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第45回科学技術関係資料整備審議会議事録

日時:
平成16年12月6日(月)午後2時00分から午後3時45分まで
場所:
国立国会図書館 東京本館4階特別会議室
出席者:
科学技術関係資料整備審議会委員 10名(うち1名代理出席)
長尾眞委員長、朝倉均委員、岡﨑俊雄委員、小田公彦委員、倉田敬子委員、末松安晴委員、塚原修一委員、土屋俊委員、名和小太郎委員
野依良治委員は欠席。また、沖村憲樹委員の代理として、板山科学技術振興機構情報事業本部情報企画調整室長が出席した。
館側出席者 13名
館長、副館長、総務部長、調査及び立法考査局長、収集部長、資料提供部長、主題情報部長、関西館長、総務部企画・協力課電子情報企画室長、同部会計課長、主題情報部司書監、同部参考企画課長、同部科学技術・経済課長
会議次第:
1. 開会
2. 国立国会図書館長挨拶
3. 新委員紹介
4. 第44回科学技術関係資料整備審議会議事録の確認
5. 作業部会の報告及び審議
  「電子情報環境下における国立国会図書館の科学技術情報整備の在り方に関する作業部会報告書(案)」について
6. 閉会
配布資料:
科学技術関係資料整備審議会 会議次第
科学技術関係資料整備審議会委員および幹事名簿
科学技術関係資料整備審議会 座席表
科学技術関係資料整備審議会規則
科学技術関係資料整備審議会議事規則

資料1 第44回科学技術関係資料整備審議会議事録
資料2 第44回科学技術関係資料整備審議会議事録 ホームページ公開版
資料3 電子情報環境下における国立国会図書館の科学技術情報整備の在り方に関する作業部会報告書(案)
資料4 英国下院科学技術委員会報告 2004年7月20日(SUMMARY)(PDF: 14.3KB)
資料5 SPARC活動およびオープン・アクセス運動の現状について(PDF: 44.9KB)
資料6 科学技術関係国立国会図書館刊行物
    ・国立国会図書館電子図書館中期計画2004 パンフレット 他

議事録:
1 開会
長尾委員長
(以下、委員長)
それでは第45回科学技術関係資料整備審議会を開催いたします。本日はお忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございます。開会に当たりまして、まず国立国会図書館の黒澤館長からご挨拶がございます。よろしくお願いいたします。
 
2 国立国会図書館長挨拶
黒澤館長: 本日は、ご多忙のところ当審議会にご出席いただきまして、本当にありがとうございます。
本年2月26日の第44回の審議会では、理化学研究所の野依先生をはじめ4名の新委員をお迎えするとともに、機関委嘱をお願いしておりました方々の交替を含め半数が新しい顔ぶれということになりました。また、今回の第45回審議会では、文部科学省大臣官房審議官の丸山委員が人事異動をなさり、後任の委員として小田審議官をお迎えすることになりました。
さて、前回の審議会では、科学技術に関わる諸機関の理事長あるいは所長という重責を担っておられる方々、また学術コミュニティの現場でより良い学術情報流通のために尽力されておられる大学の諸先生方、そして学術・科学技術行政を統括されておられる文部科学省の委員と、まさに国の科学技術政策と学術情報の円滑な流通を先導しておられる委員のご出席のもとに、各々のお立場から「情報環境の変容と国立国会図書館のこれからの役割」というテーマで、大所高所からのご審議をいただきました。科学技術振興機構の沖村先生と千葉大学の土屋先生からはご発議をいただき、これをもとに新しい情報環境の変化、とりわけインターネットの普及に象徴される電子情報環境下における当館の役割はどうあるべきかについて、活発なご審議をいただきました。しかし、何分にも限られた時間の中でございましたので、国立国会図書館が担うべき課題を明確にするためには、さらに詳細な情報分析や論点整理が必要との観点から、長尾委員長の取りまとめにより作業部会を設置して、「報告書」をまとめていただくということになったわけでございます。
本日の審議会は、この作業部会でのご議論を経て取りまとめていただいた「電子情報環境下における国立国会図書館の科学技術情報整備の在り方に関する作業部会報告書」についてご審議いただくことになっております。活発なご審議をいただき、新しい時代にふさわしい国立国会図書館の科学技術関係情報整備の方向性を打ち出していただければ幸いに存じます。
なお作業部会の報告書は、厳密な意味での諮問答申という形式を踏んではおりませんが、当館といたしましては、諮問答申に準ずるものとして重く受け止める所存でございます。この報告書の今後の取扱いを含め、ご審議いただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
3 新委員紹介
委員長: どうもありがとうございました。ただいま館長からお話がございましたが、文部科学省大臣官房審議官の小田公彦さんが新しく委員に就任されましたので、一言ご挨拶をお願いいたします。
小田委員: 今ご紹介いただきました文部科学省の小田でございます。国立国会図書館とは若干縁がありまして、1年程前、官房政策課長の時に、国立国会図書館の支部図書館である文部科学省図書館の館長を拝命いたしました。その時は旧科学技術庁と旧文部省にそれぞれ図書館があり、まだ統合されていなかったのですが、この1月に丸の内へ移転した際にやっと一つの図書館になり、そこで資料の電子化に取り組ませていただきました。今、図書館を巡る科学技術に関しても大きく環境が変化していると伺っておりますので、ぜひこの審議に少しでも貢献できたらと思っております。よろしくお願いいたします。
委員長: どうもありがとうございました。国立国会図書館の方にも異動があったようですので、渡邉主題情報部長の方からご紹介をお願いいたします。
渡邉主題
情報部長:
国立国会図書館内の人事異動に伴いまして、幹事のうち、収集部長が原田幹事に交替いたしました。報告は以上でございます。
委員長: ありがとうございました。本日は野依委員がご欠席でございます。それから沖村委員もご都合により欠席され、代理として板山情報企画調整室長がご出席でございます。よろしくお願いいたします。それでは審議に入りますが、その前に館長、副館長はご退席になります。
―館長、副館長退席―
委員長: 先ほど話がありましたように、第44回審議会では作業部会を設置してそこで何度もご審議いただき、今回その作業部会の報告書(案)をご提出いただきました。本日はそれを審議した上で、報告書に皆様のご意見を入れて修正し、館長にご報告したいと思っております。資料3がその報告書(案)ですが、その中の「1 国立国会図書館に期待する『施策目標』」という部分は、この審議会から国立国会図書館への要望という形になっております。この部分は、ご議論を経て、我々の審議会からの館長に対する「提言」という形にまとめ直して、この作業報告書と共に館長に提出させていただきたいと思っております。
 
4 第44回科学技術関係資料整備審議会議事録の確認
委員長: それでは審議の前に、第44回審議会の議事録を確認したいと存じます。主題情報部長の方からお願いいたします。
渡邉主題
情報部長:
委員の皆様には、第44回審議会の議事録と、議事録の「ホームページ公開版」を事前に配布させていただき、その際にいただいたご意見を反映して修正いたしました。その修正版を今日、資料1、資料2としてお配りしています。修正をお寄せくださいました部分が直っているかどうかをご確認いただき、よろしければ、資料1の議事録についてはこの形で確定させていただきたいと思います。また、資料2の方はホームページで公開したいと思いますので、この形で公開してよろしいかどうか、ご確認をお願いいたします。審議会の議事録と「ホームページ公開版」との違いを申しますと、「ホームページ公開版」では報告資料あるいは懇談等の発議の資料を別途掲載するため、その報告と発議の部分の記述を簡略化し、審議の部分が重点的に分かるようになっております。ご確認の上、取扱いについてお決めいただければと思います。
委員長: 分かりました。資料1の議事録につきましては、事前に皆様にお配りして、見ていただいているかと思いますので、ご承認いただけるということでよろしいでしょうか。また資料2は発言者として委員の皆様のお名前がそのまま載せてありますが、このままホームページに公開してよいか、あるいはお名前は削除した方がよいのか、その辺については何かご意見ございますでしょうか?
朝倉委員: 資料2のホームページ公開版についてですが、その発言の中に出版社名など幾つか固有の名詞が入っております。ホームページの場合には、できたら「A社」や「B社」という形に直していただけたらよろしいかと思います。
委員長: なるほど。事務局の方はその点を修正するということでよろしいですか?
渡邉主題
情報部長:
はい、承知しました。
委員長: 他に何かございますでしょうか。では、特にないようですので、資料2は発言者の名前をつけたままで公開をさせていただきたいと存じます。もし内容等につきましてお気づきの点がありましたら、審議会が終わるまでにご指摘いただければと思います。
 
5 作業部会の報告及び審議
<報告>
委員長: それでは次に、資料3の報告に移らせていただきます。この報告書(案)は、11月26日に作業部会の長であります土屋先生から私にご提出いただきました。これを審議し、館長にお届けしたいと思っております。国立国会図書館から関係各所に配布していただいて、国立国会図書館の活動についてもっと理解をいただくような活動をしていただくのがよろしいかと思っております。そのために、報告書(案)の第1節を、提言という形にして後ほど議論していただいたらよろしいと思います。そういうこともふまえてご検討をいただけるとありがたいと思います。まずは、土屋部会長から報告書についてご説明をお願いして、意見交換をしたいと存じます。よろしくお願いいたします。
土屋委員: それでは、資料3に沿いまして報告書の内容をご紹介したいと思います。時間の限りもありますので丁寧に読み上げることはいたしませんが、全体の構造を最初にご紹介させていただきたいと思います。
表紙をめくられて目次をご覧ください。先ほど、長尾委員長からもご紹介がありましたように、第1節の「施策目標」が、当面、われわれの立場からすれば国立国会図書館にやってほしい、国立国会図書館の立場からみれば国会図書館がやるべき施策内容を、ある程度具体的に記述したものになります。第2節に現在の状況についての事実認識を、第3節には現在に至るまで国立国会図書館が果たしてきた役割についてまとめてあります。それを受けて、第1節の「施策目標」の(1)に対応する内容を第4節、(2)に対応する内容を第5節、(3)に対応する内容を第6節で詳細に展開する構成になっています。従いまして、基本的に提言いたしたい第1節の内容を中心にご紹介した上で、時間の許す限りで第2節、第3節における事実認識および歴史認識ついてお話しするのがよいかと思いますが、よろしいでしょうか。
「はじめに」には今回のこの報告書に至るまでの作業過程について書いてあります。この作業過程におきましては、我々作業部会で作業した委員以外にも、長尾先生にも随時ご意見を伺うことができましたし、また、国立国会図書館のさまざまな部署の方のご協力を得て、ようやくここまで作れたということで、大変感謝しております。どうもありがとうございました。
第1節をご覧いただきたいと思います。「施策目標」として掲げるものは大きく3つあると述べています。(1)では、現代のネットワーク環境のもとで学術・科学技術情報が提供されるという状況の中で、日本における科学技術情報基盤の再構築が必要であろう。そしてそのためには何をしたらよいか。特に国立国会図書館としては何をすべきかが述べてあります。 
(2)では、そのような状況の中で国立国会図書館が、立法府としての国会や社会に対して、情報提供を行なうことを、さらに積極的に、特に科学技術情報に関してどうすべきかということについて提案しております。
(3)は、「おわりに」にもありますが、現在に至るまで-戦後60年の間-の活動も、ここに委員として出席されていらっしゃる組織の、例えば科学技術振興機構、国立情報学研究所、およびその前身となるさまざまな組織やその他の組織の力があってできたことであり、今後もそういう形で国のさまざまな組織が協力していかなくてはいけないであろうと。その中で、国立国会図書館がある意味での調整機能、あるいは「舞台」を作っていく役割を期待する、という内容を提案しております。
当然のことながら、このような提案を実現するためには、国の科学技術・学術振興政策全体の中で、このような情報流通に係る一貫した政策が立案される必要がある。それとともに、国立国会図書館に対しては、それを担う分に関してしかるべき財政措置を望みたいと提案しております。
(1)と(2)は、しつこいとは思いますが、どの節も、原則的に「国立国会図書館は」というように主語を明示した形で書いてあります。これは「国立国会図書館で必ずやってください」ということです。(3)では「国立国会図書館」が消えているように見えますが、3行目に「国立国会図書館は」と書いてありますので、国立国会図書館の役割を明記することを趣旨として文章は作られていることをご理解いただきたいと思います。
(1)を詳しくご説明いたしますと、現在のネットワークに依存して電子化された科学技術情報が流通するという世界的な状況の中で、わが国においてそのような情報の流通・蓄積の基盤を再構築する際に、国立国会図書館として考えていただきたいことを、小文字のローマ数字のi,ii,iiiに分けて述べてあります。
まずiでは、国内で生産される電子情報をどのように考えるべきかということです。これに関しては、国立国会図書館としてはすでに「国立国会図書館電子図書館中期計画2004」が策定され公表されていますが、それを積極的に推進する際に、むやみに電子図書館化を図るのではなくて、わが国全体のIT戦略および科学技術・学術研究振興戦略に呼応する形で展開してほしいということです。具体的には、国内で生成される電子情報の収集とその長期保存というものに取り組む姿勢を見せて、結果として科学技術情報の効果的な流通を促進することが、インターネット時代の新たな科学技術情報基盤の形成に寄与することになるであろう、と述べております。基本的には、現在国立国会図書館が展開している電子図書館政策の中で、科学技術情報の生産と流通を扱っていただきたい。特に、その中では収集と長期保存の問題について、十分、科学技術情報に関して配慮していただきたいというのが趣旨であります。
iiは、さらに国内生産ではなくて外国電子ジャーナル、外国雑誌の中にも日本人の書いた論文が1割2割入っていますが、外国から入ってくる情報について考えたいということです。事実認識として、そのような情報流通が、基本的に電子出版化され、インターネットを通じて導入されるようになってくる、ということを認め、そのような形で提供されるものを積極的に導入する。そして、国民全体がより今まで以上に利用できるような状況を作る。例えば、文献提供サービス、などさまざまに行われている事業との統合・発展を図っていただきたいということです。
iiiとしては、iでは国内の科学技術情報の電子的資料の収集及び長期保存ということの重要性を説明しているわけですが、iiiにおいては学術出版が多国籍化し、かつ、その流通がグローバル化され、さらに、日本で生産された論文も海外から出版されるといったような、グローバル化状況について、日本で出版されたものだけではなく、科学技術系の外国電子ジャーナルの蓄積に関しても、日本の国内、場合によればアジアにとっての「ラストリゾート」となるということを期待したい、ということです。そのためには、海外の国立図書館と連携を取りながら、長期保存、安定供給にかかわるさまざまな施策を開始していただきたい。そのようなことをしないと、電子情報が持っている脆弱性、すなわち世界でも数少ないサーバの中にあって、配布後の行き先についてはほとんど保証がないという現状が放置される。それ自体の保存が不安定という状況を克服し、人類が共有すべきである科学技術・学術的な知的成果物を世界全体として利用可能な状態で保存することができれば、わが国からの国際社会に対する貢献として重要なものとなるであろう、ということです。
以上が(1)の「電子化された科学技術情報の我が国における流通・蓄積基盤の再構築」で述べられていることで、国内生産の科学技術情報に関する施策、外国からの情報導入の一層の促進、さらに、世界全体として知的な財産を長期保存していくことに対する貢献、という3点を強調しております。
(2)は、ある意味では比較的新しい観点を含んでいて、言葉としては難しいのですが、「科学コミュニケーションの促進」を通じて、国民の生活にかかわる安全・安心な社会作りという、現在の日本における一つの政策目標、国家目標に対する貢献を、「国会」および「国立」図書館としての国立国会図書館の立場から、次にあげるような施策に取り組むべきであると提案しております。
まずiは、「国会」図書館としての機能ですが、これからの法律、あるいはその法律の適用・利用に関しては、科学技術に関係したさまざまな事実や理論が議論の種になると思われます。実際に国会の審議等でそうした議論をしていくためには、それを支援するだけの情報そのものの充実と、その利用を支援する人的資源の充実を図ることによって、国立国会図書館が持っている立法補佐機能の拡充が図られなければならないだろうということです。特に「人」の面が重要であって、いわゆる「科学リテラシー」を持つ職員の育成・増強を重要なターゲットとしていただきたい、というのが第1点です。
iiは、現在、立法という側面だけではなく、一般の市民が科学技術情報に対してさまざまな関心を持っています。例えば、医療、薬の問題であるとか、原子力発電であるとか、特に今年はさまざまな事例が多かったですが自然災害、さらに環境全般、といった科学的な情報ニーズに対する対応を国立国会図書館ができるようにしていただきたい。直接対応するだけではなく、大学図書館、あるいは公共図書館との連携を通じて展開する方が国民にとって情報が利用しやすいということであれば、そのような連携をさらに緊密化することによって、最終的にエンドユーザーである国民一人一人が情報を利用することができるようにしていただきたい。具体的には、現代のようなインターネット時代に対応した情報発信型のレファレンスサービスができるライブラリアンを育成・拡充することが不可欠であろうということを述べております。当然、そのような情報ニーズに応えるために、既にある部分実現していますが、電子図書館機能を基盤とした文献提供サービスをさらに拡充して、全体としての国民が容易に情報にアクセスする環境の実現を図っていただきたい、ということです。
併せて、国立国会図書館は現在、国際子ども図書館という図書館を持っております。単に「子どものための本」という話ではなくて、ここで議論しています科学技術情報に関しましては、科学的な知識が社会において果たす役割、重要性が今後ますます増大するということを考えて、わが国の科学技術の将来を担う子どもたちの育成、科学技術振興の基礎となる人材の育成に対して、資料面でという図書館的な言い方ですが、最大限の寄与をしてほしいと。特に、子どもの想像力を豊かにし、科学的探究の魅力を伝えるための創意あふれるイベントや、学校図書館等と連携したサービスを、具体的な項目としてあげてあります。
これらは、これから簡単に述べますような事実認識に基づいて国立国会図書館がやるべきこととして絞り込んだのですが、実際問題としては、これらは国会図書館だけでやれることではなく、現在までさまざまな形で協力し、かつこれからも我が国の科学技術振興およびその情報流通を担う科学技術振興機構、国立情報学研究所、大学等の高等教育機関、その他国立研究機関等の関係機関と連携していかなければいけない。国立国会図書館としては、それらの機関との協議を積極的に進め、できれば、「科学技術電子図書館」ともいうべきワン・ストップ・ポータルを全体として実現していただきたい、ということを最後に述べてあります。以上が提言の内容になります。
提言の前提となる現況については、第2節で説明しています。簡単にご説明しますと、まず第1点としては1970年代以降、学術出版が商業化、即ち商業出版社が登場して、そこに依存する度合いが高くなったということ。そして1990年代においてはさらに電子ジャーナルが登場し、それまでの情報提供の形態、情報流通の形態が一気に変わってしまったという状況があることです。その中で、雑誌価格の高騰という状況が生じ、それに対応して電子ジャーナルという手段が、さらにそれに抵抗するオープンアクセス運動が登場してきており、そのような運動は近年イギリスやアメリカの議会レベルでの対応が生じている、ということです。現在流動的で帰趨が定まらないことが多々あるわけですが、問題としては学術出版の商業化をどう考えていくかということと、電子ジャーナル化を自明として受け入れざるを得ないだろう、という状況の変容をまず前提としなくてはならないだろうということです。第2点としては、これは先ほどの提言内容(2)に関わるかもしれませんが、科学技術が国民の生活に対して、非常に身近なものになってきたということ。そしてそのことを国民も自覚して科学技術の知識に対するアクセスをより多く求めるようになってきているということがあります。従って情報提供機関としての図書館が果たすべき役割は、ただ資料や情報を置いておくというだけではなく、そのような市民からの情報ニーズに対して応えられる状況を作っていくことがあるだろうと考えられます。さらに、国立国会図書館ではさまざまな形で国民に対する情報提供を行ってきたわけですが、一方で既に科学技術振興機構や国立情報学研究所、あるいは民間の業者でも情報の提供が行われています。相互分担の形態、あるいは実際の事業運営の形態も、研究者あるいは科学者、あるいは一般の国民からのニーズの状況が現代に至って大きく変化しつつあります。科学技術情報だけに限りませんが、国立国会図書館の立場を明確にするタイミングがきているという認識だということです。現在の段階ではすぐに答えを出すことができないほど大きな問題ですが、考えなければいけない問題としてとらえるべきであるというのが我々の一致した見解であるということです。
そのような中で、今まで国立国会図書館がどのような役割を、日本の科学技術政策あるいは科学技術資料整備という中で果たしてきたかということが、第3節に述べてあります。要するに、科学技術情報の資料収集にしても流通整備にしても、基本的な科学技術を振興する国の予算の一部として展開しているのですが、少なくとも歴史的な経緯を辿ってみる限りでは、必ずしも現在の段階で大きな科学技術情報流通の世界的な変化の状況に対応するだけの機動的な対応はとられていない、ということが一つの認識であるということが(1)の「付言すれば」という部分に書かれている内容になっております。さらに、言葉はもう忘れられてしまったかも知れませんが、「情報摩擦」が80年代から90年代、そして90年代を経てさまざまな状況が展開している中で、やはり科学技術情報のもつ科学技術振興における位置付けがやや低くなってしまっている、あるいは必ずしも明確に捉えられていないという状況が生じているのではないだろうかというのが(2)のまとめということができるだろうと思います。むしろ積極的には、そういう役割を明確にしておかなければいけないということが重要だということになります。そしてその中で、国立国会図書館としては、少なくとも資源としての科学技術を蓄積する我が国最大の図書館であるという事実、これを活かした形で今後の機能というのを考える、特にそのような形で国内で生産され国外から導入した科学技術情報を社会に還元する、という役割を様々な形で果たすということが大事になってきているだろうということです。第4節以降は、最初に述べました「施策目標」を詳しく述べてあります。
そして最後の「おわりに」で、この科学技術関係資料整備審議会を含めて「半世紀の歴史を持つ国立国会図書館の科学技術資料整備の発展には、文部科学省(旧文部省、旧科学技術庁)をはじめ科学技術振興機構や国立情報学研究所等、科学技術関係資料整備審議会に機関として関わってきた関係諸機関との協力関係を抜きにしては語れない。こうした諸機関と国立国会図書館の協力関係が、この報告書を契機として、新しく展開し、国の科学技術振興と国民に役立つ具体的な成果を生むことを期待する。」という期待を述べてあります。かつ、一番お願いしなくてはいけないことだと思いますが、この審議会から国立国会図書館を通じてあるいは委員の諸先生を通じて、科学技術創造立国を標榜する我が国にとって不可欠のこれらの課題について、その実現のために、国家予算の逼迫状況の中にあっても、十分な予算的裏付けをもって実行・実施しなくてはいけないということを、関係する皆さんが広く働きかけることを期待するということとしております。
最後に参考までに用語解説が付けてありますが、多少異論のある用語解説もあるかもしれません。新しい用語が多く、まだこなれていない概念が非常に多いということはご理解ください。最終的に、付図は、第1節の(3)に書いてあることを中心として、全体的なイメージとして国の関連する機関がどのように関連していけばいいかのイメージです。少なくとも関係する、所謂今流の言い方をするとステイクホルダーは一通り載せてあるつもりでございます。
以上、ちょっと長くなりましたが、報告書の説明をいたしました。
委員長: どうもありがとうございました。ただいまご説明いただきましたようにこの報告書の構成は、第2節以降の検討の結果が始めの第1節にサマライズ的にまとめてありまして、これを我々の審議会としての積極的な提言として、国立国会図書館にアピールしたいと思っています。そのアピールの基礎となる検討の結果が、第2節以降に書かれている、という構成になっているものでございます。
それではどうぞご自由にご意見をいただきまして、質疑を進めたいと思います。よろしくお願いいたします。
末松委員: 質問があります。報告書の第1節(2)のところで、「国民の生活にかかわる『安全で安心な社会づくり』のために有用な科学技術情報」と書いてあります。これはかなり限定的な書き方ですね。そのすぐ前のところでは「『科学コミュニケーション』を促進し」と非常に広く書いてあるのですが。ここを限定的に書いたのには何か意図があるのでしょうか。もっと広く書いた方が良いという気がします。
土屋委員: 全体的な書きぶりとしては、まず一般的なことが書かれ、続いて「特に」という部分が書かれているので、限定しているというよりはむしろ特に関心があるべき部分として書いたつもりです。具体的には、第1節(2)-iiに書いてありますように、環境、医療・薬学、原子力発電、自然災害といった分野を、ある程度「安心・安全」と関連付けて限定しております。
末松委員: ここは最初の部分であり、大変重要ですから、このように限定しないで、もっと広く、あらゆる分野が大事であるとした方が良いと思いました。
もう1点あります。報告書の最後にある付図ですが、これは非常に分かりやすく立派な図なのですけれども、他の委員会で情報技術について議論をしていました際、図中にカタカナで表記されている言葉がネックになってしまい、すんなりと内容に入り込めない人が随分多いようでした。やはりここでは漢字で書き、カタカナの語は最小限にしておいて、必要ならカッコで入れて書く、とすることが必要ではないでしょうか。例えば「デジタルアーカイブ」とか、「ポータル」とか、「ワン・ストップ・ポータル」という言葉が付図の頭に出てきますと、訴える力が弱くなってしまうかもしれません。
土屋委員: 分かりました。できるだけそうしてみます。
委員長: 確かにそういう点はありますね。
土屋委員: 「デジタルアーカイブ」という言葉は確か、国立国会図書館が策定している「電子図書館中期計画2004」の中で使われていますね。
末松委員: あっても良いのですが、一般に訴える際に、そのように言う方もいらっしゃいますので、参考までに申し上げました。
委員長: 分かりました。そこは少し工夫して、言い換えることにしたいと思います。ありがとうございます。他にご意見ございますでしょうか?
岡﨑委員: 提言には、社会との関係について大変意欲的に盛り込まれており、敬意を表したいと思います。報告書の第1節(2)-iiでは、具体的に「原子力発電」に言及してあり、国民や社会の関心にどう的確に応えていくかに触れておられます。私は原子力研究所におりますが、当研究所でも、社会の信頼をいかに得ていくか頭を悩ませているところです。私どもも、エンドユーザーが本当に求めている方向に沿ってどのように提供するかという観点が大事だと思っております。
そして、今回の報告書を読んで、国立国会図書館が国会の立法補佐機能を担っていることから、社会の関心を反映する国会との関係が大変大事ではないかと思っておりまして、その点からの質問がございます。国会は、調査室等の立法補佐機能を持っておられるわけですが、国立国会図書館と国会との関係において、国会が必要とする情報資源の充実、人材資源の強化の面で、具体的に今後どうあるべきかについて話合いやチャネルを持っておられるのでしょうか。もしお持ちであれば、それをどういう形で具体化していくのがよいか教えていただければありがたいと思います。
土屋委員: がっかりさせるような答えで申し訳ないのですが、委員の議論としては、「こういうことが必要だ」ということはあったのですが、「今、十分できているのでしょうか」という問いに対して、「まだです」ということであり、「では、提言の中に加えなくてはいけない」という論理です。その後具体的にどう展開するかについてまでは、まだ考えておりません。この報告書が基礎になって、具体的な方向へ進むことを期待しています。
委員長: 他に何かございますか?
森山調査及び立法考査局長: 今、ご質問があった国会に対するサービスについて、若干ご説明させていただきたいと思います。調査及び立法考査局の第一の任務は国会に対するサービスですが、今のお話のように、国会には立法補佐機関・支援機関と言われるものが3つございます。衆参の常任委員会・特別委員会調査室、(衆参の)法制局、そして国立国会図書館の調査及び立法考査局です。それぞれ「すみわけ」はありますが、調査及び立法考査局では、法律ができるまでの過程において、最も「手始め」に近い所を支援しています。例えば、国会議員の方では「こういう問題が起きたのでこれについて法律を作らなくてはいけない」、あるいは「外国でこういう問題が起こっているので我が国でもこれについて法を整備しなくてはいけない」、など、法律を作るいろいろな動機がありまして、それに応じて、内外の制度・事情などを調査し、回答しております。調査には二つの方法がございまして、一つは、国会議員からの依頼に基づいて行う場合、もう一つは、我々の方で問題を予測して調査する場合です。
科学技術分野については、最近では、国会議員の中に工学系、医学系など科学技術分野の経歴をお持ちの方が多くなったこともあり、調査及び立法考査局への問合せも多くなっております。ただ、「科学技術」と申しましても多岐にわたる専門分野がございます。我々としては、どういうレベルの情報をどういう形で提供していくかが大きな問題でありますが、一つの方針としましては、700数十名おられる議員全体へある程度の基礎的・概要的な部分を我々の方で押さえてお知らせすることが必要ではないかと考えております。一方、衆参の常任委員会・特別委員会調査室の方は、調査及び立法考査局と重なる部分はあるのですが、ある程度、委員会の審議等に関わるもので、法律ができたり、法案を審議する中で補佐しています。国立国会図書館の支援としては、概略このようになっております。
みなさまのお手元に「科学技術をめぐる政策課題2004」(『調査と情報ISSUE BRIEF』第459号)をお配りしていますが、ご覧いただけますでしょうか。ここでは、最近論点になっている政策課題をそれぞれA4サイズ1枚程度で説明し、まとめております。これを全議員に配布し、ご理解いただきまして、より詳しくは、改めて我々の方に聞いていただくという形にしております。この『調査と情報ISSUE BRIEF』については、平成16年6月から、国立国会図書館のホームページ上で全文を提供していますので、一般の方でも今国会で何が問題になっているかが分かるようになっております。また、この他にも、通常国会が開かれる前には、その通常国会でどういうことが問題になるのか、内閣提出法案としてどのようなものが提出されるのかについて、各項目をA4サイズ1枚程度で記述し、それらを「国政課題の概要」と題する『調査と情報ISSUE BRIEF』にまとめて、議員にお配りしております。長くなりましたが、国会サービスについては以上でございます。
委員長: ありがとうございます。
岡﨑委員: 確かに、こういう形の努力をしていかなければいけませんね。私どもの研究所でもホームページで色々と情報提供はしておりますが、やはり内容が難しくなかなか入りづらいところがあるようです。問題意識をどう持っていただくかという観点から入っていくことは、非常に参考になるのではという気がします。ありがとうございました。
委員長: みなさま、他にご質問ございますか?
塚原委員: 2点ございます。報告書の第2節(2)の辺りに関連すると思いますが、少し以前に『平成16年版科学技術白書』が刊行されましたが、その中では3点が挙げられ議論されていると思います。第1点が科学技術リテラシー、第2点が科学技術者と社会の交流、第3点目に国民参加による政策形成です。第2節(2)のところでは、第3点目の「国民参加の政策形成」という部分だけがおそらく入っていないと思います。この白書は行政府のものなので、扱い方が難しいのかもしれませんが、一言言及した方が良いのかなと思うのが第1点でございます。
委員長: 具体的には第2節(2)のどの辺りでしょうか。
塚原委員: または第2節(3)の国立国会図書館と関係機関との協力関係の部分でも良いとは思いますが。中身というよりは、『科学技術白書』のような影響力のある文書も先行しておりますので、それを一応受けておいた方がよいかと思いまして。それが第1点でございます。
2点目は、先ほどもお話がでました第1節(2)の「安全で安心な社会づくり」のところなのですが、「第2期科学技術基本計画」に関連して、これも行政府の計画なのですけれども、そこでは科学技術面での貢献とそれから経済面での貢献、3番目に「安全・安心」と挙げられています。報告書の中には「経済」という言葉もやはり入っていないように見受けましたが、安心・安全だけ、ちょうど3つ並べている中の3番目だけ持ってくると、特に強調したような形になってしまいますので、その点を多少薄めておいた方がいいのかもしれないと思いましてコメントいたします。以上です。
委員長: ありがとうございます。2点目のご意見につきましては、末松先生のご意見もございましたので、第1節(2)の上から2行目ですけれども、「安心・安全」を削ってしまって「科学コミュニケーションを促進し、国民のために有用な科学技術情報を」としたらいかがでしょうか。
土屋委員: 「国民の生活にかかわる有用な科学技術情報を」とすればいいでしょうか。
委員長: そうですね。ではまず、その部分は了承させていただきます。「国民参加の政策形成」については、第2節(2)の辺りで、入れる余地があるようでしたら作業部会で少し検討していただけるでしょうか。今すぐにどういう文言で入れるかを決めるのはちょっと難しそうですから。
土屋委員: 今のご指摘ですが、「国民参加の政策形成」を入れるとすると、節立てするというよりは一段落追加することになりそうですね。専ら、情報アクセスという観点だけで書いてしまっているので、政策形成のところまでは十分カバーしていないことは事実です。
委員長: どこまでニュアンスが入れられるか、ですね。これは後で検討することにしまして、他に何かご意見ございますか?
末松委員: 1点よろしいですか。これは報告書の中に入るかどうか土屋先生に質問なのですが、第1節(2)-iiiに「科学技術の未来を担う子ども達のために」とありますが、これは当然のことながらイベント等を中心にしたサービスになってくるわけですね。ところが学術情報が山ほどあるのにどうして子ども達がアクセスできないのかというと、ご承知の通り、科学技術分野の言葉が必ずしも「社会語」といいますか、その分野以外の人にも分かりやすい言葉で書かれているわけではないということが原因になっていると思います。その辺りのことを入れるのは僭越でございますか。つまり、もしできましたら、「科学情報も、できるだけ他の分野の人にも分かるような表現で書いていただけませんか」というような、国立国会図書館から科学コミュニティに対する要望を入れてはどうでしょうか。非常に言いにくい言葉なのですけれども、そのために子どもや社会人の科学技術離れが起こっているのではないかという気がいたします。
土屋委員: この報告書は、「国立国会図書館は」という書き方になっているので、どうしてもそこまでは踏み込めなかったのですが。
末松委員: 分かりました。「国立国会図書館はそういうことを望むよ」ということを言えるかどうかが問題なのですけれども。
土屋委員: あくまで気持ちとしては、学校図書館との連携、学校教育等の場面を含めるということで、とりあえず精一杯です。
末松委員: 分かりました。おっしゃるとおりだと思います。
委員長: 他に何かございますでしょうか?
格段のご意見がございませんようですので、一応、第1節(2)につきましては「科学コミュニケーションを促進し、国民の生活にかかわる有用な科学技術情報を」とすること、2-(2)から(3)にかけて、国民参加に関することをどこかにうまく入れることができれば入れるということ、そして、最後のページの付図につきましては、表現をできるだけ日本語に変えるということで、この報告書を了承したということにしてよろしいでしょうか。
委員一同: 異議なし。
委員長: どうもありがとうございました。土屋先生、名和先生、倉田先生には大変長い時間を費やしてこの報告書を作っていただきまして、誠にありがとうございました。今の辺りを修正いたしまして、後日皆様にお送りさせていただき、また事務局にもお送りしたいと存じます。修正につきましては、作業部会の方々と私にご一任いただければと思います。
<審議>
  最初にも申し上げましたが、作業部会の報告書に基づきまして、できましたら国立国会図書館に提言という形のものを出させていただきたいと思っております。皆様のお手元に、報告書とは別に『電子情報環境下における国立国会図書館の科学技術情報整備の在り方に関する提言(案)』をご用意させていただきました。この内容は、先ほどの資料3の報告書(案)の第1節の(1)から(3)とほぼ同じですが、この提言(案)の1ページ目をご覧いただきますと、冒頭に少し文章が加わっております。最初に3行にわたって、「我が国の科学技術関係情報の流通・蓄積基盤を担ってきた国立国会図書館が、二十一世紀初頭における新しい情報環境下において果たすべき主要な役割と方向性について、下記のとおり提言する」とありまして、それに続く、「提言のIは、ネットワーク環境の進展の下での…」以下の部分は、資料3の報告書(案)の第1節の3行目以下と同じです。
それから、提言Iの「電子化された科学技術情報の我が国における流通・蓄積基盤の再構築」は、報告書(案)の第1節(1)に対応していて、文面は全く同じです。従いまして、提言のIIのところは先ほどと同じく、「国民の生活にかかわる有用な科学技術情報を」と修正させていただくことになります。末松先生からご指摘がありました、子ども達のことに関するイベントの辺りは、一応、国立国会図書館のこととして、この形のままでいいのかなと思っております。それ以外は、特に修正はありません。提言は、作業報告書とともに国立国会図書館長に提出させていただき、これを国立国会図書館から各方面に訴えていただきたいと思ったわけでございます。そこで、提言につきまして、内容も含めてご意見をいただけるとありがたいと思います。
小田委員: 提言に関しまして、文部科学省も各施策と連携を取ってやっていくということで、2点ほどコメントさせていただいてよろしいでしょうか。文部科学省も、積極的にこの提言に沿った方向を考えております。
1点目は、提言I-(2)の外国電子ジャーナルの積極的導入の関係でございます。また、I-(3)のところでは、長期保存とその安定的供給施策に着手するということをご提言いただいておりますが、電子的に流通する研究情報を体系的に保存して供給するための体制を構築することは大変大事であり、かなり先見性のある提言だと思っております。文部科学省といたしましても事業展開に対して期待しておりますし、ぜひ、連携すべきところは連携したいと思っております。
もう1点は提言IIIの科学技術情報ポータル機能の部分ですが、ポータル機能も大変大事な構想だと思っております。文部科学省の関係では、特に科学技術振興機構や、国立情報学研究所、大学関係のさまざまな機関からも研究情報が発信されているのですが、国立国会図書館が我が国全体の科学技術情報のポータル機能を担い、それら諸機関と連携・協力しながらやっていくという構想は、国際的にも存在感を示す上で大事ではないかと思っております。科学技術・学術審議会が文部科学省にございますが、2年半程前に学術情報の流通基盤の充実について検討をしており、そこでもほぼ同じ方向で提言していただいていると伺っています。国立国会図書館を中核とするポータル機能の構想を進めることは大事だと思います。今後、関係機関と協力しながら、文部科学省としてもしっかり協力してまいりたいと思います。
委員長: 提言IIIの最後にも、「関係機関が協議することが大事である」という趣旨が書かれておりますので、これが提言されましたら、具体的に進めていただけると効果があがるのではと思います。他に、何かこの件につきましてご意見ございますか?
朝倉委員: 提言I-(3)では外国電子ジャーナルの長期保存について書かれていますが、契約して見る限りでは問題ないですが、保存ということになりますと著作権との関係で問題が出てくる可能性があります。この辺を土屋先生はどう考えておられますか。
土屋委員: 難しい問題です。現在の紙媒体での長期保存の形態は、ある意味では出版側では全然面倒をみない。つまり、金を取ってばら撒いてしまえば後は図書館が保存するという形です。しかし、図書館に来たものに関して、著作権は行使するという形になっています。
朝倉委員: 冊子体の場合は、それでよろしいです。
土屋委員: 電子的な状況ではどうなるかということですが、その場合、著作権は基本的にもともとの著者の近くに残る可能性が高いだろうと思います。ほとんどの利用はライセンシングになるので、今まで以上に権利者としての出版社および著者がコントロールできる度合いが高くなるのではと考えています。個人的見解ですが、むしろ、比較的容易になると考えております。
朝倉委員: ただ、長期保存となると、サーバに保存しなくてはならないという問題が出てきます。そうなると外国雑誌の場合は、著作権との絡み合いが出てきます。今、文化庁でも著作権問題について再来年に向け検討していますけれども、「見る」だけなら問題はないですが、それをどこかに保存するとなると問題が発生してまいりますから、この辺は十分に検討された方がよいと思います。
土屋委員: 幸いにして現在の段階で、出版社が著作権を持っている科学技術論文に関しては、実際に保存目的で利用しても構わない場合がほとんどです。先々週聞いたところによると、約92%の出版社が、著者自身が著作物をホームページ等に保存して利用してよろしいと言っている。むしろ出版社側としては、既にほとんどの場合、アーカイブ目的で著者が自由に使うことに対しては、ほぼ問題はないとしている。
朝倉委員: 著者が使う分には問題ないです。
土屋委員: 利用者はみな利用できるということです。
朝倉委員: 電子ジャーナルの中にも、一部、著者が自由に公開している論文もあるわけです。けれどもそれ以外のものに関しては、例えばダウンロードするとそこに著作権の問題が出てきます。長期保存については、十分にご検討願いたいと思います。
土屋委員: 1点ご紹介しておきます。資料5として「SPARC活動およびオープン・アクセス運動の現状について」を付けさせていただきましたが、平成16年7月にアメリカ下院の歳出委員会は、米国国立衛生研究所(National Institute of Health: NIH)がファンドした論文を、6か月後に無償で公開することを条件とし、同年12月1日までにその方針を決めるようにと勧告しています。資料5の第2節に紹介してありますが、NIHは11月の段階で、出版して6か月後にはNIHが運営している「PUBMEDCENTRAL」に論文を載せる方向にしたそうです。この話を聞いた段階では、まだ決定ではなかったのですが、次の週に行われた下院と上院の共同の両院協議会でこれが承認され、おそらく2005年度からNIHがファンドした研究の成果物については、著者の持っているドラフトを刊行後半年以内に「PUBMEDCENTRAL」に載せることが義務付けられた形になるようです。このような動きが、既に一つの方向として登場しつつあるということはご紹介しておきたいと思います。
植月
電子情報
企画室長:
電子ジャーナルの長期保存に関して、補足いたします。ご提言の中にあるような電子ジャーナルの長期保存を図書館がどのようにしているのか、という一つの例として、オランダ国立図書館について少しご紹介したいと思います。オランダ国立図書館では、電子出版物を統合的かつ永続的に保存することを考えまして、既に事業に着手しているということです。A社の全ての電子ジャーナルを保存する契約を同社と交わし、B社と共同でアーカイブのためのシステム(DIAS)を構築して現在までに至っています。A社のみならず、C社、D社、E社、F社などとも正式な契約を結んで、アーカイブを着々と進めているという事実があります。世界的には、まだオランダ国立図書館だけという状況ではありますが、先ほど土屋先生がおっしゃったように、出版社が既に権利(コピーライト)を持っているということに関しては、むしろ扱いやすいアーカイブの形になるのではと思っております。
オランダ国立図書館がこれらをどのように扱おうとしているかですが、電子ジャーナルの論文情報等は図書館の目録または全国書誌へ搭載し、オランダ国立図書館内において公開するということであります。館外にはどのような提供をしているかですが、ILL―他の図書館のプリントまたはファックス・コピーのソースとしてオランダ国内で利用しているということです。ただこの点については、オランダ国立図書館はそう言っているのですけれども、A社の方々はそのようには言っていないということで、意見の齟齬があり、事実はどうであるかは私は確認していないのですが、このような提供の方法を取って進められておられるという事例を紹介させていただきました。
委員長: 他にいかがでしょうか。それでは、ご意見がなければ、この形で提言をさせていただきたいと存じます。
では、ここで休憩を取らせていただきます。その間に提言を修正していただいて、それをみなさまの方でご確認の上、ここで館長にお渡ししたいと思いますので、ひとつご協力をよろしくお願いします。それでは、休憩にいたします。
-休憩-
委員長: それでは再開いたします。提言につきましては、IIの部分を報告書と同じように修正いたしました。この提言に、元になりました報告書を説明資料として付けて提出させていただきたいと存じます。報告書部分につきましては、先ほどの国民参加に関する部分を少し加筆訂正する可能性がありますが、それは後日行いまして、また皆様にお配りするとともに、正式のものとして館長にお渡ししたいと思います。今日は、さらに修正が入る可能性があるということもご理解いただいた上で、一括して提言とその説明資料としての報告書を提出したいと思います。そのようなことでよろしゅうございますか?
委員一同: 異議なし。
委員長: では、そのようにいたしますのでよろしくお願いします。
それでは、国立国会図書館館長に入室していただき、手交したいと思います。
-館長入室-
委員長: 昨年度の第44回の審議会におきまして、館長から「情報環境の変容と国立国会図書館のこれからの役割について」審議をするようにということでございました。それについて、鋭意審議してまいりまして、作業部会を設置し、報告書案を作っていただきました。本日、報告書の中で最も大事な部分につきまして、提言という形でまとめさせていただきました。この提言と、その基礎になりました報告書を一緒に館長に提出させていただきたいと存じます。この報告書には、一部手直しすべきところが残っており、後日訂正させていただきますが、非常に軽微な部分でありますので、今日提言とともに提出させていただきます。
この提言は、電子情報環境下において、国立国会図書館が科学技術振興機構や国立情報学研究所その他の機関と協力されまして、国として、電子情報に関する整備をしっかりやっていただきたいというものであります。具体的には、今後、国立国会図書館を中心に作業していただかなければならないかと思います。それと共に、これを各方面にご説明いただきまして、日本の電子情報環境がより一層良くなるようにご尽力いただきますよう、よろしくお願いいたします。それでは、提言を提出させていただきます。
黒澤館長: ありがとうございます。
<館長御礼>
黒澤館長: 一言、お礼を申し上げます。
本日は熱心にご審議いただき、誠にありがとうございました。ただいまここに、ご審議の賜物であります「電子情報環境下における国立国会図書館の科学技術情報整備の在り方に関する提言」およびその説明資料を拝領いたしました。この提言は、当館のこれからの科学技術資料整備の在り方に関し、電子情報環境下において当館がなすべき具体的な諸方策と道筋を示すものであり、また21世紀初頭における当館の大きな方向性を示す羅針盤としての役割を果たすものかと思います。長尾委員長のご指導により作業部会が設置され、その検討の成果を本日のご審議において、このような立派な提言としてまとめていただいたことに対し、深く敬意と感謝の意を表したいと思います。ありがとうございました。特に作業部会長の土屋先生、委員の名和先生、倉田先生におかれましては、暑い夏の時期を挟み4回の作業部会を開催していただき、また何度もメール、ファックスの往復などをしていただきました。また、長尾委員長には上京の度にこちらに寄って推敲などご指導いただきまして、本当にありがとうございました。情報通信技術の急速な普及等、情報環境の激しい変化の折、また問題が極めて複雑多岐にわたるところから、いろいろと難しい問題があり、論点整理に何かとご労苦があったことかと推察いたします。ご尽力の程、重ねて深謝申し上げます。ただいま長尾先生から懇切なご発言がありましたが、これを肝に銘じまして、当館の情報環境下における科学技術資料の整備に努めてまいりたいと思います。また冒頭の挨拶で申しましたけれども、今回の審議において、特に「提言」という形でまとめていただきました文書につきましては、「答申」に準ずるものとして受け止め、ここにあげられた諸課題の実現に向かって館として精一杯努力をしていく所存でございます。本日は、長時間のご審議を本当にありがとうございました。今後とも何卒よろしくご指導、ご鞭撻のほどお願い申し上げます。深く感謝の意を表して、御礼の言葉といたします。ありがとうございました。
 
6 閉会
委員長: どうもありがとうございました。それでは今日の会議はこれで終わりになります。長期間にわたりまして、特に作業部会の先生方には大変ご苦労いただき、また、委員の方々にもいろいろご議論いただきまして、誠にありがとうございました。これで、ある方向が見えてきたかと思いますので、関係機関の方々のこれからの一層のご協力によって、日本の電子情報がしっかり保存され、活用されるようになっていくことを私としても望みたいと思います。委員の皆様におかれましても、総合科学技術会議などいろいろな所にこういう考え方をご説明いただきまして、より良い状況になっていくようにご努力いただければ大変ありがたいと存じます。今日は長時間ご審議いただき、どうもありがとうございました。
黒澤館長: 委員長、委員のみなさま、どうもありがとうございました。
委員長: 何か事務局の方からございますか?
渡邉主題
情報部長:
長尾先生、どうもありがとうございました。それから委員の方々、どうもありがとうございました。
今日いただきました提言と説明資料の報告書につきまして、国立国会図書館として、先ほど館長の挨拶にもありましたように、真摯に受け止めて実現に向けて努力をしていきたいと思います。なお次回の審議会につきましては、第3期の科学技術基本計画ほか、その他の状況を見ながら決めさせていただきますが、ほぼ1年程度の時間をいただきたいと思っております。またその時には、ご連絡を差し上げますので、どうぞよろしくお願いいたします。本日はどうもありがとうございました。
委員長: それではこれで終わらせていただきます。

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