2020年12月16日 著作権法における図書館関係の権利制限規定の見直しに関するパブリック・コメントへの意見の提出について
令和2(2020)年12月4日、文化審議会著作権分科会法制度小委員会は、著作権法における図書館関係の権利制限規定の見直しに関して「図書館関係の権利制限規定の見直し(デジタル・ネットワーク対応)に関する中間まとめ」をとりまとめ、同「中間まとめ」はパブリック・コメントに付されました。国立国会図書館は、同「中間まとめ」について、文化庁に以下の意見を提出いたしました。
「図書館関係の権利制限規定の見直し(デジタル・ネットワーク対応)に関する中間まとめ」に対する意見
(2)第2章第1節:入手困難資料へのアクセスの容易化(31条3項関係)
②制度設計等
(イ)「絶版等資料」について(中古本の市場との関係を含む)
- 〇送信対象である入手困難資料の範囲について、「法整備に当たっては、対象資料の範囲が過度に拡大することのないよう、法令において一定の担保を行うことも含め、検討を行う必要がある。」(中間まとめp.9)とされているが、入手困難資料の範囲が法令上明確化される場合には、柔軟な運用が損なわれて送信対象が現状よりも狭まってしまうことを懸念する。
(2)第2章第1節:入手困難資料へのアクセスの容易化(31条3項関係)
②制度設計等
(ウ)送信の形態
- 〇送信先の利用者(個人)による紙媒体でのプリントアウトが可能な形で送信するのではなく、当面はストリーミング(画面上での閲覧)のみとするのが妥当であると考える。理由は次のとおりである。
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図書館関係の権利制限規定の在り方に関するワーキングチーム(以下単に「ワーキングチーム」という。)における議論の段階から指摘してきたとおり、当館のシステムにおける技術的な制約上、プリントアウトを実現するためには送信先のパソコン等に印刷用の電子ファイルをダウンロードする必要があり、利用者(個人)による当該電子ファイルの違法な利用(転々流通など)を実効的に制御することができない。
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現行の図書館等への送信ではプリントアウトが可能となっているものの、権利者団体との間の合意事項に基づき、送信先の図書館等におけるデータの利用については、職員の関与やシステム面での厳格な要件を課すなど*1、違法な利用を可及的に抑止するための運用を行っている。このような権利者団体との協議の積み重ねは今後も尊重すべきと考えるが、利用者(個人)に対して同じ要件を課すことは現実的でないにもかかわらず、利用者(個人)によるプリントアウトまで認めることには懸念が残る。
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ストリーミングのみであっても、エンドユーザーである個人は、自宅等からいつでも入手困難資料にアクセス可能なため、プリントアウトができなくても必要な情報の参照等に大きな支障は生じないと思われる。
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- 〇利用者(個人)によるプリントアウトを可能とする場合、その範囲を著作物の一部分までとすることは、実効性が担保できないと思われる。仮に当館から送信された入手困難資料について全部のプリントアウトを許容するのであれば、著作権法第31条第1項第1号の複写サービスについても、入手困難資料の場合には全部の複写を可能としなければ、当館のサービス上の均衡を著しく欠くことになり、混乱が生じる懸念がある。利用者(個人)によるプリントアウトを可能とすることは、これまで関係者間での協議に基づく各種のガイドライン等に沿って解釈・運用されてきた同号の「一部分」要件が、同条3項に引きずられる形で崩れる結果となりかねず、関係者間の信頼関係に影響が及びかねないことを懸念する。
以上
- 「国立国会図書館のデジタル化資料の図書館等への限定送信に関する合意事項」(平成24年12月10日)3(3)(4) <https://www.ndl.go.jp/jp/preservation/digitization/digitization_agreement02.pdf>