史料にみる日本の近代 -開国から戦後政治までの軌跡-

[Douglas MacArthur's Letter to Prime Minister]

<参考> [Douglas MacArthur's Letter to Prime Minister]

※ この翻訳テキストは、吉田茂,マッカーサー〔著〕、袖井林次郎編訳『吉田茂=マッカーサー往復書翰集:1945-1941』(法政大学出版局,2000)<当館請求記号A99-ZU-G70>pp.335~336からの転載であり、書式等の点で展示史料と一致しない部分があります。



一九五〇年七月八日
日本国総理大臣吉田茂殿
親愛なる総理
日本政府の自治権を情勢の許す限り速かに回復させようとする私の既定方針に従って、私は日本国内の安全秩序の維持および不法入国と密輸入に対する日本海岸線の保護とに適当な機関を設置する法律の進歩的発展を想像していた。一九四七年九月十六日付書翰によって私は日本の全警察力を十二万五千に増員し、三万の国家地方警察を新設するとの日本政府の進言を承認した。
その際政府としては上記の警察力は将来の警察が要求するところを人為的に決定したものではなく、一つの適当な勢力をまず整えて、その周囲に近代的かつ民主的な警察制度を打ち樹て地方自治という憲法の原則と調和するよう警察責任の効果的な地方分散を行ってゆくものであるというにあり、私もまたこれに全面的に同意した。
その後の警察力の補充、装備、訓練は能率的に実施されて来た。自治的責任感は誠実に守られ、基本的な調整は注意深く進められ、警察と一般市民との関係は時の経つにつれて良好なものとなって来た。その結果、日本の国民は今日、政治のあらゆる面における法律の実施に当って、この警察機関を誇りとしている。事実、他の民主国に比して日本の警察力は人口の割にしては数も少く、また戦後どこの国にでも貧困その他の不幸な状態が見られるにもかかわらず、日本が平静と沈着を守り、近隣諸国のように暴力や混乱や無秩序に陥らないでいるのは、よく編成された警察の能率とよく法律を守る日本人の国民性とのおかげであろう。
この良好な状態を持続し、法の違反や平和と公安をみだすことを常習とする不法な少数者によって乗じられるすきを与えないような対策を確保するために、日本の警察組織は民主主義社会で公安維持に必要とされる限度において、警察力を増大強化すべき段階に達したものと私は確信する。
日本の沿岸や港湾保安に関する限り、海上保安庁は大いにその機能を発揮して来たが、不法入国や密輸を取締るため、日本の長い海岸線の保安を確保するには現有の海上保安力では弱体であることが明らかにされた。
従って私は日本政府に対し七万五千名から成る国家警察予備隊を設置するとともに、海上保安庁の現有海上保安力に八千名を増員するよう必要な措置を講じることを許可する。
これらの機構拡充に要する経費は国家予算一般会計の公債償還費のうちから計上さるべく、総司令部経理局においても従来通り技術上の忠告、助言を惜しまないであろう。

敬具
ダグラス・マッカーサー

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