以下は"Basic Initial Post Surrender Directive to Supreme Commander for the Allied Powers for the Occupation and Control of Japan (JCS1380/15)"の日本語訳です(一部、翻訳されていません)。「日本占領重要文書(基礎編)」日本図書センター(1989)から転載しました。 日本占領及び管理のための連合国最高司令官に対する降伏後における初期の基本的指令
1 この指令の目的及び範囲 (い)この指令は、降伏後の初期の期間における日本の占領及び管理に当つて、貴官の有する権限及び貴官の指針となる政策を規定する。 (ろ)この指令にいう日本は、次のものを含むものと定められる。日本の主要な四島、すなわち北海道(エゾ)、本州、九州、四国及び対馬諸島を含む約1千の隣接小諸島。 (は)この指令は、第1部一般及び政治、第2部経済及び民生物資、第3部財政金融にわかれる。 第1部
一般及び政治 2 軍事的権限の基礎及び範囲 日本に対する貴官の権力及び権限の基礎は、貴官を連合国最高司令官に任命する米国大統領の署名した指令及び日本国天皇の命令によつて実施された降伏文書である。これらの文書は、更に1945年7月26日のポツダム宣言、1945年8月10日の日本側通告に対する1945年8月11日の国務長官の回答及び1945年8月14日の最終の日本側通告に基礎を置いている。これらの文書に従つて、連合国最高司令官としての貴官の日本に対する権限は、降伏実施という目的のために最高のものである。敵国領土の軍事占領者としての通例の権力以外に、貴官は、貴官が降伏及びポツダム宣言の規定の実施に得策且つ適当と考えるいかなる措置をも執る権力を有する。しかしながら、貴官は、貴官が必要と認めるか又は反対の訓令を受けない限り、直接軍政を樹立することなく、貴官の使命達成と両立する限り、日本国天皇又は日本政府を通じて貴官の権力を行使する。貴官の権力の行使に当つては、次の一般原則が貴官の指針となるであろう。 3 日本の軍事占領の基本的目的 (い)日本に関する連合国の終局の目的は、日本が再び世界の平和及び安全に対する脅威とならないためのできるだけ大きい保証を与え、又、日本が終局的には国際社会に責任あり且つ平和的な一員として参加することを日本に許すような諸条件を育成するにある。この目的の達成にとつて不可欠と考えられるある措置は、ポツダム宣言に述べられている。これらの措置は、特に、次の諸点を含んでいる。カイロ宣言を履行すること及び日本の主権を主要四島及び連合国の決定する諸小島に制限すること。あらゆる形態の軍国主義及び超国家主義を排除すること。日本を非武装化し且つ非軍事化し、日本の戦争遂行能力を引き続き抑制すること。政治上、経済上、社会上の諸制度における民主主義的傾向及び過程を強化すること。日本における自由主義的政治傾向を奨励し且つ支持すること。米国は、日本政府が民主主義的自治の諸原則にできるだけ従うことを希望するが、日本国民の自由に表明された意思によつて支持されないいかなる政治形態をも日本に強いることは占側軍の責任ではない。 (ろ)連合国最高司令官としての貴官の使命は、降伏が強力に実施されることを確実にし且つ連合国の目的の達成に適当な行動を執るにある。 (は)この指令は、戦後の世界における日本の待遇に関する長期政策を最終的に形成しようとするものではなく、又、貴官の日本占領期間中降伏及びポツダム宣言の実施に努力するに当つて貴官の執るべき措置を詳細に規定しようとするものでもない。これらの政策及びその実現のため適当な措置は、大部分日本における事態の発展によつて決定されるであろう。それ故、貴官は、常に日本の経済、産業、財政金融、社会及び政治の状態に関する調査を継続し、これを本国政府の利用に供することが必要である。これらの調査を進めるに当つては、この指令に述べられている初期の管理措置に変更を加え、又連合国の終局目的を促進する政策を逐次形成してゆくための基礎を築くようになされなければならない。必要に応じ、貴官に対して、補足指令が合同参謀本部を通じて発せられる。 4 日本に対する軍事的権限の確立 (い)日本の降伏後直ちに貴官は、天皇、日本政府及び日本大本営に対して、日本の全軍隊及び日本の支配下にある全軍隊に戦闘行為を停止して武器を引き渡すように命令を発し、且つ降伏文書及びポツダム宣言に述べられている政策の実施に必要な他の命令を発するように要求する。貴官は、天皇及び日本政府に対して、貴官の使命の目的実現のために発せられるすべての命令が日本におけるすべての者によつて迅速且つ完全に遵守されることを確実にするのに必要なすべての措置を執るように要求する。 (ろ)貴官は、帝都東京及び貴官が日本政府に対する貴官の管理を容易ならしめるために必要と認める府県の首都を占領する。貴官は、更に貴官の必要と認める戦略的な場所をも占領する。それ以外には、貴官は、日本のいかなる部分をも直接軍政施行が不可決とならない限り占領してはならない。しかしながら、貴官は、貴官の使命実現の必要に応じて、日本のいかなる地域においても臨時に貴官の軍政を使用することができる。下記第4節(は)の規定には従わなければならないが、貴官は、日本当局又は必要があれば貴官の軍隊による法律及び秩序の回復及び維持を確実にするために迅速な行動をとる。 (は)降伏実施に行動が必要な場合には、貴官は、当初から直接に行動する権利を有する。それ以外には、天皇又は他の日本当局が有効に行動することを欲しないか又は有効に行動しないときに直接行動を執る最高司令官としての貴官の権利を常に留保して、貴官は、貴官の最高権限を天皇と中央及び地方における日本政府機構とを通じて行使する。この政策は、日本における現在の政治形態を利用するにあつて、これを支持するものではない。政府の封建的及び権威主義的傾向を修正しようとする変更は、許容され且つ支持される。このような変更の実現のために日本国民又は政府がその反対者に対して実力を行使する場合には、貴官は、最高司令官として貴官の軍隊の安全及び他の一切の占領目的達成を確実にするに必要な場合にのみ干渉すべきである。貴官は、情勢の必要に応じて、直接軍政の施行を含め、貴官の最高の権力及び権限を全面的に行使することができる。日本のいずれかの部分において直接軍政の実施が必要となつた場合には、貴官は、その後直ちに合同参謀本部に通報する。貴官は、合同参謀本部との事前の協議及び合同参謀本部を経て貴官になされる通達なしには天皇を排除したり又は天皇を排除しようとするいかなる措置をも執らない。 (に)貴官は、(1)1914年世界大戦開始以後日本が委任統治その他の方法によつて奪取又は占領した太平洋諸島の全部、(2)満洲、台湾、澎湖諸島、(3)朝鮮、(4)樺太及び(5)今後の指令に指定されることのあるような他の地域の日本からの完全な政治上及び行政上の分離を実施するために適当な措置を日本において執る。 (ほ)貴官は、適当な方法によつて日本国民の全階層に対し、彼らの敗戦の事実を明らかにする。彼らの苦痛と敗北は日本の不法且つ無責任な侵略によつてもたらされたものであること、又、日本人の生活及び制度から軍国主義が排除されてはじめて日本は国際社会への参加を許されることを、彼らに認識させなければならない。彼らが他国民の権利と日本の国際義務とを尊重する非軍国主義的、民主主義的日本を発達させるように期待されていることを彼らに知らせなければならない。貴官は、日本の軍事占領は連合国の利益のために実施されているものであり、日本の侵略力及び潜在的戦争能力の破壊のためと日本人に災禍をもたらした軍国主義及び軍国主義的制度の排除のために必要であることを明らかにする。この目的をもつて、且つ軍政の安全を確実にするために、貴官が望ましいと認めるときに、又貴官が望ましいと認める限度において、日本に交際禁止政策を適用することができる。しかしながら、貴官の将兵は、米国及び連合国並びにそれらの代表者に対する信頼を深めるように日本人を扱わなければならない。 (へ)貴官は、天皇に対し、ポツダム宣言に述べられている目的の達成を阻害するか、又は降伏文書若しくは合同参謀本部を通じて貴官に発せられることのある指令に抵触するすべての法律、命令、規則を廃止するように要求する。貴官は、特に政治的及び市民的自由の制限と、人種、国籍、信仰又は政見による差別とを設け且つ維持したすべての法律、命令、規則の廃止を確実にする。既に廃止され、又は廃止されるべき法規の執行を特に担当している機関又は機関の一部は、即時廃止されなければならない。 (と)貴官は、必要に応じ、占領軍に対する犯罪及び降伏実施と両立するような他の事項について管轄権を有する軍事裁判所を設置する。しかしながら、貴官は、そうしないことを貴官が必要と認める場合を除き、日本の裁判所が貴官の軍隊の安全に直接且つ重大な関係を有しない事件については有効な裁判権を行使することを確実にする。 (ち)米国政府又は他の連合国政府の非軍事機関代表者は、貴官の承認を得、且つその目的、期間及び範囲に関し合同参謀本部によつて貴官に通告される決定に従うのでなければ、占領に参加し又は日本国内で独立して任務を遂行してはならない。 5 政治的及び行政的改組 (い)地方、地域及び中央の行政機関は、その機能及び責任が占領目的と一致しないものを除き、下記第5節(ろ)に述べられている受け容れがたい官吏又は信頼を置きがたいことが確められた官吏を排除した上で機能継続を許される。このような機関及びその人員は、行政について責任を負わされ、貴官の政策及び指令の実施の任務を課せられる。しかしながら、あらゆる場合に、又あらゆる事情の下において、貴官は、日本当局が貴官の指令を満足に実施しない場合には、又実施しない程度に応じて、貴官自身で直接行動を執る権限を与えられている。 (ろ)下記第7節(は)に示されている場合を除き、好戦的国家主義及び侵略の積極的な推進者、日本の超国家主義的結社、暴力的結社又は愛国的秘密結社、その出先機関又は参加団体の有力な会員であつた者、下記第5節(と)に列挙されている他の団体の活動に勢力をもつていた者又は軍事占領目的に敵意を示した者は、いかなる事情の下においても公職又は公的企業若しくは重要な私的企業における責任ある又は有力ないかなる他の地位をも保持することを許されない。 (は)貴官は、現在の政治形態が維持される限り、あらゆる場合において、内大臣、枢密顧問、内閣総理大臣及び閣僚の地位が貴官の使命の目的を促進するものと信頼することができる人物によつてのみ占められることを確実にする。貴官は、大東亜省の即時廃止を要求するが、同省の機構及び人員のうち、上記第4節(に)に規定されている植民地分離の実施に必要なものは残置することができる。貴官は、非武装化及び復員の過程において陸軍省、海軍省、軍需省を逐次解体廃止する。 (に)国の政策の地方的実施に対し地方に責任をもたせることは、奨励される。 (ほ)日本における通常の刑事及び民事裁判所は、貴官の決定する規則、監督及び統制に従つて機能継続を許される。上記第5節(ろ)の規定によつて受け容れがたい裁判官その他の裁判所所員は、できるだけ速やかに排除される。このような官吏は、受け容れうる有資格者と取り換える。機能継続を許されるすべての裁判所に対し、貴官は、全面的審査権を保有する。貴官は、貴官の使命の目的と一致しないすべての判決を拒否する。貴官は、上記第4節(へ)によつて廃止されるべき種類の法律又は規則のみによつて拘留されている者を釈放させるため、できる限りの措置を執る。 (へ)司法及び普通警察機関並びに貴官が適当な監督の下に残置することを適当と考えるような他の警察機関から信頼しがたい分子、好ましくない分子、特に超国家主義的結社、暴力的結社及び愛国的秘密結社の会員を追放しなければならない。 (と)日本全国を通じて、貴官は、大日本政治会、大政翼賛会、大政翼賛政治会、これらの参加団体及び出先機関又は後継団体並びに日本のすべての超国家主義的結社、暴力的結社及び愛国的秘密結社、これらの出先機関及び参加団体の解散を確実にする。 (ち)貴官は、国務省が合同参謀本部を通じて要求する日本の外交官、領事官、その他海外出先権関員の召還を日本政府に指令する。貴官は、又降伏実施の目的のために日本の外交及び領事施設の文書及び財産を連合国政府の正当に任命した代表者による管理に移す手配をするように日本政府に指令する。 (り)上記第5節(と)に述べられている団体のいずれかの所有又は支配しているすべての動産及び不動産は、公有財産とみなされるべきである。なんらかの財産(例えば、半官会社又は日本政府若しくは日本皇室が重大利害を有する民間会社の資産)の公的地位について疑問がある場合には、それは、公有財産とみなされるべきである。皇室財産は、この指令に述べられている目的の遂行に必要ないかなる措置からも免除されてはならない。 6 非軍事化 (い)貴官は、憲兵隊(但し、警察を含まない)、民間義勇隊及びすべての準軍事組織を含むすべての日本の武装部隊の速やかな武装解除を確実にする。このような部隊の隊員は、捕虜としてではなく、彼ら自身の将校の下に武装解除された部隊として取り扱われ、貴官の発したか又は発することのある指令に従つて復員させられる。貴官は、日本へ送還される日本武装部隊の隊員であつて捕虜となつたいずれの者に対しても不公平な待遇又は権能はく奪を防止する規定が設けられるように要求する。 (ろ)貴官は、軍事参議院、元帥府、大本営、参謀本部、軍令部、陸軍、海軍及び民間義勇隊、憲兵隊を含むすべての軍事組織及び準軍事組織並びに日本における軍事的傅統の保存に役立つことのあるすべての在郷軍人会その他の軍国主義的団体の恒久的解体を規定する。但し、貴官は、降伏特に復員を実施するという限られた目的をもつて、上に列挙されたものを含む陸海軍機関を短期間利用することができる。陸海空におけるすべての軍事的及び準軍事的訓練は禁止される。 (は)すでに貴官に対して発せられた指令の規定に従い、貴官は、すべての武器、弾薬、艦艇及び非軍事的用途に当てられる航空機を含む軍用器材を押収又は破壊し、且つその生産を停止する。 (に)貴官は、この指令の第2部及び第3部に述べられているように、日本の潜在的戦争能力を破壊するために適当な措置を執る。 7 日本人公職者の逮捕及び抑留 (い)次の者は、その処置について追つて訓令があるまで、戦争犯罪容疑者としてできる限り速やかに逮捕し且つ抑留する。 (1)軍事参議院、元帥府、大本営並びに参謀本部及び軍令部の構成員全部。 (2)憲兵隊の将校全部及び陸海軍将校のうち好戦的国家主義及び侵略の重要な推進者であつた者全部。 (3)超国家主義的結社、暴力的結社及び愛国的秘密結社の枢要な会員全部。 (4)貴官が戦争犯罪人と信ずる理由を有する者又はこれまで貴官に送達されたか又は送達されることのある戦争犯罪容疑者の表の中にその姓名又は人相書が含まれている者全部。 (ろ)日本の侵略計画の策定又は実行に当り積極的且つ支配的に政治上、経済上、金融上その他重要な役割を演じた者全部並びに大日本政治会、大政翼賛会、大政翼賛政治会、これらの出先機関及び参加団体又は後継団軆の幹部全部は、追つて処置されるまで抑留される。貴官は、貴官の使命達成の必要に応じ他の非軍人をも抑留することができる。 (は)しかしながら、貴官は、上記第7節の(い)の(1)及び(2)に列挙されている種類の人物中、日本武装部隊の復員を確実にするために貴官が絶対に必要とする人物を、厳重な監督の下に短期間利用することができる。 (に)貴官は、平和に対する罪及び人道に対する罪を犯した者を含む戦争犯罪人に関する貴官の責任について、さらに訓令を受ける。 (ほ)戦争犯罪人として逮捕された非軍人又は軍人に対して、財産又は政治上、産業上その他の階級若しくは地位によつて、逮捕の方法又は拘留の状態に関して差別を設け又は特別の考慮を与えてはならない。 (へ)第二次世界大戦において連合国のいずれかの敵国であるか又はあつたことのある日本以外の国(ブルガリア、フィンランド、ドイツ、ハンガリー、イタリー、ルーマニア、及びタイ)の国民はすべて調査登録し、状況の必要に応じ、抑留し又はその活動を制限することができる。このような国の外交官及び領事官は、保護抑留し、追つて処置するため留めておく。 (と)第7節の規定によつて抑留又は逮捕された人物の所有又は支配している動産及び不動産は、その終局的処置について指令があるまで貴官の管理下におく。 8 捕虜、連合国人、中立国人、その他の者 (い)貴官は、連合国の捕虜及び流民が保護され且つ送還されることを確実にする。 (ろ)中立国の国民は、適当な軍事当局に登録するように要求される。彼らは、貴官の設定することのある規則に従つて送還されることができる。しかしながら、連合国の一国に対する戦争にいかなる方法によつてでも積極的に参加したすべての中立国人は、逮捕され、後に発せられる訓令に従つて処置される。中立国人は、その本国又は日本以外に居住する者との通信又は事業関係についていかなる特権をも与えられない。中立国の外交官及び領事官の身体、文書及び財産は、十分に保護される。 (は)連合国人であつて日本に居住しているか又は抑留されているすべての非軍人は、調査し、綿密にじん問し、貴官が適当と認める場合には抑留し又は居住を制限する。右の中上記第7節(ろ)の規定に該当するすべての者は、戦争犯罪容疑者として逮捕し且つ抑留しなければならない。一又は二以上の連合国に対する戦争にいかなる方法によつてでも積極的に参加した他のすべての連合国人は、逮捕し、追つて処置するため留めておく。その後、彼らは、貴官に与えられるべき指令に従つて処置される。一般に、連合国人の健康及び福祉を確実にするために実際的措置が執られる。 (に)貴官は、中国人たる台湾入及び朝鮮人を、軍事上の安全の許す限り解放国民として取り扱う。彼らは、この指令に使用されている「日本人」という語には含まれないが、彼らは、日本臣民であつたのであり、必要の場合には、貴官によつて敵国人として取り扱われることができる。彼らは、もし希望するならぼ、貴官の定める規則によつて送還されることができる。しかしながら、連合国人の送還に優先権が与えられる。 (ほ)軍事情勢によつて必要とされる限度内において、貴官は、連合国及び連合国人の財産の保存及び保護に必要なすべての妥当な措置を執らなければならない。 9 政治活動 (い)日本の軍国主義的及び超国家主義的イデオロギーと宣傅とのいかなる形式における弘布も、禁止され且つ完全に抑圧される。貴官は、日本政府に対し国家神道施設への財政的その他の援助を停止するように要求する。 (ろ)貴官は、軍事的安全とこの指令に述べられている目的の達成のために必要な最低限度の統制及び検閲を、郵便、無電、ラジオ、電話、電信、海底電信、映画及び出版物を含む非軍事的通信に対し設ける。思想の自由は、利用しうるあらゆる弘報手段による民主主義の理想及び原理の弘布によつて育成される。 (は)貴官は、現存するすべての政党、政治団体、政治結社を即時統制の下に置く。そのうち軍事占領の要求及びその目的に一致した活動をしているものは、奨励されるべきである。このような要求及び目的に一致しない活動をしているものは、廃止すべきである。占領軍の安全維持の必要には従わなければならないが、集会及び公開討論の権利を有する民主主義的政党の結成及び活動は、奨励される。代議的地方政府の自由な選挙は、できる限り早い時期に行われるべきであり、地域的及び全国的の自由な選挙は、貴官の勧告を考慮した後合同参謀本部を通じて指令されるところに従つて行われるべきである。この項に述べられている計画に関する貴官の行動は、占領の終局目的の一つ、すなわち日本国民の自由に表明された意思による平和的傾向を有し且つ責任ある政府の樹立に照して執られなければならない。 (に)労働、産業、農業における民主主義的団体の発達は、奨励される。 (ほ)信教の自由は、日本政府によつて速やかに宣言されるべきである。貴官の軍事占領の安全及びその目的の達成が害われない限度において、又上記第9節(い)及び(は)に従うことを条件として、貴官は、意見、言論、出版及び集会の自由を確実にする。 10 教育、美術及び文書 (い)教育機関は、できる限り速やかに再開される。好戦的国家主義及び侵略の積極的推進者であつたすべての教師及び軍事占領の目的に積極的に反対し続けているすべての教師は、受け容れうる有資格後継者と取り換える。すべての学校における日本の軍事的及び準軍事的教育及び教練は、禁止される。貴官は、貴官に受け容れられる教科がすべての学校で採用され、そのうちには上記第3節(い)に示されている観念を含むことを確保する。 (ろ)貴官は、すべての政府事業、準政府事業、重要な民間の金融、産業、製造及び商業会社並びに上記第5節(へ)に述べられている日本の団体の記録を、貴官の参考及び使用の目的のために保存させるべきである。 (は)貴官は、できる限りすべての歴史的、文化的及び宗教的物件を占領軍その他によつて略奪されないように保護させ且つ保存させる。 第2部
甲 経済 目的及び一般的基本原則 11 占領期間中の日本の経済問題に関する米国政府の政策は、次の諸目的の同時達成を企図している。 (い)あらゆる種類の武器、軍需品又は軍用器材の生産を専門とする現存の施設を除去すること。 (ろ)国際的平和に対して危険ないかなる軍備をもあらたにつくり又は維持する日本の経済能力を破壊すること。 (は)適当な連合国当局によつて決定されることのある賠償及び返還計画を実行すること。 (に)日本の平和的、民主的勢力の成長に貢献するような種類の経済的慣行及び制度の日本国内における発達を奨励すること。 (ほ)日本の経済的組織の運用と経済的操作とが、占領の一般的目的に合致することを確実にし、且つ平和的貿易国家の列への日本の終局的復帰を可能とするように監督指導すること。 この指令の経済的部分をなす訓令は、前途に控えている占領の最初且つ当面の期間においてこれらの目的を促進することを企図している。これらの訓令は、貴官の遭遇する事態及び日本国民の行動に照して、追加改訂されることもある。 12 日本における連合国最高司令官としての貴官の最高権限は、経済的分野におけるすべての事項に及ぶ。この権限の行使に当つては、貴官の目的の達成の許す限度で、貴官は、天皇及び日本政府の機構を貴官の目的達成に利用する。貴官は、彼らに対し、貴官の命令を遂行し、且つ、貴官の目的遂行上貴官の必要と思うような変更を経済事項担当の政府部門の行政組織に加えるように要求する。 貴官は、次の場合には、直接に行動しなければならない。 (い)任務の性質そのものから日本当局を通ずる行動では貴官の経済的目的が有効に達成されない場合。 (ろ)貴官の操作のいずれか特定の部面において日本政府を通ずる操作が満足すべき方法でないことが明らかとなる場合。 直接に行動するに当つては、貴官は、貴官がその任務を日本政府当局に委せても満足しうると考える時期まで、この指令に含まれている経済的措置を実施するか又は、その実施を確実にするために、日本の官吏及び機関から独立し且つこれに優越する行政機構を設置する。 13 貴官は、日本の経済的復興又は日本経済の強化についてなんらの責任をも負わない。貴官は、次のことを日本国民に明らかにする。 (い)貴官が日本にいずれの特定の生活水準を維持し又は維持させるなんらの義務をも負わないこと。 (ろ)生活水準は、日本がどれだけ徹底的にすべての軍国主義的野望をみずからすて、その人的及び天然資源の利用を全く且つ専ら平和的生活の目的に転換し、適当な経済的及び財政的統制を実施し、且つ占領軍及びその代表する諸政府と協力するかにかかつていること。 日本がその努力及び資源によつて第11節に特記されている目的に合致する日本における生活状態を終局的に実現するのを妨げるのは、米国の政策ではない。 経済的非武装化 14 日本の経済的非武装化を実施するために、 (い)貴官は、すべての武器、弾薬その他の軍用器材、海軍艦艇、非軍事的用途に向けられるものを含むあらゆる種類の航空機並びに前記のもののいずれかに合体させることを特に目的とする部分品、構成物及び資材の将来の生産、取得、発達、維持又は使用を即時停止し、且つ防止する。 (ろ)貴官は、上記の品目中いずれかの生産又は維持に使用されるか又は使用される目的を有する施設を保全するために貴官が必要と認める措置を執る。これらの施設は、終局的処理について追つて訓令あるまでは、緊急事態でなければ破壊されるべきでない。 (は)貴官は、合同参謀本部を通ずる特別の承認を得なければ、(い)項に特記されている禁止計画の実施又は(ろ)項に従つて受ける訓令の執行を延期しない。しかしながら、万一貴官が(い)項に列挙されている品目のいずれかの生産が貴官の軍事作戦、占領軍又は臨時の軍事的調査の要求をみたすために必要であると認める場合には、貴官は、合同参謀本部に適当な勧告をなし、合同参謀本部の決定があるまで、必要な最低限度まで生産の手配をなす権限を与えられる。 15 経済的非武装化、賠償、返還の計画実施のために後に貴官に送付される訓令は、鐵、鋼、化学製品、非鐵金属、アルミニウム、マグネシウム、人造ゴム、人造石油、工作機械、ラジオ、電気器具、自動車りよう、商船、重機械及びこれらの重要部分のような、日本のある生産部門の縮減又は除去を含む。 しかしながら、これらの事項について最終的且つ特定の決定あるまで、貴官は、占領軍の需要及び人民の最少限度の平和的需要をみたすのに必要な最低限度まで、これらの産業における生産の継続及び生産施設の修理を許す。 貴官は、生産の継続又は生産施設の修理に関して与えられるいかなる許可も、日本経済のいかなる部門に加えられることのある制限又は賠償若しくは返還として要求されることのある引渡についての最終的決定を害するものでないことを日本人に対し明らかにする。 16 貴官は、又第14節及び第15節に述べられている種類を含む工場及び設備を必需消費財の生産に転換することを許可するととができる。貴官は、このような転換の行われた場合そのいずれもが平和経済への真正な動きであり且つ軍事的目的のために生産能力を温存しようとする擬装された試みでないことを確める。 貴官は、又いずれのこのような転換許可も、賠償若しくは返還による工場若しくは設備の撤去、又は第11節による安全上の理由のためのくず鐵化に関する後の決定を害するものでないことを日本人に対し明らかにする。 17 貴官は、 (い)第14節及び第15節に禁止されている種類の生産が隠蔽され又は擬装された形で行われないことを確実にするために、直ちに検査制度及び統制を確立する。 (ろ)第14節に網らされている生産物をこれまで生産してきたか又は今後生産する目的を有するすべての重要な施設及び第15節に特記されているすべての産業におけるすべての重要な施設に関する明細目録の報告をできるだけ速やかに作成させる。これらの報告は、工場及び施設の状態、能力並びに手持原料、製品及び仕掛品の数量を明記しなければならない。貴官は、又日本商船隊の明細目録を作成する。 経済政策に関する今後の決定に必要な情報を供するために、貴官は、これらの報告を合同参謀本部に送る。 (は)貴官の占領終了後日本の再軍備を防止する統制を立案し、合同参謀本部に勧告する。 18 貴官は、すべての実験所、調査機関及び類似の技術機関が、貴官が占領目的のために必要と考えるものを除き、即時閉鎖されることを確実にする。貴官は、必要と認める場合にはこれらのものの物的施設の維持及び安全並びに貴官の技術的又は防諜的調査に利益ある人員の保持をはかる。貴官は、直ちにこのような閉鎖団体において行われた研究及び調査の性質を調べ、明白に平和的目的を有する種類の研究及び調査の再開を、(1)許可される研究の特定の種類を定義し、(2)ひん繁な検査を規定し、(3)研究の結果を貴官に卒直に知らせることを要求し、(4)規則に違反した場合には違反機関の恒久的閉鎖を合む厳罰を課する適当な規則の下にできるだけ速やかに許可する。 日本経済制度の運用 19 日本当局は、自己の資源及び労力によつて次のことの達成を可能とする実行計画を作成し且つ有効に実施するように期待される。 (い)甚しい経済的困窮を避けること。 (ろ)利用しうる物資の適正公平な分配を確保すること。 (は)占領軍の必要のための貴官の要求をみたすこと。 (に)連合国政府の合意するような賠償引渡のための要求をみたすこと。 これらの目的達成のために、日本当局は、農業及び漁業生産物、石炭、木炭、家屋修理材料、衣料その他の必需品の生産を最大とするように最善をつくさなければならない。日本当局がそうするのを怠つた場合には、貴官は、日本当局に貴官が必要と判断する措置を執るように指令する。 20 貴官は、飢餓、広範囲の疾病及び甚しい肉体的苦痛をひきおこすことなしに行われうる限度内で、占領軍の必要をみたすために物資及びサーヴィスを供給することを日本当局に要求する。 21 日本当局は、第19節に明記されている経済的目的の達成のために適当又は必要な経済活動に対する統制を自己の責任において確立実施することを許されるべきである。これらの統制の政策と実施は双方とも、特にこれらの統制が第15節に矛盾する限りにおいて、貴官の承認及び監督を受けなければならない。この節は、貴官が第12節に規定されているところに従つて直接行動に出ることを妨げるものではない。 22 深刻なインフレーションは、占領の終局の目的の達成を大いに遅延させるであろう。それ故、貴官は、日本当局に対し、このようなインフレーションを回避するためにあらゆる実行可能な努力を払うように指令する。しかしながら、インフレーションの防止又は抑制は、賠償、返還、非軍事化又は経済的非武装化の計画の実施に当り生産施設の撤去、破壊又は縮少を制限する理由としてはならない。 日本経済制度におけるある種の分子の排除 23 貴官は、好戦的国家主義及び侵略の積極的推進者であつたすべての者、この指令の第5節(と)(第1部、一般及び政治)に列挙されている団体に積極的に参加した者及び将来の日本の経済的努力を専ら平和的目的の方向に向けないいかなる者をも、産業、金融、商業又は農業における重要な責任又は勢力ある地位に留め又は選任することを禁止する。(貴官にとつて満足すべき反証のない限り、貴官は、1937年以来産業、金融、商業又は農業において高度の責任を有する枢要な地位を占めたことのあるいかなる者も好戦的国家主義及び侵略の積極的推進者であつたものと推定する。) 24 貴官は、日本の戦争努力又は経済において重要な役割を演じたことのある日本の大産業及び金融会社並びに商業及び研究団体のすべての工場、設備、特許権、帳簿、記録その他すべての重要財産を、この指令及び他の指令によつて決定されるような処置のために破壊から保護し且つ保全するように要求する。 日本経済制度の民主化 25 次のものを奨励し且つこれに好意を示すのが米国政府の意向である。 (い)所得と生産及び商業手段の所有権とを広く分配することを許す政策。 (ろ)労働、産業、農業における民主主義的基礎の上に組織された団体の発達。 従つて、貴官は、 (1)日本側に対し、本国政府の軍事的及び経済的目的に従つて日本財界を改組することに責任を持つ公的機関を設立するように要求する。貴官は、この機関に対し、日本の大規模な産業及び金融企業合同体又は他の私的事業支配の大集中を解体する計画を貴官の承認を うるため提出するように要求する。 (2)満足すべき改組案が承認されるまでの間、本国政府の軍事的経済的目的との合致を確実にするため前記(1)項に述べられている日本財界に対し監視を確立し且つ維持する。 (3)統制団体を解散する。従来これらの団体によつて行われていた公的機能であつて必要なものがあれば、貴官の承認し且つ監督する公的機関に移管されるべきである。 (4)改組されるべき産業へ商社が自由に加入することを制限する立法的又は行政的措置は、その目的又は効果が私的独占を育成し且つ強化するものである場合には、すべて廃止する。 (5)私的国際カルテル又は他の制限的な私的国際契約若しくは取極ヘの日本の参加をすべて終止し、禁止する。 (6)日本側に対し労働に対する戦時の統制をできるだけ速やかに撤廃し、労働保護立法を復活させるように要求する。 (7)民主的な線に沿う被使用者の組織の結成に対するすべての法的障害の撤廃を要求する。但し、これは、いかなる擬装の下における軍国主義的勢力の恒久化又は占領軍の目的及び作戦行動に敵意を抱くいかなる集団の存続をも防止するのに必要な保障措置を執ることを妨げるものではない。 (8)罷業又は他の作業停止は、これらが占領軍の軍事行動を妨害するか又はその安全を直接危くすると貴官が認めた場合にのみ防止又は禁止する。 対外経済取引 26 貴官は、商品及びサーヴィスについての日本の対外貿易全般に統制を確立する。このような統制は、初期の期間において次の諸政策を実施するように運営されなければならない。 (い)輸出商品が国内の最低需要をみたすのに必要なことが明らかな場合には、輸出を承認してはならない。 (ろ)工場及び設備の輸出は、それが賠償又は返還に必要とされるかどうかについて決定がなされるまでは、許可されてはならない。 (は)賠償のため又は返還として積出を指令されたもの以外の輸出は、これらの輸出品の見返として必要な輸入品を供給することに同意するか又は輸出品の代価を外国為替で支払うことに同意する仕向国に対してのみ行うことができる。 (に)すべての輸出代金は、貴官が管理し、まず第一に、承認された輸入の支払にあてなければならない。日本におけるいかなる者、会社又は団体も、貴官の特別の承認がなければ、いかなる種類の外国資産の取得をも許されてはならない。 (ほ)この指令中の他の個所に述べられている経済政策に明らかに一致する輸入にのみ承認を与えるべきである。 (へ)輸入又は輸出(賠償のために行われることのある輸出を含む)の必要は、いかなる日本の産業部門をも日本の潜在的戦争能力に著しく寄与し又は戦略物資に対する他国の対日従属度を高めるような程度まで復興又は発展させることを要求し又は許可する理由と考えられてはならない。 27 日本当局は、事前に貴官と協議の上貴官の明示的承認を得なければ、外国政府又は業者との間にいかなる種類の経済協定をも結ぶべきではない。いかなるこのような協定の提案も、その審議のために合同参謀本部に提出されなければならない。 賠償及び返還 28 貴官は、合同参謀本部によつて貴官に通達される連合国の当該官憲の決定に従つて、現物賠償計画及び識別しうる略奪財産の返還計画を実施することを確実にする。賠償は、次の方法によつて実行される。 (い)日本が保有すベき領域外にある日本資産を移転すること。 (ろ)平和的な日本経済の運営又は占領軍に対する供給に必要でない商品、現存の工場、設備、施設を日本から移動すること。 日本の侵略の犠牲となつた連合国から貴官の受理する賠償又は返還のすべての要求は、貴官の勧告を添えて合同参謀本部に報告する。 乙 民生物資供給及び救済
民生物資供給方針及び供給基準 29 (い)貴官は、日本への輸入を厳重に制限する目的をもつて、日本の重要資源の最大限の利用を達成するために実行しうるすべての経済及び警察措置が執られることを確実にする。このような措置は、生産と物価の統制、配給、やみ市場の取締、財政金融統制その他日本において利用しうる資源、施設及び資力の完全な使用を目的とする措置を含む。 (ろ)貴官は、現地資源の補充のためにのみ、且つ占領軍を危うくするか軍事行動を妨げるような広範囲の疾病又は民生不安の防止に補充が必要な限度においてのみ、輸入物資の供給に責任を持つ。このような輸入は、食料、燃料、医療及び衛生物資その他の必需品目の最低量に限定され、そのうちには、貴官がそれがなければ輸入しなければならないような物資の現地生産を可能ならしめる品目を含む。 (は)上記第29節(ろ)によつて輸入が必要な物資は、他のアジア及び太平洋地域から得られる余剰物資からできるだけ入手する。このような余剰物資が他の米軍司令官の管轄地域から供給しうる限度においては、貴官は、このような他の司令官と直接に取極を行うことができる。このような余剰物資が米国以外の政府又はこのような政府の軍司令官の管轄下の地域において入手しうる限度においては、このような余剰物資の入手に必要な交渉は、当該地域における現地米国外交代表により又はその承認を得て行われる。このような外交代表が利用し得ない場合に、貴官は、貴官の勧告を添えて情勢を合同参謀本部に報告する。 (に)貴官が貴官の占領目的を達成するため、追加輸入をする責任を負うべきであると考えるときは、貴官は、合同参謀本部に貴官の勧告を提出する。 分配の方法及び条件 30 貴官は、劃一的配給基準による物資の公正な分配を確実にするためにすべての実行可能な措置を執るように要求する。 31 軍事的便宜に合致する最大限度まで、一般住民のための輸入物資は、実行可能であり且つ望ましい限りにおいて、貴官にとつて受け容れうるような日本の公的供給機関又は他の受託者に対し、且つ貴官の直接の監督又は統制の下に、引き渡されるべきである。このような引渡は、可能な場合には常に輸入港において行われるが、必要な場合には国内の適当な分配中心地で引渡を行うことができる。 32 満足すべき公的供給機関が存在しないか又は作戦上若しくは他の理由によつて民生物資のこのような機関を通ずる分配が実行不可能である場合には、貴官は、直接卸売業者又は他の商人に対し販売することができる。貴官による一般住民に対する物資の直接的供給と分配をなるべく少くするために、貴官は、日本人が不必要に占領軍をこのような責任に巻き込まないことを確実にすべきである。貴官による直接販売が必要となる場合には、その代金は、貴官が国内経済に適合すると決定する価格をもつて、購入者によつて現地通貨で支払われる。 33 供給機関又は他の受託者に引き渡される物資は、それら機関によつて分配経路を通じ、且つ貴官にとつて満足すべき分配方針に従い、又貴官が国内経済に適合するように決定する価格によつて販売される。軍事上の必要が要求する場合には、民生物資は、貴官又は貴官の監督若しくは統制下にある供給機関による直接的救済放出の対象とすることができる。 第3部
財放金融 34 財政金融の部門においては、貴官は、後に列挙されている政策及び計画の有効な実施が許す限度まで日本政府を通じて行動するが、このような政策及び計画を実施し又はそれらの有効な実施を確実にするに必要な限度において日本当局及びその機関に従属しない行政機構を設置して、この指令の他の部分において述べられている原則を完全に適用する。貴官は、この指令の第40節、第41節、第45節、第46節及び第47節の規定を実施し又はそれらの有効な実施を確実にするために、このような独立の行政機構を設置することを特に指令されている。 35 日本の金融機関及び財政制度は、日本の資源を基礎として機能するように期待される。貴官は、この指令に明記されている目的のために必要でない限り、日本の財政金融機構の維持、強化、又は運用を目的としたいかなる措置をも執らない。 36 貴官は、日本銀行又は他のいかなる銀行若しくは機関に対しても法貨である銀行券及び通貨を発行することを認可し又は要求することができる。このような認可がなければ、いかなる日本政府の又は民間の銀行又は機関も銀行券又は通貨の発行を許されない。 37 貴官は、日本当局に対し無償で且つ貴官の軍事占領の費用を含む貴官の軍隊のすべての経費をまかなうに十分な数量の法貨である円紙幣又は円クレディットを貴官に提供するように要求する。 38 (い)なんらかの理由によつて正規の法貨である円紙幣の適当な量が入手できない場合には、貴官は、軍布告に従つて発行される補助円軍票(B型)を使用する。補肋円は、法貨と宣言され、他の法貨である円通貨と差別なしに等価で交換される。 (ろ)正規の円通貨は、この地域において現在法貨である通貨を含む。 (は)日本によつて占領された地域において流通させるために発行された日本の軍票は、法貨としないし、又通用力もなく、補助円又は正規の円通貨と交換することもできない。 39 貴官は、今後訓令を受理するまでは、一方において日本円と、他方において米ドル及び他の通貨とのいかなる一般的交換率の使用又は発表をも布告し、実施し又は許可しない。しかしながら、陸海軍人員に対する支払及び陸海軍の会計の目的にのみ使用されるべき交換率、すなわち正規又は補助円15は1ドルという比率は、すでに貴官に通達されている。 40 貴官は、好戦的国家主義及び侵略の積極的推進者であつたか、又はこの指令の第7節に列挙されている団体に積極的に参加したすべての者をすべての公的及び私的の財政金融機関又は団体における重要な責任又は勢力ある地位から罷冤し且つ排除する。反証のない限りこのような機関又は団体のいずれかにおける枢要な地位を占めたことがあるいかなる者も、好戦的国家主義及び侵略の積極的推進者であると一般に推定することができる。貴官は、又将来の財政金融活動を専ら平和的目的に向けない者を財政金融分野における重要な地位に留め又は選任することを阻止する。 41 貴官は、戦時生産の金融又は植民地若しくは日本の占領地域における財源の動員若しくは統制を最高の目的としていた銀行その他の金融機関を閉鎖し且つその再開を許さない。これらは、次のものを含む。 (い)戦時金融金庫 (ろ)全国金融統制会及びその会員である統制会 (は)朝鮮銀行及び台湾銀行の日本本土における営業所 (に)日本本土外を活動舞台としていた各種の銀行及び開発会社、例えば南洋興発会社、南方開発金庫並びに満洲中央銀行、蒙彊銀行、中国聯合準備銀行及び中国中央儲備銀行の東京営業所等。貴官は、これらの銀行その他の機関のすべての帳簿及び記録を保管する。 42 貴官は、貴官の軍事占領の目的達成に必要と考える財政金融措置を執る権限を与えられる。これは、特に次の措置を含むが、これに限るわけではない。 (い)上記第41節に指示されているもの以外の銀行は、満足すべき管理を行い、好ましくない人員を除き又ある種の勘定及び振替の封鎖、若しくは封鎖されるべき勘定の決定の計画を実施するための措置を執るという目的のためか、又は他の軍事上の理由のために明らかに必要な場合にのみ閉鎖する。貴官は、上記第41節に述べられている以外のいずれの閉鎖された銀行をも前記目的の遂行と合致する限り速やかに再開しなければならない。 (ろ)私的又は公的の証券又は不動産その他の財産の移転その他の取引を禁止し又は制限する。 (は)貴官の軍事占領の目的遂行に明らかに必要な限度においてのみ、一般的又は部分的支払猶予令を施行する。 (に)株式取引所、保険会社及び類似の金融機関を貴官の適当と考える期間閉鎖する。 43 貴官は、次のものの支払を禁止する。 (い)すべての軍人年金、その他の手当又は特典。 但し、受給者の労働能力を制限する肉体的不具に対する補償は除くが、その率は、非軍事的な原因から生ずる同様の肉体的不具に対するものの最低より高くてはならない。 (ろ)次の者に授与されるすべての公的又は私的の年金その他の手当又は特典。 (1)大日本政治会、大政翼賛会、大政翼賛政治会、それらの参加団体及び出先機関、又は後継若しくは類似団体並びにすべての日本の超国家主義的結社、暴力的結社及び愛国的秘密結社、これらの出先機関及び参加団体の会員であるか又はこれらのために尽力した者。 (2)この指令の第5節又は第40節に従つて官職又は地位から罷免されたもの。 (3)この指令の第7節に従つて拘禁された者は、拘禁期間中又はその後有罪と決定した場合には永久に。 44 (い)課税又は他の財政金融の分野に関する法律、命令、規則又は慣行であつて国籍、人種、信条又は政見を理由にいずれかの者に対して有利又は不利な差別待遇を与えるものは、このような差別待遇を除去するのに必要な限度まで改正され、停止され又は廃止される。あらゆる種類の国家主義的、帝国主義的、軍国主義的又は反民主主義的結社のためのあらゆる種類の寄附金募集は、禁止される。 (ろ)貴官は、日本の公的支出がこの指令の他の個所に述べられている目的と一致することを確実にする。 45 貴官は、下に列記されている種類に入るすべての金、銀、白金、通貨、証券、金融機関における勘定、クレディット、財産的価値ある書類その他すべての資産を押収し又は封鎖する。 (い)次のもののいずれかによつて直接又は間接に、全部又は一部所有され又は支配されている財産。 (1)日本の中央、都道府県及び市町村政府又はこれらのもののいずれかの出先機関若しくは手先。このうちには、これらのもののいずれかの支配下にあるすべての公共事業、企業、公団又は独占事業を含む。 (2)ドイツ、イタリー、ブルガリア、ルーマニア、ハンガリーの政府、国民又は住民。このうちには、かつてこれら諸国及び日本によつて占領されていた地域の政府、国民又は住民を含む。 (3)日本皇室。 (4)大日本政治会、大政翼賛会、大政翼賛政治会、これらの参加団体及び出先機関又は後継若くは類似の団体並びに日本のすべての国家主義的結社、暴力的結社及び愛国的秘密結社、これらの出先機関、参加団体並びにこれらの役員、幹部、支持者。 (5)国家神道。 (6)貴官の禁止し又は解散したすべての団体、クラブ又は他の協会。 (7)連合国及び中立国の政府を含む日本以外の国籍を有する不在所有者及び日本国外にある日本人。 (8)本州、北海道、九州、四国及び日本に残されるすべての小諸島を除き、1894年以後いずれかの時期に日本の支配下にあつた地域にあるいずれかの者又は会社。 (9)第7節の規定により拘禁されるべき者及び表にのせるか又は他の方法によつて軍政府が明示する他のすべての者。 (ろ)日本のすべての外国為替(公有及び私有)及び日本の内外にあるあらゆる種類の対外資産。 (は)法律に従うと法律の形式に従うと称する手続によるとその他の方法によるとを問わず、強迫による譲渡、没収、はく奪又は略奪の不法行為の対象となつた財産。 (に)所有者のいかんを問わず、重要な文化的又は物質的価値を有する美術品。 貴官は、押収又は封鎖されたいずれの資産も、貴官に与えられることのある許可又は他の訓令によつて許される通りに処理されることを確実にするような措置を執る。特に上記(い)(1)によつて封鎖される財産の場合には、貴官は、このような財産を監視の下に置きながら、この指令に従つて貴官又は認可を得た者によるその使用を許すような許可制度を採用することに着手する。上記(は)によつて封鎖される財産の揚合には、貴官は、この指令の目的に従い、且つ軍国主義的その他の好ましくない勢力の隠ぺいを防止するのに適当な保障の下において迅速な返還のための措置を執る。 貴官は、貴官が上記(ろ)に述べられているすべての資産の完全な披露を得るのに必要と考えるような報告を日本政府に要求する。 46 貴官は、日本の内外にある、すべての日本の外国為替(公有及び私有)及びすべての種類の対外資産を探し出し、貴官によつて貴官の管理下に設けられる特別の機関の所有又は管理に帰せしめる。 47 輸出入から生ずるものを含むすべての外国為替取引は、日本が潜在的戦争能力を発展させるのを防止し、且つこの指令に述べられている他の目的を達成する目的をもつて管理される。これらの目的を遂行するために、貴官は、 (い)規則又は許可によつて認められるものを除き金、銀、白金、外国為替のすべての売買及びあらゆる種類の外国為替取引を禁止する。 (ろ)輸出代金であるいかなる外国為替も、この指令の目的達成に直接必要な輸入の支払にあてるし、又合同参謀本部を通ずる本国政府の特別の承認なくしては外国為替資産を他のいかなる用途に当てることをも認可しない。 (は)次のものを含むすべての外国為替取引に関し有効な管理を実施する。 (1)日本国内の者と日本国外の者との間の財産に関する取引。 (2)日本国内の者が日本国外の者に対し有する負債、又は将来支払うべき負債に関連する取引。 (3)いかなる外国為替資産又は他の形式の財産の日本国への輸入又は日本からの輸出に関連する取引。 (に)貴官は、日本のすべての在外及び対外資産に関し本国政府に完全な報告を提出する。 48 いかなる外国の者、機関又は政府による日本又は日本人に対するいかなるクレディットの供与も、貴官の勧告に基き合同参謀本部を通じて本国政府により認可されない限り許されない。 49 貴官が日本銀行若しくはいかなる他の銀行にも又はいかなる公的若しくは私的機関にもクレディットを供与することは予期されていない。貴官の見解において、このような行動が不可欠となる場合には、貴官は、貴官の適当と考える緊急行動を執ることができるが、そのような場合には、貴官はその事実を合同参謀本部を通じて本国政府に報告する。 50 貴官は、貴官の軍事占領の財政的運営を示すのに必要であるような経理と記録を行い、合同参謀本部に対しその要求することのある情報を提供する。このうちには、貴官の軍隊による通貨の使用、政府勘定によるすべての決済、占領費及び貴官の軍隊の参加を伴う作戦又は活動から生ずる他の経費に関する情報を含む。 |