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第1回納本制度審議会納入出版物の最良版に関する小委員会会議録

日時:
平成12年6月26日(月)午後2時~4時
場所:
国立国会図書館 新館2階大会議室
出席者:
納入出版物の最良版に関する小委員会所属委員・専門委員
合庭小委員長、内田委員、奥住専門委員、児玉専門委員、浜野専門委員、事務局

議事録:
小委員長:  第1回納入出版物の最良版に関する小委員会を始めます。今日の議題は、納入すべきパッケージ系電子出版物の最良版についてです。まず配布資料の確認から始めます。
事務局: 〔配布資料の確認〕
小委員長:  引き続き、資料に基づいて、議題の(1)から(4)までを事務局の方から説明してください。最初に、議題(1)の「「最良版」の規定とその趣旨」の説明をお願いします。
事務局: 〔配布資料に基づき、以下の内容を説明。〕
[最良版の規定は、昭和23年の国立国会図書館法制定時にはなく、昭和24年の一部改正の際に盛り込まれた。この趣旨は、ある特定の著作物や情報が記録された同一の原版又はマスターを用いて、同時期に2以上の版が発行される出版物については、その「最良版」を納入すればその他の「版」の納入を免除するというものである。
 これは、図書館資料として長期保存と利用に耐えるものの納入を求めた規定であり、また一方では、納入義務者に対して最小限の負担に止めたものと解される。]
小委員長:  御質問がなければ、議題(2)「出版物の最良版について」の説明をお願いします。
事務局: 〔配布資料に基づき、(1)出版物の「版」の意義、(2)館法第24条第2項の「再版」規定との関係、(3)「最良版」の定義、(4)「最良版」の決定基準について、(5)完全なものの基準について説明。〕
小委員長:  何か御質問ございますか。
専門委員:  「マスター」という言葉には何か明快な定義があるんでしょうか。
事務局:  「マスター」という言葉については、音を記録した出版物の場合は、配布資料にもあるように、アナログレコードの製造過程に「マスターテープ」、CDの作り方に「マスターディスクを作る」という言葉があります。CD-ROMの製造工程のところには、「マスター」という言葉が見当たらないのですが、正確に「マザー」などという言葉があるならば、きちんと押さえなければいけないかと思っています。いずれにしても、抽象概念ではなくて、具体的な特定されるものだということで理解していただいたほうがよろしいかと思います。
小委員長:  CD-ROMのところは「マスター」という言葉はないですが、「マスタリングと原盤」という言葉がありますね。
専門委員:  コンピュータの世界では「マスターファイル」というのがありまして、それは最終的なものではなく、むしろ親ファイルに近いこともありますし、又は原盤に近いこともあります。ただ、それを何と称すかという問題はやはりあります。特にそれがデータベースの場合ですと、そういうものを中心にして例えばCD-ROMのマスターを作るとなると、マスターといってもいくつも出てくる、ということになります。
事務局:  どれを具体的にマスターというか、ですが、印刷資料でも、原版から接触面になるところがあり、CDの場合も、最終的にプレスする際のスタンパーという接触面みたいなものがあります。コンピュータファイルに「マスターファイル」があるとおっしゃいましたが、音楽資料の場合も、スタンパーではなくてマザーとなる「マスター」があって、破損、摩耗すればまた作るわけです。目録規則のレベルでは「元となるもの」というように押さえられていると思います。
専門委員:  例えばレコードの場合、1948年当時はマスターテープの形態が一つだったと思うのですが、昨今はパッケージが変わるごとにいろいろな形のマスターが出ますし、それから形態、物理的に同じであっても、収録されている情報が違う、例えば解説や説明などが入っているものもありますので、あまり細かく「マスター」を決めていくと、きりがないと思います。現実に、ビデオや映画なども、ビデオカセットとLDとDVDのマスターでは違いますし、逆に映画の場合ですと元のハリウッドで作ったフィルムなどが本来は一番のマスターでしょうが、その下にまたいろいろなマスターがありますので、あまり決めてしまうのはどうかというところがあります。
事務局:  ここでは、目録規則上の話にせよ、マスターとは複製の元となった部分という意味で使っています。ですから、どの部分のマスターかというと抽象的にはそれら全部を含めて、あるいは、その元になったものということになるかと思います。
専門委員:  マスターにも、いろいろ技術的なフォーマットの違いがありますが。
小委員長:  では、その辺を総称してマスターと言うということですか。
専門委員:  その方がいいのではないでしょうか。ただ、厳密に決めますと、例えば再版の場合、現実には第1版目と第2版目のマスターは違う場合がほとんどだと思います。
委員:  最良版の定義のところで、版がいくつかあるうちの最良のものを最良版というということですが、一方でその版というのは同一の原版からできたものを版という、となると、2つある版のその上位にまた版があるということですか。つまり、定義がこれで落ち着くのかどうかと思いまして。要するに、最良版というのは、本来は版のうちのいいものをいう、ということですよね。
事務局:  同一の原版に属するという場合の「版」と、異なる版があるという場合の「版」とは、日本語で訳すと同じですが、意味内容が違うということです。米国著作権法では、「edition」とは同一のマスターから作られたものであり、「best edition of the same version」というように、同一の「version」のうちの最良の「edition」というとらえ方をしているんです。
事務局:  中身としては実質的に同一でも、装丁が違ったり、製本が違ったりあるいは活字の形態が違ったりと、同じ原版を使いながら少しずつ異なる例があります。
委員:  それと、修正、増減を加えたものというところとの関係はどうなるのでしょうか。
事務局:  同一の原版から複製されてできたコピーの固まりが、同一の版に属する出版物の発行単位です。24条の規定では、それを別の時期にもう一回固まりで作れば再版となり、ただし増減、変更が全くない場合は納入を免除する、となっています。それで、「edition」と「version」が日本語では同じ言葉となっており、分かりにくいんですが、最良版という限りは、劣位版が想定されているはずなので、内容が全く同一のものでも、発行者、発行単位が違えば異版になる、というのが出版物の考え方なんです。発行単位が違っていれば異版として明らかに納本対象となります。
専門委員:  先ほどの事例にしても、本の内容自体も意味がありますが、カバーも何らかの意味をもっていますね。デザイナーが違っていたり、それが、客観的な最良版とするならば割り切れますが、資料的価値の最良かというとどうでしょうか。例えば、『カサブランカ』という映画は、今は公開当時の傷まで全部データ処理し、公開当時よりきれいなんです。だから、処理していない『カサブランカ』のほうが歴史的資料としては価値があるのではないか、最良なのではないかと私は思いますが、でも、機械的に最良版を決めるとなると、データ処理をした方がクリアだからよいとされ、傷があって音がぼけているほうは納入されないわけですが、そう単純には割り切れないのではないでしょうか。
小委員長:  印刷出版物なら、割合単純に、ハードカバーとペーパーバックであれば図書館としてはハードカバーの方がよい、となるのでしょう。
事務局:  審議会でも御発言がありましたが、最良なものとして、高品質なものと単純に決めてしまうのはどうか、そうではなく、文化財の蓄積及び利用に資するためという観点から「最適な」方がいいのではないかというような考え方もあろうかと思います。
小委員長:  今の例だと、それは別「version」のことで、「edition」の中での比較ではないということになりますか。
専門委員:  ただ、映像や音楽資料だと、マスターの仕方とか、色補整をしているとか、各「version」で完全に作品としては異なってしまいます。この説明だと、ただクリアなものだけが出てくる可能性があるのではないかと思うんです。
事務局:  今の例ですと、一部に補整や修正をしたということであれば同一マスターから作られていることには間違いない事例と言えるでしょう。そうすると、再版の規定からは、修正によって色がきれいになったとか、内容の増減・変更があったと考え得る場合であれば、納本の対象になるのではないかと考えます。
専門委員:  ただ、日本の映画ならいいですが、ハリウッドのものだと修正などは業者の人も分からないですね。実は「version」が出るたびにほとんど手が加えられているというのが実状で、それは日本では全く把握できないんです。担当者も変わりますしね。出版界というのは割合文化的意識が強いので、担当者はよく覚えていると思いますが、映像、音楽資料は非常に大きな技術が回っていきますから、なかなか難しい。
小委員長:  印刷資料の場合は、書籍には奥付けがありますから、何刷りなのか、何版なのかは分かりますね。
専門委員:  映像資料の場合、古く思われないように、命令で年代を入れてはいけないことになっていて、いつの版か分からないというものもあります。
専門委員:  例えば、図書の場合、第1版、第2版では中身が変わりますが、映画の場合は、初版とはストーリーそのものは基本的に変わらないわけです。ですから、「版」を、いわゆる原盤を単位にした版ではなくて、「version」「異種」という単位で考えないと、いちいち原盤が変わるたびに全部納入するということになると大変ですね。
事務局:  マスターをどこで捉えるかという問題ですね。さきほど申し上げたCDやレコードでいう「スタンパー」、印刷用原版でいう「接触面」を「マスター」とは言わずに、もっと元のところを「マスター」だとここでは考えているんです。
 お聞きしたいことがあるのですが、再版を24条2項でとらえ、25条1項では、民間出版物については最良版の完全なもの、というようにしばりをかけて、25条2項で24条2項を準用していますよね。そうすると、それが後続の部分まで最良版という規定が及んでいると考えることはできないですか。つまり事例でいいますと、初版本が劣位版、例えばペーパーバックとして出て、その後同一の原版を使ってハードカバー上装にして再版した場合、内容に増減も全くないときには、24条2項の問題ですが、最良版の規定が及ぶと考えられるのか、これはもう法律的な問題といえると思うんですが。
小委員長:  ただ、その場合、再版とは言わないでしょう。以前は活版印刷ですから、紙型を取り鉛版を作って印刷するために、何度も重版していると紙型が縮んでしまうので、場合によっては同一内容でも新組みをしなくてはならず、それを改版や再版と言っていました。今は活版印刷ではないので、そういうことはないですが。それを考慮して、同一のものを新組みで出せば、納本しなくてもいいとしているのでしょう。ロングセラーになったものほど改版がされています。
事務局:  そういうものは、編集者が正しく奥付けに書くのですか。
小委員長:  改版のときは奥付けには書きます。
専門委員:  岩波書店では「夏目漱石全集」がよく出ますよね。あれは、昔に納本すればそれきりなんですか。
小委員長:  いや、菊版漱石全集とか新書版、それからそのあとの新しいものというように版が変わっているし、最新版でいうと編集も変わっていますから、全部納入されています。でも、全く版名、装丁が同じで、ぺージ付けは実質ずれるような場合は実際は納本しなくていいわけですよね。
事務局:  はい。今の例で30回くらい改版していても、それは再版の規定が延々と適用されますから、内容に増減がなければ納入はしなくていいんです。
小委員長:  ただし、新書版の「漱石全集」を元にして文庫版の例えば「行人」を出したとすると、内容的には新書版と全く同じでも別の版だから文庫版を入れなくてはならない。でも、装丁を変えれば別版ですよ。豪華本にしたりしたら、再版ではないですね。
事務局:  「内容に変更がない」というとき、製本や装丁の変更の問題は、同一の版の範疇なんです。目録規則上の概念では、同一の原版又はマスターから作られる集合体として、製本の違いなどは、同一の版に属するバリエーションと位置づけられると思います。
小委員長:  アメリカの出版の常識ではそうではないですね。版名は同じでハードカバー・エディションとペーパーバック・エディションを作るとする。そのときハードカバーを納本するということです。
事務局:  「版」の言葉の問題ですね。最良版を選択するときの対象範囲をどうするか、その対象範囲になるものが同一の版であって、ハードカバーとペーパーバックの例も、まさにそれが一つの選択対象範囲に納まっている、これを同一の版というふうにいうと。
委員:  それについてさきほど定義をお聞きしたのですが、その「版」というのが、大きい概念と小さい概念があって一緒に使い分けているので、非常に分かりづらいのだと思います。大きい版と小さい版という二つの言葉があって、大きい同一の版に属する中の小さい意味での最良の版を納入すればいいと、こういうことなんですよね。同じ言葉を二つの意味に使っていることが非常に分かりにくいのだと思うんです。
事務局:  英米目録規則において「edition」とは恐らく一つの版型なんです。製本の違いでハードもぺーパーも一つの版型ですし、ただし、同一のマスターから作られている同一内容の同一発行者から出た出版物の類型だということになります。
委員:  再版かどうかを決める基準のときの「版」というのは、大きい意味での「版」なのでしょうか。むしろ、小さい意味での、大きい一つの版の中に属するけれども若干修正・増減があるので別の版という、という意味であれば、再版というのは元の版があって再版というんですから。
事務局:  はい。実際の出版事情は新組みにしたものを再版というのであったとしても、基本的には印刷イメージが一緒であれば、版組みが同じものとして、再版ということになります。それで、初版がハードカバーとペーパーバックで両方出て、出版した時期で最良版としてはハードカバーを選択したとしたらこれを納入します。それでまた、同じ原版から組み版を変えて再版した場合には、両方がまた再版の対象になります。そして、そのうちで優れた版、最良版としてはこちら、という選択をすることになります。
小委員長:  日本語は複雑なんですよ。このほかに、重版とか増刷とかいう言葉があって、出版界でも混乱しているんですね。重版とは正確にいうと増刷ですね。刷りの回数を増やしているんです。版が変わるというのはやはり組み版が変わることをいうんです。版名が変わります。同一の版で同一の時期に印刷したものがペーパーバックとハードカバーに分かれているときは、それは「edition」が変わると言います。異なる時期に出た場合は「version」が変わるということです。
 それでは、アメリカの例を、American Publishers Associationの用語集でチェックしておきます。説明を続けて頂くうちにもう少し発展するかもしれません。
事務局: 〔議題(3)「従来の出版物と『最良版』」につき、配布資料に基づき以下の内容を説明。〕
[従来の印刷出版物については、出版時期、収録範囲、発行者等が異なるケースが多く、「最良版」の選択対象となるものは比較的稀であった。
 従来の出版物で「最良版」が問題となる事例は録音資料の場合であり、レコード、CD、カセットテープのように記録媒体を異にして発行されるケースである。この場合、長期保存と利用に耐えるものという「最良版」の観点から、カセットテープについては納入免除の取扱いをしている。]
〔引き続き、議題(4)「パッケージ系電子出版物と『最良版』について」説明。〕
小委員長:  ありがとうございました。問題は、その記録媒体の違い、プラットフォームの違い、アップグレード版などということですけれども、どうでしょうか。
専門委員:  妥当な線ですと、映像資料であればDVDをまず優先させて、その次にLD、磁気的なものということでいいのではないでしょうか。なぜかというと、LDは字幕を焼き付けていますが、DVDは字を別に出していて、資料的価値が大きいわけです。なおかつ、ワイドでも画質が非常に違います。磁気的なものは10年くらいは持ちますが、100年経つと膠が出て見ることができなくなります。ただ、心配なのは、まずレンタルで出て、1年から1年半しないとDVDが出ないので、時差があるわけです。それを、違う版と見るのか、DVDが出るまで待つのか。洋画は早いですが、日本では紳士協定がありますからね。
専門委員:  映像を記録した出版物については、DVDが優先でいいと思います。これからLDの新しい版は出てこないと思います。ただ実態として、出荷統計ではいまだに70%がアナログ方式によるソフトですので、現時点でDVDが優先だからといってアナログを無視するわけにはいかないと思います。そうなると、字幕版、吹替版、ワイド版はそれぞれマスターが違うから全部納本対象とするというのは、どうかと思います。この中からベスト版を決めて納本したほうが、効率的ではないでしょうか。
 それと、レンタル用とセル用の問題についてですが、基本的に業者は、消費者に供給するのはセル用のものと考えています。レンタル用はレンタル業者に対して提供しているものですから、そういう意味で、納本するのはセル用に限定したほうが分かりやすいのではないかと思います。ビジネス上、レンタル用のほうが収入が大きいので、先に発売して、しばらくしてからセル用を発売しているわけです。だから資料として最新の作品を所蔵したいのであれば、レンタル版も無視できないと思います。
事務局:  法律をまず押さえた上で、実際の運用に当たって特殊な出版事情を考慮することはあると思います。
専門委員:  近い将来、DVDが主軸になることはまず間違いないですね。
委員:  いわゆる異なる出版物の議論の中には、異なる出版物として納本対象になるかどうかという話と、その出版物の中で最良版を納めなければならないという話と両方あるのではないでしょうか。これを切り分けないと分かりにくいと思います。まずは違うものかどうかという話ですね。納本すべき出版物というのは、同一のマスターから作られた出版物で、それを全部一つのものとしてみてよいということですよね。
事務局:  もともとが別の「版」の出版物であれば、最初からそれぞれを納本しなければなりません。一つのvariationしかなければ問題はないのですが、複数ある場合にどうするか。映像系ですと、記録作品の複製のもとになるものがあって、そこから字幕版、吹替版などのマスターというようなものが作られた場合に、これらをマスターととらえるのではなく、もっと元のところでとらえれば、字幕版か吹替版かというのは最良版の問題になると思います。また、時系列的にみると、まずビデオテープで出た場合にはこれが納入されますが、ビデオテープは保存、維持管理が大変ですから、発行者の意図として、DVDのように最良版に該当するものを後で出すことがはっきりしていれば、ビデオテープについては特別な事由があるとして25条の但し書きの規定により納入を免除して、DVDが出たときに納入するとすることは可能でしょうか。
小委員長:  しかし、それは予測不可能な部分を含んでいるのではないでしょうか。
委員:  そのときどきで判断しなければならなくなりますね。
専門委員:  はっきり申し上げて、10月に新納本制度が実施された時点で、DVDだけを納めるというのは時機尚早だと思います。
事務局:  現在、DVDが全部をカバーしているわけではないですから、カバーされていない部分は、アナログを納入ということになります。
専門委員:  それが7対3の割合ですから、しばらくはDVDとビデオテープを両方納めなければならないでしょう。ただ、これから成長していく媒体と、そろそろ終わりになっていく媒体ですから、最良版はDVDとして、暫定期間をおき、アナログ版についても納本するように、という規定にすればいいのではないかと思います。
 セルとレンタルの件ですが、DVDの場合は、セルとレンタルの比率がかなりセルに移ってくると私は思っています。パッケージが小さくなりますし、現時点でかなり値段が安く、セルとレンタルにおける発売期間の差も短くなりつつあります。そういう点で、基本的にはセル用を最良版にして納入し、レンタル用を先に納めなければならないものはそれを納めるのがいいと思います。
小委員長:  レンタル用で最初に出された場合、そのほぼ100%がセルになりますか。
専門委員:  基本的に、アメリカ映画の場合は、「セルorレンタル」で出されます。それからかなりの月数が経っていわゆる廉価版として「セルオンリー」が出されます。反対に、日本映画の場合は、セル用とレンタル用が完全に区別されていますが、比較的早い時期にセル用が安い値段で出されます。
専門委員:  ただ、一部の人にだけうけるものはレンタルでしか出さない場合があります。
小委員長:  国立国会図書館の側で問題にしているのは、代償金ですか。
事務局:  レンタル系のものの代償金額算定の基準をどうするかということはあります。ただ、リース、レンタル方式、ライセンス契約のものも全て納入対象である、というのが納本制度調査会答申の趣旨ですから、レンタル用のみで出ても納入対象となります。その場合の額は、代償金部会の議題にするしかないのではないでしょうか。
小委員長:  代償金部会で、レンタル用は高価なのでセル用の発売を待つ、と決めることはできますか。それとも、代償金部会では代償金額を決めるだけですか。
委員:  レンタルビデオでも「発行」とみなされれば、やはり納本しなくてはいけないことになるし、あとは代償金をどうするかではないでしょうか。
事務局:  そこは代償金部会の問題として処理していただければいいのかと思います。レンタル価格、リース価格だけしかない場合は、小売価格を基準とするとの答申をいただいておりますので、妥当な小売価格に換算するとどうかということでいいかと思います。
小委員長:  では、その問題は代償金部会に委ねましょう。
専門委員:  レンタル用が出ても、必ずあとからセル用が出ますので、時間の問題です。だから、代償金については両方とも同率で決めればいいのであって、それをわれわれのほうで、セル用が出るのであればセル用が最良版だという解釈はできると思います。
専門委員:  セル用とレンタル用で作り方は違いますか。
専門委員:  違いません。質の違いではなくて、特典が余計に入っているとか、違う予告編が付いているという違いで、要するに、本編ではない付属の部分に違いがあります。
委員:  最良版というのは、同時期に出た同一出版物の中の最良版だという定義で、出版物が媒体によって違った場合、違う出版物になる場合もあり得るわけですよね。それから、同じ出版物でも時期がずれて再版扱いになるものと、さらに再版扱いの中で修正の程度が小さいので納本義務がないものというように、いくつかカテゴリーがありますね。最初にアナログで出たものが後からデジタルになったというのは、時期が異なるので最良版の問題ではなくて、むしろこれは違う出版物として見るのかどうか。さらに、違うものであるけれども再版として扱うのか、また、再版ではなく全く違うものとして扱うのか。再版として扱っても、修正が微々たるものなので納本義務がないとみるか、その辺を書き分けないといけませんね。
事務局:  多分、時期があまりに異なるものを、最良版の問題としてではなくて再版の問題として論ずるべきなんでしょうね。同一マスターから作られたものについては、そのグルーピングで最良版を論じればいいというのが、ここでの考え方なんです。
委員:  それで、時期が異なるものは、むしろ再版ということですよね。
事務局:  そうですね、この場合は再版と考えたほうが、国立国会図書館法の規定からいうと妥当だと思います。
委員:  そう考えればいいと思います。最良版として、時期も待って一番いいものを選ぶとするとちょっと。
事務局:  ただ、出版者が明確に、ビデオテープを出す2ヶ月後に必ずDVDを出すというときには、前者の納入を免除すると考えることはできると思います。
委員:  同一時期というのを少し長くみて、例えば1年以内を同一時期とみて、その中は再版ではなく、最良版の話だというふうにすれば。
小委員長:  時期を決めるのは難しいので、最初はビデオカセットを入れて、DVDが出たらDVDを入れてもらって、ビデオカセットは将来的には除籍するのというのは。
事務局:  一度入ったものを除籍するというのは極めて困難です。また、今おっしゃられた予見性というのがなかなか、正直、実務から申し上げますと難しいことかと。
小委員長:  時期の問題は、例えば商品の告知のところに「DVD、何年何月発売予定」とあったら待つ、ということではどうですか。発売が明記されていれば待つ。まず網羅的に収集することでしょう。
事務局:  それもありますが、保管スペースの問題もありますので、納本機関としてみればそのようなことも想定しておかなければならないと思います。
小委員長:  問題を整理しましょう。映像系については、割合すんなりいけそうですね。音を記録した出版物の場合、これは光ディスクを優先させるということで、問題ないですね。カセットテープは収集しない。
事務局:  はい、現状でもそうです。
小委員長:  映像は大体議論していただけましたので、あとは、その他のパッケージ系電子出版物の場合ですね。光ディスク>磁気ディスクですから、これは媒体別の最良版ということでいいですか。フロッピーディスクではなくCD-ROMということで。
 次に、②プラットフォーム、対応ソフト別の相違のところに進みましょう。
専門委員:  例えば『LULU』などはNTSCの画面で見るよりRJBの画面で見るほうがきれいだし、明らかにデータを落としてるんですよね。やはりテレビ画面で出せるのは限られてますから。例えばGLAYの音楽のCD-ROMとMac用とゲーム用があるんですが、ゲームバージョンはかなり落としているんですよね。
小委員長:  あれはデータを間引くよりも、フォントを変えているのではないですか。
専門委員:  映像もそんなに処理できないから、かなり原盤は映像を減らしているんです。
小委員長:  すると、『LULU』の場合には、Mac版、Windows版、プレイステーション版、セガサターン版のすべてを対象とするのですか。
専門委員:  でも、プラットフォームだけでも何種類もありますね。集めてもプラットフォームがなくなるものもあります。それから、もう一つはバグが出た場合、今まではアップグレード版が出ましたが、最近はネットで差の部分だけ持ってきますよね。そうすると、国立国会図書館がこれにいちいち対応するとなると大変な話になります。
小委員長:  バグがあってもそのバグを修正した次のversionのCD-ROMが出たらそれを納めてもらう、ということしかないのではないでしょうか。
専門委員:  OSの場合ですとversionの3.0、3.03、3.05などがありますが、それをそのたびごとに入れるのですか。これらは基本的にあまりはっきりしないんですね。1年半~2年で新しい機能を追加したパックにして、二つないと動かないというものもあります。そういうものをどうするかということがあります。
小委員長:  まず、国立国会図書館がユーザー登録するかどうかということがありますよね。
専門委員:  OSはそもそも文化を記録保存するために納本するのか、それとも活用するために納本するのか、その辺はどちらなんですか。
事務局:  アップグレードがパッケージ化されて頒布される場合は、それを納入することになると思います。それがユーザー登録した上でインターネットを通して送られる場合は、今のところ納本対象ではありません。図書の場合も、訂正版が分けて出されれば納本対象となりますが、正誤表が郵送されてくる場合は資料に挟んでおくだけです。バグの訂正の場合も、そのような形で考えることもあり得るでしょうし、新しいきちんとしたversionが出てくるまで待つということもあるのではないでしょうか。
専門委員:  ただ、一般の方はどれくらいのバグなのか分かりませんね。そうすると、致命的な欠陥もあればそうでないのもある。やはりそれはきちんと対応しなければ。
小委員長:  致命的な欠陥の場合は、CD-ROMが新規に来ますよね。それを納めてもらえばいいのではないですか。
専門委員:  バグが出てそのCD-ROMがないとネットワークが動かないということもあるんです。しかも製品が出た後にAの製品、Bの製品、Cの製品がバランスよく出るのではなく、早い者勝ちですから、そこに工夫が必要だと思うんです。
専門委員:  プラットフォームはどこまでをカバーするのでしょうか。今度、MP3を載せた高機能の小さいデジタルカメラが出ますが、これは音楽が聞けて、スマートメモリーに広告を刷り込み、様々なデータを入れて、デジカメのディスプレイを使って見るというものです。そういうものまでパッケージ系電子出版物として対象になるんでしょうか。また、ある社は今年中に携帯電話にメモリースティックでゲームを出すんです。
専門委員:  システムはどうなるんでしょうか。
事務局:  それぞれのシステムとセットで特定用途に使うというようなものであれば、それ自体は出版物ではありません。出版物とは市場で不特定多数に広く頒布するものをいうということです。
専門委員:  携帯電話は非常にたくさんありますから大変です。みんなメモリーが入るようになります。だから、図書館に来た人に携帯を貸すのか、という話になってしまう。
事務局:  「最良版」の決定基準についての利用の観点にその概念は記されているので、そのあたりはうまく運用ができるのではないかと思います。
小委員長:  利用の利便性に優れたものを優先する、ということですね。では、その辺のことを含めて、今日の議論を踏まえて問題を整理していただくということでどうでしょうか。あと、データベース系で内容が次々と更新されるものはどうでしょうか。
専門委員:  事業者はどこを直したのか明らかにしませんが、基本的に同じものでも少しずつよくなっているのは確かです。また、追記型のものをどうするかです。レコード数が倍になったり、2枚組み、3枚組みになったりするものがあります。
小委員長:  ユーザーが特定の業種ならそれを購入するタイトルが決まっているわけですからいいですよね。ここではデータベース事業者が提供するもの全部が対象になりますから、代償金が問題となりますね。
専門委員:  売るのではなくて、データを貸す、使用許諾のみを与える場合もあります。
事務局:  リースで使用許諾形式で頒布されるものも納本対象であるだというのが答申の趣旨なのですが、リース価格が額の算定の元となるかどうかは決まっていません。
小委員長:  それでは、今日の議論を代償金部会に委ねるものと、この小委員会で決めるものとに整理していただいて、最良版についての今日の議論を踏まえて原案を出し、次回それを確認していくということでよろしいでしょうか。
専門委員:  もう一つ心配なのは、通産省の指導で、機械は、6年か7年所定の年数が過ぎると、部品を作らなくなり、修理をしてくれないんです。LDはもうあと何年かでなくなると思うんですが、機器が故障したらどうするんでしょうか。
専門委員:  DVDにしろ20年しかもたないそうです。規格はもっともたないんだそうです。新しい規格が出ますから。
専門委員:  そのあたりは、メーカーが何とかして互換性なり対応するとは思いますが。
事務局:  いろいろ御指摘いただいた点、御相談しながら進めていきたいと思います。
小委員長:  だいたい予定の時間のようです。ありがとうございました。
〔閉会〕

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