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令和4年度第2回 国立国会図書館活動実績評価に関する有識者会議 議事概要

1.開催日時

令和5年3月2日(木曜)13時25分から15時40分まで

2.開催形式

Web会議システムによるリモート開催

3.構成員

  • (座長)糸賀 雅児(慶應義塾大学名誉教授)
  • 只野 雅人(一橋大学大学院法学研究科教授)
  • 田辺 国昭(国立社会保障・人口問題研究所所長)
  • 山口しのぶ(東京工業大学環境・社会理工学院教授、国連大学サステイナビリティ高等研究所所長)(欠席)

4. 国立国会図書館出席者

片山副館長、山地総務部長、上保総務部副部長企画課長事務取扱

5. 主な会議内容

令和5年度国立国会図書館活動実績評価の枠組み(案)について国立国会図書館(以下「NDL」)から説明を行った後、有識者会議構成員(以下「有識者」)による意見交換を行った。意見交換の概要は、以下のとおりである。

全体の構成について

有識者:
「国立国会図書館ビジョン2021-2025 -国立国会図書館のデジタルシフト-」(以下「ビジョン」)と四つの事業分野、あるいは評価の枠組みとの関係のようなものを改めて御説明いただきたい。ビジョンは2021-2025という5年間を掲げている。今回の対象である令和5年度はちょうどビジョンの中間年に当たる。それだけに、この中間年において、どのような評価の枠組みを考えるのかは大事だと思う。ビジョンのパンフレットを見ると、最後のところに、国立国会図書館の基本的役割の詳細として四つの事業分野が出てくる。だが、デジタルシフトそのものは七つの重点事業を掲げていて、これとの関係をどう考えたらよいのか、簡単に御説明いただきたい。

NDL:
ビジョンの重点事業と基本的役割の関係について。当館の基本的役割は常に使命に基づき取り組んでいく事業であるが、5年間の重点事業を推進することで、基本的役割も変化し、強化されていくものであり、ビジョン全体としては重点事業と基本的役割という二つの部分から構成されている。活動実績評価では、このようなビジョンの構成にあわせて、前段で館の事業全般(基本的役割)の部分を指標に基づいて評価し、後段で5年間の七つの重点事業の達成状況を定性的に評価していくこととしている。重点事業のうち、1から4までの「ユニバーサルアクセスの実現」が【重点事業に係る事業分野①】、5から7までの「国のデジタル情報基盤の拡充」が【重点事業に係る事業分野②】である。

事業分野1について

有識者:
まず感想だが、帝国議会会議録のテキストデータが帝国議会会議録検索システムで提供されるということを楽しみにしている。一点質問だが、指標4「政策セミナーの開催回数(オンライン開催を含む。)」について、令和4年度はオンライン開催と対面開催のハイブリッド型で開催されたと推測するが、今後は対面が増えるのではないか。回数の変化についてどのような見通しをお持ちか。

NDL:
オンライン開催になり、国会議員の先生方が参加しやすくなったと聞いている。そのため、コロナが収束しても、開催方法はオンラインを原則とし、例えば国際的な政策セミナーなど、リアルならではの効果が期待できる場合に対面開催することになると思われる。オンラインの場合、当日参加できない議員の要望に対応し、政策セミナーの音声付きスライドショーを国会サービスのイントラネットに掲載している。回数については、コロナで減ったということはなく、14~16回くらいが開催しやすい回数であるようだ。積極的に回数を増やす努力は今後も続くが、「この回数は実施したい」という努力目標であり、それを一生懸命やっている状況である。

有識者:
コロナ感染を防ぐといったことよりも、むしろ議員の参加のしやすさ、アベイラビリティを高める意味でオンライン開催を継続するということと理解した。評価の指標としては、リモート開催にせよリアル開催にせよ、回数を指標とする点において変わりはないということか。

NDL:
そうである。政策セミナーの参加者数を指標化することについて、過去の会議で御意見を頂いていたが、検討の結果、参加者数に関しては指標化せず、延べ人数の実績値を注3に示すこととした。

有識者:
収録してオンデマンドで配信することもやろうと思えばでき、実際にやっているということか。そうすると、延べの利用者数という指標も考えられるということか。

NDL:
政策セミナーの延べ利用者数の数え方については、(スライドショーに)アクセスするたびにカウントされるのかなども確認した上で考える必要があるため、今すぐには方針を申し上げられない状況である。

有識者:
アクセス数や、視聴している議員や議員秘書の人数は、政策セミナーをどうやって届けるかという方法の評価にも繋がる。盛んに利用されたかということもさることながら、以前の対面式に比べ、オンラインを採用するとこれだけ増えたという意味合いでの評価に繋がるため、ぜひ評価指標の多様化も併せて御検討いただければと思う。

有識者:
三点ほど触れたい。一点目は、帝国議会会議録がテキストデータで検索できるようになるということに関して、戦前の帝国議会の議論が検索をかければ出てくるようになるのは研究上大変便利になるため、おそらく日本の近代史に関して最も利用されるデータの一つになるのではないかと期待している。令和6年度中に提供開始を目指しているということだが、確実に進めていただきたい。二点目は、指標4「政策セミナーの開催回数(オンライン開催を含む。)」について。オンライン開催を含む回数でよいと思うが、オンデマンド配信は国会関係者に限定する必要はないのではないか。国民に広く公開してもよいものであるなら、非常に重要な発信源になる。国会活動の補佐という位置付けで行われるセミナーではあるが、調査したものをさらに国民一般に広く使っていただくという点では、後からであれば誰でも見られるようにして構わないのではないか。三点目は、調査プロジェクトについて。総合調査プロジェクトでウクライナを取り上げることは予期していたとおりである。一方、科学技術に関する調査プロジェクトについて、これら3件はどういうプロセスで出てきたのか。例えば「デジタル時代の技術と社会」というテーマは、ほかの二つに比べると広すぎる印象。逆に「マテリアル科学」は、それ自体は非常に広い分野ではあるが、ほかと比べるとスペシフィックなものという印象。「宇宙空間の利用をめぐる動向と課題」も、宇宙空間の利用が民間主体の方に変わったといった様々なバックグラウンドがあると思うが、どういうテーマ選定の仕方をしたのか若干気になる。もちろん、この三つをテーマにすることに異議はなく、非常に興味があるものだとは思っている。

NDL:
政策セミナーの公開について。まず、政策セミナーの中には、総合調査プロジェクトや科学技術に関する調査プロジェクトのテーマに関連して実施するものがある。これらのうち、当初の総合調査プロジェクトは国会議員向けに実施していたが、途中からは一般の方も含めた講演会も行う形に拡大していった。そのことの延長線上で考えると、ほかの政策セミナーも、実施当日は国会議員限定であっても、録画については一般の方が視聴できるようにし、当館の事業を知っていただくことは、仰るとおり重要な情報発信になると思った。刊行物も、以前は国会議員向けに配布していたものを今は当館のホームページにアップして、ツイッターで発信し、発行後すぐに手に取って見ていただけるようにしているなど、情報発信を強化しているところでもあるので、その延長線上でいくと、政策セミナーの一般公開は将来的な課題であると改めて感じた。担当部局に問題提起しておく。

NDL:
調査プロジェクトのテーマの選定方法について回答する。テーマ自体は調査及び立法考査局が自律的に選定しているが、実施する前年度に、どのようなテーマが良いか等について有識者等から話を伺い、それを基にテーマを選定するというプロセスを採ることもある。

有識者:
科学技術に関する調査プロジェクトのテーマのうち、「デジタル時代の技術と社会」については、既に10年以上、同様のテーマをシンクタンクなどが取り上げていると思う。国立国会図書館には、昨今米国などでもテーマにされている、デジタル情報空間の中のフェイクニュースや陰謀論、フィルターバブル現象といった事象をぜひ取り上げてもらいたい。インターネット上の情報空間におけるいわゆるデジタル言論空間の歪みを図書館という役割で解明できると、テーマ的には面白いのではないかと感じている。

事業分野2について

有識者:
まず、公的機関が発行している資料にもDRM(技術的制限手段)が付されているものなのか、付けることができるものなのか。次に、無償の出版物にDRMを付すというのは、無料でいくらでも見られるのになぜDRMを付けて制限するのかよく分からないのだが、どのようなものがあるのか。

NDL:
出版者の意図は十分には分からないが、公的機関が発行した資料でDRMが付されているものはそう多くはない。DRMを付すのは、読むことができる人を限定したい出版物の場合。一つの例としては、(30日間閲覧できる)無償のインターネット版官報が発行されているが、データベースに載せている部分は、契約して有料で閲覧することになる。必ずしも全ての公的資料がフリーアクセスかどうかは十分には把握していない。また、民間発行で無償であっても、管理したい気持ちがある場合にはDRMが付されることがないわけではないようだ。学会、同好会などのグループの内部で刊行されているものにDRMが付されているようであるが、グループの中で流通しているものを捉えきれているわけではないので、推測である。

有識者:
有償だがDRMが付されていないものはどのようなものなのか。

NDL:
出版者の意向にもよるが、消費者の手間を考え後払いしてもらえればよい、利用したら金銭を払ってほしいという出版物もある。技術書などでビジネスモデルとして行われている場合があるようだが、数は多くはない。

有識者:
点数は多くはないが、そういうものもあるのであれば、指標11「オンライン資料(電子書籍・電子雑誌)の新規収集データ数」について、有償・無償やDRMの有無の別に応じた内訳のようなものを示す必要はないか。

NDL:
オンライン資料については、現在は新規データ収集数しか指標に挙げていないが、発行者の民間と公的機関の別であれば示すことができると思われる。そのほかの区分については統計が確実に採れるかどうかは未確認であるため、指標として適切であるかどうかも含めて確認させていただく。

有識者:
有償のオンライン資料の代償金について、納本制度審議会の代償金部会で検討して結果が出ていたと思うが、代償金の割合はどうなったのか。

NDL:
補償の問題については長年の懸案事項だったが、有償のオンライン資料の収集については、紙の資料とは違って、直接の補償はない形となった。DVDなどに記録して当館に送付した場合、送料と媒体費用は補償するが、本体については無償で納入をお願いしていて、法制度上もそうなっている。

有識者:
そうすると、「事業分野の概要及び目標」で「オンライン資料の収集については、出版者等の協力を得つつ安定的収集を図る」となっているが、補償がないという現在のやり方で安定的・網羅的な収集が図れるのか少し疑問に思う。

NDL:
開始時の方針については、出版界とも議論を重ねた上でのことである。網羅的収集という点については、有償のオンライン資料については、一定の保存基準を満たした民間のリポジトリで蓄積され、公衆の利用ができる場合には、書誌データを提供していただくことを前提に、民間側の事業を「保存」とみなし、納入対象外とすることができるような法制度になっている。現在の形でどのような収集成果が今後達成されるかは注視していく必要がある。

有識者:
現在のやり方で推移を見て、安定的な収集に近づけるような工夫をしていくべきだろう。評価としては、この指標で見ていくということで承知した。

有識者:
受け入れた有償等オンライン資料の閲覧方法はどうなるのか。また、雑誌記事索引の対象になるのか、連動はするのか、補足していただきたい。

NDL:
閲覧環境については、原則として、関西館や国会分館を含めた国立国会図書館の施設内に限定される。ダークアーカイブとして非公開にするのではなく、館内で閲覧ができるようにしたことは重要だと考えている。同時アクセス数は、原則1としている。雑誌記事索引については、既に無償オンライン資料について一部は採録している。有償のオンライン資料についてはこれからのことであり、実際に収集した資料を見ながら採録の対象とするかどうかを決めなければならない。

有識者:
細かい話だが、絶版になった本をオンデマンドで、PDFで入手することがある。戦後のある時期以降のものはおおよそ国立国会図書館に所蔵されていると思うが、戦後初期や戦前のものは国立国会図書館で所蔵していないものもあるように思う。オンデマンド資料の購入は、なかなか手間がかかるとは思うが、しているのか。

NDL:
紙で出版された資料のオンデマンド版については、ある程度の刊行部数があれば、収集対象となる。内容が紙の資料と全く同じもので、刷違いのように考えられる場合は調査が必要になる。電子的に出版される資料のオンデマンド資料についてどう考えていけばよいのかという点は課題である。現在の制度としては、紙の資料を網羅的に集めることに注意を払っており、電子的に出版された資料については、紙で出版されたものと同一版面であると認識されるものは、発行者の申し出により納入の義務を免除できるという仕組みになっている。今後、電子の時代にどう考えていくかということについては様々な検討課題があると思われる。

有識者:
「オンデマンド出版物」を「出版物」という概念規定の中でどこまで含めるかということになってくると思う。重版、復刻などは紙媒体であれば扱いやすい。今後、国立国会図書館でも、現在のやり方で進めて推移を見つつ対応していってほしい。

有識者:
「デジタルシフト」と出版物の関係がよく分からない。例えば、国立国会図書館では戦前の音源を収集して公開している。音源というのは収集の対象なのか。また、他機関でも、例えば改元の際に出された「令和」の書は、公文書なのだろうとは思うが、文字情報として国立公文書館に移管されているのか、画像情報なのかと考えると、出版物で電子になっているものというのは分かるが、画像や音源などは出版物に該当するのかよく分からない。他方、公的機関のインターネット上の情報は全部WARPで収集しているはずなので、公的機関がインターネット上で公開している音源、画像、動画などは収集されているのか。

NDL:
音源については、制度上は、音源のデジタルデータを集めることにはなっていない。国立国会図書館法上、レコードを集めることは定義されており、音楽資料は実際にかなり多く収集してきた。「歴史的音源」については、レコード業界を中心とした業界団体から古い音源の保存事業に協力を求められ、当館もSPレコードを数多く持っていることもあり、公共図書館等にも配信してよいとの合意も得られたため、収集した。「令和」の一枚紙のように簡易なものは収集していない。「出版物」の定義は難しいところではあるが、冊子になっている、製本されているなど、おおよその基準がある。保存の観点も含めて、ある程度の厚みを必要としている。WARPでの動画収集については、現在は技術的に十分には集められておらず、今後の課題であると思っている。ただ、動画を集めるとなると電子書庫の収蔵量が大規模に必要になる。意義は分かるが予算も多く必要となる事業であり、今後検討していくべき課題になると思っている。

有識者:
"publish"の概念と線引きは学会でも議論になるところである。国立国会図書館でも、我々としても、継続して検討していくべき課題だと思う。

事業分野3について

有識者:
個人向けデジタル化資料送信サービスの開始もあり、指標や評価の枠組みにいくつか変更が行われた。これらの変更は、デジタルシフトの核になっていくと感じた。

有識者:
デジタルシフトの部分で、特に個人向けデジタル化資料送信サービスの衝撃は大きいだろうと思っている。ストック値ではあるが的確に把握する指標が設置され、これでよいのではないかと思った。個人向けデジタル化資料送信サービスについては、「国内に居住する登録利用者に提供」ということは、国内にいる外国人は提供を受けられ、他方、国外に居住する日本人と外国人は受けられないということになると思う。ところで、個人向けデジタル化資料送信サービスについては厳しいかもしれないが、図書館向けデジタル化資料送信サービスについて、相互主義のような発想はあるのか。図書館間で一方が見られるようにするならもう一方もする、という国際的な協定のようなもの。最近の日本研究者は非常に細かいことを調べる人が多く、海外で国立国会図書館のデジタル化資料が利用できると重宝されると思うが、そのあたりはどういう状況にあるのか。

NDL:
個人送信の仕組みを考える時に、国外居住者への送信についても検討した。ただ、平成30年の著作権法改正で既に実現していた海外の図書館向け送信サービスの利用が伸びていないため、まずそちらを利用しやすくしてから海外への個人向け送信サービスについて検討を進めるべきという見方もあった。外国の図書館にとってなぜ使いにくいか、つまりなぜ参加館が増えないかについては、準拠法等の問題があり、外国の図書館では閲覧はできるが、プリントアウトの際の条件設定が非常に難しいためである。だが、今回(令和3年)の著作権法改正で、送信を受けた図書館で複写できる範囲が広がり、海外図書館でのプリントアウトのルールづくりが比較的しやすくなった。そのため、このデジタルシフトの5年間の残りの期間の課題として、まずは海外の図書館向け送信サービスでのプリントアウトのルールづくりを固め、日本の出版関係団体と合意形成を図りたいと考えている。海外の図書館向け送信サービスの利用のしやすさと、国外居住の個人への送信サービスの開始は、両方とも重要課題である。

有識者:
実現のために著作権法改正を伴う話なのか、それとも関係者協議会の中で、海外でもプリントアウトできるような運用を合意できればよいのか。

NDL:
図書館におけるプリントアウトは、関係者協議会で枠組みは定まっており、法改正は不要。個人送信を国内に限定しているのも法律レベルではなく、準拠法の問題を整理した上で、関係者協議で理解を得たい。

有識者:
事業分野3の「情報資源の利用提供」は大事なことだと思うが、コロナ禍を経てずいぶん環境が変わり、またデジタル化が進み様々な形で資料を入手できるようになっていることもあり、目標値の設定も難しいのではないか。指標22「遠隔複写」の④「インターネット経由申込複写について、受理から発送までに要した日数」は規定目標値型で5.0日とのことだが、令和2年度と令和3年度の実績では10日以上を要している。これ以外の指標についてでもよいので、特に最近は様々な形でインターネットを通して情報を入手しやすくなっている中で、目標値の設定について見直しが必要なのかどうか、何かお考えはあるか。

NDL:
指標22「遠隔複写」の④「インターネット経由申込複写について、受理から発送までに要した日数」に関して申し上げる。規定目標値型で、利用者の皆様に5日という目標をお示ししていて、それに間に合うように提供していくということであるが、ここ2年は、コロナの関係で目標が未達となっていた。一方で、個人向けデジタル化資料送信サービスが令和4年5月に始まったが、令和5年1月から、個人の送信先でもプリントアウトができるようになっている。デジタル化が進み、個人送信が進んでいくと、わざわざ当館に遠隔複写を申し込まなくても事足りるケースも、絶版等入手困難資料のみではあるが、増えていくと思う。このようにサービスを多様化していくことで、利用者の要望を満たせるようにできればと思っている。指標の設定については、来館関係のサービスのほかに遠隔サービスを様々提供しているため、遠隔関係の数値を今後どのように把握していくとPDCAサイクルのDO、ACTに繋げていけるのか、ここ数年で個人向けデジタル化資料送信サービスやデジタル化の進捗のインパクトがまた大きく出てくるところだと思うので、利用対応やサービスメニューなどを見ながら考えていきたい。

有識者:
それでよい。

有識者:
個人送信でプリントアウトできるのは絶版等入手困難資料であり、現在流通している資料は、やはりここで言う複写申込みをしないといけないが、それは今でも著作物の半分以下という運用。国民のニーズとしてどちらの方が主流になっていくのか。私は依然として現在流通している出版物に対する需要の方が強いのではないかという気はしている。そのあたりの感触はいかがか。

NDL:
分野にもより、例えば科学技術関係であれば新しい資料の複写要求が強い。一方で、出版自体が、事業分野2で申し上げたように電子書籍・電子雑誌に移行していて、電子出版側の方々が提供するサービスで満たされるニーズもあると思う。また、個人で契約する電子書籍サービスのほか、図書館等でも電子書籍サービスの導入が進んでいる。今までは複写して紙で手元に置かないと不安だったという方々が、電子書籍サービスの会員になることで見られるようになるという形で、民間で満たされていくという局面も出てくると思っている。遠隔複写ニーズが今後どのように変化していくのかも、ここ数年の推移を見ていきながら考えていきたい。

有識者:
指標としてはこれでよいと思う。

有識者:
もう一点。フローの指標とストックの指標の使い分けは必要だと感じるが、事業分野3に限らず、累積のデータ数を掲げているものと新規のデータ数を掲げているものが混在している。例えば、事業分野4で出てくる指標38「国立国会図書館サーチ」の①「データ数」や指標39「ジャパンサーチ」の①「データ数」は累積データ数。一方、事業分野2の指標11「オンライン資料(電子書籍・電子雑誌)の新規収集データ数」や指標12「インターネット資料(ウェブサイト・アーカイブ(WARP))の新規収集データ数」などは全て新規データ数。全体として混在しているが、使い分けの基準のようなものはあるか。

NDL:
事業分野2については、目標自体が、納本制度に基づいてこのように収集・保存していくと掲げている。基本的にやめることはあり得ない活動であるため、新規で毎年何万点ずつ集めているというようにしている。過去の有識者会議では、受入資料点数などを示すことで出版動向が分かるという話も頂いていた。

事業分野4について

NDL:
事業分野4の指標39「ジャパンサーチ」の①「累積データ数」については、脚注42などに説明があるが、一つには、追加したということよりは、全体としてデータ数が増えていくということを把握するのがよいのではないかということで、累積値で示している。もう一つ、当館だけの努力ではなく、それぞれの連携機関がデータを作成したり削除したりなど、連携機関の事情による出入りもあるため、新規データ数は採用していない。このため、ストック値を、評価指標にせず参考指標としてお示ししている。

有識者:
例えば指標39「ジャパンサーチ」の①「累積データ数」が分かると、活動実績が評価しやすくなるものか。むしろ新規データ数を見た方が、データ提供施設との当年度の連携状況は評価しやすいのではないかと思われる。同指標の令和3年度の実績値は約2532万件であり、二千万、三千万のオーダーのデータだけを出されても、適切に評価できるかどうか。新規データ数の推移を見た方が、当年度での増減が分かり、他機関との連携状況も見えてくるような気がするし、場合によっては両方出してもよいような気もする。今説明があったように、実はデータが削除されていることもある。現在の累積データ数は、前年度の累積データ数に、当年度に入力されたデータ数を加え、当年度に削除されたデータ数をマイナスしたものが、当年度の累積データ数になるということ。まさにストック値とフロー値なので、両方あれば評価しやすいのではないか。他方、指標38「国立国会図書館サーチ」の②「累積データベース数」、指標39「ジャパンサーチ」の②「累積データベース数」は、桁としては百何件というオーダーに落ちてくる。元々のデータベースの大小にも開きがあると思われるが、データベースの数だけ出されて評価するというのはいかがなものか。新規のデータベース数、あるいは減ったデータベース数などで、フロー値の方を見せていただいた方が評価しやすいように思う。

NDL:
連携協力の指標であるということもあり、機関数を評価指標にしている。指標38「国立国会図書館サーチ」や指標39「ジャパンサーチ」の場合は、当館以外の機関のデータが入り、例えば指標39「ジャパンサーチ」の場合は、データベースの種類も、小さなものから大きなものまで様々であるため、数値だけでは測れないような気はする。前回の会議で、指標39「ジャパンサーチ」について、どのようなデータベースが追加されたのか分からないと評価できないのではないかとの御指摘を頂いたため、新たな連携機関や追加データベースを記載する等定性的に記述することは考えていきたい。指標にどのように表現するかについては、実際に採取できるかどうかも含め、持ち帰って検討させてほしい。

有識者:
それでよい。指標をフロー値で見るのか、ストック値で見るのかは、事業分野によって違っていてよいと思う。ただ、その使い分けの判断基準の説明があった方が受け入れやすい。そのあたりは今後検討した上できちんと説明し、設定の根拠を示してもらえればよい。

重点事業に係る事業分野①及び②について

有識者:
重点事業に係る事業分野②「デジタル情報基盤の拡充」について二点お尋ねしたい。第一に、デジタル基盤の変換形式の変化や共通化が生じた時にどのような対応をする必要があるか、研究はしているのか。第二に、国立公文書館の場合、今は公文書のほとんどが電子決裁になっているため、共通のフォーマットを採用し、変換すればすぐにテキストで見られるようになると言っているが、フォーマットの共通化は全く進んでいない。公文書を作成する機関が共通化を進めないとしても、移管された側で形式の共有化という話は出てきていないのか。デジタルトランスフォーメーションが一挙に進もうとしているこの時に、どこかの機関が音頭を取って進めるべきではないか。

NDL:
中短期的には、できるだけ共通のフォーマットで扱えるように調査し、データを変換している。ただ、長期的に保存するための標準化された仕様があるかどうかについては、古くはフロッピーディスクから始まり、悩ましい課題は今までもずっとあった。調査を継続し、標準的な規格へのマイグレーションを進めていくしかない。方向性としては当館も努力を続けているし、外部の団体でもそのような研究をしているところは存在する。JISやISOといったデジュール標準を確立できていないものが文献の世界には多い。ISOのような国際標準が利用されず、デファクト標準の方が使われているケースも見られる。標準化には難しい問題が多いが、当館も担当部署で動向調査を進めており、今後も調査を継続して御指摘のような課題に向き合っていきたい。画像等についても、できるだけ標準的に保存できるよう努力して撮影を進めているが、長期的にはマイグレーションが必要だろうとは思う。

有識者:
努力していることは分かり、その点は安心した。

有識者:
扱っているデータの量からすると、国立国会図書館がイニシアティブを取り得るのではないか。

NDL:
電子の世界において、世界を広く見たときに、様々な問題がある。例えばウェブアーカイビング事業であれば、収集当時の状態で閲覧できるように再現していくには不断の努力が必要である。現在使われている形式で、ただ電磁的に記録しておくだけでは、再生時に問題が生じ得ることは十分に課題として認識されている。マイグレーション等の調査を進め、電子情報を残すという事業に引き続き前向きに取り組みたい。

有識者:
重点事業に係る事業分野①「ユニバーサルアクセスの実現」の全文テキストデータの利用について、一般に利用できることは魅力的だと感じるが、画像データと異なり、関係団体との協議が難しいと予想される。また、情報量が増えてしまうと、キーワード検索なども大変なことになると思う。全文テキストデータをどのように提供していくのか、現時点で方向性があれば伺いたい。

NDL:
まず、全文検索に利用するという使い道がある。既にデジタルコレクションで全文検索ができるようになっており、例えば先祖の実績を把握する目的などに利用されていることを把握している。単純な人名で検索すると大量にヒットしてしまうことがあるが、図書館職員であれば、出版年代、資料の態様、付与されている分類や件名などを組み合わせて、同一人物かどうか見当を付けることができ、これが司書あるいは調査員としての経験を生かせるところだと考えている。求める情報を正しく検索する方法を、リサーチ・ナビのような調べ方の案内の充実や、研修、イベントなどによって提供していきたい。また、検索システム自体を進化させていくことも考えられる。さらに、全文テキストデータは研究目的にも御利用いただける。大量のテキストデータを研究活動に利用していただき、例えば、特定の年代における頻出語の特定、事物の同定などに生かしていただけると考えている。調査研究に利用しやすい形でのデータ提供を進めていきたい。

有識者:
重点事業に係る事業分野①「ユニバーサルアクセスの実現」について二点確認したい。第一に、指標33「視覚障害者等用データ送信事業」について、令和2年度と令和3年度の実績を見ると、①「新規データ数」と②「うち、デジタル化資料から作成した全文テキストデータを除く新規データ数」の数値が一致する。今後、令和4年度や令和5年度では、②は視覚障害者等からの要望があって作成した全文テキストデータの件数ということになり、①と②で異なる数値が計上されることになるのか。その場合、視覚障害者等の要請なしに作成された全文テキストデータは②に入ってくるのか。これらの指標はそれぞれ何を意味し、令和4年度、令和5年度で数値はどう変わるのか。第二に、指標27「デジタル化資料送信サービス(個人向け及び図書館向け)」について、新たに設定された③「個人向けデジタル化資料送信サービス利用者からの閲覧件数」及び④「個人向けデジタル化資料送信サービス利用者からの複写件数」では、利用者「からの」閲覧件数、複写件数となっている。デジタル化資料は、国立国会図書館から利用者に送られるものであり、サービス利用者「による」閲覧件数、複写件数とするのが適切ではないか。

NDL:
二点目の御指摘については表現を再考する。一点目について、①はテキスト化されたデータだけでなく、DAISY資料や音声データなど、視覚障害者等が使う様々な形式の資料を総合した件数。①と②を分けた趣旨は、今まで①に該当していたものが今後は②に該当するということ。①には今後、デジタル化資料から作られた未校正のデータが大量に入ってくる。令和4年度になると247万件ほど入り、経年的な比較ができなくなるため、②を①から移行して評価指標のままにした。全文テキストデータについても、現在はおよそ1968年までのものがテキスト化されているが、デジタル化事業自体はその後1987年までのもの、1995年までのものと進めていくつもりであり、今後もOCRによりテキスト化したデータ数が増えていく予定。テキスト化したデータは、まずは全文検索用に提供していくが、指標33「視覚障害者等用データ送信事業」の増加にも同期していくことになる。②は年間4,500件程度が毎年計上されていくと見込んでいる。

有識者:
それらの全文テキストデータは、視覚障害者等だけでなく晴眼者も使えるということか。

NDL:
著作権法上、視覚障害者等でない方は検索用には全文テキストデータを利用することができるが、データそのものの提供を受けることはできない。当館は、視覚障害者等に限り、著作権の保護期間であるかどうかにかかわらずテキストデータを提供することができる。

有識者:
指標33①は、視覚障害者等にとって利用可能なテキストデータ等がどれだけ増えたかを表す指標だと理解した。欄外にでも補足説明を書いていただきたい。令和5年度はこの枠組みで作られていくということで、そのデータを見た上で、国立国会図書館の重点事業の取組を適切に評価させていただく。

有識者:
ほかに質問等がないようなので、令和5年度の国立国会図書館活動実績評価の枠組みを認める。修正案や指摘事項を国立国会図書館で検討の上、最終的な枠組みとして確定していただきたい。
(異議なし)

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