「帰国詐欺に掛るな 円紙幣を買ふな」 『パウリスタ新聞』 1947年6月2日
帰国詐欺に掛るな
価値の無くなつた円紙幣を買ふな
一般邦人へ特に御注意
『パウリスタ新聞』 1947年6月2日
現在絶対不可能である帰国説を振廻しての金銭詐欺と無価値になつた日本紙幣を売り歩く悪性詐欺漢の横行に付ては屡々本紙を通じて一般邦人の注意を喚起した処であるが、これ等の現行犯人は既に経済警察及刑事警察の手に逮捕され取調べ受けた上厳罰に処せられることになつてゐる、
祖国日本へ帰りたい気持は誰にでもある無理のない話だが、そこをよく冷静に考へなくてはならぬ、例へ国内の手続は出来たとしても愈々船に乗つて日本へ行くと云ふことは今の処見込がない、然るにすぐ帰れるといふて甘言を弄する者あればこれは容赦のならぬ大詐欺師と心得らるべきだ
現在内外の船会社等は日本行の切符など未だに売つてゐないし、又その予約なども行つてはゐないのに何をうろたへて今帰国手続を急ぐ必要があらうか、一度び時期到来の上は帰国手続など極めて早く簡単に出来ることを忘れてはならない、又円紙幣に就て見ても現在伯国内にある円紙幣は最早日本政府の関知せざる無価値の一紙片たることを銘記されたい
今度聖市の特別外人警察では連邦司法省の指令によつて来る五月三十一日迄に一時的来伯者(密航や観光のため入国せる者)の身分を明らかにする様公布された[、]これは第十九号型手帳(聖市及サントス在住者)第二十号手帳(奥地在住者)を持たず一時的の来伯者に対するものであり、一般在伯邦人には何等の関係も無いものであるのに、さもあるかの如く持掛け事情に暗い邦人を欺いて金を捲き上げようとする詐欺漢がうろうろ歩き廻つてゐるそうだから是れにも引掛らぬやう注意されたい、右手続は五月三十一日迄となつてるが尚六月十五日迄は猶予が与へられると云ふことである