会をわざわざ作って提言するに当たって、誰に向けてどういった提言なのかを考えることから始めました。そのとき、当然NDLへの提言ではあるものの、今後の大きな話をどこかで一度してみてもよいのではないかというのが部会での最終的な結論でした。本当に実現可能性を担保できるのかと言われるとなかなか難しいのですが、方向性として大きなことを言ってもよいと思うのです。当然言いっぱなしでは無責任だという批判もあろうかと思いますが、一方では大きなイメージを掲げて、そちらの方向に意識・モチベーションを高く持って変えていくということがこの時期には必要なのではないかと思い、このような提言としました。
委員長: そこのところは「知識インフラ」という非常に大きな提言があるのですが、これは、部会での検討に当たり考慮していただいた二つの柱のうちの一つですが、第4期科学技術基本計画の答申の中にも入っていますので、そちらもしっかり受け止めていく必要があります。どこが中心になってやるべきかを考えたとき、「知識インフラ」というものをNDLが構想したのでNDLがやるのが自然だという面があるかと思います。
土屋委員: 海外の学術情報資源のアクセスに関しては、大学の方は苦しいながらも最近は円高のおかげでかなり維持できているという部分はありますが、産業界の側にはあまり提供できていないと思われます。JSTの文献提供事業は、既に往時の1/3近く、40万件ぐらいになっており企業が不要になったのかもしれませんが、どうも十分に提供できていないという感じが一方ではあり、かつ、NDLは大学とは契約の仕方が違うので、必ずしも電子化の経済的、金額的なメリットを十分には得ていないような感じがします。国民に利用させると言うけれど、国民がどこでも使えるライセンスを取っているわけではなく館内で利用できるライセンスしか取っていないので、国民が利用する場合には情報を紙でもらうしかないという状況になっています。そこをもう少し何とかならないのかという感じを持っています。これはNDL内で考えればよいという倉田先生のおっしゃることはそのとおりだと思いますが、ならば「NDL内で考えろ」というふうに書いてほしいと思います。
委員長: 11頁の頭のところ、「最後の拠り所」というのが大事だと思います。電子ジャーナル関係は大学が確かにかなり頑張っていて、一方では大学において、図書館も市民に開かれた方向になっていますから、市民が最寄りの大学に行けばかなりのものを見ることができます。NDLも、ここに来てもらえれば見られる。「行けば見られる」という、最後の拠り所としての役割、機能が大事だと思います。
土屋委員: もちろんそれはそうなのですが、それを果たし得ないのではないかと思うのです。大学が収集しているものに比べて、NDLが収集するものは非常にわずかです。それから、大学はオープンユーザに開かれているということはあっても、基本的には出版社との契約関係でしか提供できません。その意味で、NDLに来ればNDLが所蔵するものが見られますが、NDLの資料は大学と比べた場合、そんなにないという実情があると思うので、その辺りをどのように考えられるのかということなのです。
委員長: 一方では、専門図書館の利用の仕方が変わってきているとも聞いています。長尾館長、いかがですか。
長尾館長: この提言にはかなり大きなこともいろいろ書いていただいています。私どもからすればこれは近未来のNDLのやるべき努力目標としては大変よい、しっかりしたことを書いていただいたと思っています。もちろん100%できる自信はありませんが、何年か先にはこれに少しでも近づいていくような努力ができるし、努力しなければならないと感じています。海外の資料については、土屋先生のおっしゃることはもっともですので、以前からNII、JSTなど大学関係の方々とどうしたら合理的なものになっていくか、相談をしていますが、なかなかよい解決方法がありません。それから、ここに書いてあるように「最後の拠り所」としての資料の存在というのは、特に産業界にとって必要な、利用するであろう資料はしっかりセレクションをして持っているつもりでいます。こういうものについて、短期的にコストパフォーマンスの概念だけを適用して議論するのがよいのかと考えると、そうではなく、日本で永続的に100年、200年のスパンで持っていくという立場で物事を考える必要があると思います。科学技術情報についてはそうではないという論も成り立つとは思いますが、NIIやJSTなど関係する方々と、日本全体として見た場合にどういうふうに外国の科学技術情報を取り扱うかという姿をこれからも追求していきたいと思っています。コストパフォーマンスではない世界も十分尊重してやっていかなければならない、という気持ちで進みたいと考えています。
中村委員: 「知識インフラ」ということで、データや情報、知識を幅広く提供するという仕組み自体は大変結構だと思います。質問になりますが、こうした成果やデータはどの程度先端のものでしょうか。誰がどういう条件で実験をしたのか、例えばNIIやJSTがその辺りのスクリーニングをしているということもあるのでしょうが、科学技術情報についてはどういう形でスクリーニングして、機密保持などをどう確保していくのかについて、何らかのアクセスの制限が必要ではないかと思います。構想自体としては、特に我々も今度科学技術基本計画で1%の国費を使うべきだと主張して、やっと入ったわけで、そういう意味では大変結構なことだと思っていますし、研究もこれでどんどん進むと期待はしているのですが、そこが若干気になりました。
委員長: どこかで触れたかと思いますが、その辺りはどうでしょう。
倉田委員: 基本的にはまずはオープンになっている情報にアクセスできるようにすることが中心で、将来的には情報などを乗せられる基盤ができれば、そこを利用してデータを公開する人が可能な範囲で、公開したい部分だけを公開していけばよいのだろうと思います。そこにもちろんある種の評価やスクリーニングを含めた上で、「知識インフラ」というものを考えていくべきだと思います。そういう踏み込んだ議論はできず明確ではなかったかもしれませんが、部分的に「適切な」などの言葉に、あくまでも公開できるものをそのレベルでやっていくという気持ちを込めています。ただ、学術情報、科学研究の場合には、基盤となる部分はできるだけ公開の方向で考えていただきたいという点は申し上げたい。全てを囲ってしまわれては、将来への再生産への道、知識の循環というのはできないので、その方向性としてできるだけオープンなアクセスをということをかなり強く言っています。何でも全部公開しなければならないと読めてしまったところがあるとすれば、そこはそういう意味ではなく、あくまでも方向性として謳っているということです。
時実委員: 学術データの公開については、最近では『The New England Journal of Medicine』という雑誌や、アメリカの学会でもそうですが、投稿規定の中で元のデータをしかるべきところにデポジットして公開する、という方向がだんだん出てきています。日本ではまだ例はありませんが、世界的な方向はそうなのかなと思います。これは研究所の不正を防ぐ意味もありますが、データの再利用を目指すという方向性は世界的には進んでいると思います。
委員長: それもどこかに書いていたように思います。全体としてはそういう方向に行っているのではないかと思います。
中村委員: 前回の審議会で、確かデジタル情報については一定期間経つと提供機関が消してしまうことがあるので保存しなければならない、という話があったと思います。それで収集の仕方に工夫をしなければならないということだったと思いますが、そういう問題はこの形になることで解決できるのでしょうか。
委員長: その辺りはどうですか。
倉田委員: 「消えてしまう」ことについては様々な事例があるので、全部に当てはまるかどうかは分かりませんが、例えば、ウェブサイトなどインターネット上で次々と更新されていくような情報に関しては、基本的には定期的保存しか方法がないわけです。それに関しては今回のインターネットの収集事業が本格化したことで、全てではないにしても国の機関等のサイトについては定期的に蓄積ができるようになるだろうと考えています。今はまだ収集範囲が制限されているので、それをどこまで広げられるかについての検討をしていかなくてはならないと思います。今後は、もっと大きな問題として、蓄積していけば保存は増えるばかりなので、それをどういう形で支え切れるのかということを今後の課題として議論していく必要があると思っています。
委員長: NDLの側からはいかがでしょうか。
長尾館長: 国内発行の学術雑誌は、紙でも電子でも、最終的にはNDLが収集して永久保存する義務があると認識していますが、科学技術系の外国雑誌は、我々としては予算上の制約もあり完璧に収集できないので、そこをどうするかという課題は残ります。
委員長: 学術論文的なもの、大学が作る機関リポジトリなどは、その大学が潰れてしまったら消えてしまうということはあるかもしれませんが、かなり安定したものだとは思います。一方で自治体などの公的なレベルでは、ある種の基準で体系的に収集していると理解しています。確か最初のころは、そういうものをどうするのかについてかなり議論しました。今回は少し進化して、学術的なこと、知識インフラに限定した提言となったわけです。
かなり時間を過ぎましたが、貴重なご意見をいただいたと思います。私の印象では、今回の提言は、この案のとおりとさせていただき、特に時実先生からいただいたデータ関係は附属資料に反映させてはどうかと提案します。もう少し大きな問題、根源的な問題を、土屋先生等からいただきましたが、それについては、民間との関係なども含めて、今後またこの審議会として継続して議論していくことができるので、そちらに委ねることにしたいと思います。コンパクトにまとまっていると思うので、今回はこの形でご承認いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
土屋委員: 基本的な方向性については賛成です。ただ、もう一点だけ気になったことがあります。一般市民に対するサイエンスコミュニケーションというのは、科学技術基本計画でも、今までになく取り上げられていると思います。NDLもいろんな形で大分努力してきた部分があると思いますが、その点が弱いような気がします。10頁の(5)と(7)辺りで、もう少し親切に国民に分かるように紹介するような話があってよいのではないでしょうか。
委員長: そこは私も気にはなったところです。(7)のところなども、「サイエンスコミュニケーションの基盤形成に寄与する」というように締めてありますが、これは今の政権になってからかなり変わってきた点だと思います。政務三役が研究者ともしっかりコミュニケーションを取りながら様々なことを行っているようです。そういったことがいち早くここにも表現されていると思いますし、その意味ではかなり踏み込んだ書き方になっていると思います。第4期科学技術基本計画の策定の答申にもそういったくだりがありますが、NDLはそういう役割も果たしてほしいと思います。
土屋委員: 力点の問題ということですね。
委員長: 答申にこのようなことが書いてあると、NDLにはいろいろな組織や手段で取り組んでいただけますし、関係した機関にある種の協力要請などもできます。実質的にはかなり進むということになっていくと思います。
塚原委員: サイエンスコミュニケーションという意味では、アクセスを保障するだけでは不十分で、国民や市民を支援しなければならないというのが通説なので、場合によってはそういう言葉を補足していただくと、よりはっきりすると思います。
委員長: 分かりました。最後のところに反映させましょう。アクセスだけでなく、コミュニケーションの支援を追加しましょう。
土屋委員: 基盤形成だけだとちょっと弱いと思います。この12頁の部分は、「アクセスできることを保障し、それを支援することで、サイエンスコミュニケーションの基盤形成に寄与する。」と一言入れたらどうでしょうか。
委員長: 今の言葉でどうでしょうか。
倉田委員: 「アクセスできることを保障し、社会の課題解決を」と入れますか。
土屋委員: 「利用を支援することで」でどうですか。
倉田委員: 「利用を支援」でよいですか。
委員長: では、12頁の下から2行目、「アクセスできることを保障し、利用を支援することで、サイエンスコミュニケーションの基盤形成に寄与する。」ということでいかがでしょうか。
(一同了承)
委員長: それでは、この部分を修正した上で、提言を提出したいと思います。これから10分休憩を取り、修正したものを作って長尾館長に手交することにしたいと思います。
大隅専門委員: 手交後、提言はNDLのホームページに公開されてダウンロードできるようになると思いますが、先ほどのアクセスの保障や利用の支援という話は、ホームページに載せるだけでは親切なやり方ではないと思います。専門委員になってから、毎月NDLの月報を送っていただいて見ていますが、これは一体どこに届いていくのか、ということに対して配慮をお願いします。せっかくたくさんの先生方のお時間を使って作られたものが活かされず、実際にはよい方向に向かわないのではないかということを危惧しますので、是非検討いただきたいと思います。
委員長: ありがとうございました。それでは10分間、15時42分まで休憩としましょう。
(休憩)
委員長: 再開します。たくさんの貴重なご意見をいただきましたが、お配りしたとおり、12頁の最後の二行のところを「国民が学術情報へ容易にアクセスできることを保障し、利用を支援することで、サイエンスコミュニケーションの基盤形成に寄与する。」とさせていただきます。ありがとうございました。本日の提言を是非活かしていただけますように、NDLの第三期科学技術情報整備基本計画を期待して見守っていきたいと思います。
それでは、この提言書を国立国会図書館長に手交します。
(提言手交)
委員長: 「国立国会図書館における今後の科学技術情報整備の基本方針に関する提言」について。平成23年1月19日に開催しました第52回科学技術関係資料整備審議会において、標記「提言」及び附属資料が審議、了承されましたので、別添にて「提言」等を提出いたします。その実現方につきまして、貴館の御理解と特段の御尽力をお願いいたします。
長尾館長: どうもありがとうございました。
 
6.閉会
委員長: それでは、最後に、NDLの科学技術情報整備に関する報告があります。よろしくお願いします。
吉本主題情報部長: 本日は、NDLに対してチャレンジングな提言をいただき、厚く御礼申し上げます。今後この提言を踏まえて、また、本日のご議論を肝に銘じ、実現に努めて参ります。そのための計画を、今年度中にNDLにおいて第三期科学技術情報整備基本計画として策定いたしますので、今後ともご指導をよろしくお願いします。
委員長: 今後のNDLでの整備状況に期待しています。
長尾館長: ただいま提言をいただきまして、誠にありがとうございました。私どもとしては身の引き締まる思いでこの提言書をいただき、今後に向けて努力をしていきたいと思っています。主題情報部長が申したように、3月末までに提言書の、特に10頁以降に書いてある七つの項目について、具体的に進めるべきことをきちんと議論して決めて、来年度から頑張って5年ぐらいの間にできるだけのことは進めたいと思っています。そうすることで日本全体、特に科学技術関係の研究者の皆様方にもNDLが十分役に立っていることを示せるよう努力しますので、どうぞ今後とも叱咤激励をお願いします。審議会委員の皆様方には改めて御礼申し上げます。特に、部会でこの文書をまとめてくださった倉田先生、喜連川先生、大隅先生には感謝の言葉もございません。私どもとしては、これではっきり意識をして頑張っていきたいと思います。また1年後に、進捗状況を報告してご批判を仰ぎたいと思っております。この提言をいただきまして、本当にありがとうございました。
委員長: 本日は長時間にわたり、非常に活発な、質の高いご議論をいただき、委員の方々には厚く御礼を申し上げます。委員の皆様におかれましては今後ともNDLの科学技術情報整備にご尽力いただければと思います。今、長尾館長からもありましたが、今回は特に基本方針検討部会の倉田先生、喜連川先生、大隅先生には大変なご尽力をいただき、私どもとしましては、かなり進んだ提言ができたのではないかと思っています。それでは時間がまいりましたので、これで終わりたいと思います。長時間ありがとうございました。
長尾館長: どうもありがとうございました。

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