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第13回納本制度審議会議事録

日時:
平成17年3月31日(木)午後2時~同3時22分
場所:
国立国会図書館 特別会議室
出席者:
衞藤瀋吉会長、朝倉邦造委員、安念潤司委員、内田晴康委員、見城美枝子委員、佐藤修委員、塩野宏委員、清水勲委員、高橋真理子委員、百﨑英委員、紋谷暢男委員、奥住啓介専門委員、夏井高人専門委員、野末俊比古専門委員
会次第:
1. 開会のあいさつ
2. 第12回納本制度審議会議事録の確認
3. 納本制度審議会答申「ネットワーク系電子出版物の収集に関する制度の在り方について」を受けた国立国会図書館における制度構築に向けた検討状況について(ウェブアーカイブ制度化推進本部長)
4. 今後の日程(案)について
5. 事務局からの報告
 (1)納本制度審議会答申の周知の状況について
 (2)納入義務対象特殊法人の変動に係る国立国会図書館法の一部改正について
 (3)平成16年度出版物納入状況、平成17年度代償金予算及び平成16年度代償金支出実績
6. 閉会
配布資料:
(資料1)納本制度審議会委員等名簿
(資料2)第12回納本制度審議会議事録
(資料3)インターネット情報の収集・利用に関する制度化基本方針
(資料4)納本制度審議会 今後の日程(案)
(資料5)納本制度審議会答申「ネットワーク系電子出版物の収集に関する制度の在り方について」の周知の状況について
(資料6)納入義務対象特殊法人の変動に係る国立国会図書館法の一部改正について
(資料7)資料別納入実績(最近3年間)
(資料8)代償金の予算と支出実績(最近3年間)
(資料9)国立国会図書館法(抄)
(資料10)納本制度審議会規程
(資料11)納本制度審議会議事運営規則

議事録:
1 開会のあいさつ
会長:  定刻となりましたので、第13回納本制度審議会を開会いたします。
 本日は、日本レコード協会会長の佐藤修委員に昨年11月1日の委嘱後初めて御出席いただいております。せっかくの機会ですので、ごあいさついただければと思います。佐藤委員、よろしくお願いいたします。
委員:  佐藤修でございます。初めてなので、どこまでお役に立てるのか分かりませんが、一生懸命務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。
会長:  ありがとうございました。
 本日は、18名の委員中11名の委員に御出席いただいておりますので、定足数は満たされております。本日は、議事に関連いたしますので、専門委員の方がたにも御出席いただいております。
 それでは、お手元の会次第に従いまして、会を進めて参ります。まず、配布資料の説明を審議会事務局からお願いします。
事務局: 〔配布資料について説明。〕
会長:  ありがとうございました。資料がお手元に全部揃っているかどうか御確認ください。
 
2 第12回納本制度審議会議事録の確認
会長:  それでは、会次第の2です。
 前回の納本制度審議会の議事録の取扱いについて、事務局から説明していただきます。
事務局:  第12回納本制度審議会の議事録は、出席された委員及び専門委員に御確認いただき、御了承を得た上で、既に館のホームページに掲載されております。お手元の配布資料2はそれと同じものです。万一誤植その他問題があれば、御指摘ください。
会長:  何か御指摘等ございますか。なければ、以上のとおり、よろしくお願いいたします。
 
3 納本制度審議会答申「ネットワーク系電子出版物の収集に関する制度の在り方について」を受けた国立国会図書館における制度構築に向けた検討状況について
会長:  会次第の3に入ります。
 前回決定した答申に基づいて国立国会図書館(以下「館」という。)では、制度化推進本部を設け、制度化へ向けた検討に着手したと聞いておりますが、その内容について報告を行っていただきます。推進本部長からお願いします。
本部長:  総務部長の生原と申します。納本制度審議会答申を受けまして当館内に設置しました「ウェブアーカイブ制度化推進本部」の本部長という立場で、本日、御報告をさせていただく次第です。
  納本制度審議会委員各位におかれましては、平成14年3月1日の館長の諮問以来、3年の長きにわたり調査審議をしてくださり、当館が制度を構築する上で極めて貴重な御意見を賜りました。ここに改めて厚く御礼申し上げます。
  私どもは、平成16年12月9日に答申を受け取って以来、どのような制度にすればよいか鋭意検討してまいりました。その結果、「インターネット情報の収集・利用に関する制度化基本方針(以下「基本方針」という。)」を策定いたしました。まだ検討の途上にあり、十分に詰めきれていない点が多々ありますが、現時点で当館が考えている制度の大要を示すものであります。
  それでは、お手元の資料3に沿って御説明させていただきます。
  「0 趣旨目的
  館は、図書及びその他の図書館資料を収集し、国会議員の職務遂行に資するとともに、行政及び司法の各部門に対し、更に日本国民に対し、図書館奉仕を提供することを目的としている(国立国会図書館法(以下「館法」という。)第2条)。
  国内で発行された出版物については、国等の発行する出版物の納入は公用及び国際交換の用に供するため、私人の発行する出版物の納入は文化財の蓄積及びその利用に資するために、法定納本制度に基づき収集している(館法第10章、第11章)。
  近年、出版の形態が変化し、従来であれば出版物の形態で流通した情報が、デジタル情報としてインターネットで流通する状況となっている。また、インターネットでは、電子的形態のみで生成されるいわゆるボーンデジタルの情報も流通しており、インターネットが今や国民の知的活動の所産を記録し、公表、流通させる重要な媒体となっている。こうしたインターネットで流通する情報の多くは、保存蓄積されることなく短期間で消失する。それゆえ、国会に対する奉仕の責務を果たし、また文化財を蓄積して現在及び将来の国民の利用に供するために、インターネット情報を収集し、保存する必要がある。
  このため、関係法律を整備し、館がインターネット情報を収集(複製し固定)することができることとするとともに、収集したインターネット情報を利用に供する方法等について定める。」
  ここでは、制度化の趣旨、目的と背景を述べております。次に、
  「1 インターネット情報の収集
  館長は、公用に供するとともに文化財の蓄積及びその利用に資するため、日本国内において発信されたインターネット情報を、館長の定めるところに従い、自動収集又は発信者から送信を受けることにより収集することができる。
  館長は、インターネット情報の収集を行おうとするときは、事前に収集時期、方法等を公告しなければならない。」
  ここでは、インターネット情報の収集に係る館長の権能ないし責務並びに収集の目的及び方法を述べております。
  まず、「ネットワーク系電子出版物」という表現が国民に分かりにくいのではないかということもあり、また、ネットワーク系の情報の中で最も一般的なものが「インターネット情報」であることから、収集の対象を「インターネット情報」としております。
  自動収集は、収集ロボットによるワールド・ワイド・ウェブのページのリンクをたどって収集する網羅的な収集ですが、一方、送信を受けることによる収集は、現時点では予算面、システム面、運用面で十分な目処がついていないこともあり、段階的に行うことを想定しています。なお、放送は、インターネット情報を定義する中で収集対象から除外します。
  「日本国内」の定義づけに関しては、現時点ではjpドメインを持つサイト及びJPNIC管理のIPアドレスを持つサイトから発信されたものとすることにしています。
  「2 収集拒否・消去の申出
  インターネット情報の著作者、著作権者又は発信者は、館長の定める手続きに従い、館によるインターネット情報の収集を拒否し、又は収集された当該インターネット情報の消去を申し出ることができる。
  ただし、国及び地方公共団体の諸機関並びに独立行政法人等は、正当な理由がある場合に限り、その発信するインターネット情報の収集を拒否し、又は収集された当該インターネット情報の消去を申し出ることができる。
  館長は、収集が拒否されたインターネット情報の永続的な固定を行わない。収集したインターネット情報について消去の申出があったときは、消去する。」
  ここでは、「言論の萎縮のおそれ」を回避するための収集拒否と消去の申出について述べております。「収集拒否」というのは、答申にいう「固定拒否」と同義です。「言論の萎縮のおそれ」の問題のない国・地方公共団体等については、私人と扱いを変えております。
  また、収集拒否・消去の申出を申し出ることのできる者は、著作者、著作権者又は発信者とし、「言論の萎縮のおそれ」に対する配慮に加えて、著作権保護という政策的理由から、広い範囲で収集拒否・消去を認めることとしています。
  なお、消去を申し出る期間は限定しておりません。
  「3 収集・保存に係る著作権の制限
  館長は、著作権法の規定にかかわらず、インターネット情報を、収集又は保存(再現保証)のために必要と認められる限度において、複製又は翻案することができるものとする。」
  ここでは、収集の場面及び蓄積保存、特に再現保証における著作権制限について述べています。再現保証のための制限は、収集した情報内容へのアクセスを永続的に保障するため、いわゆるマイグレーションが可能なことを明確にするためのものです。
  「4 収集したインターネット情報の利用
  館長は、その定めるところにより、収集したインターネット情報を、館の施設内で、及びインターネットを通じて公衆の利用に供することができる。」
  ここでは、収集したインターネット情報の利用について述べております。施設内での利用は、閲覧、印刷出力を想定し、ダウンロードは許さないこととします。インターネット提供については、種々議論のあるところですが、もともとインターネットで自由にアクセスできる情報を、収集蓄積したら施設内でしか見られなくなるというのもいかがかと思われるので、次の5の制限の下で、ネットを通じた利用提供を想定することとしました。
  なお、著作権侵害情報が含まれることが多い動画、音声、プログラム等は、権利者への大規模な被害が生じることを未然に防止するため、私人のサイトにあるこれらのファイルのインターネット提供は行わないこととします。
  「5 インターネット提供の制限
  収集したインターネット情報の著作者、著作権者又は発信者は、館長の定める手続きに従い、当該インターネット情報のインターネットを通じた利用提供をしないよう申し出ることができる。ただし、国及び地方公共団体の諸機関並びに独立行政法人等は、正当な理由がある場合に限り、当該インターネット情報のインターネットを通じた利用提供をしないよう申し出ることができる。申出のあったインターネット情報は、インターネットによる提供を行わない。」
  インターネット提供を望まない著作者等に配慮し、申し出によるインターネット提供の制限の制度を設けることとします。なお、国及び地方公共団体の諸機関並びに独立行政法人等は、正当な理由がある場合に限って申し出ることができるとし、私人との扱いを変えている点は、収集拒否・消去の申出と同じです。
  また、インターネット提供の制限を申し出ることのできる者は、著作者、著作権者又は発信者とし、収集拒否・消去の申出と同様、広い範囲でその権利を認めることとしています。
  「6 利用提供に係る著作権の制限
  「館長は、著作権法の規定にかかわらず、収集したインターネット情報を4の方法で利用に供することができるものとする。ただし、5の申出があった場合は、インターネット提供に関しこの限りでない。」
  ここでは、利用提供の場面での著作権制限について述べています。
  「7 利用制限
  収集したインターネット情報に人権侵害情報等が含まれている場合を想定し、利用制限に関する措置を講ずるものとする。」
  ここでは、インターネット情報に権利侵害情報等が少なからず含まれている事実にかんがみ、関係者からの申し出を受け、利用提供を差し控える制度を想定しています。
  利用制限の対象としては、人権侵害情報、わいせつ物・児童ポルノ、公的機関が非公開として決定した情報、著作権侵害情報が想定されます。
  利用制限の手続としては、申出を受け、委員会による審査を開始し、館長が決裁することを想定しています。ここでいう委員会は、館外の有識者にメンバーに入っていただくことも考えております。人権侵害については、侵害された者だけでなく、人権擁護機関からの申出を受けることも想定しています。
  利用制限の効果としては、館内外を問わず利用提供を中止します。児童ポルノなど一部の情報は、消去することも想定します。
  最後に、今後の予定といたしましては、目下、仮決めしたこの基本方針を、総務省、文化庁、法務省等の関係する行政機関や、JASRACなど権利者団体に提示するとともに、返ってきた意見を踏まえ、さらに制度を精緻化する作業を進めているところでございます。また、今後、パブリック・コメントを実施し、国民の意見を徴する必要があろうと考えています。
  スケジュール的には大変厳しいところがありますが、法律案の形にとりまとめ、衆議院法制局の審査を経て、今国会において、インターネット情報の制度的な収集を開始するための法案を上程できれば、と考えております。
  今後とも、先生方の御協力、御鞭撻をよろしくお願いいたします。
会長:  ありがとうございました。我々が長年にわたり調査審議し、答申において大綱をお示ししたものを制度化するために、館では推進本部を設け、ここで報告できる形にまでまとめられたということです。この報告について何か御質問等ありますか。
専門委員:  意見として申し上げたいと思います。まず、「0 趣旨目的」で「インターネット情報」という用語を用いられていますが、一般的に「インターネット情報」というとトラフィック情報を指すものと受け取られるのではないでしょうか。ここで想定しているのは、“Internet Information”ではなく“Internet Content”のことだと考えられますが、その点からみても「インターネット情報」という用語はいかがなものかと思います。違う語にするか、あるいは、定義規定を置くことが必要です。
次に、「7 利用制限」では、利用制限措置の対象となる情報として、人権侵害情報、わいせつ物・児童ポルノ、国の諸機関等が発信した情報で、公開しないものとして取り扱うことを当該機関が公的に決定したもの、著作権侵害情報が挙げられていますが、これだけでは不十分であると考えます。最も危惧されるものに、営業秘密等の企業の機密情報があります。自動収集によるとこのような情報であっても収集できてしまうことがあります。このような情報を自動収集できる状態に置いておく方が不注意なのだといえばそれまでですが、やはり何らかの形で利用制限措置を採ることを可能とする規定を設けておく必要があるでしょう。ここに挙げられている利用制限措置の対象に「営業秘密であることが明らかな情報」を付け加えてはどうでしょうか。他にも、例えば、偽造紙幣の作成法が掲載されていたり、自殺を勧める内容のサイトもあります。これらの犯罪を組成する情報、他の犯罪を教唆・幇助する情報等を館が発信すれば問題です。このような情報についても館の判断で利用を停止できるようにしておくべきではないでしょうか。
  さらに、基本方針の最後にセキュリティーに関する項を入れるべきです。収集した情報が不正アクセスなどにより破壊・改ざんされれば、間違った情報を館が発信してしまうことになります。このような事態を防止するため、情報の可用性(availability)と完全性(integrity)を確保する必要があります。
本部長:  まず、「インターネット情報」という用語の定義についての御指摘ですが、一応、基本方針の「説明等」の中で「開放系の分散型コンピュータネットワークであるインターネットに流通する情報であって、著作権法にいう自動公衆送信(公衆送信のうち公衆からの求めに応じ自動的に行うもの)が行えるように送信可能化されたもの。インターネットメール、インターネット電話など通信機能に基づくサービスは除かれる。また、放送、有線放送は、インターネット情報に該当しない。」と定義しております。「インターネット情報」の語を用いるのが妥当なのかについては、私どもの間でも相当議論のあったところで、難しい問題であることは認識しております。ただいまの御意見を踏まえて、さらに検討させていただきたいと考えます。また、他の2点の御意見につきましても、もっともな御指摘であり、今後の検討の参考とさせていただきます。
委員:  インターネット情報の特徴として、匿名性と安価に多くの人々に向けて発信が可能であることが挙げられます。そのため、インターネット上には、紙の出版物の場合であれば普通出版されない情報も流れています。紙の出版物の場合には、無責任な誹謗中傷などが簡単に掲載されることはあまり考えられませんが、インターネット上には、そうした誹謗中傷等も珍しくありません。想定されている利用制限の手続によると、申出があってから利用を制限するかどうか判断するとのことですが、収集した情報をインターネット経由で公開すると、利用制限の申出があるまでは、問題のある情報が館のオーソライズを受けたような形でインターネット上を流れることになり、被害が拡大してしまいます。紙の出版物であれば、来館しなければ閲覧できませんが、インターネットで公開されればどこからでも見ることが可能です。
本部長:  まず申し上げておきたいのですが、これからパブリックコメントの実施を含め、広く意見を伺って検討し、制度に反映させていくことになっております。ですから、承った御意見に対してここでいちいちお答えすることは考えておりませんが、その点を御理解いただいた上で、とりあえず今ご指摘の点について、副本部長からお答えいたします。
副本部長:  ただいまの御指摘のように、インターネット公開を行った場合には、利用制限の申出を受けてから対応していたのでは、申出があるまでの間に被害が拡大してしまうという問題はありますが、だからといって、そのような問題のある情報を最初から収集しないようにできるかというと困難です。膨大な量のインターネット情報の内容をいちいち精査した上で問題のないものだけを収集することは現実には不可能ということもありますし、さらに館が収集する情報を内容により選別することが妥当なのかという問題があります。もちろん、問題のある情報を公開することにより、あたかも館が当該の情報をオーソライズしたように受け取られては困りますが、その点については、問題のある情報も含めてその瞬間における我が国の文化の一断面を保存したのであって、それらの情報をオーソライズしたわけではないと御説明することになるのだと思います。それでは、大方の御理解が得られないということになれば、インターネット公開を断念するという選択肢もございます。ただ、そうなると、インターネットで公開されている情報なのに来館しなければ利用できないのはいかがなものかという議論が予想されます。
委員:  インターネットそのものを見ている場合には、問題のある情報が存在しても、インターネットとはそういうものなのだと理解した上で利用していますが、館のホームページ経由で館の発信したコンテンツとして利用する場合には、館がオーソライズしたように受け取られることもあるのではないですか。また、誹謗中傷などによる被害が館によるインターネット公開を通じて拡大し、被害者が館に対して損害賠償請求を行ったらどうするのですか。
委員:  損害賠償責任は、元々の誹謗中傷情報を作成・発信した者が負うべきであって、館が責任を問われるべきものではないでしょう。館としては、収集した情報は問題のあるものも含めてそのまま公開すべきです。問題のある情報については、本来情報を出したものに責任があるのです。館が自ら基準を設けて情報を内容により選別することの方がよほど問題なのではないですか。
専門委員:  収集という場合にはすべて集めるべきだとは思いますが、それをどのように公開するかは別問題です。例えば、かつてバチカンはカトリック以外の異端の文書についても収集していましたが、利用はさせていませんでした。それでも、収集していたからこそ現在の研究者は当時の資料を研究することが可能となっています。同じように、収集・保存はしておく必要があると思いますが、利用の場面は分けて考えるべきです。例えば、犯罪を組成するような情報をそのまま利用させるべきではないでしょう。
委員:  犯罪を構成する情報とはどんなものですか。
専門委員:  例えば、ウィルスがあります。ウィルスをアップロードすること自体は犯罪にはならないかもしれませんが、そのウィルスによってデータが破壊された場合は犯罪でしょう。このようなものを館が公開することは問題です。
委員:  そのようなウィルスを収集できないのは確かですが、それは技術的な問題、物理的な安全性に関わる問題であって、情報の内容に起因する問題とは別なのではないですか。
委員:  議論の前提としてお伺いしたいのですが、館は、紙の出版物についてはどのような利用制限の仕組みを設けているのですか。
事務局:  広く利用に供することが原則ですが、人権侵害に当たる資料、わいせつ物、児童ポルノ、国等が公開しないことを公的に決定した資料、著作権を侵害して作成された資料につきましては、著作権、発行者その他利害関係者の申出を受けて、利用制限を行う場合がございます。インターネット情報につきましては、利用制限を採ることができる情報の要件をもう少し広げる必要があるのかどうか現在検討しております。
会長:  インターネット公開については御指摘のような問題があるのではないかと危惧はしておりました。ただいまの御意見のうち、一方は、収集の場面においては、内容による選別を行わず広く集めるべきというものであり、他方は、利用の場面では、問題のある情報が含まれているので、公開について慎重に考えるべきとの趣旨と理解いたしました。異なる局面についての御意見ではありますが、ともにインターネット上の情報を問題とされていることも確かです。先ほどの御指摘にあったように、紙の出版物と異なり、誹謗中傷などの問題のある情報がインターネットで公開されれば、被害の拡大は大変なものがあります。両者の御意見の妥協点を見出すために、基本方針を見直す必要はないのでしょうか。
委員:  基本方針に示された利用制限の対象項目については異論ありません。申し上げたいのは、これ以上利用制限措置の対象を広げる必要はないということです。一般に公開された情報を収集している以上、できるだけ利用に供すべきであるというのが原則ではないですか。
委員:  問題のある情報を発信した者に責任があるのは当然ですが、その情報によって人権等を侵害された者はどうすればいいのかという問題です。レコード、出版、映画等では何らかの倫理委員会等を設けて人権侵害等が起こらないように自主的な規制の枠をはめていますが、インターネット情報については、そのような自主規制が全く行われていないので危惧しているのです。インターネットで流されていたとはいえ、館がそのまま収集し、公開するとすれば、被害者から損害賠償を求められることになりかねないでしょう。
委員:  だからといって、収集する内容を館がスクリーニングをすべきというのは別の意味で問題があるのではないですか。著作権侵害の情報というのなら、また話は別ですが。
委員:  現時点の文化の一断面としてインターネット上の情報をすべて収集すること自体には一定の意義があるといってよいと思います。問題となるのは利用の態様ですが、収集した情報をインターネット経由で館外提供することにより支障が生じたとしても、その時点で提供を中止することもできます。一般的にいえば、インターネットというオープンスペースに公開された情報を収集した以上、いったん国民にすべてを公開するのが原則です。内容をスクリーニングするのは館の役割ではありませんし、すべきことでもありません。利用制限の対象となる情報が現在の想定だけで十分かどうかというのは、ある意味で法技術的な問題に過ぎないともいえます。つまり、問題のある情報をすべて読み込めるような概括規定を置くかどうかということです。
会長:  ただいまの様々な御意見についてどのように考えればよいか、制度化推進本部で御検討いただいて、案がまとまったところで審議会に御報告していただくというのはいかがですか。
本部長:  既に館長の諮問に対する答申をこの審議会からいただき、それを受けて制度化の作業に着手しているところでございます。多くの課題があるのはよく承知しているつもりでございますが、いずれにせよ法律にするという形で結論を出さねばならないと考えております。制度化の作業を進める中で近くパブリック・コメントを行い、国民の皆様、関係団体等から御意見を伺う予定です。さらに、法案を通過させるためには、いうまでもなく国会議員の方々の御理解も得なければなりませんが、議員の方々の中にもやはりいろいろな御意見があります。本日皆様からいただいた御意見も含め、こうした各方面からの御意見を踏まえ、館の果たすべき役割とは何かということも併せ考慮しつつ、館において十分な検討を行っていく所存です。
委員:  先ほどの委員の御意見のように、マス・メディアを通じて情報が伝達される場合には、これまで大体どの分野でも一定の倫理委員会等が設けられ、公に提供される前に一定のふるいにかけられる仕組みができているわけです。しかし、インターネットの世界には、こうしたチェックの仕組みが存在しません。確かに、現時点で、どの情報に価値があるかを決定することはできませんし、また、すべきでもないと考えますので、どんな情報でも収集し、保存するところまでは、館の役割として妥当であるということが言えます。しかし、インターネット情報は、公開される前に倫理機構等のチェックを一度も受けていないという点で、今までのマス・メディアを通じて伝達される情報とは異なります。ですから、収集したものを、直ちに公開しなければならないのかというと、少し違う考え方もできるのではないかと思うのです。この問題は、今後、館が基本方針を国民に向けて説明していく際にも重要になってくるのではないでしょうか。こうした点には、十分御留意いただきたいと思います。
委員:  先ほど、会長から、本日の意見を踏まえて、事務局が案を策定し、もう一度審議会に示してもらってはどうかという御提案がありました。しかし、この基本方針は、これを基に早急に法律案を策定しようという性格のものであり、本日の意見を踏まえて改訂したり、改めて審議会の了承を得るということにはならないのではないかと考えられます。館長からの諮問に対しては、答申をまとめるという形で既にお答えしている以上、審議会としての任務は終了しておりますし、この答申をこのようなものとして作ったという責任が我々にはございます。もう一度審議会を開催して、基本方針の改訂案を調査審議するというのは、本審議会のすべきことではないように思います。また、今国会への法案提出を館が想定しておられることや、現在の委員の任期が5月31日までしか残っていないことからみても、もう一度審議会を開催することは日程的に困難でしょう。しかし、我々が意見を述べる機会はないのかというと、答申を受けた館の制度化に係る作業については、パブリック・コメント等を実施するということですので、こうした機会に審議会の一員として意見を寄せればよいのではないかと考えられます。私のこれまでの経験からみて、パブリック・コメントに寄せられた一般国民の意見よりも、審議会委員の意見の方が重視されないなどということはありませんでしたので、館においても、適切な対応をしていただけるものと考えております。
会長:  利用制限については、調査審議の間、明確に議論の対象となっていませんでした。本日これだけ御意見が出ている以上、何らかの形で議論をしておきたいと思います。
本部長:  答申をいただいてから制度化の作業を行うのは館のすべきことであろうと理解しております。検討の中で、答申に足りない点がありましたら、館が答申の趣旨を踏まえて補っていくということではないでしょうか。もう一度、審議会を開催して、基本方針の改訂案を御承認いただくというのは、手続としていささか異なるのではないかと考えます。もちろん、法律が制定されたところで必要であれば御説明させていただきます。
会長:  先ほどから御意見のあった委員・専門委員に対しては、館から検討結果等について説明していただく必要がありますか。
委員:  必要があると判断すれば、パブリック・コメントの際、意見を述べさせていただきますので、特に検討結果の説明までは必要ありません。
専門委員:  館がインターネット公開を行うというのであれば、プロバイダ責任制限法の適用ないし準用があるのではないかと考えられます。有害情報が含まれているのにもかかわらず、対応を全く想定していないというのでは困ると思います。少なくとも明らかに問題のある情報については、館の判断で利用を停止できるような法的な権限を用意しておく必要があると思います。館は、国の機関なので、そうした対応を採るに際しても、いちいち法的根拠が必要ですから、その仕組みや対外向け説明をあらかじめ検討しておかなければなりません。このような問題があることについては、専門委員の一人として指摘しておく責任があると思いますので、本日は、意見を述べさせていただいたということです。検討結果の説明を求めるという趣旨ではありません。
会長:  先ほどの委員・専門委員の御意見は、収集に際しては内容を選別すべきでないが、公開に当たっては別の観点から慎重な検討が必要ということだったように思います。このように収集と利用の場面を分けて考えれば、もう少し議論を整理できるのではないですか。
本部長:  とりあえず収集・保存しておくが、当面、利用させない方がよいという御意見は、他からもいただいております。収集・保存・蓄積と利用とは別の次元の問題という考え方であろうと考えます。そうした御意見も踏まえて、今後検討を進めて参りたいと思います。
会長:  本日の意見も十分に御検討いただけるものと理解いたしました。
委員:  収集に際して館が内容をスクリーニングすべきでないという委員の御意見は、現在の基本方針に掲げられている事由について利用制限が必要なことに異を唱えておられるのではなく、これ以上利用制限の対象を広げるべきではないという御趣旨だと思いますので、基本方針に反対されているわけではないと考えられます。また、利用制限の申出があった場合における調査審議のために外部有識者から構成される委員会などを設けるか等については、館における利用制限の手続の定め方の問題であって、本審議会が意見を述べることではありません。本日の様々な御意見は、互いに相容れないものではなく、むしろ同じ問題について違う角度から述べておられるもののように思います。
会長:  委員からの御意見については館で十分に検討していただくこととしましょう。私から、もう一点申し上げたいのですが、「インターネット情報」という表現はもう少し工夫の余地があるように思います。法律論としては明確な定義規定を置けば済むことなのかもしれませんが、やはり一般の言葉の使い方とあまりにかけ離れた語の用い方をするのはいかがなものかと思います。
本部長:  「インターネット情報」という語を用いた理由の一つとして、収集対象をこのように定義することにより、放送・有線放送を除外したいという意図がありました。この点も考慮して、この語を用いたものでございます。
委員:  あと一点、質問させてください。いわゆる掲示板は、収集の対象となるのですか。
本部長:  制度化推進本部の事務局長である総務部企画・協力課長からお答えします。
事務局長:  できるだけ広い範囲のものを収集したいと考えておりますが、いわゆる掲示板につきましては、現在の技術では自動収集することはできません。
会長:  よろしゅうございますか。それでは、制度化の状況については、新しく委嘱された後の6月の審議会において御報告いただくことにしまして、ただ今の御意見等につきましては、館においてよろしくお取り計らいください。
 
4 今後の日程(案)について
会長:  会次第の4に入ります。
 今後の日程について、事務局から説明をお願いします。
事務局:  それでは、配布資料4を御覧ください。前回も御説明申し上げましたように、今回が今期最後の審議会となる予定です。ただし、納本制度審議会規程第4条第2項の規定により委員の任期は2年とされておりまして、今期の審議会委員の皆様につきましては、平成15年6月1日付けで委員の委嘱をさせていただきましたので、本年5月31日まで引き続き委員をお願いすることとなります。この点は、途中で交替のあった委員の方についても同じです。本年6月1日付けで新たに委員の委嘱をさせていただいた後は、速やかに第14回の審議会を開催し、会長の選出など審議会の構成を行っていただく予定です。また、専門委員の皆様につきましては、当館におけるネットワーク系電子出版物の収集・利用の制度化の作業に対して、御助言等をいただくこともあるかと思いますので、現在の委員の皆様の任期満了の時点まで、ともにお力添えいただければと考えております。
会長:  今期の審議会は本日が最後ということです。次回は、次期の委員の委嘱がなされた後に開催されることになります。委員の皆様、今の事務局の説明について、何かございますか。よろしゅうございますか。特に御意見がないようですので、お手元の納本制度審議会の日程(案)のとおり御了承いただいたこととします。よろしくお願いいたします。
 
5 事務局からの報告
会長:  続いて、会次第の5に移ります。事務局から3件、報告があるそうです。
 まず、前回審議会において決定した答申の周知の状況についてです。よろしくお願いします。
事務局:  それでは、配布資料5を御覧ください。決定していただいた答申につきましては、十分な周知を図るため2,000部を作成いたしまして、既に国会、行政、司法の国の諸機関、地方公共団体、独立行政法人等に配布いたしました。地方公共団体につきましては、答申の配布のほか、全国連合団体に依頼いたしまして、そのHPや機関誌に広報を掲載していただいております。また、納本制度の円滑な運用のために随時開催しております懇談会に御出席いただいている35団体にも答申を配布いたしました。この中には、我が国の主な出版関係、著作権関係の団体のほか、インターネット協会、日本インターネットプロバイダー協会などのインターネット関連の団体も含まれております。また、答申全文につきましては、館HPに掲載し、国民の皆様からアクセスしていただけるようになっております。さらに、海外の関心も高いと考えられることから、答申本文の英訳も行う予定です。
会長:  ありがとうございました。ただ今の報告に関して、何か御質問等はありますか。特にないようですので、次に、納入義務の対象となる特殊法人の解散等に伴う国立国会図書館法の改正について、報告をお願いします。
事務局:  お手元の配布資料6を御覧ください。昨年2月13日の第10回審議会において御決定いただいた答申「独立行政法人等の出版物の納入義務の在り方について」でお示しいただいた考え方に基づき、昨年の臨時国会において館法の一部が改正され、独立行政法人や一定の特殊法人・認可法人等に国・地方公共団体と同等の出版物納入義務が課されることとなったことに関しては、前回審議会で御報告したとおりです。改正後の館法第24条第2項第3号の規定により国等と同等の納入義務を負うこととなった特殊法人等につきましては、その別表第1にすべて掲げられることとなりましたので、そこに掲げられている法人が廃止されるような場合には、館法の別表も併せて改正しなければならないこととなります。この度、そうした理由から、何箇所か同法の改正が必要となりましたので、御報告させていただきます。
 まず、核燃料サイクル開発機構及び日本原子力研究所の解散に伴うものについてです。昨年12月3日に公布されました独立行政法人日本原子力研究開発機構法により、核燃料サイクル開発機構と日本原子力研究所が解散し、両者の業務等は新たに設立される独立行政法人日本原子力研究開発機構が引き継ぐこととなりましたので、現行の別表第1から二つの特殊法人を削る必要が生じました。本件につきましては、衆議院議院運営委員長から、館法の一部改正案を提出していただいております。
2番目は、独立行政法人住宅金融支援機構の設立とともに、住宅金融公庫が解散することに伴う改正で、本件においても別表第1から同公庫を削る必要が生じましたが、こちらは、内閣が提出された独立行政法人住宅金融支援機構法案の附則において館法の改正も併せて行っていただくこととなっております。
  なお、1・2ともに新たに設立される独立行政法人については、館法第24条第2項第1号の規定により国と同等の出版物納入義務が課されることとなります。この点については、特段の法的措置は必要ございません。以上でございます。
会長:  ありがとうございました。ただ今の報告に関して、何か御質問等はありますか。特にないようですので、最後に、平成16年度の出版物の納入状況等についての報告です。よろしくお願いします。
事務局:  それでは、出版物納入実績及び代償金の予算と支出実績について、御報告いたします。本日は年度末ではございますが、納入実績、支出実績いずれも、まだ、平成16年度の数字が確定しておりませんので、本年2月までの数字でご報告いたします。
 まず、納入実績でございますが、資料7をご覧ください。図書、逐次刊行物及びパッケージ系電子出版物について、納入冊数を示しております。実際には毎月平均して資料が納入されるわけではございませんが、11分の12という数字で前年度と比べてみますと、逐次刊行資料に関しては、全体に減少しております。図書、パッケージ系電子出版物で見ますと、官庁出版物が減少しておりますが、民間出版物は若干増加しております。なお、昨年度御審議いただきました独立行政法人等からは、おおむね順調に納入されております
会長:  質問ですが、パッケージ系の納入はどのように行われているのですか。
事務局:  発行者から直接館に納入していただいております。
会長:  具体的にはどのようなものが納入されていますか。
事務局:  例えば、CD-ROM、DVD等でございます。いわゆるゲーム・ソフトなどは、パッケージ系に含まれています。
会長:  同じ内容のものが異なる媒体で発行されたときの取扱いはどうなっているのですか。
事務局:  定められた基準に基づきまして、最も適当なもの一つを納入していただくこととなっております。例えばVHS版とDVD版とがある場合には、DVD版を納めていただいています。
会長:  分かりました。それでは引き続き報告をお願いいたします。
事務局:  次に、納入出版物代償金予算及び支出実績について御報告いたします。資料8をご覧ください。
会長:  代償金に関する諮問はなかったのではないですか。代償金部会長いかがですか。
委員:  平成15年度に行われた諮問は、小売価格の表示のない出版物の代償金の額に関するものです。本年度は、まだそうした諮問はございません。事務局が御説明しようとしているのは、通常の代償金の支出等に関することだと思います。
会長:  分かりました。それではお願いします。
事務局:  平成17年度予算は、平成16年度と同額の3億9千万円余でございます。ちなみに平成13年度以来同額となっております。平成16年度の支出実績は、本年2月までで約3億5,617万4千円でございます。支出割合の高い資料についてみますと、図書が1億4,567万円で支出全体の約39%、パッケージ系電子出版物が8,943万円余で、約26%を占めております。平成16年度の出版物納入状況等についての御報告は以上でございます。
会長:  ただ今の報告について、何か御質問等がございますか。なければ次に進みたいと思います。
 
6 閉 会
会長:  以上をもちまして、第13回納本制度審議会の会次第はすべて終了いたしました。
 先ほどの事務局の説明にありましたように、今期審議会は今回をもって最後ということです。2年間にわたり熱心に御審議いただきありがとうございました。本日はこれにて散会といたします。
〔午後3時22分終了〕

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