憲法改正大綱案 昭二十、十、十一

(極秘)

憲法改正大綱案 昭二十、十、十一

第一、根本方針
憲法改正ノ指導理念ヲ左ノ通トス
一、天皇ノ地位ニ関スル現行憲法ノ建前ハ之ヲ堅持スルコト(国体ノ護持)
二、「一君」ト「万民」トノ間ニ介在シ来レル従来ノ不純物ヲ除去スルコト(一君万民ノ政治)
三、真ニ民意ヲ基礎トシ国民ノ福祉増進ヲ目的トスル政治ヲ実現スルコト(民本主義)
第二、具体方策
憲法及附属諸法令ノ改正ニ当リテハ左ノ諸点ヲ考慮スルモノトス
一、憲法改正ハ新日本ノ建設ヲ主眼トシ「ポツダム」宣言ノ実施ヲ主眼トスルモノニ非ザルコト従テ改正ノ範囲ハ右宣言ノ条項ニ限定セラレザルコト
二、憲法ノ条章中規定自体ニ不可ナカリシモ過去ニ於ケル其ノ運用ニ誤リアリタルモノニ付テハ其ノ運用ノ改正ニ主眼ヲ置クコト
三、憲法及附属諸法令ノ全部ニ付改正案ノ出揃フヲ待ツコトナク事ノ緩急ニ応ジ事項別ニ逐次改正ヲ施スコトトスルコト
四、「ポツダム」宣言ノ受諾ニ伴ヒ最少限改正ヲ必要トスル事項即チ(イ)領土ノ変更(ロ)軍国主義ノ抹殺及(ハ)民主主義化ノ中(イ)ニ関聯スル事項ニ付テハ講和条約ノ締結ヲ俟テ確定的ノ措置ヲ講ズルコトトスルコト
第三、改正要目
差当リ直ニ着手スルヲ要スベキ改正項目左ノ通
一、民本主義ノ実現ノ為ノ改正事項
(一)議会ノ組織ニ関スルモノ
イ、貴族院ノ組織ハ衆議院ト同様法律ヲ以テ定ムルコトトスルコト(憲、三四ノ改正、貴族院令ノ廃止、之ニ替ル新法律ノ制定)
ロ、貴族院ニ於ケル華族ノ特権的地位(員数、選挙方法)ヲ軽減スルコト(貴族院令ニ替ル新法律)
ハ、衆議院議員選挙ヲ大選挙区制(一府県一選挙区)ニ改ムルコト(衆議院議員選挙法別表ノ改正)
ニ、婦人ニ対シ衆議院議員ノ選挙権及被選挙権ヲ認ムルコト但シ男子トノ間ニ年齢ノ差ヲ設クルコト(衆議院議員選挙法ノ改正)
(二)議会ノ活動ニ関スルモノ
イ、議会ニ対シ召集ヲ求ムルノ権限ヲ認ムルコト(憲、七ノ改正)
ロ、議会ノ会期ヲ延長スルコト及議会ニ対シ会期ノ延長ヲ求ムルノ権限ヲ認ムルコト(憲、四二ノ改正)
ハ、議会ニ対シ憲法改正ノ発案権ヲ認ムルコト(憲、七三ノ改正)
二、軍隊ノ解消ニ伴フ改正事項
(一)統帥大権及軍編成大権ヲ廃止スルコト(憲十一、十二ノ削除大本営令、
参謀本部条例、軍令部令、陸、海軍省官制等ノ廃止)
(二)兵役ノ義務ヲ廃止スルコト(憲二十ノ削除、兵役法等ノ廃止)
(三)軍人ノ身分ヲ廃止スルコト(憲十、十九ノ改正、憲三二ノ削除)
(四)戒厳ヲ廃止スルコト(憲十四ノ削除、戒厳令ノ廃止)但シ之ニ代ル非常行政的制度ヲ設クルコト(憲三一ノ活用)
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