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第5回科学技術情報整備審議会議事録

日時:
平成26年12月2日(火)午後1時53分から午後3時42分まで
場所:
国立国会図書館東京本館 総務課第一会議室
出席者:
科学技術情報整備審議会委員・専門委員 8名(欠席4名)
安藤慶明委員、喜連川優委員、倉田敬子委員、佐藤義則委員、竹内比呂也委員、戸山芳昭委員、中村利雄委員、村山泰啓専門委員
(安西祐一郎委員長、中村道治委員、藤垣裕子委員及び松浦祥次郎委員は欠席し、科学技術振興機構からは加藤治彦執行役が陪席した。)
館側出席者 16名
館長、副館長、(幹事)総務部長、調査及び立法考査局長、収集書誌部長、利用者サービス部長、電子情報部長、関西館長、国際子ども図書館長、総務部司書監、(陪席)総務部副部長企画課長事務取扱、総務部会計課長、収集書誌部主任司書、利用者サービス部副部長サービス企画課長事務取扱、(事務局)利用者サービス部科学技術・経済課長、電子情報部電子情報企画課長
会議次第:
1. 開会
2. 国立国会図書館長挨拶
3. 第四期科学技術情報整備基本計画策定に向けた基本方針検討部会の設置について
4. 報告及び懇談
 (1) デジタル時代の科学技術情報整備の現状と課題 ―第三期科学技術情報整備基本計画における取組を中心に―
 (2) 第5期科学技術基本計画の策定に資する総合的な政策の検討について(文部科学省)
 (3) 懇談
配付資料:
第5回科学技術情報整備審議会 次第(PDF: 13KB)
資料1 科学技術情報整備審議会関係者名簿(PDF: 15KB)
資料2 第四期科学技術情報整備基本計画策定に向けた基本方針検討部会の設置について(PDF: 26KB)
資料3 (報告1)デジタル時代の科学技術情報整備の現状と課題―第三期科学技術情報整備基本計画における取組を中心に―(PDF: 501KB)
資料4 (報告2)第5期科学技術基本計画の策定に資する総合的な政策の検討について(文部科学省作成資料)(PDF: 509KB)
総合政策特別委員会 中間とりまとめ(案)目次(PDF: 22KB)
基本計画専門部会の設置について(案)(PDF: 29KB)
(参考資料)
1 科学技術情報整備審議会規則(PDF: 101KB)
2 科学技術情報整備審議会議事規則(PDF: 90KB)
3 第三期科学技術情報整備基本計画(PDF: 48KB)
議事録:
1.開会
大曲利用者
サービス部長:
それでは、皆さまお揃いですので、まだ少し時間には早いですが、第5回科学技術情報整備審議会を開始したいと思います。幹事を務めます、利用者サービス部長大曲です。本日はお忙しい中、当審議会に御出席を賜りまして大変ありがとうございます。
安西祐一郎委員長から急用により本日の審議会に御出席できない旨の御連絡をいただきました。本日の進行は委員長代理でいらっしゃいます竹内比呂也委員にお願いしたいと存じます。竹内委員よろしくお願いします。
竹内
委員長代理:
竹内です。安西委員長が御欠席とのことですので、本日の進行を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。
それでは、ただ今から第5回科学技術情報整備審議会を開催します。初めに、事務局からお知らせがあります。よろしくお願いします。
大曲利用者
サービス部長:
事務局から委員の交代、本日の出席者等につきまして報告します。この度、文部科学省大臣官房審議官の安藤慶明先生が委員に御就任くださいました。どうもありがとうございます。よろしくお願いします。
安藤委員: 安藤です。よろしくお願いします。
大曲利用者
サービス部長:
本日は、日本学術振興会の安西祐一郎委員長のほか、科学技術振興機構の中村道治委員、東京大学の藤垣裕子委員、日本原子力研究開発機構の松浦祥次郎委員が所用のため御欠席されています。科学技術振興機構からは中村道治委員の代わりに加藤治彦執行役が御陪席くださっています。なお、喜連川委員は、所用のため3時半ごろには御退席の予定です。なるべく審議を順調に進めたいと思います。
また、この度、情報通信研究機構の村山泰啓先生に専門委員をお願いし、本日も御出席くださっています。どうぞよろしくお願いします。
村山専門委員: よろしくお願いします。
大曲利用者
サービス部長:
関係者名簿を資料1として配付していますので、御覧ください。
当館幹事は前回から異同ございません。なお、本日は、幹事のほか、大滝館長、池本副館長、審議会事務局の職員が陪席しています。活発な論議、どうぞよろしくお願いします。
 
2.国立国会図書館長挨拶
竹内
委員長代理:
ありがとうございました。それでは、開会に当たり、大滝館長に御挨拶をお願いします。
大滝館長: ありがとうございます。国立国会図書館長の大滝です。本日は衆議院選挙の公示ということで、大変忙しい師走の始まりですが、このお忙しいところ、去る7月22日開催の第4回に引き続き、本日の第5回科学技術情報整備審議会に御出席くださいまして、誠にありがとうございます。
前回の第4回審議会におきましては、私どもの第三期科学技術情報整備基本計画に基づく事業等の進捗状況について報告し、貴重な御意見を賜ることができましたこと、改めて感謝申し上げます。
前回にも申し上げましたように、この第三期計画期間は来年度末までとなっていますので、本年度は、次期の第四期計画策定に向けて準備を始める時期を迎えているところです。第三期計画策定に際しましては、当審議会から国立国会図書館の今後の科学技術情報整備の基本方針に関する御提言をいただき、館で作成しました情報整備の計画に大いに参考とさせていただきました。当時、当審議会からの御提言のとりまとめに当たりましては、審議会の下に基本方針検討部会が設けられ、部会での御議論の結果を審議会御提言の案として策定いただくことをお願いしましたが、その際は、部会長として、今ここにおいでの倉田委員、また、部会員として、喜連川委員が御尽力くださいました。改めて、御尽力に対し御礼を申し上げます。
さて、次期計画策定に当たりまして、今回も、当審議会からの御提言をお願いしたく、本日は、そのための新たな基本方針検討部会の設置及び構成を含めた進め方について、安西委員長から審議会にお諮りくださるということで議題に挙げています。その後、安西委員長が大変に急な御用務により御欠席となりましたので、本日は竹内委員長代理の下で御審議を進めていただくことになりますが、後ほど、この議題をお取り上げくださる際は、安西委員長からの御提案を事務局から申し上げて、御審議をお願いしたいと存じていますので、どうぞよろしくお願いします。
ところで、国の科学技術基本計画につきましても、次期計画に向けた検討が始められている状況にあり、内閣府に設置されている総合科学技術・イノベーション会議において策定される予定とのことであり、既に、関係各府省におかれましても、次期計画の重要事項に関する検討を始めておられると伺っています。本日は、文部科学省における検討状況につきまして、安藤委員に御報告をお願いしています。安藤委員は、11月25日付けの異動で研究振興局担当の審議官になられたばかりであり、本審議会の委員もお願いしたばかりですが、早速本日、御報告くださるということで大変感謝しています。
なお、国立国会図書館からは、現計画の下での全体的な進捗につきましては7月の第4回審議会で報告しましたので、今回は、次期計画期間も引き続き重点を置くことになると思われる事業等に絞って、現状と課題について報告します。本日の御懇談での御議論にお役立ていただければ幸いに存じます。
本日、委員の皆様から、率直な御意見を賜り、活発な御審議をお願い申し上げ、挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。ありがとうございました。
 
3.第四期科学技術情報整備基本計画策定に向けた基本方針検討部会の設置について
竹内
委員長代理:
ありがとうございました。それでは、会議次第の3に移ります。第四期科学技術情報整備基本計画策定に向けた基本方針検討部会の設置についてです。まず事務局から説明をお願いします。
 
(1)事務局説明
木藤
科学技術・
経済課長:
(資料2に沿って説明)
なお、部会の設置については、参考資料1、科学技術情報整備審議会規則第4条で設置について規定されており、参考資料2にありますが、議事規則第6条により、委員長が審議会に諮って設置することとなっていますので、安西委員長からはあらかじめ本日の審議会で部会の設置について諮るようお言葉をいただいています。また、同条第2項及び第3項により、部会員及び部会長については、委員長に御指名をお願いしています。以上、事務局からの報告です。
 
(2)設置についての議論
竹内
委員長代理:
ありがとうございました。今御説明くださったことについて、安西委員長の御意向を踏まえ、まずは部会の設置について諮りたいと思います。
ただ今の事務局からの説明への質問も含めまして、御意見がある方は挙手をお願いします。いかがでしょうか。
安藤委員: 部会を設置するという事柄は結構だと思うのですが、テーマについて質問です。一見したところ、かなり大きな方向性の内容を含む検討テーマになっています。部会では国としてどういう方向を目指すのかという大きな視点で議論するのか、国立国会図書館(以下「NDL」)としてどういう方向性で業務を進めていくのかを議論するのか、どちらと理解すればよいでしょうか。
竹内
委員長代理:
では、事務局からお答えくださいますか。
木藤
科学技術・
経済課長:
木藤からお答えします。事務局の想定としては、NDLの役割だけには限定せず、ここに挙げましたテーマに係る、国としての、あるいは学術界における課題の御議論をお願いいたまして、その中でNDLがどのような役割を果たしたらよいのかを焦点に入れた御意見を賜りたいと想定しています。図書館の役割だけに限らず、国全体の課題、状況についての御議論をお願いすることを想定して、このような、わりと大きなテーマ設定を考えています。
竹内
委員長代理:
安藤委員よろしいでしょうか。他に、部会の設置につきまして、御意見、あるいは、先ほどの説明、あるいは今の安藤委員からの御質問に対する事務局からのお答えも含めて、御質問、御意見等あれば挙手をお願いします。
中村利雄委員: 第三期の科学技術情報整備基本計画策定のときにも、今のようなお話がありました。そのときは「知識インフラ」という、大変大きなテーマで議論され、参考資料3にも「このような「知識インフラ」構築は、単独の機関によってなしうるものではなく、国立国会図書館を含む図書館、情報提供機関、研究機関、大学、学協会などの各種の電子情報資源を保有する機関の関与、協力によって可能となる」(2ページ)と書いてあります。
専門図書館協議会には、商工会議所、大学図書館、あるいは企業の図書館が入っていて、従来イメージしていたのとはかなり違って、広範な問題を取り扱うようになっています。
ということで、私は今のようなアプローチでよい、広範に扱って、どういう全体を構築するのか検討するという方向でよいと思います。
竹内
委員長代理:
ありがとうございました。前回の計画策定の際の議論も踏まえた、補足的な御意見をくださったと思いますが、その他に、御意見、御質問等ありましたらお願いします。
安藤委員: 後ほどの報告でも科学技術基本計画の検討状況に触れますが、今、情報基盤、つまり「知識インフラ」の構築ということで、ハード、ソフトなどいろいろな形での基盤づくりがテーマになっています。そうした「知識インフラ」という考え方は重要ですが、誰のための「知識インフラ」なのだ、といった、要するに利用や活用を考えた内容にするのも重要な視点だと思います。基盤という事柄だけ検討するのか、利用も含めて、今後の方向性も考えながら議論するのか、どこを見据えて議論すればよいでしょうか。これも委員の皆様の御意見も踏まえて決めるのでよろしいと思いますが、気づいたので申し上げました。
竹内
委員長代理:
では、事務局からお願いできますか。
木藤
科学技術・
経済課長:
はい。もちろん、そのあたりも是非御議論をお願いしたいところです。私どもは図書館ですので、利用のところも想定した御議論を希望しています。よろしくお願いします。
竹内
委員長代理:
安藤委員よろしいでしょうか。他に御意見等ありませんか。
加藤執行役: 学術情報流通の現状と課題については、文部科学省の学術情報委員会でも同様の議題で検討しています。また、外国雑誌のジャーナル問題はもう十年来の課題で、どうするか検討するために文部科学省に検討会が設けられておりまして、今年報告が出たばかりです。
科学技術振興機構(以下「JST」)でも、研究データのシェアリングについて、ここまでオープンにすべき、あるいはここからはクローズにすべきというポリシーの問題について委員会を作っています。内閣府に是非提言をしたいということで進めている委員会もあります。いろいろなところで有識者の方々が同様の議論を進めているというのも事実ですので、そういった試みとの連携をどうするかも踏まえて、御検討をお願いしたいと思っています。
もう一つ、補足として申し上げますと、「知識インフラ」というのは、私どもJSTでも構築していまして、科学技術情報基盤を情報の分析基盤として確立しようと今進めています。それとの連携も、是非部会の中で御検討をお願いしたい、というのが希望です。第三期科学技術情報整備基本計画にも、NDLとJSTと国立情報学研究所(以下「NII」)が連携してやるべきだという話が出ていたと思いますので、私どもの現状も是非聞いてくださればよいと思います。以上です。
竹内
委員長代理:
ありがとうございました。何か、事務局から今の意見についてありますか。
木藤
科学技術・
経済課長:
他機関との連携は、現行の科学技術情報整備基本計画でも大きな柱の一つです。どこかの機関が単独でやる、ということではなくて、今後ますます連携して、役割分担してやっていくことになると思いますので、是非手を携えていただきたいと思います。部会ではその意味での御議論もお願いしたいと思います。
竹内
委員長代理:
ありがとうございました。他にまだ御意見等ありますでしょうか。
大滝館長: 今の一連の応答を拝聴しまして、この審議会の基本的な役割は、特に国立国会図書館における科学技術情報の整備計画についての御検討にある、という位置づけをまず大前提として確認していただく必要性があると思いました。立法府に属する国立国会図書館の立場から、文部科学省を始めとするいわゆる行政において科学技術情報を御検討されている立場とは一線を画した役割分担の中で、こういう審議をお願いしているということがまずは前提としてあると考えています。
今、加藤執行役も御指摘くださったとおり、国全体の場で、様々な御議論がされています。委員にはやはり全体的な視野を広くもって、様々な御議論を十分に取り入れつつも、その中で国立国会図書館の役割はどうあるべきかをお考えいただき、国立国会図書館の整備計画に資する御提言をお願いしたいという趣旨と御理解いただきたいと存じます。各審議会との連携ですが、様々な行政府の検討機関において国全体として検討した成果が広く公開されていますので、それを取り入れながら、新たな視点での整理をお願いしたいと思います。
また、外との接点をお持ちの方ばかりがこの審議会の委員に御就任いただいておりますので、皆様それぞれの社会的な御活動の中で、当科学技術情報整備審議会の御議論、ここの場での視点を、外の場での御検討の際に注入するお役割も担っていただくことを通じ、国立国会図書館の今後の整備計画がより豊かな広がりを持たせていただけるように改めてよろしくお願いしたいと思います。
竹内
委員長代理:
ありがとうございました。委員長代理の立場でこんなことを申し上げるのは適切ではないかもしれませんけれども、前回、倉田先生が部会長としてまとめられた提言がお手元に冊子としてあります。その目次を拝見しますと、非常に広い議論をした上で、NDLが今後果たすべき役割についておまとめくださっています。おそらく、今回の部会におきましても、このような議論がなされるのではないか、と推測しているところです。よろしいでしょうか。
木藤
科学技術・
経済課長:
参考にお配りしているこの冊子が前回の提言ですので、どんなものだったのか御覧くださればと思います。
 
(3)設置に係る採決
竹内
委員長代理:
それでは、そろそろ御議論も尽きてきたかと思いますので、部会での検討事項の内容については、この後行われます懇談の中で引き続き議論があるかと思いますけれど、部会の設置についてまずお諮りしたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
出席委員全員: 異議なし。
竹内
委員長代理:
それでは、基本方針検討部会を設置します。どうもありがとうございました。
 
(4)部会委員及び部会長の指名
竹内
委員長代理:
引き続きまして、部会員についてですが、安西委員長から事務局に連絡は入っているでしょうか。
木藤
科学技術・
経済課長:
はい。安西委員長から御連絡を頂戴しています。部会の設置が決まった場合、部会員については、図書館や学術情報の専門家である竹内委員と佐藤委員、また、研究データの共有・保存・活用に詳しい村山専門委員のお三名にお願いできれば、と伺っています。
また、部会長は竹内委員にお願いしたいと承っています。
竹内
委員長代理:
安西委員長からの御指名ということですので、部会員は佐藤委員、村山専門委員、私の3名とし、部会長は私が務めさせていただきます。よろしくお願いします。
 
4. 報告及び懇談
竹内
委員長代理:
それでは、続きまして、お手元の議事次第に従い、4の報告及び懇談に移ります。報告への質問は、2件の報告が終わった後に、まとめて受け付けます。また懇談は報告と質問が終わった後に行います。では、まず報告1、NDLでの主な事業の進捗状況と課題について、事務局から御報告をお願いします。
 
(1)(報告1)デジタル時代の科学技術情報整備の現状と課題―第三期科学技術情報整備基本計画における取組を中心に―
大場
電子情報
企画課長:
(資料3に沿って説明)
竹内
委員長代理:
ありがとうございました。質問につきましては、後ほどまとめてお受けしますので、続きまして、次第4(2)にあります、第5期科学技術基本計画の策定に資する総合的な政策の文部科学省での検討状況について、安藤委員から御報告2をお願いします。
 
(2)(報告2)第5期科学技術基本計画の策定に資する総合的な政策の検討について
安藤委員: (資料4に沿って説明)文部科学省では、科学技術・学術審議会の下に総合政策特別委員会を設置し、調査検討をこれまで6回行っています。今後2~3回ほど議論をして、まとめに入りたいと思っています。お配りした資料「第5期科学技術基本計画の策定に資する総合的な政策の検討について」には年内を目途に中間取りまとめを行うとありますが、年をまたぐことになりそうです。メンバーはごらんのとおりです。検討の概要ですが、資料の2ページ目をご覧ください。まず社会経済の状況変化を踏まえるということです。人口の減少、社会の成熟化、グローバル化、ICTの急速な発展などを踏まえ、何が課題になるかを下にまとめました。人口減少と国際的な頭脳獲得競争の中、人材の数が頭打ちになるので、人材力を高めないといけないというのが1番目のポイントです。次に、多様な課題に対応していくため、スピード感を持って新しい価値の創出に結びつけることが必要だということです。それに、オープンイノベーションが本格化する中、国内外の様々な知識や技術を積極的に活用する重要性があります。4つ目は、国主導で保持すべきコア技術への的確な対応が必要であるということです。5つ目はICTの急速な発展に伴い、社会やサイエンスの在り方が大きく変化しているので、これらの変化に的確に対応していくことです。6つ目は、震災や研究不正で損なわれた信頼性の獲得に向けて取り組むことです。3ページは実績を書いたものです。これまでいろいろ進めてきた政策の結果、ノーベル賞の受賞者にみられるように、基礎研究力の世界的なプレゼンスは依然高いということです。また、新しい研究開発法人制度や国立大学の改革が一定程度進展しています。大学における産学連携活動も充実してきています。SPring-8やスパコン「京」など、大型の研究施設の共用開始も進んでいます。4ページ以降には課題を掲げています。まず人材に関する問題です。若手研究者の流動性は高いが、シニア研究者の流動性は低いということです。また、博士課程への進学者が減少しています。将来研究者になる人材として重要な方々ですので、それらの層を厚くしていくこと、活力を生かすことが重要です。セクターを超えた人材流動や国際的な人材流動が少ないことについて下の図があります。平成14年度と平成24年度ではセクター間の異動状況がほとんど変わっていません。施策は行っているものの、まだ十分に効果が出ていないのは反省すべき事項と思っています。また、女性や外国人など、多様性がまだまだ低いという問題があります。5ページにあるとおり、我が国の論文数のシェアは低下している一方で、中国が非常に伸びています。また、産学連携が小規模で、オープンイノベーションとは言っているものの、対応の遅れがみられます。イノベーションシステムを支える人材として、マネジメント人材、リサーチ・アドミニストレーターといった専門性のある人材が不足しています。大学の基盤的経費は大きく減少しています。6ページ以降には、第5期科学技術基本計画に向けた重要事項として8項目を挙げています。まず人材力を高めるためのシステム改革があります。博士課程に進学する魅力を増やすことや、若手研究者が能力を発揮できる環境を作ること、多様な人材の集まる場を作ること、人材の流動を促進することが1点目です。次にイノベーション基盤力の強化のため、その源泉として基礎研究・学術研究の強化をしないといけないので、改革を通じて強化していくということです。イノベーションシステムを支える人材の育成・確保も課題です。また、国の持続的成長と安全保障の基盤のため、国主導で先進的なプロジェクトを進めていくことを検討しています。資料には例がいろいろ挙がっていますが、更なる検討が必要で、これから議論を深めるという状況です。NDLの役割を考える上では、「急速に進化を続けるサイバー社会への対応」の箇所を念頭に置くべきではないかと思います。新しいサービスの創出に向けた研究開発、データサイエンスの推進、人材育成が重要になっています。サイバー社会については、情報がいろいろとデジタル化され、スマートフォンに代表されるように誰でも端末を持って利用できるような環境ができて、サイバー空間が自律的に運営され、いろいろなサービスが提供される中で、サービス提供という観点でどのように研究開発を進めないといけないのかという問題があります。あるいはこうした技術が社会的な問題を引き起こす可能性もありますので、そういった観点でも議論しないといけません。この問題については、今回ICT人材育成の遅れも認識しながら議論を進めないといけないと考えています。その他、研究不正行為への対応に代表されるような、信頼獲得に向けた努力を進めるということです。また、大学・国立研究開発法人の機能を強化し、生かしていくという議論を進めています。
次が中間とりまとめ(案)の目次です。2ページに「研究情報基盤の整備」があります。また、3ページには「サイバー社会を先導する研究開発の推進」があり、ここでも情報基盤の整備といったことがらが議論されています。
今の検討状況はこういったところですが、年明けには中間とりまとめを行い、検討結果は総合科学技術・イノベーション会議が引き継ぐことになります。3つ目の資料にあるとおり、総合科学技術・イノベーション会議のほうでも基本計画専門調査会を設置して議論を進めています。おおむね1年半を目途に調査検討の結果を取りまとめることになっています。
竹内
委員長代理:
ありがとうございました。それではただ今の2件の御報告に関しまして質疑を10分程度行いたいと思います。御質問のある方は挙手をお願いします。
中村利雄委員: 資料4の2ページ目にオープンイノベーションの話が出てきていますが、それについて、他の国との比較、我が国が他と比べて進んでいる、または遅れているといった具体的な問題意識はあるのかということ、次にそのページの⑤に「ICTの急速な発展に伴い、社会やサイエンスの在り方が大きく変化しつつある」とありますが、この③や⑤について文部科学省の審議会の中ではどのような御議論があったかということを教えてくださればありがたいです。
安藤委員: 今政権全体がそうですけれども、文部科学省ではイノベーションが重要と認識しています。昔は産学連携といった言葉でしたが、大学のシーズを企業に伸ばしてもらうことを目指しています。協力のための様々な仕組みやプロジェクトを進め、単一の企業ではなく、様々な企業に参加してもらい、まさにオープンイノベーションでやっていくという事業展開をしています。しかし、まだうまく進んでいない部分があって、知財の扱い等、十分にオープンイノベーションが進んでいるといった状況とはまだ思っていません。これから様々な方策を企業・産業界と連携しながら考えないといけないという問題意識でいます。海外とどういう関係になっているのかについては、今手元に資料がありませんのでお答えしかねます。
ICTは今の第4期科学技術基本計画の中で基盤的なものとして触れられていますが、その中ではICTを分野としてしっかり位置づけて取り組むというアプローチを特にとっていません。ICT人材の育成に十分な取組ができてきたかどうかは、検討課題と思っています。今の総合政策特別委員会の議論を進めている担当局の方でも、問題意識をもって進めていかなくてはならないと思っています。
特に、先ほど申し上げましたとおり、様々な技術の進歩もあって、社会の状況がサイバー社会に変わってきているという事実がありますので、この問題は中でも大事な課題として焦点をあてて議論しないといけないと思っています。
喜連川委員: まさに安藤委員からお話のあった第5期科学技術基本計画や、先日日本学術会議でも検討しているなど、各所でこの話題が今中心となっています。先ほど中村委員からも御指摘がありましたように、ICTの急速な変化というのはNDLでの「知識インフラ」にかなり強く関係する部分だと思います。
私ども情報プロパーの目で見ますと、インフラを整備するということに加え、情報技術のエッジといかに連動させるかというのが一番ポイントになってきています。つまり、政府調達には、予算要求から国際調達で1年以上の時間がかかります。そうすると、1年後に入ったものは、技術者からみるとかなり旧式に見えるということが多々あります。入れるシステムと研究開発するところをタイトバインドすることを目指していかないと、先ほどの資料にある時代感やスピード感にうまく乗っていかないと思います。
NIIが努力している機関リポジトリの中に博士論文を入れるよう法制度化されたわけですけれども、そのリーチは、Googleからアクセスされるものを1とすると、CiNiiからアクセスされるものはその3倍もあります。CiNiiのポータルサイトというものは、情報検索のプロが必死になって作っているものなので、どんどんサービスが向上していきます。NDLがNIIと一緒に、そういうところを全体にうまく融合して国家の力をうまくつけていくということをお考えくださったらよいと思います。
安藤委員が言われたように、ICTは第3期科学技術基本計画の場合は重点4分野で入っていたけれども、第4期科学技術基本計画の中では個別に取り上げられなかったということがあります。例えば、「最先端研究開発支援プログラム」でも30個のうち、いわゆるITが1個しか入っていません。これはバランス感からするとやはりまずかったと思います。グリーンとヘルス、つまり課題解決型ばかりに流れたのは悪くはないのですが、基盤を支えているITの人材力にもっと御配慮くださると今後の日本につながるのではないかと思います。
NDL、JSTとNIIはもっとIT技術をバインドさせるというのを一つポイントとして考えてくださるとよいと思います。
竹内
委員長代理:
それでは続いて懇談に移りたいと思います。
先ほど報告のあった、NDLの第三期基本計画の状況を踏まえ、平成28年度から始まる第四期基本計画の策定に向けて、NDLが行うべき取組などを中心に、御議論をお願いしたいと思います。
また、文部科学省から、次期科学技術基本計画の検討状況についても御報告くださったので、国の計画とNDLの計画の連動についても、御考慮ください。
それでは御質問、御意見、御提案がありましたら、挙手願います。
安藤委員: 議論していく上で、利用者を考えたとき、どのあたりに重点をおくのかというのが検討の際のポイントの一つだと思います。研究者が使いやすいインフラとするのか、または一般国民が使いやすいインフラとするのかということです。どこかに限定しろという趣旨ではなくて、ニーズがあって、そのニーズをふまえてそれにあった対応をとっていく、考えるということが必要だと思います。NDLが自らのニーズをどうおさえているのか、お聞きしたいと思います。
竹内
委員長代理:
今の御質問に対して事務局からお答えくださいますか。
大曲利用者
サービス部長:
我々としてどこに重点をおくかということですが、やはり研究コミュニティを中心におきますが、大学に所属する研究者コミュニティだけでなく、もう少し幅広く考えていこうと思っています。大学以外にも研究者が増えているので、そのあたりも含めて基盤を作っていきます。一方で社会的なアカウンタビリティも求められますので、それを果たせるように、研究者向けの高度なもの以外にも、国民にも利用しやすい、説明できるような仕組み、この両者を考えていかなければなりません。また、国会も我々のカスタマーの一つですので、国会が審議の中で間接的に国民にアカウンタビリティを果たせるような基盤を作らなくてはならないと思います。焦点が絞りにくい部分がありますけれども、そのあたりを考えながらやっていかなくてはならないと思っています。
大場
電子情報
企画課長:
補足します。平成25年に来館利用者に対するアンケート調査を行いまして、その結果を今確認しました。東京本館に限ってですが、研究職・技術職の会社員や公務員といった方が大体利用者の17パーセントくらいを占めています。また学生・大学院生も2割くらいを占めており、やはり研究者のニーズはかなりあると考えられます。ただその一方で一般の会社員や事務職の方も2割程度いらっしゃいますし、また報道関係の方も若干いらっしゃる。当館には様々な利用者がいらっしゃいますので、研究者を一つのターゲットとしつつも、幅広い方が使えるような枠組を作るのが一つの目標になると思っています。
竹内
委員長代理:
重要な論点と思うのですが、他の方から何か御意見はありませんか。倉田委員お願いします。
倉田委員: これはNDLの事業ですので、私は、日本国民全体を対象とするとしか言いようがないだろうと思います。利用者のニーズを知ることは重要ですが,ターゲットとなる利用者は誰かという観点からNDLの役割を規定するのはやはり難しいと思います。それよりは、綺麗事と言われるかもしれませんし、いろいろ制約条件はあるでしょうが、今は社会全体、学術研究全体がオープンに向かっている時期ですので、データそのものをオープンにし、あらゆる人のアクセスを確保するという方向性で、あらゆる人がその人それぞれの立場で、情報にアクセスできるような基盤を用意することにこそNDLの役割があると考えます。
竹内
委員長代理:
ありがとうございます。よろしいでしょうか。それでは今安藤委員から御提起のあった問題に更に御意見があればまたお願いしたいと思いますし、またそれ以外のことにつきましても御意見、御質問、御提案等がありましたらよろしくお願いします。
喜連川委員: 私どもの経験でお答えすると、文部科学省の研究振興局ではなく研究開発局の方で、地球環境のデータベースを作っています。これは村山専門委員が大変御支援くださっていますが、多分日本の中で一番大きなクレンズされた、キュレートされた科学データベースになっています。世界でもナンバーワンではなくて多分オンリーワンで、今Future Earthの中のドライバーとして使われようとしています。そこの経験で申し上げますと、実は専門家という立場で見ても、専門家あるいは研究者は実はほんのわずかな領域の研究者、研究領域しか見えていません。自分のところから少し横にずれると、倉田先生が言われた一般の方とほとんど同じぐらいの知識しか持っていません。領域が広くなっていきますと、どんどんそうなっていきます。例えば河川の情報は、水資源として河川を研究している方々は水の微物理など非常に専門的な情報を扱いますが、水質汚染のテーマであれば今度は根源的に医療系につながっています。そうすると医療の方々の話は、言葉が全然通じないぐらいに専門分野が遠く、変わってしまいます。専門家も他のところを見に行くと実はほとんど素人と同じぐらいですから、一般向けのものをきっちり作るのが重要です。ターゲットをどこかに限定するということではなく、むしろ学際領域が今後どんどん進んでいく中で、誰もがアクセス可能にすることはますます重要になるというのが私どもの印象です。
竹内
委員長代理:
具体的な事例を挙げていただいて大変助かると思います。ありがとうございます。村山専門委員お願いします。
村山専門委員: 初めて参加させていただいて、いきなり発言して恐縮ですけれども、今、基盤は誰でも使えるようにというお話がありました。私が見知った範囲で申し上げますと、EUでオープンデータの話が今非常に進んでいるというのは皆さんご存じかと思います。その中で大きな一つの柱として彼らはシチズン・サイエンスというものを挙げています。社会の知識の基盤を固めるための科学技術を確固とするため、あるいは不正や誤謬が将来なるべく起きないようにするには科学技術情報基盤が非常に重要だということでアメリカやヨーロッパでオープンデータが進められていますが、同時にそこには市民と一緒に人類の知識を確かめながら進めていくという背景思想も見受けられます。そういう意味では、知識インフラを構築して情報をオープンにすることで、専門家だけではなくて国民全体として科学、学術全般が推進されていく、あるいはそれによって社会全体が利益を得るという方向性と感じます。
竹内
委員長代理:
ありがとうございます。他に御意見等ありませんか。
喜連川委員: 先日英国大使館に呼ばれまして、イギリスの方を調査していくのにつきあってくださいということを言ってきたのですが、バーナーズ=リーというウェブを作った人で、日本国際賞もお取りになった方が肝いりで作ったODI(Open Data Institute)というものがあります。英国はInnovate UKというバジェット・フレームワークの中で動かしていますが、この横で何をやっているかと言いますと、Digital Catapultといって民側の刺激をやっています。先ほどのイノベーションという観点から言いますと、予算規模はもうそちらの方がはるかに大きいというのが現実です。
オープンデータといったとき、完璧にオープンにできるものはかなり限られています。イノベーションを起こすようなものは実はそれほどオープンにできないところを、リーガル系でロー・ライツ・マネジメントしながら進めているというところもあります。NDLの場合に、こういう世界観をフィードバックしながら今後進めるのは非常に重要だと思います。先ほど加藤執行役からもJSTでの活動が御報告されましたが、どこまでオープンにするのか、それが今、国益上極めて重要な事態になってきています。京都大学でもiPSのところはものすごくセキュリティガードを高くしています。他のところは情報漏えいがあっても、あそこはもう鉄壁のウォールを作っているわけです。それは国のためにそうせざるを得ないことは充分理解できます。ですから、オープンという言葉を使ったときにどういうコンテキストでそのオープンという言葉を使ったのかは慎重に検討する必要があるという気がします。
竹内
委員長代理:
加藤さんどうぞ。
加藤執行役: JSTは、ファンディング・エージェンシーとして研究活動に対して、ある一定の期間ファンディングしています。JSTの中でも、その期間、研究データをきちっと保管しましょうという流れになりつつあります。ただその時に、その保管した研究データをオープンにするかどうかはまず考えずに、保管をきちんとしていくということが重要で、それからその中でオープンにできるものだけをオープンにすればいいと考えています。SIPでもImPACTでも、今までの領域から全然違うところ、あるいは会社が違うところと連携して新しい研究開発を行っており、民間の知財の問題もありますので、研究データを全部オープンにするかというと、ほとんどオープンにできないと思います。ある一定期間、少なくともファンディングが終わるまでの期間はオープンにできません。論文に出した時には、論文に関係するデータその他については多分オープンにすることになるでしょうし、特許に関係するデータについてはオープンにするでしょう。それ以外のところはデータ・マネジメント・プランのようなものを作って、「ここをオープンにするべきだ。」と考えてオープンにする方向になると思っています。
一方で今私どもが行っている事業にNBDC(バイオサイエンスデータベースセンター)がありますが、ここでは例えば微生物の研究データを全部集めています。それを微生物の研究者の方々だけが使っているのではなく、実は環境の人、建築の人、土壌の人、そういった方がこのデータベースを使っています。言わば領域を超えてデータを使えることで新しい付加価値も出てきます。そこでは研究データをオープンにする意味があるということです。
それから、たんぱく質のデータについても同じで、たんぱく質のデータは日欧米で取り組んでいますが、日本が一つのコアになっています。たんぱく質のデータについては、そのデータを作ったことで関係するコストが1%になったと言われています。収録されているデータを用いて、たんぱく質に関係する論文を書き、そこにヴァリデーション・レポートを出して、OKをもらうと論文が出せるという仕組みがたんぱく質の分野ではできています。このようにオープンにする意味があるものがありますが、ファンディングの中でオープンにできないものも、少なくともデータは保管しようということです。
既にビッグデータの流れの中でデータの保管に必要な容量は非常に膨大であるといわれています。先日のシンポジウムでは、2008年でもうデータの総量は、既にストレージをオーバーしていると言われましたが、研究開発のデータはむしろ活用すべきものと考えて、いろいろと分析や研究に使わないといけないのかもしれません。
その後のアーカイブをどうするか、そこから外れた部分をどうするかについては多分NDLと一緒に検討していかないといけませんし、データがどこに分散していようが何らかの形で一貫して、一元化できるという形を連携して作れればいいと思っています。実現するには、競争的資金の数パーセントを基盤的経費に充ててやっていかないと難しいと思います。ICTの技術の進歩についていくためには、人材育成の推進も含め、そういうやり方でやっていく必要があるという提言を今いろいろなところでお話していますので、御参考までにお知らせします。
竹内
委員長代理:
戸山委員どうぞ。
戸山委員: 私は医学・医療系ですけども、基本的には日本の向かう方向はオープンの方向だと思います。今、異分野の融合ということを言っていますので、そのレベルがどうかというのはありますけれども、限りなくオープンの方向だとは思います。
ただ、そのオープンなデータの質の担保をどこがどういうふうにするのか、ただオープンだけで良いのかということは、非常に難しいですし、どこでオープンにするかしないかを線引きするかという2点が非常に難しいと思います。しかし、その2点の問題についてある方向性を出せれば、限りなくオープンの方向に向かうのがやはり日本の道だと思います。医学だけではなく、本当にいろいろな分野の人がそのデータを見て、新たな分野を作るべきだということです。質の担保はどこまで必要か、どなたがするかというのは、以前に喜連川先生とどこかでお話ししたことがありますが、そこが一番のポイントと思います。
竹内
委員長代理:
喜連川委員どうぞ。
喜連川委員: 今でもデータ・サイテーションをしましょうという流れがあります。今までは学術の最終アウトカムが論文でした。プログラムとデータと実験があって、論文は、最後に「こんなものになりました」と書くものでしたが、これでは駄目だというのが分かったのがSTAP問題だったわけです。そこで何をするかというと、データとプログラムと実験方法を全部アクセシブルにして、論文に書いてある結果を再現可能にするということが大変重要です。これまではITがそこまで追いつきませんでしたが、今は大分そういうことができるような状況になったと思います。データをサイトすることが増え、この人の作ったこのデータは本当に良かったよということで皆が使っていき、サイテーションがなされて、その中でデータの質について皆に「これはいい加減過ぎるよ」という評判が出たりするなど、自浄メカニズム、エコシステムがまわる時代が私は段々来ると思います。今我々もデータにDOI(デジタルオブジェクト識別子)を付けようという努力をしているという現状です。更に申し上げますと、データ・ジャーナルという、論文ではなく「こんなデータを僕たちは整備しました。」というジャーナルが元気になってきています。そういう意味で、戸山委員御指摘の質の担保という問題は極めて深刻ですが、一気には解決しない、だがグラデュアルにそういう方向に向かっていると思います。
竹内
委員長代理:
倉田委員どうぞ。
倉田委員: 先ほど私がオープンということを申し上げましたけれども、今喜連川委員が仰いましたように、それは生データを全部公開するということではありません。今まで本は本、論文は論文で、それとは別に研究データがある、それとは別にまた別の情報があるという世界だったわけですが、今それらがある意味では全部データになりつつあるのだと思います。もはや論文も完全にデータ化しています。形はもちろん論文として残っていて、論文はやはりまとまって読めるなど、それなりに便利で、いろいろと良いところがあるので当分は残ると思いますが、今や論文が一種の場になっていて、そこからいろいろなものにリンクしていくようになっています。例えばこういうファンディングを貰っているという情報と論文がリンクしなければ意味がないわけですし、今喜連川先生が言われたように、元のデータはデータとして確保されなくてはいけないし、それは査読の時にも使われるはずのものです。今Elsevierを始めとしてNatureやScienceなどの雑誌のeジャーナルの論文では、論文以外の様々なデータへのリンクが張られています。図表にも全部ばらばらにDOIが付き、全部見られるし、見ようと思えばそこからデータベースにも飛んでいくし、関連する文献にも、研究者がコメントしたTwitterへも飛んでいきます。今後もそういうリンクがどんどんうまく発展していくことにより、あらゆるものがつながっていく、そういう意味でオープンに向かって行くのだろうと思っています。
もちろんここの部分は公開しては駄目だ、ここの部分はあえて一定期間隠すなどは出てくると思いますし、そこは戦略、方策を考えるべきところだとは思いますけれども、そういう場の感覚を基本として踏まえた上で、先を考えなくてはいけないと思います。今までのように図書館は本だけ集めてればいいという世界はもはや終わったという認識の下で、どうしていくべきかを考えないといけないと思っています。
竹内
委員長代理:
ありがとうございます。佐藤委員どうぞ。
佐藤委員: 今の倉田委員の御発言に補足をしますと、例えばNatureやPLOSなどのデータ・ジャーナルでも、データそのものはそこのジャーナルにデポジットするわけではなく、分野別のリポジトリや機関リポジトリにデータを置くことになります。大きなデータを送ってもらってもジャーナルが困るということもありますし、最終的な責任をジャーナル側で全て引き受けるわけにはいかないということもあるのだと思いますが、分散的な環境の中でサイタブルであるということをどうやって維持できるかが課題です。国がきちんと関わった形でそれを保証していくことは国内的にも国際的にも非常に重要になると思います。
竹内
委員長代理:
ありがとうございます。村山専門委員どうぞ。
村山専門委員: 大変興味深い議論だと思います。これに関連して、何回かいろいろなところで言わせていただいているのは、ジャーナル投稿時に、「あなたの論文の根拠になっているデータを一緒にサイタブルなデータとしてオープン、あるいはアクセシブルにしてください。」というアナウンスメントが、ElsevierやNature、Springer、Wileyの論文誌のジャーナル・ポリシーとして出されていることです。私の身の周りの分野のジャーナルでも既に幾つかのジャーナルで、そういうアナウンスメントが出ています。置き場所がなければ「こちらへどうぞ」と書いてあります。それはドイツのリポジトリだったり、イギリスのリポジトリだったりします。そうすると日本の予算で実施した最先端の研究成果を国際的に認知されるために論文発表すると、同時に研究情報のコアのデータが全部海外のサイトに蓄えられていくことになります。この状況は果たして日本のために良いのか、悪いのかということが今後課題になります。それに対して、認証された、信頼できるデータリポジトリを国際的に整備していきましょうということが、研究データ同盟(Research Data Alliance(RDA))、ICSU世界データシステム(ICSU World Data System)といった国際的なコンソーシアム、委員会の中で部会を作って議論されています。そこにはThomson Reuters、Elsevier、Nature、Springer、Wiley等主なパブリッシャーの担当者が入ってきて、ビジネスモデルの検討をしているものもあります。
そんな中、日本でも科学技術データ保存の問題を考える必要があります。保存は、論文の形の科学技術情報ならばこれまで図書館が行ってきたのと同様のタイムスケールの保存だと思いますので、何十年、百年というスケールで考える必要があると私の周りでは感じています。
喜連川委員: そういう世界の動きがある中で、情報のアクセスには結局ネットワークを通っていかなければいけないものですから、SINETの重要性は御認識くださっていると思いますけれども、ネットワークだけで済む時代ではなくなっています。いわゆる計算リソースとしてのクラウドが脚光を浴びていますが、コンピューテーショナルパワーもさることながら、ストレージパワーの方に強く重要性が出てくると思います。村山専門委員や加藤執行役も言われたように、データを誰がどう格納していくのかということです。これは非常に難しい問題でして、いわゆるオンプレミスではなくクラウドベンダーと我々は議論をしていますが、通常のストレージ空間を維持しようとするとかなり膨大なコストがかかってくるので、いろいろなトリックを使って実現しないといけません。冒頭にも申し上げたように、ITの動きと連動させながらやっていかないといけません。アメリカであるクラウドベンダーが「うちは財政事情が悪いのでつぶれます。ついては皆さん2週間で必要なものはうちから持っていってください、それ以降は閉じます。」と急に言ってきたというような状況が起こっています。データの担保を今のITでどう実現していくかは、ITのエッジでもまだまだ難しい部分がたくさんあります。私どもNIIも、そういうところはJSTやNDLとも御一緒させていただければと思っています。
観点が違いますが、長尾館長のときに私が聞いた衝撃的なことは、データの利用についてのデータ、つまりこの本を誰が借りたかについて、「一定期間で全部捨てています」と言われたことです。私が昔図書館に行った時には、図書カードを見て、偉い先生が読んでいるから自分も読まなければと勉強していましたが、今は個人情報ということですべて捨てているわけですね。データベースへのアクセスを見ると、どんな意図で何が求められているかがよくみえます。
竹内
委員長代理:
議論が多方面にわたっていますけれども、本日は特に方向性を出すものではありませんので、様々な観点での御意見を頂戴できればと思います。
加藤執行役: JSTはNIIと密接に連携を進めています。例えば研究者情報を扱うresearchmapについてはNIIの新井紀子先生と作っていますし、DOIを付与するジャパンリンクセンター(以下「JaLC」)についてはNIIの武田英明先生が委員長になっています。先ほど倉田委員が言われた論文をデータとして扱うということですが、JSTではNIIから引用情報を全部いただき、日本国内の論文全てにつけるという仕事をしています。それに加えてScopusの情報も併せて分析できる体制が4月にできます。日本国内文献の引用情報をScopusの引用情報も含めて分析でき、これまでWeb of ScienceやScopusで出てきた論文の評価が、国内文献と合わせると実はこういう評価だと提示できるようになります。また、武田先生に御指導いただいて、JSTが持っている情報資源をすべてリンクトオープンデータ、RDFの形式にし、マシンリーダブルの分析、ビッグデータとしての分析ができる体制にしています。ディスクではなくメモリーが1テラバイト以上あるハードウェアで演算をして出すという基盤も使えるようになっています。
オープンという側面でいうと、JSTでは「日本化学物質辞書」を従来から作っていまして、約330万件の化学物質のデータがそこに入っています。それを来年度からCC-BYオープンにします。そうすると世界のオープンデータと連携をとっていけます。今はデータベースを作るに当たってお金を払って化学物質を使っていますが、他のオープンなデータと連携をとっていって、研究者が使えるようになるように取り組んでいます。倉田委員がおっしゃる方向で進めています。先ほどオープンにできるもの、できないものと申し上げましたが、知財に関連するもの、国益に関係するものはオープンにできないし、まだ研究途上のものをオープンにできません。その中で、データをオープンイノベーションにどう活用するのかを検討する必要があります。
JSTではNDLと連携して、資料の共同購入などを進めていますが、それだけでなくシステムも含めて、JST・NII・NDL三者連携でやることがたくさんあると思っています。
竹内
委員長代理:
ありがとうございました。他にいかがですか。
倉田委員: 先ほどのNDLの利用データですが、使うのはやはり難しいのでしょうか。NDL自身がお持ちのデータをオープンにできるものからオープンにする、もしくは利活用できるようにすることが考えた方がよいと思います。もちろんそのままの形では使えず、個人情報に当たる部分は処理をしないといけないだろうというのは分かりますが、ある資料が一件利用されたということ自体について分析をかけるのは無理なのでしょうか。
竹内
委員長代理:
事務局から御回答くださいますか。
田中
電子情報部長:
当館では利用記録をシステムで採取しており、登録者情報と利用情報がリンクされている形になっています。利用が完了次第、利用情報からそのリンクを外し、個人の特定ができない形にしています。利用情報を一か月くらいは維持して、業務統計を分析するのに使うというルールでやっていますので、個人情報の問題はクリアーしています。利用の記録としてそれを大量にためて分析することは、やろうと思えば可能です。
大場
電子情報
企画課長:
補足ですが、アクセスログも含めて、NDLはこういうふうにデータを使いますという了解を利用者から明示的に得ていません。NDLとしてどう使うかというポリシーを整備した上で実施する必要があります。若干検討は始めているところです。これからの課題としたいと思います。
竹内
委員長代理:
大滝館長よろしくお願いします。
大滝館長: 今の倉田委員の御指摘に関連することですけれども、これまでの図書館運営のノウハウの上でそれを発展させてきていますが、デジタル情報時代に本格的に入るという意味では、従来のやり方を見直す時期に来ていると考えています。今、館内で基本問題の検討として、全体的に見直し、様々な再検討をしているところです。例えば本の買い方、利用提供の仕方について、従来我々の持っていたデータを最大限に生かしながら、分析だけから将来を展望することはできませんが、自分たちの業務の取組を客観化して、新たな組立てをすべき時期ではないかと取り組んでいます。全国各地の図書館を通じてどのように国立国会図書館の本が利用されているのかというデータも、今までにない規模で調査しています。今、倉田委員が御指摘くださったとおり、一方において個人情報を厳格に守りつつ、他方で図書館が社会においてより効果的にその役割を発揮できるようにするための素材として、日常のサービスの成果から出るデータを用いて分析するということも積極的に進めるべきだと思っています。
佐藤委員: 先ほどの大場課長からの資料3の御説明では、DOIが重要だということでした。資料3の6ページの「電子情報資源の組織化と連携」というところで、今、公共図書館や研究機関のデジタルアーカイブのデータの多くと連携できていないという状況があり、そのひとつの課題として識別子の問題があるとのお話だったのですが、それについてお聞きしたい点が2つあります。
ひとつはJSTの状況で、1年ぐらい前にJaLCから、論文以外にDOIを付与するのは難しいと伺っていました。結局データや、例えばウェブ情報資源に対してもDOIを振れるようになっているかどうかが一つです。
次にJSTとNDLの両方にお聞きしたいのですが、識別子を振るということは保存に対して責任を持つのは誰かを明確にするということだと思います。ストレージという意味だけではなくて、長期的にきちんとアクセシブルな状態に保つ主体を明確にしないといけませんが、例えばNDLの中でデータを受け取って、NDLが責任をもって保存する枠組みであれば分かりますが、データの権利者が外にいた場合に、どういうことを想定しているかをお聞きしたいと思います。
加藤執行役: JaLCでは、今年の12月22日に最新バージョンをリリースする予定になっています。そのときには研究データも含めデータに対してDOIを振れるようにすることを目指しています。
もうひとつの御質問については、JaLCがDOIを保証しているわけではなく、コンテンツを持っている方々が登録しますので、保存の責任は登録するコンテンツをお持ちの方にあると思います。
田中
電子情報部長:
NDLもJSTとともにJaLCに参加してDOIを付与していますが、DOIを付与するのは、当館が発信の主体としてきちんと責任を持てる範囲に限っています。学位論文のうち、1990年代の14万件にDOIを振っています。これは当館が紙からデジタル化したものです。古典籍資料については出版社等が入っていないので、9万点に振っています。このほかNDLの出版物1万点という範囲です。
昨年7月からは、無料かつDRM(デジタル著作権管理)なしのオンライン資料の制度的収集を行っていますが、発信者がDOIを付けているオンライン資料については、格納するときにDOIがあるということを情報として付加し、いわゆるマルチプルレゾルーションという形で、出版社から刊行されているものとNDLが収集・提供しているものが同一であることを保証します。オンライン資料に別途当館がDOIを振るということは今は行っていません。
竹内
委員長代理:
資料3につきましては先ほど来議論がなかったので、質問してくださってありがとうございました。他にありませんか。もしも何も御質問等ないようでしたら、少し早く始めているので、予定の議事は以上で終了としたいと思います。事務局から連絡事項がありますので、お願いします。
木藤
科学技術・
経済課長:
本日は、貴重な御指摘、御提案をくださいましてありがとうございました。事務局から連絡事項があります。次回の審議会は来年7月頃を予定しています。具体的な日程につきましては、改めて御連絡差し上げますので、御協力よろしくお願いします。本日はどうもありがとうございました。
竹内
委員長代理:
ありがとうございました。本日は安西委員長の急な御不在ということで、私が委員長代理として議事を進めさせていただきました。いろいろと不手際があったのではないかと思いますが、皆様の御協力で円滑に進められたことを改めてお礼申し上げたいと思います。それでは本日はこれにて閉会とします。どうもありがとうございました。
(閉会)

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