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第28回納本制度審議会議事録

日時:
平成29年3月16日(木)午後4時~5時
場所:
国立国会図書館東京本館3階総務課第一会議室
出席者:
中山信弘会長、福井健策会長代理、植村八潮委員、遠藤薫委員、相賀昌宏委員、角川歴彦委員、斎藤誠委員、斉藤正明委員、鹿谷史明委員、永江朗委員、根本彰委員、野原佐和子委員、佐々木隆一専門委員、三瓶徹専門委員、樋口清一専門委員
会次第:
  1. 代償金部会の調査審議経過報告
  2. 電子書籍・電子雑誌収集実証実験事業の現状について
配布資料:
  • (資料1)第27回納本制度審議会議事録
  • (資料2)納本制度審議会委員・専門委員名簿
  • (資料3)第13回代償金部会における審議の概要について
  • (資料4)第14回代償金部会における審議の概要について
  • (資料5)電子書籍・電子雑誌収集実証実験事業について(平成29年3月)
  • (資料6)電子書籍・電子雑誌収集実証実験第2段階における枠組み
  • (資料7)電子書籍・電子雑誌収集実証実験第2段階における枠組みに対する主な意見
  • (資料8)国立国会図書館法(昭和23年法律第5号)(抄)
  • (資料9)納本制度審議会規程(平成9年国立国会図書館規程第1号)
  • (資料10)納本制度審議会議事運営規則(平成11年6月7日納本制度審議会制定)
  • (資料11)国立国会図書館法によるオンライン資料の記録に関する規程(平成25年国立国会図書館規程第1号)
  • (資料12)国立国会図書館法第25条の4第4項に規定する金額等に関する件(平成25年国立国会図書館告示第1号)
  • (資料13)国立国会図書館法第25条の規定により納入する出版物の代償金額に関する件(昭和50年国立国会図書館告示第1号)
議事録:
(開会) 定足数の確認等
会長:
それでは、全員が揃いましたので、第28回納本制度審議会を開催いたします。委員の皆様にはお忙しいところ御出席くださいまして、ありがとうございます。
本日は、15名の委員中12名の委員に御出席いただいておりますので、定足数は満たされております。また、本日は専門委員のみなさんにも御出席いただいております。
なお、傍聴の方は、メモをとることは差し支えございませんが、自由な審議を行うため、録音及び写真撮影については、御遠慮ください。
それでは初めに、事務局から配布資料の説明をお願いします。
事務局:
〔配布資料について説明。〕
会長:
資料はお手元に全部そろっていますでしょうか。それでは進めて参ります。
会次第にはございませんが、ここで、昨年3月に開かれた、第27回納本制度審議会の議事録の取扱いについて、事務局から説明があります。
事務局:
議事録につきましては、前回出席された委員の皆様方の御確認、御了解を得た上で、議事運営規則第16条の規定により、既に当館ホームページで公開しております。
(会次第1)代償金部会の調査審議経過報告
会長:
それでは、会次第の1に入ります。代償金部会の調査審議経過報告につきましては、斎藤誠部会長から報告をお願いします。
部会長:
それでは、御報告いたします。
前回の納本制度審議会から今回までの間に、代償金部会が2回開催されました。それぞれの部会の調査審議の経過について報告いたします。
まず、昨年8月3日に開催された第13回代償金部会の審議の経過について報告いたします。資料3をご覧ください。
代償金部会では、平成27年度に、いったん代償金を支払った物が納入対象ではなかったことが判明し、代償金の返金に至った事案が発生したことを受けて、代償金制度の課題について審議を続けてまいりました。
平成28年6月には、代償金に関する財務省予算執行調査の結果が公表されましたので、その指摘事項も踏まえて、代償金制度の課題についての検討が行われました。
短期的な課題については、運用改善策をとりまとめ、これを実施していくことで合意されました。
代償金制度の中長期課題については、高額少部数の出版物に対する補償の在り方という観点から必要な調査を行い、検討を進めることで合意されました。
第13回代償金部会の審議の概要は、以上です。 続いて、今年3月13日に開催された第14回代償金部会の調査審議の経過について報告いたします。資料4をご覧ください。
事務局から、高額少部数出版物等の収集及び代償金交付の今後の対応について、提案がありました。
財務省の指摘事項に対しては、受入基準の公開や、代償金交付に係る審査フローの整備を行うこと、パッケージ系電子出版物や高額少部数出版物については、代償金交付に係る審査をより厳正に執行していくこと等によって対応していくとの内容につき審議し、事務局の提案について了承しました。
第14回代償金部会の審議の概要は、以上です。
この部会で出された主な意見については、事務局から説明させます。
事務局:
〔資料4に基づき説明〕
会長:
ありがとうございました。ただ今の部会長の報告及び事務局からの説明について、何か御質問や御意見はありますか。
委員:
今回の検討のきっかけとなった「亞書」の件は一件落着したのでしょうか。
事務局:
「亞書」の件そのものは終了しています。代償金も返納いただき、資料もこちらから返却いたしました。
会長:
従来なかった事件であったので、対応には大変苦労されたことかと思います。
他に御意見、御質問はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
(会次第2)電子書籍・電子雑誌収集実証実験事業について
会長:
続いて、会次第の2に移ります。平成27年12月から開始された電子書籍・電子雑誌収集実証実験事業について、事務局から説明を聴きたいと思います。
事務局:
〔資料5に基づき説明〕
会長:
ただ今の件については、この審議会の前に開催されたオンライン資料の補償に関する小委員会でも議論されたということです。小委員会での議論の様子を福井小委員長からご紹介いただけますか。
小委員長:
それでは御紹介します。短い限られた時間ではありましたが、小委員会では、密な議論が交わされました。その中心としては、事務局からの報告にもあったとおり、館内での利用・閲覧に係る出版界の納得の問題、これがDRMを外す、外さないの問題の絡みで、大きな課題として提示されたように思います。現状を整理いたしますと、この審議会がオンライン資料の制度的収集についての答申を提出したのが平成24年のことになります。その結果、国会図書館法は既に改正されておりまして、制度的収集は25条の4によって可能な状況です。ただし、附則において、館長が認める当分の間は有償又はDRMが付いたものについては提供を免ずるという措置が行われている。この経過規定に基づく免除の期間を永続的に続けるわけにもいかないので、ここでブレークスルーが必要であろうと考えます。小委員会においても、そのブレークスルーの方法について様々な御意見をいただきました。代表的な意見をご紹介いたしますと、最も多く述べられたものは、保存と利用というものは、国会図書館の役割を考えると、必ずしも完全に一致させる必要はないのではないか、分けて考えてもよいのではないかということです。保存は十全に行い、閲覧・利用提供については例えば一定の限定があるということも解決策として考えてもよいのではないかということでした。これが、例えば各地の公立図書館と国会図書館との位置付けの違いでもある、というものでした。その具体例として、民間で商業流通されている電子出版物については保存をしたとしても、館内閲覧はさせない、いわゆるダークアーカイブ的な発想の提案もありました。つまり、民間での商業流通がなくなったら、その時に国会図書館の館内での閲覧を可能にすればよいのではないかとの提案です。あるいは、それでは永久に館内閲覧できないという状況になってしまうため、国会図書館の役割としても望ましくないであろうとのことで、一定の期間は館内閲覧をできない状態とするが、その期間以降は館内閲覧を解禁するとしてはどうかという提案もありました。いずれについても、例えばデータ解析のための利用等、一定の利用については最初から可能としてもよいのではないかとの意見もありました。利用と保存を分けるという御意見の他に出たものとしては、権利者としての著者と各出版社との意見の統一の取り方についての指摘がありました。著者としてはある程度の権利制限については納得が得られているのではないか、との指摘です。他方においては、出版社としてもそうした時代の流れについて理解はしているが、数多くの出版社が存在し、理解度にも差がある中で、出版界内での説得も必要であるという意見もありました。以上のように、様々な御意見、御指摘があった小委員会となりました。
会長:
ありがとうございました。非常に難しく、デリケートな問題であります。それでは、ただ今の事務局及び福井小委員長からの説明について、何か御質問や御意見はありますか。
委員:
何か補足がありましたらお願いします。
委員:
報告いただいたとおりで問題ないと思います。
委員:
先ほどの報告の中で実証実験が利用可能な端末を大幅に増やされたとのことでしたが、その割には利用数はそんなに増えていないように見えます。館内の端末の入れ替えがあり、端末を利用できなかった空白期間があったことは承知していますが、20台を670台に増やしたにも関わらずこの利用数に留まっている状況について、事務局としてはどのように考えていますか。
事務局:
私共といたしましても、端末台数が30倍になったとしても、利用数はそんなには伸びないのではないかと考えておりました。といいますのも、今回閲覧用アプリの配信を行った端末が実験専用の端末というわけではなく、当館にいらっしゃった利用者の方が、通常の検索や閲覧請求、複写請求を行うものとなっています。従いまして、実証実験用コンテンツをご覧になりたいという方だけが使用する端末ではないため、他の事をされてからコンテンツをご覧になるという、優先順位が発生しているのではないかと推測しています。
専門委員:
先ほどの小委員長の報告に追加させていただきます。納本制度自体ではありませんが、納本制度を補完する仕組みといたしまして、公共図書館に電子書籍をサービスする会社が最近増えていますので、例えば、先ほどの保存と利用を分離するという考えに基づいて、利用についてはそのような電子書籍サービスを国会図書館も利用して、そのサービスに含まれる電子書籍についてはDRM無しで国会図書館に収めることとすれば、比較的保存と利用を分離しやすくなるのではないかと考えます。
委員:
おっしゃるとおり、商業流通している電子出版物は国会図書館内で利用させないということについて、それでも館内で利用したいという来館者に対しては、商業流通しているものを国会図書館が対価を払う形で提供してはどうかといった提案もありました。制度設計をどのように行っていくかということについては今後の課題でもあると考えていますが、いずれにしても、国会図書館における保存と利用者の便宜に、民間のサービスをどのように組み合わせていくかという避け難い課題があり、それに取り組んでいかないといけないと感じました。
委員:
先ほどのお話にもありましたが、利用可能な端末が増えてもそれほど利用実績が増えないということは、結局は国会図書館に漫画を読みに来る人はそれほどいないということだと思いますので、議論の焦点をそこに過剰にあててしまうと、議論の内容が偏ってしまうのではないかと思います。研究者としての立場から言わせていただければ、電子書籍、紙媒体に関わらず、現在の出版状況ではほとんど流通していないような資料というものがあって、国会図書館だけが最後の頼りといったところがあります。そういう立場の者にとっては、国会図書館での調査研究のための資料閲覧というのが最後の砦となってくるわけですから、漫画を国会図書館で読む人というのを念頭に置いて議論して、調査研究者の便宜といいますか、調査研究の発展というものが阻害されてしまうようなことがあっては、国会図書館は何のためにあるのかということになってしまいます。その点をおさえながら議論していただけるとありがたいと思います。
委員:
私は収集保存と利用を分けて検討すべきではないかと考えます。さらに、その利用のあり方に閲覧がデフォルトで含まれているものなのか、むしろ利用の中から閲覧を分けて考えてはどうかと思っています。閲覧のない利用は、まさに国会図書館しかできない仕事であって、例えばビックデータの解析のための素材提供や、あるいはすべての本を検索可能とするためには、国会図書館によるメタデータの提供があってのことです。そういったものを提供することは民間の電子図書館サービスにはできない仕事だと思います。単に閲覧するだけであれば、それは既に民間の図書館サービスとしてあるわけです。国会図書館の仕事として調査研究のためのメタデータ利用というのは素晴らしいことであって、そのような整理をすべきではないかと考えています。
もう1つ、その議論の前提としての質問になりますが、国会図書館法第21条は、図書資料を「国立国会図書館の建物内で若しくは図書館相互間の貸出しで」利用に供するとありますが、これを読むと、電子書籍が閲覧可能となった場合、図書館間相互貸出しによっても利用されると読めてしまいますが、そのような理解でよろしいのでしょうか。
事務局:
まず、第21条の「閲覧の提供を受けた図書館資料と同等の内容を有する情報」というのは、必ずしも私共が収集した情報を指すわけではありません。現状で申し上げますと、契約ジャーナルのような外のデータベースと利用権契約を結んだようなものが入ってきます。従いまして、それを図書館間相互貸出しによって提供することはあり得ません。この第21条第1項第1号では、すべての資料に条文の後半部分が適用されるわけではなく、利用形態に複数の選択肢があると読んでいただければと思います。
委員:
補足になりますが、メタデータの検索ももちろん必要ですが、資料の閲覧についても、娯楽ではなく調査研究のために必要なことはたくさんありますので、その点についてもご配慮いただければと思います。
会長:
そのとおりだと思いますが、制度設計上考えなければならない点もあるかと思います。先ほどの利用実績の中に雑誌も多くありましたので、どのような雑誌かはわかりませんが、その中に研究者も含まれているかもしれません。
委員:
国会図書館の中で閲覧させるということと、国会図書館が公立図書館に閲覧を任せてしまうということは別の問題だと思います。国会図書館で閲覧できるようになると、それが公立図書館に流れてしまうおそれがあるから反対だという出版社も多いのではないと思います。今回は国会図書館内だけですよね。わざわざ国会図書館まで来るわけですから、そこには意志があると思います。ところが、国会図書館から公立図書館に流れてしまって無断で読まれてしまうということには、国会図書館の意志がないじゃないですか。それを分別できれば、出版社はもっと理解すると思います。
委員:
すごく賛成です。
委員:
この実験についてお話をうかがっていると、一方で有識者の方々が前向きに議論されていること、それから国会図書館の事務局も大変苦労されていること、その様子がひしひしと伝わってきます。他方で、日本には非常に多くの出版社があり、ビジネス状況も決して楽ではありませんので、そのとりまとめに、出版界の代表の方々が苦労するということも大変理解できるところではあります。しかし、お話をうかがう限り、実はその差はもう小さいところまで来ているのではないかという気がします。例えば、先ほどのダークアーカイブ、つまり商業流通されていないものは見せればよいではないかということと、一定期間は館内閲覧禁止として、それ以降は館内閲覧させてもよいのではないかということとの差はだいぶ狭くなっているのではないかと感じます。その意味では、ここまでの議論を決して無駄にせずに、アーカイブとしての国会図書館の役割を十全化できるように、何とかその差を埋めていただきたいなと思います。その時に鍵になることが2つあると思います。1つ目は、安心感や信頼を持っていただくためにはどうしたらよいかということだと思います。国会図書館にDRM無しで渡したら最後、全国に流出してしまうのではないかという恐怖心はやはりあると思います。それに対して、例えば、まずは現行の制度はそういう形にはなっていないこと、著作権法第31条第3項は最初から電子出版物として館に提供されたものに対して適用されるようにはなっていないとの理解や、今後もそういうことは考えていないということを、宣言するということが1つの安心材料になるのではないでしょうか。もう1つは、国会図書館も税金を使っているので、税金を使うということが正当化される制度でなければならないという視点だと思います。あまりに収集後の利用が制約されてしまうと、いくら保存と利用が別とはいっても、そのために高額な税金を使えるのかという議論が起きてきてしまうかもしれない。そうすると、肝心のアーカイブの進行が停滞してしまうかもしれない。だから、安心をしていただきつつも、最低限使った税金分の効果はあるなと感じられる制度設計が必要になるだろうと思います。この点で、ダークアーカイブ、つまり商業流通していないものは館内閲覧してよいではないかということに対して、少しだけ懸念を感じるのは、流通しているしていないを誰が把握して、いちいち館内閲覧可能ということにするのか、何十万というコンテンツに対してそれを行えるのかといったことが心配としてはあります。それよりは、一定の期間の間は館内閲覧させないが、この期間以降は館内閲覧させるということで一律の扱いをさせるということも考えられるのかなと思います。最後の部分は私見でございました。
会長:
恐らくこの後の制度設計次第でどのようにもできるかと思います。
委員:
今の議論は国会図書館内の委員の間だけでなく、業界に投げ出して他の話も聞いてみないといけないと思います。私は1つの会社の意見としては言えるが、業界の代表としての意見は言えないと思っている。ここだけで決めるのは、非常に難しいと感じています。正直、恐怖心は本当にあります。
委員:
館内資料となった場合に、法律の仕組みが変わるということについて、将来まで変わらないと保証できるのかという議論になった時に、誰も何も言えないと思います。国会図書館を信頼しているしていないということではなくて、外部要因がどのように働くかが見えないことなんです。その時にどのように法律が変わろうと、ある程度の安心感が得られる仕組みがないかと考えた時に、私は基本的に過去のデータはすべてダークアーカイブにして、あくまで保存ということに視点を置くべきだと思いますし、利用については館外のサーバーから手を入れたデータを含めて、積極的に供給して館内利用させる、そうすることでそのサーバーから出ることはコントロールできますので、業界としてもこの話には乗れるのではないかと考えています。しかし、それでも困ると考えられるのは、例えば医学書のように数ページでも見られると特許に使われるといったことがありますが、そういったところには、例えば時間をずらすとか、出版社や著者の判断を入れなくてはならないかなと思います。そういう意味でも、完全にすべてのデータを国会図書館に渡さない方がよいのではないかと思っています。利用について国会図書館の判断に委ねることは、かえって国会図書館に苦労を掛けてしまうのではないかと思っています。
委員:
著作者側から言いますと、文藝家協会の中でもいろいろな議論があります。作家の立場としては3つ程ありまして、1つは書く表現者としての立場であり、2つ目は読む人であり、3つ目は書いた物によってそれをお金に換えるというものがあります。表現する人として考えると、存在しないことになってしまうことが一番つらいことなわけです。例えば、グーグルの検索対象にならなければ、それは電脳空間に存在しないことと同じでありまして、表現する側としてはどんな形であれ、一般の利用者に対して、自分の表現物は国会図書館の中にあるということを示すことがアイデンティティであって、ビジネスの部分で警戒することによって存在が伏せられてしまうということが書き手にとっては一番つらいことだと思います。そのような著作権者の意思、書き手の意思というものをどのように汲んでいくのか、もちろん出版社というのは著作権者の代弁をしていただくこともありますけれども、出版社の利害と著作権者の利害は必ずしも一致していませんので、そのような著作者側の意思を汲み上げるような仕組みが必要ではないかと考えています。
委員:
研究者というのは同時に発表者でもありまして、学会もたくさんありますが、学会というのは大体学会誌で採算をとっているようなところもあったのですが、現在は積極的に無料の電子ジャーナルで配信しています。それは、財政的には苦しいのですが、反面、無料で配信してしまった方がアクセス数が増えて、多くの人の目に留まるというすごく嬉しいこともあって、学会としてはそのような流れに流れてしまっているという状況もあります。もちろん、出版社の立場としては、ビジネスとしての権利を保護するというのは必要だと思いますが、表現者の意思とどこかでうまく接続できるような制度ができればいいなと思います。
会長:
確かにこの問題は非常にステークホルダーが多いので、その調整は難しいかと思いますが、そのあたりをうまく調整して制度設計をしてもらえればと思います。
委員:
この実証実験とはまったく別の論点となりますがよろしいでしょうか。納本制度については国会図書館法第24条第1項に書いてあるわけですが、今、全国公立図書館協議会というところで、全国の公立図書館が地域資料や行政資料、自治体の資料、これをどのように集めているかの調査を行っております。国会図書館は国の機関として、一応この法律によればすべての自治体のすべての資料を納本させることができるとなっているかと思いますが、実際はそうなっていないかと思います。そうすると、結局は地域の公共図書館がその地域の公共団体の行政資料なり知識を集めるということになるかと思いますが、その辺の関係を明確にしていきたいと思っています。さらに問題になるのが、現在はインターネットで行政文書が大量に公開されていて、紙の冊子が作られない状況となってきています。これについても、国会図書館としてはWARP等で集めようとしているかとは思いますが、一体どこまでの範囲でどのように行うのかという視点をはっきりさせることが必要かと思います。調査を行っていると、今は公立図書館は財政的に極めて厳しいし、人的にもこのようなサービスにきちんと対応できる状況ではありません。そういう意味では国会図書館はしっかりとしたものがあると思うので、国会図書館の視点がある程度明確になっていれば、公共図書館もそれとの関係で自分の図書館のサービスも見えてくるといった相互関係にあると思います。そういった意味では、国会図書館法第25条にある民間の出版物を中心とした議論がずっと行われているかと思いますが、例えば国のものがどうなのか、地方公共団体のものがどうなのかといった議論もどこかの場でしていただければという希望を持っています。
収集書誌部長:
私共もその点は課題であると思っています。WARPによって、地方公共団体の電子的なホームページ等は収集できる仕組みはできており、加えて印刷資料で刊行されているものについても網羅的に収集するという取り組みを行ってきていますが、現実的にはすべての行政情報を集められているわけではないという状況があります。そのような中、デジタルのものが出てきたという環境において、地方公共団体の負担とならない形で、国民がより幅広い情報を見ることができるような仕組みをどのように作っていくのか、私共もこれから検討を進めていきたいと思っております。
会長:
ありがとうございました。その他、全般的に何か御質問はありますか。よろしいでしょうか。
予定されている議題は以上で終了いたしましたが、何か御意見や御質問はありますでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、以上をもちまして、第28回納本制度審議会の会次第は全て終了しましたので、これにて散会といたします。
(午後5時終了)

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