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納本制度審議会 独立行政法人等の出版物納入義務に関する小委員会(第2回)議事録

日時:
平成15年12月16日(火)正午~午後2時
場所:
国立国会図書館 特別会議室
出席者:
塩野宏小委員長、小幡純子委員、高橋真理子委員、百﨑英委員(納本制度審議会独立行政法人等の出版物納入義務に関する小委員会所属委員)
会次第:
1. 調査審議
2. 今後の予定について
配布資料:
改訂 独立行政法人等の出版物納入義務に関する論点メモ(事務局作成)
 付:(参考)納本制度における独立行政法人等の位置付けについて(国の場合)
(資料1)館法第24条及び同条中「公用」の規定の沿革・経緯
(資料2)中央省庁、独立行政法人、特殊法人・認可法人、地方公社の出版物の編集・発行形態調査表
(資料3)独立行政法人等関係規定

議事録:
1 調査審議
小委員長:  それでは第2回の小委員会を開始いたします。
 前回の小委員会では、独立行政法人等のうち、国等と同様に出版物の納入義務を課すべき範囲について議論をいたしました。今回は、この問題を引き続き議論した後、独立行政法人等のために発行された出版物についてどのように扱うかという問題がまだ残っていますので、そちらの問題へ移りたいと思います。
 独立行政法人等が発行した出版物の扱いについて、前回は事務局に作成いただいた論点メモをもとに御議論いただきました。いろいろと御議論があった中で、事務局作成の論点メモでは国等と同様の義務を課す法人として、政府全額出資という要件を掲げていたわけですけれども、国立国会図書館法に規定される「公用」という収集目的から見て、政府全額出資という点を第一の判断基準とすることには多少の疑問がありました。その後、事務局には委員の御意見をお聞きいただいた上で鋭意、考えを組み立てていただきました。それが今日提示されている改訂版の論点メモです。まず、その説明を伺ってから、議論をしていきたいと思います。
 それでは、事務局からまず資料の説明をお願いいたします。
事務局: 〔配布した論点メモに基づき、次の改訂の基本的考え方を中心に説明。その要点は、次のとおり。
 国等と同等に義務を課すべき法人の要件として、代償金交付の要否を主要な要素と考えて設定された「政府全額出資」という基準に代えて、各々の法人の設立目的・任務をみた場合において、納本制度の目的にかんがみれば国・政府と同等の納本義務を課する必要がある程度に国・政府等と同等に考えられるか否かという基準によることとした。
 政府出版物の納本制度の目的は、究極には国会による政府活動の民主的統制という理念に奉仕するものであり、国民主権の理念の下で政府活動の説明責任を全うするという目的を有する情報公開制度と理念的に共通性を有する。
 このように考えると、納本制度において、国と同等に扱うべき独立行政法人等の要件は、独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律の対象法人についての考え方を基本とすることができる。ただし、情報公開制度と納本制度とでは、その目的等に異なる点もあるため、納本義務の対象とすべき法人の範囲に差が出てくることがあり得る。
 以上のような基本的考え方に基づき論点メモの組み立てを改めた。〕
小委員長: どうもありがとうございました。国立国会図書館法の解釈については前回、御説明があり、「公用」とは何かなどについては委員の皆さまに御了解いただいたと思います。
 今回、論点メモの内容が多少変わっております。この改訂論点メモの作成に当たっては私も事務局から相談されましたので、ここで私なりの理解を申します。国立国会図書館法に規定された収集目的である「公用」という概念を吟味しますと、これは政府の活動に対する国会の民主的チェックのためということです。納本制度に似たようなものとして情報公開制度がありますが、これは政府の説明責任を果たすためのものと考えられます。これが第一の出発点になります。「公用」概念から対象法人を考えていきますと、独立行政法人等情報公開法に関して議論した際の考え方が参照できるので、それを参考としながら国の機関と同様の納入義務を課すべき法人を考えたということです。
 ただし、独法等情報公開法と納本制度では違いもあります。独法等情報公開法では特殊会社のうち、関西国際空港を対象としていますが、今回の論点メモでは納入義務を課す対象から外したということですね。組織形態の異なるものを含む公営競技関係の5法人は、組織形態に着目して別々の扱いをするか、任務に着目して一括して扱うか、考え方としては何れもあり得ますが、長の大臣任命の要件を満たしていない財団法人 日本船舶振興会だけを納本義務の対象から外すのは、組織の任務や出版物の発行された目的からすると説明が難しいので、これも対象に入れましょうということです。
 また、地方公共団体についても考えていただいております。地方公共団体は財産権の主体であることを前提としまして、納入義務を課した場合、憲法第29条第3項に規定される「正当な補償」が必要かどうかについて事務局に検討していただいたところ、受忍することのできない特別の犠牲とはいえないので、補償は必要でないだろうということです。
 論点メモの内容はそれなりに整っていると思います。まず、内容の全体について御意見がございますでしょうか。
委員:  地方公共団体から納本された場合に補償が必要かどうかは、改めて今回、説明しているわけですね。
事務局:  これまでこの問題について当館では認識が不足しておりました。
委員:  地方公共団体への補償について、論点メモのようにあえて詳細に論じる必要があるのかと感じます。憲法学においては、この問題についてはまだ十分な議論がありません。小委員会報告においてこうしたことを書かないといけないのだろうかと思います。
小委員長:  建設省建設局総務課監修の『公共補償基準要綱』における見解は政府見解とはなっていないのですね。
事務局:  『公共補償基準要綱』では、地方公共団体の土地等施設は、憲法及び土地収用法にいう私有財産に含まれるとはっきり書いておりますが、「これは政府見解ではない」とあります。
委員:  学説では、これについては何もいっていないと思います。明確な議論がないところだったと思いました。
小委員長:  場合によっては、法制局で議論があると思います。
委員:  今回、改めて地方公共団体に代償金を支払わない理屈をつけたということですね。地方公共団体の財産が私有財産に含まれるとしても、正当な補償を要しないという結論を出されたのですね。
 この論点メモのような書き方で問題がなければよいのですが、小委員会報告では表現を工夫することが考えられます。
小委員長:  表現には幅をもたせるとよいでしょう。国立国会図書館法の場合、改正案は衆議院法制局で審査されることになりますか。
事務局:  そのとおりです。
小委員長:  この解釈については、既に衆議院法制局に確認していますか。
事務局:  まだ法制局には確認しておりません。
小委員長:  小委員会報告での書きぶりについては、二段がまえでいけばよいと思います。この論点メモにあるような憲法論が無理なら、もともと〔地方公共団体に対して〕補償を支払う必要がないという説で行きましょうか。
委員:  憲法論において、補償不要などと断定するのはいかがなものかと思います。
委員:  全体としては、落ち着くべきところに落ち着いたという気がします。私には全然異論がありません。
委員:  私も常識によく合ったものに仕上がったと思います。ただし、地方公共団体が納入する出版物の作成費用が著しく高い場合には代償金を請求できると論点メモにあるのには違和感を感じました。「著しく」とはどれくらいかといった問題も出てきます。
小委員長:  もともと地方公共団体に対して補償不要というお考えをとられるとすると、いくら作成費用が高くても補償は不要ということになりますか。
委員:  私人からの納入の場合ならともかく、地方公共団体からの納入の補償に関しては、必要ないという考えです。財産権は確かに大事なことではありますが、小委員会報告で詳しく書きすぎると今後の議論の余地が狭められます。
小委員長:  これまでに地方公共団体から納入された出版物で、高額だった実例を事務局から御紹介いただけますか。
事務局:  定価がついていても寄贈されるケースがほとんどです。地方公共団体から著しく高価な出版物が納入されたことはないようです。
委員:  パッケージ系電子出版物の納入について議論した際に、地方公共団体ではありませんが、私人から発行された出版物で何十万円という値段のついたものがあることについて議論をしました。地方公共団体の出版物の場合には、こうした高額のものはないでしょうね。
委員:  補足させていただきますと、国立国会図書館法第24条においては納本目的が「公用又は外国政府出版物との交換その他の国際的交換の用に供するため」とあり、第25条では目的が「文化財の蓄積及びその利用に資するため」となっており、異質のものが並列で書いてあることについて、前回の小委員会で議論がありました。「公用等のため」という目的に外れるものは第25条に基づいて収集することになるのでしょうけれども、収集目的自体が「文化財の蓄積及び利用のため」に変わるのではなく、収集目的の中から「公用等のため」が外れたというだけで、しいていえば、図書館の任務からいって第24条及び第24条の2の規定により納入される出版物は、当然に「文化財の蓄積・利用のため」に収集されるのだということでしょう。
小委員長:  地方公共団体の出版物は、現在何部納入させていますか。
事務局:  県の場合は5部、市が3部、町村が2部です。
小委員長:  部数については実務において柔軟に取り扱っていただけばよいと思います。万一、地方公共団体の出版物で極めて高額なものが納入され、問題が生じたときは、例外的な問題として考えればよいと思います。図書館としては、そのようなケースが実際に起こる可能性は、あまりないと考えているということのようです。
 もう一度確認しますと、関西国際空港については、独法等情報公開法について検討したときにも議論をいたしまして、その際は、これから空港の施設整備をしなければならず、そこには政府資金が投入されるということで、同法の対象としましたが、今回の論点メモでは特殊会社として納本義務の対象外にしています。また、日本船舶振興会は、他の公営競技関係法人と異なる扱いはしないということです。
 さて、全体の内容はこれでよいでしょうが、地方公共団体の財産と憲法第29条第3項の規定による正当な補償との関係については、書き方を抑えたほうがよいとの意見があったということで、最終的な文案については今日の最後に扱います。
 なお、論点メモ11頁の「4 地方公共団体と同等の納入義務を課すべき法人」の「(1)検討対象とすべき法人」の最後の一文(「したがって、いわゆる地方公営企業のうち、地方公社又は第三セクターにより経営されるものもあるが、地方公社のみが検討対象となる。」)は、あえて書くまでもないように思います。
 それでは前回も若干御説明いただきましたが、独立行政法人等のために発行された出版物の納入義務についての御説明をお願いいたします。
事務局: 〔独立行政法人等の「ために」発行された出版物について資料に基づき説明。その要点は、次のとおり。
 館法第24条に規定する「国・・・のため、発行された」といえるためには、「国の事務・事業に関する情報を含み、国が内容に責任を負うべき場合」、「国の事務遂行に当該出版物が必要であり、かつ必要部数を国が買い上げるか、又はその対価に相当する国の費用負担が認められる場合」という二つの要件が満たされることが必要と解される。国と同等に取り扱うべき独立行政法人等についても、当該独法等のため、出版物が発行されれば、当該独法等は、国の場合と同様に納入義務を負うこととするのが妥当である。ただし、上の二つの要件が満たされているかを館が判断することは実務上困難と考えられるので、明確かつ統一的な判断基準により多数の出版物を効率的に収集することが求められている館としては、各省庁の広報担当課等との間で協議の上、運用ルールの確立について検討する必要がある。〕
小委員長:  どうもありがとうございました。
 今、事務局から御説明いただいた点について、小委員会として御判断いただく必要のあることが四点あると思います。
 一点目は、「ために」という文言について、国立国会図書館としての解釈がなされておりますので、これを前提とするかどうかということです。
 二点目は、「ために」の解釈がこれでよいとして、独立行政法人等のために発行された出版物を、独立行政法人の出版物と同様の納入義務を課すか、それともこの際分かりにくいものは納本義務を課すべき対象としないこととするかということです。
 三点目は、仮に独立行政法人等のために発行された出版物に納入義務を課すこととした場合、補償についてはどう考えるべきかについてです。
 最後に、実務上、独立行政法人のために発行された出版物とそれ以外の出版物を切り分けるのが難しいということですが、小委員会報告において運用について言及するかどうかが四点目です。
 これ以外に大きな論点について御指摘がなければ、以上の問題に関して私なりの判断を述べておきたいと思います。
 私の感触で言うと、「ために」の解釈をこの小委員会で行っても仕方がないので、この解釈でよいでしょう。また、国の諸機関に並ぶものとして独立行政法人等を切り分けましたので、独立行政法人等のために発行された出版物についても国の機関と同様に納入義務を課すというのは素直な考え方だと思います。
 補償についてはいかがでしょう。
委員:  三点目の問題ですが、国等と同じに書いてありますので、資金の出所は、独立行政法人ということでよろしいのではないでしょうか。
小委員長:  発行に要する資金は独立行政法人側が負担しているのですね。
事務局:  論点メモの趣旨は、独立行政法人等のために発行される出版物は、国の機関以外の者から独立行政法人等が買い上げるなどした上で国立国会図書館に納入するので、無償での納本になるだろうということです。
委員:  資料2の「中央省庁、独立行政法人、特殊法人・認可法人、地方公社の出版物の編集・発行形態調査表」の分類におけるD分類の出版物(独立行政法人等が監修、編集協力のみ行い、公益法人等が編集・発行した出版物)も納入義務を課す対象に入っているのですか。
事務局:  D分類の「監修」というのは国の機関等が名義だけ貸すような場合です。かつて当館ではこのようなものも、国の機関が責任を負うことを認めて貸したのだから納入義務を負うと解していたことがあります。
委員:  国土交通省にはこうした「監修」が多いと思います。
小委員長:  D分類を納入義務対象に含めるのは難しいと思いますね。
 研究会と称するものもありますし、それから昔は省庁の課が「編集」となっているものがありましたが、この場合はどうなりますか。
事務局:  省庁の課が編集して発行した出版物は、国が納入義務を負うことになります。
小委員長:  研究会はどうですか。
事務局:  研究会は、国の機関ではないので、国の機関と同様の納入義務は課せられないことになります。
委員:  実際には、研究会には法人格がなく、実体が官庁の課にある場合もあります。
小委員長:  この小委員会ではそうした細かいことまで議論できませんので、小委員会報告には、運用上は注意してくださいと書くことになります。
 他に何か御意見がありますか。なければ、この内容で小委員会としての意見をまとめることにいたします。
 
2 今後の予定について
小委員長:  報告書のまとめ方についてですが、今後の手順はどうなりますか。
事務局:  報告書の提出については前例がございまして、パッケージ系電子出版物の最良版に関する報告の例をみますと、小委員会において小委員会報告をまとめていただいて、納本制度審議会に報告していただくことになります。そこで了承が得られますと、これをもって答申案といたします。答申案を納本制度審議会の議決によって答申として決定し、会長から国立国会図書館長に手交していただきます。
小委員長:  小委員会報告の作成についてですが、基本的な内容は委員に御了解いただいたと思います。報告の文章については、委員の皆さんの御意見をとりいれて事務局に案を作っていただき、私がまとめさせていただきます。審議会に提出する前に、もう一度委員の皆さんに御確認いただきます。
 事務局が小委員会の審議のために作成した資料は、後で他の方々が利用できるように小委員会報告に付して併せて審議会に提出しておくとよいでしょう。
 小委員会報告は、論点メモのIIIの部分が中心となるでしょう。IとIIの趣旨の中で必要な部分を内容の重複のないように、うまくまとめて組み込んでもらえればよいと思います。文章等で分かりにくいところはどうぞ委員の皆さまでチェックしていただきたいと思います。
 委員の皆さんに事務局から小委員会報告の案をお持ちになるのはいつ頃になりますか。
事務局:  今週一杯で小委員会報告案を事務局で組み立てさせていただき、来週には委員の方々にお見せしたいと考えております。
小委員長:  急いでいますか。それは、法制局に持っていくためですか。
事務局:  次の納本制度審議会があるためです。まだ日程は決まっていませんが、来年1月末か2月頃に開催されることになると思います。
小委員長:  こちらからの意見は年明けに出すのでよろしいですね。
 それでは本日はお忙しい中、どうもありがとうございました。
(閉会)

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