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書誌データの基本方針と書誌調整:書誌調整連絡会議

平成29年度書誌調整連絡会議報告

2018年1月18日(木)、国立国会図書館(NDL)東京本館において「平成29年度書誌調整連絡会議」を開催しました。この会議は、国内外の書誌調整に関する最新情報を広く関係者・関係機関等と共有することを目的とし、毎年開催しています。
今年度は、「新しい目録規則は何をもたらすか:フランスと日本の書誌データ」をテーマに、フランス国立図書館(BnF)のヴァンサン・ブレ(Vincent Boulet)氏をお招きしました。会議は一般に公開し、約90名が参加しました。

はじめに、フランスにおける新しい目録規則“RDA-FR”等の動向について、ブレ氏に講演していただきました。続いて、日本図書館協会(JLA)目録委員会とNDL収集書誌部が連携して策定に取り組んでいる「日本目録規則2018年版」(仮称)(以下、NCR2018といいます)について、渡邊隆弘氏(JLA目録委員会委員長・帝塚山学院大学教授)から、概要と意義を発表していただきました。NDLからは、NCR2018の適用に向けた取組み状況を発表しました。最後に、質疑応答を行いました。
以下に、会議の内容をご報告します。当日の配布資料も掲載していますので、あわせてご覧ください。

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【プログラム】

  • 講演
    「フランスにおける書誌移行計画:その成果について」※英語・逐次通訳付
    ヴァンサン・ブレ氏(フランス国立図書館メタデータ課リポジトリサービス部門長)
  • 報告
    「『日本目録規則2018年版』(仮称)の概要と意義」
    渡邊隆弘氏(日本図書館協会目録委員会委員長、帝塚山学院大学人間科学部教授)
    「国立国会図書館における『日本目録規則2018年版』(仮称)の適用に向けて」
    田代篤史(国立国会図書館収集書誌部収集・書誌調整課主査兼書誌調整係長)
  • 質疑応答

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【開会挨拶】

大曲薫(収集書誌部長)

今回は「新しい目録規則は何をもたらすか:フランスと日本の書誌データ」と題し、初めての国際的な会議とした。現在、JLA目録委員会とNDL収集書誌部が連携し、RDAと相互運用できる、我が国独自の目録規則であるNCR2018の策定を行っている。フランスにおいても、RDAを参照しながらも、フランス独自の新しい目録規則である“RDA-FR”の策定が進められている。今回の企画は、両国に共通の課題や相違点について意見を交換することで、我が国の目録規則のよりよい改訂と運用を図ることが目的である。活発な議論、意見交換の場となることを期待している。

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【フランスにおける書誌移行計画:その成果について】

ヴァンサン・ブレ(フランス国立図書館メタデータ課リポジトリサービス部門長)

1. フランスにおける書誌データの状況

  • 納本制度と全国書誌
    14世紀に創設された欧州最古の図書館の一つであるBnFでは、1537年に納本制度を設けた。
    現在、全国書誌は月2回、ウェブサイトで公開している。納本制度により納入された図書は、年間約8万5千件で、年々増加している。
  • データの構造化
    データの構造化には長い伝統がある。データの構造化は、三つの要素(リンク、永続的識別子、役割指示子)によって行われている。
    書誌データの記述フォーマットには、INTERMARCを使用している。また、文書類の記述は、符号化記録史料記述(Encoded Archival Description; EAD)に拠っている。
    書誌データは、個人、団体、著作、件名の各典拠データとリンクしている。
    BnFのカタロガーと目録品質管理担当チームは、基準およびフォーマットの両側面から、リンクやデータの整合性をチェックし、データを管理している。これにより、BnFや他の図書館は、インテリジェント・データ、つまり、新しいコンテクストにおいて再利用しやすい、構造化されたデータを有することができる。
  • 二つの書誌データ作成機関
    書誌データの作成は、高等教育書誌センター(Agence bibliographique de l'enseignement superieur; ABES)でも行っている。ABESは、学術図書館の総合目録をその典拠データとともに維持管理している。
    BnFが作成したデータは、ABESを通じてフランス国内の学術図書館ネットワークで利用できるが、ABESのデータはBnFでは利用することはできない。
    BnFは、ABES以外に、公共図書館、出版・頒布業者にもデータを提供している。例えば、出版・頒布業者による委員会が管理している「包括ブックファイル」(Comprehensive book file)には、BnFのデータが使われている。
    このように、BnFの取組みは、学術図書館、公共図書館、出版・頒布業者、その他の経済活動を行う団体に影響を与えている。
  • data.bnf.fr
    BnFは2011年に、data.bnf.frを公開し、ウェブ上で書誌データの提供を開始した。また、BnFは、etalabのオープンライセンスを採用している。
    1994年の布告により、BnFが提供するデータは、営利・非営利を問わず自由に利活用できる。2017年からは、SRUによるデータ提供を開始している。
  • 書誌標準:国際的に考え、国情に合わせて実行する
    書誌データは読みやすく理解しやすいものでなければならない。これにより、エンドユーザーは、どのようにデータが作成されているかが分かり、BnFのデータを信頼できるようになるからである。
    図書館は、データのウェブを普及させるために、オープンかつ無料の基準類を使って、書誌データを作成する必要がある。
    国外でデータを活用できるようにするために、国際標準を使用するとともに、国内のユーザーが理解しやすく国内のコンテクストに沿ったデータとするために、国際標準を適用した国内標準を使用することが必要である。
    BnFは、IFLAやISO等の国際標準に拠っている。IFLAの標準には、ICP、ISBD、IFLA LRM等がある。ISBDは、2014年の国際調査で示されたとおり、最も利用されている書誌記述の標準である。交換用フォーマットであるUNIMARCもIFLA標準である。フランスでは、2017年8月に公開された新しい概念モデルIFLA LRMへの対応を準備中である。IFLAは、オープンで無料の標準を提供している。
    国内標準としては、フランス規格協会(Association française de normalisation; AFNOR)による書誌記述およびアクセス・ポイントに関する基準がある。AFNORは、目録の機械化が進んだ1970年代以降、これらの基準を策定・公開している。これらの基準は、主に印刷された目録に対する規則を継承する内容となっている。
  • 今こそ変わる時、だが容易ではない…
    AFNORの基準類によって作成された伝統的なデータを、ウェブという新たなコンテクストに置き換えることは、「書誌移行」(Bibliographic Transition)計画においても重要である。
    書誌データの移行作業は容易なものではない。移行のメリットは大きいが、多くの問題があり、さまざまな当事者やコミュニティが介在する。図書館司書の研修も必要となる。各機関の図書館システムにどのような変更が生じるかという点についても、継続的に情報提供しなければならない。出版者やエンドユーザー側も、透明性の高いオープンな基準によってデータが再利用できることを知っている必要がある。

2. RDAへの対応

  • RDAに対する最初の評価
    RDAが最初に刊行された2010年に、フランスでは国内作業グループを組織し、BnF、ABES、学術図書館、公共図書館のメンバー等によってRDAの評価を行った。検討結果は、2015年にBnFとABESが共同声明として発表した。その内容は、(1)2010年当時のRDAそのままの形では当面適用しない、(2)RDAの適用前に、European RDA Interest Group(EURIG)において、その内容の改善を提唱する、というものである(注:資料では“EDUG”と表記)。
  • RDAを不採用とした理由
    不採用とした理由には、(1)RDAの内部的矛盾、(2)FRBRの解釈の違いの二つがある。
    前者のRDAの内部的矛盾とは次の2点である。1点目は、RDAがFRBRを明確な形で実装していないことである。RDAは、FRBR、FRADおよびFRSADのいわゆる「FRBRファミリー」に拠っているといいつつ、RDAの前身となる英米目録規則第二版(AACR2)への依存度が高い。一方、フランスでは、AACR2を採用していない。2点目は、RDAは図書館以外のコミュニティでも有用とうたいながら、文書等の書誌記述について言及していない点である。
  • RDAの有用性
    RDAは、FRBRの実体関連モデルを考慮している点や、典拠データの範囲を拡大している点は評価でき、その有用性が否定されるものではない。また、アクセス・ポイント構築の標準化や、個人、団体、著作等の属性についての規則を確立している点も評価できる。
  • RDAが唯一の方法ではない
    しかし、RDAはFRBRまたはIFLA LRM化の可能性の一つでしかなく、唯一の方法というわけではない。その一例として、“Alexis ou le traité du vain combat”(以下“Alexis”)という本を紹介する。この本は、フランスの作家マルグリット・ユルスナールと、著名な画家サルバドール・ダリによる、augmented work(別の著作によって内容が増補された著作)である。
    RDAによるFRBRの解釈では、資料の図(13ページ参照)にあるように、ダリのイラストは著作とは捉えられていない。しかし、フランスの解釈では、著名な画家によるイラストはそれ自体を著作と捉えるため、この本は、一つの体現形に関連する二つの著作(ユルスナールによる“Alexis”という著作と、ダリによる“Alexis”のイラストという著作)と考えられる。このように、FRBRにおけるaugmented workの解釈が、RDAとフランスとでは異なることがある。このような解釈の違いがRDAを不採用とした二つ目の理由である。

3. 「書誌移行」計画

「書誌移行」とは、書誌データのウェブへの移行のことである。これには、RDAをフランスの状況に合わせて適用することも含まれている。

  • BnFとABESによる共同声明(2015年)
    「書誌移行」計画のポイントは三つある。
    一つ目は、データの自動処理、セマンティック・ウェブの技術標準による、フランスの目録の段階的なFRBR化(FRBRization)である。
    二つ目は、RDAにフランスの目録慣行等を反映させた、新しい目録規則“RDA-FR”の策定である。新しい規則は、段階的に公開している。
    三つ目は、図書館司書等への研修、また、目録規則や技術の進化に関するシステム・プロバイダーやベンダーとの情報交換により、目録規則や実務の移行を確かなものにすることである。
  • 「 書誌移行」計画のポイント1:目録のFRBR化
    目録のFRBR化とは、データの自動処理によるFRBR化を目指し、伝統的な書誌データを構造化する、新たな構造へ移行していくという取組みである。
    BnFでは、目録規則を変更する前に、まずはFRBR化されたデータの普及を図るため、2011年にdata.bnf.frを開始した。
    このプロジェクトの目的の一つが、BnFが作成したデータの可視性を高めることである。また、BnFの目録内外のデータの統合や、BnF以外の機関・コミュニティによる構造化されたデータ(例:Wikidata)とのリンクを図り、第三者がメタデータをより容易に再利用できることも目指す。さらに、BnFでは、個人名典拠データの構造化やRDF化も行う。
    既存のデータはすべて移行されるべきで、失われるものはないというのが、データ移行の基本原則である。data.bnf.frでは、主にMARC形式により作成された従来の構造化データをそのまま使用する。識別子やリンクも活用する。
    既存のすべての要素(実体、書誌データ、典拠データ)は、data.bnf.frに移行されることにより、RDFのトリプルに置き換えられる。例えば、目録内部で保持している識別子は、ARK(Archival Resource Key)の体系による永続的識別子に置換えられる。
    これらの目録データのRDF化を可能にする「魔法」は何もなく、長らく大変な作業を行ってきた図書館司書の方々によるものである。
    このような背景をふまえ、BnFでは、従来の目録には存在していなかった新たなリンクの生成を自動的に行っている。
    例えば、従来のBnFの目録には、著作の典拠データと体現形のデータ(書誌データに相当)間のリンクがなく、目録規則上、著作の典拠データは、件名標目としてのみ規定されていた。しかしながら、data.bnf.frにおいて、体現形と著者名典拠間のリンクと、著者名典拠と著作の典拠間のリンクを通じて、著作と体現形間のリンクが自動的に可能になった。この連携は、FRBR化の第1ステップである。
    連携の第2ステップは、すべての目録データについて、データ間のリンクを補うことである。data.bnf.frで生成したリンクを元の目録データに還元することになる。新しいリンクの生成は、文字列の比較だけでなく、役割指示子、音楽作品の目録識別子、そしてカタロガーの鋭い目によって行われる。2017年には、文字資料、音楽作品、演劇作品、舞踊作品、映画のデータについて、15万件の新たなリンクが形成された。
    次のステップとして、2018年からは、既存のデータ間のリンクを使った著作と体現形間のリンク生成だけでなく、体現形のデータを使った著作の典拠データの自動生成も目指している。ここでポイントとなるのは、対象範囲をコントロールするということである。まずは、20世紀のフランスの作家を対象に、著作の典拠データの自動生成を実施する予定である。作業は、著者名、タイトル、言語、出版日付、異形タイトル(例:翻訳書名)等の体現形のデータの書誌事項を用い、2018年夏頃に最初の作業結果を公開することを目指している。
    その後、文書等の他の資料群や20世紀より前の作品に範囲を拡大することを検討している。
  • 「書誌移行」計画のポイント2:RDA-FR
    「書誌移行」計画の二つ目のポイントは、図書館司書に対し、FRBRに基づくデータを作成するための規則を提供することである。2015年、BnFとABESは、データのFRBR化を実現するための規則として、RDAをフランスの解釈に沿わせたRDA-FRを作成することにした。
    このため、国の戦略的書誌委員会(BnF、ABES、文化省、高等教育省による構成)が設けられ、「書誌移行」計画の優先事項を策定している。この委員会の監督のもと、「書誌移行」計画パイロットグループが、実際の移行作業にあたっている。このパイロットグループは、標準化作業部会を兼ね、新規則の作成作業を行っている。
    作業グループは、実体ごとの個人、団体、著作、体現形、関連というサブグループに分かれている。音楽作品の作業グループもある。また、BnFの件名標目表“RAMEAU”の語彙を使った主題に関する作業グループも立ち上げられたばかりである。
    RDA-FRは、段階的に公開、実装されており、「書誌移行」計画のウェブサイトで自由にアクセスできる(ただしフランス語のみ)。これまでに公開したセクションは、次のとおりである。
    • 第1セクション(体現形・個別資料):転記規則、情報源に関する一般的指針、出版事項(bibliographic address)、キャリア(material description)、電子資料の記述
    • 第2セクション(著作・表現形):一般的指針、著作・表現形の識別要素
    • 第3セクション(行為主体(agent):個人・家族・団体):個人のみ
    新規則の実装・実行は段階的に行っており、カタロガーの研修も必要である。また、MARCフォーマットの変更も必要である。2017年にキャリア、2018年1月に出版事項について、新規則を導入した。2019年には、著作と個人の典拠データに関する新規則の導入を予定している。
    導入例として、2018年1月にINTERMARCで行った出版事項の変更を、資料に示した(23ページ参照)。以前は一つのフィールド260にまとめて記録されていたものが、移行後は、出版、頒布に関する事項ごとにインディケータを変え、フィールド260を繰り返して記録することになった。
    フランスでは、MARCの廃止ではなく、MARCの更新(reload)という選択を行った。
    その理由は、MARCが、よく知られており、広範に利用されているフォーマットだからである。また、MARCは実体関連モデルに基づき構築されており、構造化されているためでもある。
    しかし一方で、MARCは、IFLA LRMのデータモデルを実装しなければならない。データの入力の重複も避ける必要がある。さらに、より一層の構造化が求められる。例えば、典拠レコードには出典のフィールドがあるが、現在は、その出典のデータへのリンクができていない。
    INTERMARCは、BnFが採用している、UNIMARCに近いMARCフォーマットである。
    BnFは、INTERMARCの更新に関する声明を公開する予定だが、その内容はIFLA LRMのデータモデルと整合性を図るためのものである。
  • 「書誌移行」計画ポイント3:持続可能な変化
    「書誌移行」計画の三つ目のポイントは、この変化を持続可能なものにすることである。「書誌移行」計画は、データ利用に関するすべての関係者やユーザー(司書、出版者、ベンダー、エンドユーザー、フランス国民等の全てのユーザー)にとって持続可能な変化を目指している。
    「書誌移行」計画のパイロットグループには、標準化作業グループのほかにも二つの作業グループがあり、研修と、統合図書館システム(ILS)・データ移行をそれぞれ担当している。
    研修担当作業グループでは、トレーナーの全国ネットワークを構築し、図書館目録、目録規則の進化に対応するための研修の調整を行っている。このグループでは、目録の進化に関する講義型のセッションや、新たに公開された規則を実装するための演習型のセッションを行っている。研修の教材は、「書誌移行」計画のウェブページで公開されている。
    ILS・データ担当作業グループでは、システムやデータ移行に関する技術情報の提供やコンサルティングを行っている。また、標準化の専門家、ILS管理者、ソフトウェア業者等との意見交換や、ILS管理者を対象とした年次集会の開催などを行っている。

4. おわりに

20年前、フランスでは目録は死んだものと考えられた。しかし、もはやその考えは古い。
重要なのは、目録作業を止めることではなく、そのプロセスに、図書館以外の機関やコミュニティで作成されたデータを取り込むことである。それは、これまで培ってきた図書館司書の経験を、ウェブという新しい環境に改めて活かすというプロセスになるだろう。
市民への情報提供という図書館の主要業務は存続し、情報アクセスの向上という新たな任務もある。図書館の使命や図書館司書による専門的な業務が終焉するわけではない。
図書館、そして図書館司書は、新しい技術、データ標準、図書館以外の機関やコミュニティにより作成されたデータを用いることによって、その役割を維持・存続していくことになる。そして、図書館および図書館司書は、その長い歴史の中で、新たな1ページを開くことになるだろう。

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【「日本目録規則2018年版」(仮称)の概要と意義】

渡邊隆弘(日本図書館協会目録委員会委員長、帝塚山学院大学教授)

1. NCR2018策定の経緯と現状

2017年2月に、全体条文案を公開し、7月末までパブリック・コメントを募集した。また、3月に関西、5月に東京で、JLAの主催による検討集会を開催した。現在は、JLA目録委員会とNDL収集書誌部の連携作業として、検討集会でいただいたご意見、パブリック・コメント、案に付していた残課題への対応を行っている。
2017年10月にスケジュールの変更をJLA目録委員会のホームページで告知した。2018年3月にPDF版を公開する予定であったが、前述の対応について、多くの検討を要することになった。一方で、主要部分が提示されなければ、各機関はNCR2018適用の検討に着手することが難しいというご指摘もいただいた。そのため、3月には「予備版」をPDF形式で公開する予定とした。
予備版で骨格を固めた後は、条文の大幅な組み換えや重要な用語の変更は原則として行わず、残りの付録の作成作業や全体の調整作業を進める。2018年12月頃に冊子体の刊行とPDF版(本版)の公開を予定している。

2. NCR2018の策定方針と全体構成

(1)NCR2018策定の基本方針

次のとおり、従来明らかにしている方針から変更はない。

  • 国際標準(ICP等)に準拠(FRBRを基盤とする規則)
  • RDAとの相互運用性の担保
  • 日本における出版状況、目録慣行に配慮
  • 理論的でわかりやすく、実務面で使いやすく
  • ウェブ環境に適合した提供方法

(2)NCR2018の全体構成

全体を3部構成とし、第1部は規則の前提を扱っている。
第2部前半「属性の記録」は、FRBRの第1、第2、第3グループに相当するセクションに分かれ、実体別の章立てである。RDAは完全には実体別の章立てではないため、NCR2018はよりFRBRモデルに忠実といえるかもしれない。
第2部の後半を「アクセス・ポイントの構築」としている。RDAでは、各実体の属性の記録の章の最後に置かれている。しかし、NCR2018では、属性のエレメントを組み合わせてアクセス・ポイントを構築するとの観点から、属性の記録そのものとは切り離して「アクセス・ポイントの構築」を置いている。
第3部「関連」は、「資料に関する関連」と「その他の関連」とに分けた構成であり、RDAとは異なる。

3. NCR2018の特徴と意義

(1)NCR2018の特徴

次の三つの側面から説明できる。

ア)FRBRモデルを基盤とすること
  • FRBRモデル等に密着した規則構造
  • 典拠コントロールの明確な位置付け
  • 全著作の典拠コントロール
  • 関連の記録
  • 物理的側面と内容的側面の整理(従来よりも著作・表現形が担う内容的側面を重視)

全著作の典拠コントロールの意義は大きいが、NCRの歴史の中で大きな転換となる。上記の諸特徴は、それぞれの意義をもつと同時に、機械可読性の向上という意義にもつながるものである。

イ)RDAとの相互運用性の担保
  • エレメントの設定(増強など)
  • 転記によらない多くのエレメントにおける語彙のリストの採用
  • 意味的側面と構文的側面の分離(RDAと同様に、エレメントを定義して、入力する値のルールを定めること(意味的側面)に特化し、エンコーディングなど(構文的側面)は扱わない。構文的側面については、NCR2018の規則外で、MARCやRDFなど適切なものが選ばれればよい。)

これらの諸特徴もまた、機械可読性の向上につながる。ただし、構文的な側面を分離したため、MARCや他の書誌フォーマットの対応が大きな問題となる。

ウ)その他日本の事情等の反映
  • 「読み」等に関するルール
  • 書誌階層構造(NCR1987年版で導入された考え方を踏襲)
  • 日本の出版状況、目録慣行を考慮

(2)NCR2018の意義

上記の特徴の中で、特に、著作の典拠コントロールや機械可読性の向上が意義として挙げられる。これによって、書誌サービスの向上や、幅広いデータの利活用の可能性につながるのではないかと期待している。
ただし、NCR2018の特徴がもたらす効果を実現するには、運用や実装にかかる面も大きい。また、RDAと同様、自由度の高い規則であり、従来と本質的に変わらないデータを作成しても、「規則違反」にはならない面がある。そのため、新しいデータは、その意味を問い直しながら作成していく必要がある。

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【国立国会図書館における『日本目録規則2018年版』(仮称)の適用に向けて】

田代篤史(収集書誌部収集・書誌調整課主査兼書誌調整係長)

1. はじめに

NDLでは、2021年1月以降の適用開始を目指し、適用細則の検討を進めている。また、並行して、入力システムのリニューアルの検討を進めている。
適用開始に当たっては、有形資料を対象とする。「オンライン資料」に該当する資料への適用については、中長期的課題と考えている。

2. 適用細則検討の進捗と今後の予定

(1)2017年度までの進捗

体現形、個別資料、著作・表現形の内容の検討を進めている。この部分については、2018年度に大よその目処が立つ見通しである。ただし、実際の適用開始まで、見直しを続けると思われる。
適用細則は、この部分については、大まかな資料の種類に分けて、表の形でホームページ上に公開する想定である。ただし、公開時期は未定である。
現在は、全国書誌の対象となる資料のうち、図書、非図書資料(単行)、逐次刊行物の3種類について、検討を進めている。
NCR2018の適用の前提として、MARC 21フォーマットをベースとした書誌データの作成・提供という点は変わらない。ただし、使用するフィールドやサブフィールドを増やす必要がある。

(2)2018年度以降の予定

2018年度に、体現形などの検討を終えた後、典拠形アクセス・ポイントと関連の検討を開始する。
典拠形アクセス・ポイントについては、特に著作での運用が要点になる。

3. データ事例

(1)NCR2018適用の意義

FRBRを基盤とする目録規則の適用の意義として、著作の典拠コントロールがまず挙げられる。一つの著作の下にさまざまな表現形・体現形が展開している場合、著作の典拠形アクセス・ポイントによって、これらを過不足なく一括することができる。これに表現形の言語や表現種別、機器種別、キャリア種別などのエレメントを付加することにより、体系的な把握が可能となる。また、関連する著作と的確にリンクする。これがNCR2018の書誌データの目指す姿と考える。

(2)NCR2018適用の方向性と今後の検討課題

NCR2018のNDLにおける適用の方向性は、次の3点である。

  • 本則と別法の選択については、体現形などでは基本的に現在と変わらない運用とする。
  • 現在の「記述」で記録している要素を増やすことは、あまり考えていない。ただし、従来の資料種別は、表現種別、機器種別、キャリア種別に変わる(増える)。
  • 著作の典拠コントロールを行う。翻訳書または日本の古典から検討を開始する想定である。

また、今後の検討課題は、次の2点が考えられる。

  • 書誌データにおける著作の典拠形アクセス・ポイントの記録またはリンクの方法
  • 関連指示子の運用範囲

4. おわりに

NCR2018の適用に当たっては、特に、次のFRBRの特徴が生きるように留意する。

  • 著作の典拠コントロール
  • 関連の記録
  • 物理的側面と内容的側面の整理(キャリア種別、表現種別等の記録)

これらの点と、作業負荷とのバランスを考慮し、利用者にとって効果的な書誌データを作成したい。目指す書誌データを、可能なところから実現したい。

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【質疑応答】

1. フランスにおけるRDAの適用について

質問: フランスにおいてRDAを採用しないことを決定した理由として挙げられていた2点のうち、1点目のRDAとFRBRの内部的矛盾(contradiction)について詳しく聞きたい。実際にフランスでRDAを適用した場合の問題点とRDAとRDA-FRの相違点を知りたい。

回答(ブレ氏): RDAをそのまま採用しないことを決定したのは、2015年のことである。現在、2018年に公開される予定のRDAの改訂版を待っているところである。改訂版では、IFLA LRMと整合性を図ると言われているため、公開後、フランスとしては、RDAをそのまま採用することも考えられる。
FRBRに対するフランスとRDAの解釈の乖離に関しては、augmented workの考え方について、“Alexis”の例を挙げて紹介したとおりである。
解釈の違いとして、もう一点、個人名のアクセス・ポイントがどのように作成されるか、という点が挙げられる。現在のRDAの規則は、AACR2と非常に近く、MARC21フォーマットへの依存度が高いものとなっている。
また、RDAは、個人名に関する部分はIFLAの“Names of Persons”に基づくとされているが、RDAの規則の中に、そのような例を確認できていない。

2. RDA-FRに基づくデータの国際的な相互運用性について

質問: RDA-FRに基づいて書誌データを作成した場合、国際的な流通・交換の面で想定される問題点はあるか。例えば、海外の図書館でRDAに基づいて作成された書誌データをフランスが利用する、またはフランスで作成された書誌データを海外の図書館で使ってもらうといった場合である。

回答(ブレ氏): 想定している。この点がRDAのもう一つの矛盾点である。RDAは、本来、国際標準であるべきだが、実際は、各国における適用細則(national profile)の策定を許容しており、どのような形でRDAを適用するかは各国の判断に委ねられている。このことは、RDA運営委員会の議長が述べている。
そこで、フランスは、ISBDを国際的な共通の枠組みとして維持することを提唱している。ISBDはFRBRに対応している。また、国際的なデータの交換にあたり、現在、ISBDが使われているからである。

3. フランスにおけるMARCフォーマットの更新の決定について

質問: 現在、北米を中心にMARCフォーマットの将来についてさまざまな議論があり、BIBFRAMEの開発等も行われているところである。フランスにおいて、MARCフォーマットを廃止するのではなく更新するとの決定が行われたのはいつ頃か。また、フランス国内では、この決定に対して反論があったのか。

回答(ブレ氏): フランスでMARCを更新するとの決定が出されたのは、2017年のことである。決定に際しては、BnFは、国立図書館として、実際にフォーマットを維持管理しているため、フォーマットの選択については、館内で比較的容易に進めることができた。具体的には、BnFで二日間のワークショップを開催し、カタロガーおよびメタデータの専門家が検討し、決定した。BnFでは、現在入力フォーマットとして使っているINTERMARCを、IFLA LRMの実体と属性に沿った形に更新する、というプロジェクトを開始した。
また、MARCの更新を決定した背景には、UNIMARCの進化がある。フランスはMARC 21を使っていない。INTERMARCの更新の作業は2020年の終了を目途に行っている。そして、フランスは現在、UNIMARCの更新も検討しており、2017年の夏にポーランドで行われたIFLAのUNIMARC常設委員会(Permanent UNIMARC Committee; PUC)で提案した。IFLA LRMの実体の適用を提案したが、あくまでアイディアベースであり、具体的な内容はまだこれからである。

4. 図書館以外のコミュニティに対するデータの利活用促進への取組みについて

質問: 図書館が作成したデータについて、図書館コミュニティ等を越えた再利用を促進していくということだが、具体的な活動をしているならば、内容を知りたい。

回答(ブレ氏): BnFでは、出版者や、出版流通におけるサプライチェーン等に対する活動を展開している。特に、出版者やサプライチェーンに対し、構造化されたデータの使用と提供を促している。BnFでは、出版者等から提供された構造化されたデータを活用して、カタロガーが仮の典拠データを作成するプロジェクトを立ち上げた。この典拠データは、出版者等にとっても有用なものであることを説明し、その基となる構造化されたデータの提供を促している。

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【閉会挨拶】

山地 康志(収集書誌部副部長 収集・書誌調整課長事務取扱)

NCR2018の船出にあたり、FRBRやRDAの意義の確認とともに、RDAを相対化して取り込むフランスと日本それぞれの歩みを把握できる発表をいただいた。取組みを適正に評価し、あるべき方向に進むことは大事である。これからも皆様のご関心を受けながら、JLA目録委員会とNDL収集書誌部とで協力し、このNCR2018に関わる取組みを進めていきたい。本日はありがとうございました。

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