第四次会談の部分のみテキスト化しました。
第四次会談
第三次会談ヲ以テ一応修正ヲ要スヘキ点ニ関シ交渉ヲ終了セルニ付屡次ノ会談ニ於テ決定セル修正箇所ヲ記入セル英文憲法草案ト共ニ過般政府ニ於テ曩ニ三月六日発表セラレタル憲法草案要綱ヲ条文化シ且ツ以上ノ修正ヲ加へ之ヲ正式ノ法案トシツツアリタルモノヲ総司令部ニ提出之ガ即時発表ニ付了解ヲ求ムルコトトセルガ第三次会談ニ於テ「ケ」ガ頻リニ当司令部トシテハ日本政府ガ本草案ノ字句変更ニ付一々当司令部ノ承認ヲ要スルト云フガ如キ印象ヲ受クルコトヲ好マス右ハ全ク日本自身ノ問題ナリト強調シ居リタル点(尤モ当方ガ承認ヲ受クル要アリト云フニハ非ザルモ本草案起草ノ経緯ニ鑑ミ字句ノ変更ニ付テモ貴方ノ「アドヴアイス」ヲ得ル方ガ適当ナリト思料スルニ他ナラス現ニ「エステイウ」ナル一字句ノミニ付テモ当方トシテハ勝手ニ之ヲ変更シ得タリヤト応酬シタルニ対シ「ケ」ハ苦笑シ居レリ)ニ徴シ新草案発表ニ際シテモ総司令部ニ対シ非公式ノ了解ヲ求ムルニ止メ且、発表ニ際シテモ総司令部ノ名ハ出サザルコトトセリ(尤モ「ケ」ハ「ウイトニイ」准将ノ意見トシテ若シ日本政府ニ於テ之ヲ欲スルナレバ「総司令部トノ数次ノ非公式会談ノ結果必要ナル修正ヲ加へ云々」ト云フ如ク発表スルモ差支ヘナシト云ヒ居リタリ)
四月十五日日本文新憲法草案ト共ニ英文原文ニ修正ヲ施セルモノヲ日本文翻訳トシテ総司令部宛提出セル処其ノ際更ニ修正ヲ加ヘタル点左ノ通
(第十三条)「凡ベテ自然人ハ--」(All natural persons are)トアルヲ「凡ベテ国民ハ--」ト改ム
(註)右ノ点ハ先方ノ了解ヲ得ス当方限リニ於テ修正シタル点ナルガ「ケ」ハ第三章国民ノ権利義務ニ於ケルpeopleナル語トpersonナル語ハ厳格ニ区別セラレ居リ現ニ極東委員会ヨリ之等ノ語ガ日本語ニ於テ如何ニ訳サレ居ルヤニ関シ照会シ来リ之ニ対シ総司令部ニ於テハ旧日本文草案要綱ニ基キ囘答ヲ発シタル次第ナリ右ハ極東委員会ノ何レカノ委員ガ此ノ点ニ関心ヲ有スル証左ニシテpersonナル語ヲ日本人ニ限定スル如ク訳スルハ適当ナラズト述ブ依ツテ当方ハ第十三条ニ関シテハ起草ノ際外国人ヲ除クコトニ当方ハ了解シ居ルガ如何ト質セバ「ケ」ハ本条ハ人種ニ基ク差別待遇ハ禁シ居ルモ国籍ニ基ク差別待遇ハ之ヲ禁シ居ラス従ツテ何故右ノ如キ修正ヲ必要トスルヤ了解ニ苦シムモ本条ニ関シテハ右ノ如ク修正スルコトニ別段反対セズ但シ其ノ他ノ箇条ニ関シテハ問題ナリト述ブ新日本文草案ニ於テハpersonヲ「国民」ト訳シタル箇所多カリシヲ以テ第三章全体ニ付一々日英両文ヲ照合ノ上訂正ヲ要求セラレタルヲ以テ当方トシテハ第三章ハ国民ノ権利義務ニ関スル規定ニシテ別ニ外国人ニ関スル規定ニ非スト了解シ居リタリト述ブレバ「ケ」ハ其ノ場ニ居合セタル「ゴルドン」少尉(日本語専門家)ニ確メタル上右ノ点ニ関シテハ本草案起案ニ際シ日本側代表ト相談ノ上本章中人ノ基本的権利(rights
of man)ニ関スル規定ハ外国人ニモ適用アル如ク決定セラレタルモノナリト主張シ若シ第三章ノ表題ガ之ニ相応セスト云フニ於テハ表題ヲ変更スルノ他ナシト述ブ
(第二十四条)本条中「何人モ」(every person)トアルヲ「凡ベテ国民ハ」(all people)と修正ス
(第二十五条)「何人モ」(all persons)トアルヲ「凡ベテ国民ハ」(All people)ト修正ス
(註)以上二箇条ハ之ヲ日本国民ノミニ限定スルモ差支ヘナシトノ理由ニ基ク
(第五十七条及第六十九条)(新)両条ヨリ「国際約定及協定」(International Conventions
and agreements)ヲ削ル
(註)第一次会談ニ於テ「ケ」ハ別ニ右ノ修正ニ対シ異論ナシト述ヘタリ
(第九十二条)「国会ノ定ムル選挙ニ於ケル総投票ノ--」(--all votes cast thereon at such election as
the Diet shall specify)トアルヲ「特別ノ国民投票又ハ国会ノ定ムル---」(--votes cast at a special
referendum thereon or at such--)ト修正ス
(註)右ニ謂フ選挙ガ第七十五条第二項ノ如キ議員総選挙ナルヤ特別ノ国民投票ナルヤ明瞭ナラサリシ為斯ク修正セリ
以上ヲ以テ一応ノ修正ヲ全部終了シ別添第七ヲ先方ニ提出シ新草案発表ニ付総司令部ノ了解ヲ得テ茲ニ本会談ヲ終了ス
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