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令和4年度第1回 国立国会図書館活動実績評価に関する有識者会議 議事概要

1.開催日時

令和4年7月1日(金曜)13時29分から15時30分まで

2.開催形式

Web会議システムによるリモート開催

3.構成員

  • (座長)糸賀 雅児(慶應義塾大学名誉教授)
  • 只野 雅人(一橋大学大学院法学研究科教授)
  • 田辺 国昭(国立社会保障・人口問題研究所所長)
  • 山口しのぶ(東京工業大学環境・社会理工学院教授、国連大学サステイナビリティ高等研究所所長)(欠席)

4. 国立国会図書館出席者

片山副館長、山地総務部長、上保総務部副部長企画課長事務取扱

5. 主な会議内容

令和3年度国立国会図書館活動実績評価(案)について国立国会図書館(以下「NDL」という。)から説明を行った後、有識者会議構成員(以下「有識者」という。)による意見交換を行った。意見交換の概要は、以下のとおりである。

事業分野1について

有識者:
評語の「目標を達成した」に異議はないが、三点お尋ねしたい。一点目は、総選挙があるときには調査の件数が減ると以前に伺って納得したのだが、内閣提出法案の数と依頼調査の件数は関係があるものなのか。二点目はG7議会調査機関会議について、「新型コロナウイルス感染症拡大下での働き方や国会サービス等について意見交換を行った」とあるが、特に注目すべき他国の取組があったら知りたい。三点目は、指標5「国会議員の調査サービスの利用率」が平成30年度から次第に減少傾向にあり、令和3年度は85%になっている点について、総選挙により新人議員が増えたことが影響しているのか。なお、総合調査のテーマは実に良いものを選んでいるというのが率直な感想だ。「変化する国際環境と総合安全保障」というのは、現在広く関心を呼んでいるテーマであり、また、科学技術分野についてもゲノム編集技術、脱炭素、量子情報技術というのは最先端の三つを選んでいるので非常にアンテナが良いと思った。

NDL:
まず一点目の内閣提出法案数の影響についての御質問だが、依頼調査件数の減少には国会の開会日数も関係していると考えている。昨年度はオリンピックがあったため常会が延長なく終わった。秋の臨時国会も例年に比べてかなり短かった。例えば、平成30年度中の国会開会日は224日であったが、令和3年度は181日であった。閣法の提出件数や審議状況は国会の開会日数と関係しており、説明文はこのことを指している。二点目については、新型コロナウイルス感染症が拡大した1年目(令和2年)、当館は閉館して一般利用者向けの来館サービスを休止する一方、国会サービスは通常どおり継続したのに対し、例えばアメリカの議会図書館はかなり長い間閉館し、議会向けのサービスも登庁せずに遠隔で行っていたようだ。各国では、当館と異なり、コロナ禍の比較的厳しい状況でオンライン中心に議会のサポートを行っていたようである。三点目については、通常、選挙の後、新規当選した議員の先生方に当館の説明をして利用を開始していただいており、御推測のとおり昨年度の選挙による入れ替わりも利用率に影響したと思われる。今夏の参議院選挙後も、積極的に利用説明を行っていきたい。

有識者:
関連して、議員提出法案数と依頼調査件数についてお尋ねしたい。両者の数は連動するのか。

NDL:
令和3年度の議員提出法案数は例年と大きく変わることはなかった。また、議員立法に携わっている先生からそのテーマについて立案段階から掘り下げた質問など非常に多くの依頼が来ることはあるが、全体としての依頼件数に大きく影響するのは内閣提出法案の審議状況であり、閣法の提出件数が影響する。

有識者:
議員が自分で図書館を使って調べて、その結果様々な立法を提案するという関係が数字に表れていれば、地方議会でいう条例の提案や議会図書室の活性化という問題にも通じると考えていたのでお尋ねした。

有識者:
依頼件数の減少にコロナの影響はどれくらいあったのか。令和2年度より令和3年度の方が減っているため、コロナの影響はあまりなかったように見える。先ほど海外の議会図書館では閉館期間にリモート対応したという話があったが、NDLでも遠隔などで対応した結果、件数への影響が抑えられたのか。

NDL:
当館は、令和2年度にコロナの感染が拡大した第一波の際は、閉館して来館サービスを休止した。また、職員の登庁については第一波の時に1か月ほど半舷体制を採った。しかし、その後、テレワーク環境を整えて、業務の特性に応じてテレワークと出勤を併用しながら業務を継続した。国会サービスについては、当館ならではの調査は、やはり蔵書の豊かさが基盤になっており、もちろん電子ジャーナルやオンライン資料もテレワークで使えるようにはしたが、それだけでは調査が十分にできないことが明らかになった。そのため、第一波の対応以降は、テレワークも若干併用しながら、基本は出勤して仕事をしていたというのが当館の国会サービスの実情である。

有識者:
実際に資料を手にして直接見ないと調査できない部分がかなりあるということだと思う。現在テレワークが奨励されているが、NDLの場合、テレワークで対応できる部分も以前に比べれば増えたものの、必ずしもすべての資料がオンラインで利用できるわけではないのでやはり難しいという状況も分かった。

有識者:
昨年の有識者会議で、政策セミナーは開催回数だけでなく参加者の人数も評価の対象に加えたらどうかという指摘があったはずだ。今回の評価案では、脚注で人数が記されており、良いと思う。また、3か年平均基準型の指標の場合に、例えば事業分野1の指標4「政策セミナーの開催回数(オンライン開催を含む。)」は(目標値が)14~16回というように、平均値の±10%を具体的な値の範囲で示している。事業分野2以降も同様にこの書き方になっており、大変理解しやすく、評価の達成/未達成が分かりやすくなった。

事業分野2について

有識者:
事業分野2では指標13「東京本館で受け入れた和図書の受入れから書誌データ校了までに要した日数」だけが未達成ということだが、これはコロナ禍の影響がまだ残っているということか。

NDL:
コロナの影響が残っていたということもあるし、令和3年1月から日本目録規則の新版(2018年版)を当館の書誌作成に適用開始したことも影響したとみている。書誌データをより詳細に作成する対象の資料群である和図書については、新しい規則の運用開始に伴い特に作業負荷が高まっていた。なお、指標13は調査対象期間を絞ったサンプル調査であるが、調査時点である12月以降、年度末にかけて日数は短縮している。

有識者:
そのあたりの経緯について、補足説明があった方が良い。

有識者:
二点ほど伺いたい。一点目は、指標9「国内出版物の納入率」の「②逐次刊行物」について。納入率が平成30年度の88%から令和3年度の93%へ大きく上がっているが、この理由は何か。図書と違って逐次刊行物の納入率を上げるのは難しいという説明を以前に聞いたが、今回、数字が上がった要因を知りたい。二点目は、指標13に関して。指標13は和図書の書誌データ作成に関するものだが、指標14「東京本館で受け入れた和非図書(録音・映像資料)の受入れから書誌データ校了までに要した日数」、指標15「索引誌当該号の受入れから雑誌記事索引のデータ校了までに要した日数」を見ていくと、基本的にコロナ禍の影響をあまり受けておらず、むしろ雑誌記事索引に関しては短縮しているという状況である。和図書だけ数字が回復しない理由は何か。

NDL:
一点目の逐次刊行物の数字が良くなっているという点については、脚注9にあるように、以前は『雑誌新聞総かたろぐ』(メディア・リサーチ・センター)というソースデータを用いて納入率を算出していたのだが、当該目録が2019年版を以て休刊してしまった。そこで令和2年度以降は「雑誌コード管理台帳Web」(日本出版インフラセンター)をソースデータとして、納入率の計算をしている。したがって、納本の実態はあまり変わっていないが、何に対する割合という時の分母が小さくなっており、見かけ上の収集率が良くなっている。二点目は、資料群によって整理の日数が違うという話かと思う。指標13の和図書は、タイトル数も多く、従事する職員数も多いため、そこで遅延が生じた場合には回復に時間がかかる。逆に規模が小さい指標14、15の資料群については調査期間までに業務がなんとか回復できたということである。コロナの影響で縮減した業務は複数あるが、最も物量・処理量が多い和図書に関する業務は一旦縮減すると速やかな回復が難しいというのが実情だ。

有識者:
今の説明のうち、特に前半の逐次刊行物の納入率についてはNDLから説明があったとおりと推測していた。つまり『雑誌新聞総かたろぐ』は、NDLが収集していないものもカバーしてきたが、「雑誌コード管理台帳Web」に登録のあるタイトルは、NDLの収集対象になっているものと比較的一致しているということだろう。『雑誌新聞総かたろぐ』は地方出版物なども含んでいたため、これを引き合いに出して比較をすると納入率は下がるという理解でよいか。

NDL:
御指摘のとおりである。未収資料の督促は丁寧に行っているが、出版物の網羅的な捕捉は難しい。やはり出版界に協力していただくことが重要になる。令和2年度以降は日本出版インフラセンターに協力していただけることになったので、それで把握できる雑誌は集めていくということを心掛けている。

有識者:
指標8「国内出版物受入資料点数」は出版点数によって変動するという注記がある。令和2年度はおそらくコロナの影響で減少したのではないか。令和3年度もあまり回復していない印象だ。全体的な出版の傾向として電子出版物にシフトしているのか。そうだとすると収集方針にも影響するのではないか。

NDL:
御指摘のとおりである。出版そのものはデジタルを活用するようになっている。様々な理由で従来どおりの紙の出版や流通が続けられなくなっているようだ。物流はコロナの影響を大きく受けた。印刷にかかるコストも大きい。NDLとしては、出版物の総体はデジタルと紙との両方で構成されているということに改めて留意し、その総体に対して収集保存できる範囲を拡大していくことが課題だ。一歩ずつ進めているのが実情である。

有識者:
事業分野2の評価結果の根拠説明の2番目に、「当初からネットワーク上の電子媒体として刊行されたオンライン資料について、雑誌記事索引への採録を本格的に開始した」とある。当初からネットワーク上の電子媒体として刊行された雑誌のうち、おおむね何割くらいが雑誌記事索引に採録されているのか。また、当初はネットワーク上の電子媒体ではなく、もともとは紙媒体だったものが途中から電子媒体に切り替わったものについて、雑誌記事索引に採録していないのか。多くの学会誌が、ここ数年で紙から電子に移行しており、どのくらいのタイトルが紙から電子に移行し、そのうち雑誌記事索引でカバーされているものがどの程度なのかに関心がある。

NDL:
今把握している範囲の数字を申し上げると、「雑誌記事索引データ(オンライン資料編)収録誌一覧」の令和4年1月時点のタイトル数は184タイトルである。[※紙媒体から電子媒体に切り替わった雑誌と、電子媒体で発刊された雑誌の双方を含めて184タイトルである]

有識者:
そうするとごく一部だということだろう。

NDL:
雑誌記事索引への採録開始に当たり、電子媒体の中で何が対象にできるのかということをまず検討した。紙から電子に切り替わった資料のうち、有償等オンライン資料として刊行されているものは、これまでのところ制度収集の対象外であり、館として収集できていなかったため、手の出しようがなかった。したがって、国立国会図書館インターネット資料収集保存事業(WARP)により収集できている電子ジャーナルを雑誌記事索引にどこまで採録できるか検討した。採録対象のタイトルは、紙・電子共にNDLホームページに掲載しているが、電子は紙に比べて大きな集合ではない。しかし、紙から電子に切り替わるもの、創刊から電子で刊行されるものが増えるに従い、それらをきちんと雑誌記事索引の中に盛り込むことはNDLとしては悲願であったので、何とかWARPで収集されたものについては実現したのは進歩だったと思う。

事業分野3について

有識者:
まず、「目標の一部しか達成できなかった」という評語は厳しすぎないだろうか。指標31「イベント」の「①開催回数」等が未達成であるが、コロナ禍でのイベント実施は無謀と言えば無謀であり、未達成でもやむを得ないと考える。ほかに、指標30「レファレンス」の「⑤図書館経由文書レファレンスについて、文書受理から回答までに要した日数」と指標22「遠隔複写」の「④インターネット経由申込複写について、受理から発送までに要した日数」の二つが未達成であるが、これもコロナの影響が残っていたということなので許容範囲という気がする。ただ、自分に厳しいことは悪いことではないので、評語の変更は求めない。次に、数値の上がり方や下がり方から、いくつかの傾向が見て取れる。一つは、インターネットを通じて提供されるサービス群が、明らかに増加傾向にある。増加率もかなり大きくなっている。二つ目に、紙とデジタルの間で、利用者がどちらを使うか迷っていることが推測される。令和2年度はコロナ禍が深刻でデジタルに頼らざるを得ないところがあったが、令和3年度になり、やはり紙の方が良いとなって数字が回復してきたものがある。例えば指標23「図書館等への貸出し」の「①貸出点数」などはリアルなものが増えている。つまり、瞬間的、一時的にデジタルに走り、やはり紙に戻っていったというものもこの指標の動きの中にいくつかあると思っている。三つ目に、デジタルに走り、本来であれば紙に戻るべきなのかもしれないが、瞬間的に増えた業務が令和3年度まで引き続き増えたままのものがある。指標22「遠隔複写」の「④インターネット経由申込複写について、受理から発送までに要した日数」はその典型だと思うが、業務量が増えたままで高止まりしてしまっているというのはある意味戻り切れなかったものだと感じる。このような数字の動き方を、それぞれどのくらいの規模感で捉えているか、NDLの感触を教えてほしい。どうもデジタル一辺倒で行くだけでもなく、コロナ禍の一時的な緊急避難でデジタルに走った人が、やはり紙が良いと戻っているところも見られるので、そのあたりの考え、感じようがあれば教えていただければと思う。

NDL:
一点目の「厳しすぎるのではないか」という御指摘に感謝する。ただし、数字に照らし、評語はこれとして致し方ないと思っている。二点目については、全国の図書館が閉館していたり、NDLも閉館期間があったり予約制をしたりしているために、紙を使いたいが使えない利用者が多くいたのが令和2年度で、一度はインターネットに流れたものの、インターネットでカバーされている部分はまだ少ないために回帰が起きているというところだと思う。しかし、コロナ禍を経て、NDLは画期を迎えている。まず、デジタル化の大きな補正予算が付いた。デジタル化資料の図書について言えば、従来は基本的に1968年までに受け入れたものまでしかデジタル化できていなかったが、令和2年度及び令和3年度の補正予算で1969年から1987年までに刊行の和図書はほぼデジタル化できることとなった。これにより、昭和に刊行された和図書はほぼデジタル化が終了する。また、著作権法が改正され、従来は図書館までしか送信できなかった絶版等の理由で入手困難なデジタル化資料が、個人送信できるようになった。令和2年度補正予算でデジタル化した資料は、手続きを経て、入手困難資料は来年から図書館送信と個人送信が可能となる見込みである。このような大きな変化の影響が来年から本格的に見えてくる。そのような変化の中で、遠方に住んでいる方を含め、どこまで国立図書館らしいサービスができるようになり、NDLに来館せねばというニーズがどう変化するかに注目している。今はまだデジタルへのニーズがあっても応えきれていない部分があり、従来型のサービスに利用者も戻りつつあるが、大きな変化が出てくるのは来年以降ではないかと考えている。

有識者:
指標27「国立国会図書館デジタルコレクション」の「②うち、インターネット提供数」、これは正確には「インターネット提供できる対象の数」であり、「実際にインターネットで提供した数」ではないという理解でよいか。言葉としては、「提供対象数」か「提供可能数」という意味合いではないか。

NDL:
御指摘のとおり、提供可能なコンテンツ数である。「国立国会図書館内限定」、「図書館送信・個人送信」と並ぶ区分である。表現については検討させていただく。

有識者:
指標22「遠隔複写」の「④インターネット経由申込複写について、受理から発送までに要した日数」が未達成で、それに対して指標23「図書館等への貸出し」では「②受理から発送(又は謝絶)までに要した日数」の目標を達成できている。この対比はどういうところから来るのか。遠隔複写の場合は時間がかかってしまった。それに対して、図書館への現物の貸借はほぼ達成できている。これは業務の処理として何か違いがあるのか。

NDL:
図書館間貸出しは、書庫から出納してきて担当業者が発送業務を行うだけで比較的シンプルだが、複写は、複写業者が複写箇所をコピーして発送するのにそれなりの作業がいる。また、コロナ禍で来館サービスを縮減したために、複写業者が人員削減等の措置を取らざるを得ない状況が生じたことも、複写に要する日数が大きく増えた要因である。来館サービスの状況がコロナ以前の水準に戻ってきたら、状況は変わってくるだろう。

事業分野4について

有識者:
感想になるが、国の間で物理的な移動ができなくなると、オンラインで会議を行うため、国際交流がかえって盛んになる。各国の議会図書館、国立図書館でも同様と見ている。交流の仕方、種類が増え、良いことと思う。

有識者:
事業分野4は評価指標が指標34「図書館員向け研修(集合研修/遠隔研修/講師派遣)」の「①実施件数(集合研修/遠隔研修)」だけでよいのかどうか。これは前回の3月の会議で、令和4年度の評価の枠組みの時にも申し上げており、次年度以降検討していただきたい。指標34「図書館員向け研修(集合研修/遠隔研修/講師派遣)」と、指標37「NDLサーチ」のデータ数や指標38「ジャパンサーチ」のデータ数というのは、指標の性質、性格がだいぶ違うように思うので、ほかの事業分野同様、評価指標が複数あった方が良いように思う。 次に、指標38「ジャパンサーチ」について、「①累積データ数」が約2,500万とあるが、これは以前の会議でメタデータの件数と聞いた。データや元のコンテンツのタイプ別の内訳は出てこないのか。単にメタデータでもジャパンサーチの場合には様々な機関のメタデータを含むだけに、書誌データもあればそうではないものもあるはず。2,500万という全体の数字よりは、内訳がある方が良いように思う。累積データベース数も、170という数字だけ示されても、どのようなデータベースか分からない。今後、事業分野4、特にデジタルシフトの中ではそれなりに重要な位置を占めていくだけに、もう少し内訳が分かってきた方が、データの増え方もどのような意味を持つかが理解しやすくなるのではないか。

NDL:
御指摘の点は、数値だけでなく記述で補足するなども含めて検討したい。

重点事業に係る事業分野①及び②について

有識者:
重点事業に係る事業分野については、指標としては、既にこれまでの四つの事業分野のところで出てきたもののいくつかを事業分野①と事業分野②に振り分け、それによって評価を行うことになっている。この枠組みは、我々としては既に承認した枠組みであり、これに基づいて令和3年度の実績を評価することになる。重点事業に係る事業分野については、これまでの事業分野1~4にあったような、評語による表現は採らないのか。

NDL:
今回の活動実績評価(案)の冒頭の説明で、「重点事業に係る事業分野については、その達成状況を総合的に判断し、定性的に評価することとし、関連する評価指標又は参考指標を参照の形で補記する」としている。これに沿って、今回は事業分野ごとに定性的な表現で評価した。最終的には、5年間のビジョン全体の取組状況として評価することになる。

有識者:
確かにそういう枠組みを既に承認している。ただ、これまであった四つの事業分野を貫くような形で重点事業に係る事業分野があるので、これはこれで評語らしきものがあってもよいのではないか。来年度以降に検討していただきたい。

有識者:
ユニバーサルアクセスの実現とデジタル化に関しては、非常に進行しており、重点事業に据えられたものに対してきちんと対応されていると感じた。二点お尋ねする。一点目は、指標27「国立国会図書館デジタルコレクション」の「③アクセス数」や「④うち、インターネット経由のアクセス数」が、令和2年度に大きく増えて、令和3年度に減っているのはどういうことか。二点目は、視覚障害等の理由で読書に困難がある利用者向けに学術文献のテキストデータの製作支援を行ったという点について。これは、前段に記載のある有識者や関係団体から成る検討会において、学術文献への要望が大きいことによるものか。研究者としては非常に嬉しくはあるが、例えば小説の方を先行してほしいとか、ほかに読みたいものがあるといった意見はないのか。

NDL:
アクセス数減の確かな原因は不明である。通常、アクセス数については、明らかに把握できたクローラによるものは除外しているが、令和2年度に急増したアクセス数の中に把握できていないクローラがあった可能性もあるが、定かではない。令和2年度の巣ごもり需要の影響も明確には把握できていない。二点目、読書バリアフリー関係の取組に関しては、検討会を開催して報告書を作成したことと学術文献のテキストデータ製作とは異なる取組である。検討会については、読書バリアフリー法が制定され、国全体で読書バリアフリーに取り組む中で、図書館が導入する電子図書館サービス、電子書籍貸出サービスが、読書バリアフリーにとっても役に立つものになるよう、どのような電子図書館サービスの特徴や機能があるとよいのか、障害当事者、出版関係者、図書館等とともに考えていくために検討会を開催したものである。世間一般に流通している電子書籍がアクセシブルなものになっていくことを促進していこうとする取組の一つである。報告書は今年度に入って公開した。後段の学術文献のテキストデータ製作については、事業分野3にも掲出しているが、NDLでは従来、学術文献録音図書を製作しており、カセットテープやCDといった形で作成してきたが、令和3年度からテキストデータでの製作も本格的に開始した。なぜ学術文献かというと、視覚障害者の方ももちろん小説や技能系の書物に対するニーズは非常に強いが、点字図書館や他の図書館とNDLとの棲み分けをしていく時に、NDLとしては学術文献を製作することになったという経緯がある。

有識者:
アクセシブルな電子書籍の図書館への導入促進について、事業者ごとのフォーマットの違いがあり収集が難しいと以前に説明いただいた。PDFなどは扱いやすいが、それ以外の一般に広く流通しているような事業者のフォーマットへの対応はやはりまだ難しいのか。

NDL:
フォーマットについては、様々な標準化への取組がなされているところであり、EPUBアクセシビリティと言われているものの、ISO化・JIS化なども進んでいる。検討会では、電子書籍自体のフォーマットではなく、図書館サービスとして提供する時の使いやすさという見地から主にビューアや検索画面のアクセシビリティの検討をしている。先ほど申し上げたとおり、読書バリアフリーは国全体を挙げての取組であり、総務省、経済産業省など様々な関係省庁でそれぞれ標準化への取組もなされている。

有識者:
重点事業に係る事業分野①「ユニバーサルアクセスの実現」は、NDLだけが取り組むのではなく、全国の公共図書館や大学図書館も同じ方向で進んでいき、NDLはそれを後押しする役割が大事ではないか。令和3年の著作権法改正における図書館関係の権利制限規定の見直しで、公共図書館や大学図書館などの「特定図書館等」が、複写サービスと同じ範囲で、図書館資料のメール送信等を行うことが可能になる。補償金を伴うという点がNDLによる絶版等資料の個人送信の場合と異なるが、そこをぜひ早く実現できるよう、NDLとしてほかの国内の図書館に対する後押しもぜひ評価の観点に入れていただきたい。

有識者:
それでは、基本的には、令和3年度国立国会図書館活動実績評価(案)については原案を了承したい。よろしいか。
(異議なし)

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