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第2回納本制度審議会オンライン資料の収集に関する小委員会議事要録

日時:
平成21年12月15日(火)午後2時~5時
場所:
国立国会図書館 本館3階総務課第一会議室
出席者:
合庭惇小委員長、福井健策委員、湯浅俊彦委員、植村八潮専門委員、大久保徹也専門委員、三瓶徹専門委員、深見拓史専門委員
会次第:
1. オンライン資料の制度的収集に係る論点について
2. 中間報告骨子案について
3. 次回の調査審議事項、今後の日程等について
配布資料:
(資料1)納本制度審議会オンライン資料の収集に関する小委員会所属委員・専門委員名簿
(資料2)諮問書(写)
 国立国会図書館法第25条に規定する者(私人)がインターネット等により利用可能とした情報のうち、同法第24条第1項に掲げられた図書、逐次刊行物等に相当する情報を収集するための制度の在り方について(平成21年10月13日国図収090928001号)
(資料3)アンケート集計結果
(資料4)課題管理メモ(平成21年12月15日版)
(資料5)オンライン資料の収集に関する中間報告骨子(案)
(資料6)今後の日程(案)
(資料7)国立国会図書館法(昭和23年法律第5号)(抄)
(資料8)納本制度審議会規程(平成9年国立国会図書館規程第1号)
(資料9)納本制度審議会議事運営規則(平成11年6月7日制定)
(参考資料)白井京「韓国の電子図書館法制―「IT大国」の図書館法と著作権法」
(外国の立法. (242), 2009.12, 87-107)

議事要旨:
1. 小委員長あいさつ
 小委員長から開会のあいさつがあった。引き続き、事務局から配布資料の確認を行い、第1回小委員会からの進捗状況を報告した。
 
2. オンライン資料の制度的収集に係る論点について
 (1)オンライン資料の収集に関するアンケートの集計結果について、事務局から資料3に沿って説明を行った。
 (2)事務局から論点ごとに資料4「課題管理メモ」に沿って説明を行い、論点に基づく質疑応答が行われた。主な内容は以下のとおり。
 
【論点1 全体的事項】
  • オンライン資料の制度的収集に関しては、有体物の納本制度とは別の枠組みで行うことで了解した。(小委員長)
 
【論点2 オンライン出版の定義、類型】
  • 「インターネット等を介して配信される」という表現にしておけばよいのではないか。ユーザーは、コンテンツの流れてくる経路を意識せずに利益を享受しているので、議論が分かれるような定義は避けて、軽く定義しておけばよい。(小委員長)
  • 「オンライン出版に関する内外の動向を調査報告書等をもとに記述する」とあるが、具体的にどういったものに基づくのか。国内では、インプレスR&Dの『電子書籍ビジネス調査報告書』や出版ニュース社の『出版年鑑』等を想定されているのか。(委員)
    • 国内はその2つが主なところであろう。海外についてはこれから検討する。(事務局)
 
【論点3 オンライン出版の流通状況】
○紙が元にあるもの及び遡及デジタルコンテンツを含むか
  • 収集対象は、オンラインでのみ出版された著作物だけではなく、紙媒体が元にあるもの、紙資料の遡及デジタルコンテンツを含むということでよい。(小委員長)
 
○ウェブコンテンツとしての電子新聞、パンフレット相当等情報の扱いについて
  • 新聞サイトのニュース速報については、記事の更新が止まった最終版の段階を収集すればよいと思う。(委員)
  • ネットのニュース速報と印刷媒体を電子化したものの関係はどうなっているのか。最終的にデータベースに搭載されるのは、紙面に載った記事なのか。(小委員長)
    • 紙面とデータベースの関係もあるが、データベースの中でも写真の有無といった種類の違いがあり、形態は様々である。(委員)
  • メルマガに関して、ISBNはないが発行者・発行日・タイトルなど、いくつかの書誌情報を備えている。一方で、逐次刊行物の記事相当に当たるので、粒度という観点からすると、どの単位で捕捉するのか難しい。実際に収集できるかどうかは、もう少し議論が必要であろう。(専門委員)
  • 発行元と送信元は違う概念なのか。ネット上に発行という概念が共通のものとして存在しているならば、定義として使えるであろう。(委員)
    • 発行元はサイトであるが、課金の関係上、送信元はプロバイダであると考えることもできる。(小委員長)
    • 従来の発行というのは、紙媒体という物理的なものを前提として出来上がった制度である。概念だけがネット上にも流用されているが、技術的には発行も送信と変わらない。(専門委員)
    • 雑誌協会の実証実験では、配信するコンテンツは各出版社から出してもらっている。サイト用に加工することはあるが、コンテンツそのものに手を加えることはしていない。この場合、雑誌協会は送信元といってよいか。(専門委員)
 
○有償、無償を問わないか
  • 出版社にとって、無償のものは宣伝サービスサイトという位置付けで運営しているので、更新に期限がない。有償という建前を取っているものに限定した方が分かりやすいとは思う。(専門委員)
  • 無償を集めるとなると際限がないのではないか。国会図書館がすべてのネット上のコンテンツを集めるべきであるとは思っていない。有償のものは、買ってもらうという一応の責任の下で作成されている。ブログ等の私的なものまで集める必要はないのではないか。(専門委員)
  • 「図書・逐次刊行物等に相当する情報」にターゲットを絞っているので、有償・無償にこだわらなくてもよいのではないか。(小委員長)
  • 従来の紙媒体の納本制度において有償・無償という区別がなかったのならば、オンライン資料に関しても、区別する必要はないのではないか。(専門委員)
 
○編集過程の程度の有無について
  • ケータイ小説の場合、投稿者によって常に編集削除が可能であるため、版の確定がなされておらず、保存もまったく行われていない。しかし、ジャンルとしては明らかに文芸の領域である。「編集過程を経つつ」というのを、作者が校閲作業を行っていると拡大解釈して、書籍化の有無に関わらず、すべてのケータイ小説を収集対象とすべきではないか。(委員)
    • ケータイ小説を入れるか入れないかの議論ではなく、「編集過程」があるかないかの議論をすべきである。ケータイ小説の場合、ネットにあがった段階でパブリッシュされているのであり、オープンで誰でも読める状況にある。作者が訂正を行うのは執筆のプロセスであり、編集のプロセスではない。(専門委員)
  • 流通形態が大きく変化していく中で、「従来の出版と同様の編集過程」という定義によって、何らかの行為を決めていくのは難しいのではないか。「従来の出版」という言葉を定義に入れることで誤解を与えてしまう懸念がある。「何らかの編集過程」という表現の方がよいのではないか。(委員)
  • 携帯電話も小説もどんどん変化していくので、現段階から範囲を限定する必要はなく、収集していけばよいのではないか。ただし、ネット上のすべてのケータイ小説の出版者を捕捉して納本させるのは無理だろう。網羅的ということは問わず、優先順位をつけて分かりやすいところから収集していく程度でよいのかもしれない。(専門委員)
  • 従来の紙媒体の納本制度においても、どの出版者が発行したのかということは一切問われていない。オンライン資料を収集する際にも、少なくとも品質という概念は持ち込めないだろう。また、網羅的収集に関しては、ベストエフォートであって、網羅性のギャランティは難しいのではないか。(専門委員)
  • アーカイブという性質上、できるだけ網羅的に集めるべきであると思うが、作業量的に絞り込みの基準が必要かどうか伺いたい。(委員)
    • 予算や人的資源等の中で可能な限りというのは、どうしても考えざるを得ない。一度大きく収集対象として網をかけておいて、その中で優先的にどの部分を行っていくのかということは、もう一度検討が必要になってくるであろう。(事務局)
    • 作業量を慮って収集範囲を限定する必要はないと考える。紙の資料ですら納入率が低いものがある。ウェブ上のものを収集することが、より困難であることは分かっている。集めるものと集めないものを絞り込む必要はないのではないか。(委員)
    • 排除するものを決める必要はないということか。収集可能なものはすべて網羅的に収集するが、当面は紙媒体から電子媒体に移行しているものを、どうやったら確実に集めることができるのかという議論になろう。「編集過程を経つつ」という文言の中身にあまりこだわる必要はない。(小委員長)
  • そもそも図書館に納まっているものは、何らかのプロセスを経たものであるということが、図書という概念の中に暗黙的にあるのではないか。(専門委員)
    • 図書館の概念自体が、大事なものを保存する所から、利用者が必要なものを保存する所へと変化している。(委員)
  • 従来、図書館に納められるものは、信頼性の担保を出版社や新聞社といった他の組織に委ねてきた。他者により信頼性を担保されたものだけを集めることで、これまで図書館の存在というのはまったく崩れなかった。一方、ユーザージェネレイテッドメディアまで収集するとなると、公序良俗、毀誉褒貶、何でもありになってしまうおそれがある。「編集過程」という言葉の定義だけを確認しておけばよいのであり、これを外すと歯止めが効かなくなるだろう。(専門委員)
  • 「編集過程を経つつ」という言葉に拘束される必要はない。基本は網羅的収集でよいのではないか。(小委員長)
    • 網羅的収集といった場合に、「編集過程」以外の要素で、ケータイ小説とブログ・メルマガ等を、どのように区分するのか。(専門委員)
    • 送信義務は課さないが国会図書館に送ってくれる分については排除しない、何らかの書誌情報を付して検索できるようにする用意もある、という状況を将来的に作っていくという考えでよいのではないか。(小委員長)
    • 確かに、メルマガも提出することは拒まないという形で解決できるかもしれない。(専門委員)
  • 網羅的に収集するが、収集のし易さという観点から、事実上メリハリがついていくのであろう。内容面での基準は、かえって作業量を増大しかねない問題もあろう。(委員)
 
○具体的な個々の資料群をどのように切り分けるのか。
  • データベースの個々のコンテンツについては、それがどこにあるのかを問わず収集対象となるが、プロジェクトや事業そのものを収用するに等しいことは対象外である、という整理でよいと思う。(小委員長)
 
〔10分間休憩〕
 
【論点4 納入の対象となるオンライン出版の外形定義としての書誌情報】
  • 今回議論しているオンライン資料の収集を制度化するとなると、多少なりとも著作権法などの改正が必要になると思われる。その場合、収集の対象を特定できないと、立法過程での審査に耐えない可能性がある。(委員)
  • 一般的には電子情報にあらかじめ与えられている書誌情報としては、著者名とタイトルと発行元の有無程度しかないと思われる。(専門委員)
  • 外国のオンラインジャーナルなどでは、DOIとして書誌情報や権利情報などが格納されているメタデータもある。(小委員長)
  • ISBNは、英米圏において雑誌記事・論文単位で付与するとコードが枯渇するとして10桁から13桁になった。日本も国際標準に従って13桁へ変更したが、電子コンテンツへは付与されていない。(委員)
  • 雑誌コンテンツデジタル推進コンソーシアムでは、雑誌の記事単位での配信を考えているが、その記事を特定できる情報は、現在はないので、コンソーシアムにおいて1つずつ手作業で作成している。メタデータの付与は誰かがやらねばならないが、費用がかかる。(専門委員)
  • 収集範囲の決め方については、送信義務を課すか自動収集を行うかで異なる。罰則を科すような義務であると、より厳格な定義が求められるが、収集しても違法ではないというレベルであれば、義務を課す場合ほど厳格な基準は求められないようにも思われる。罰則を設けなくとも、義務を課すのであれば、ある程度特定できる必要があるであろう。(委員)
  • 収集時に書誌情報に相当するものが付与されている場合は尊重するが、書誌情報のないものであっても対象とはする。(小委員長)
 
【論点5 納入の対象となるオンライン出版の流通経路】
  • 日本在住か日本国籍を有するもの、編集を行ったとされる機関又はコンテンツの管理を行う機関の所在地が日本国内であるという考え方は、相手に送信義務を課すには良い考え方と思われる。他方、国立国会図書館の側がオンライン資料を自動収集しても著作権侵害ではないという法改正を行う場合には、日本国内にあるサーバから発信されているものを日本国内で複製するという規定にした方が、より反対は少ないかと思われる。(委員)
    • 送信義務を課す以外に、自動収集においてもこれまでの審議会においては、複製されることを受忍する義務というものがあるのではないかという考えに立って検討してきた経緯がある。(事務局)
    • 送信の義務を課す規定と自動収集しても著作権違反とならないという規定の両方あった方が良いであろう。(委員)
 
【論点6 自動収集と送信】
  • 自動収集と送信とを併用することとする。(小委員長)
 
【論点7 送信の義務を負うもの】
  • 雑誌コンテンツデジタル推進コンソーシアムにおいては、次のように作業している。出版社から、印刷された雑誌を、記事を指定した上で提供してもらい、印刷会社でその雑誌の校了データから配信用のデータを作成し、通信会社のサーバへアップロードしている。現在、出版社の多くは、データを保有しておらず印刷されたものしか持っていない。データの所有権には議論があり、ファイルフォーマットも各社ばらばらの状態だ。コンソーシアムとしては、出版社がデータを保有すべきだし、フォーマットも統一した方が良いと考えている。(専門委員)
  • 雑誌の場合は大手印刷会社へ依頼するので、ある程度取りまとめることが可能かもしれないが、書籍を中心としている出版社は難しい。DTPでデータを内製している会社も少なく、多くは中小の様々な印刷会社に依頼している。以前、書籍のPDFデータを集めて検討したことがあるが、品質の差が大きかった。(専門委員)
  • 現在、出版社に納本しているという意識はない。取次を通して納本しているから、収集できている。送信する義務を出版社に課したとしても、出版社の外に、送信する仕組みがないと実際の収集は難しいであろう。(専門委員)
  • 送信の場合の義務を負うものは出版社とする。ただし、実際の収集時には実行可能な方法を検討する。(小委員長)
 
【論点8 意思の尊重】
  • オンライン資料については、平成16年の答申とは異なりウェブ全体を対象とはせず従来の出版物に相当するものを対象とするため、言論の萎縮のおそれは少ないと考えられる。(小委員長)
  • 積極的に言論の萎縮をいう必要はないとしても、懸念する人がいるであろうから触れておく方がよい。(委員)
 
【論点9 送信と保存におけるフォーマット】
  • DRMを外すのには、費用がかかる。(専門委員)
  • 販売して読者に読んでもらっているのであるから、DRMのかかったままのファイルを国立国会図書館でも1ユーザーとして購入し、他の読者と同じ環境で利用してもらうという手段もあると思う。(専門委員)
  • DRMをかける前のデータは存在する。そのデータを納めるということは可能と考えられる。しかし、個々の出版社にそれを求めるのは難しいため、取りまとめる機関を置き、そこから送信してもらう必要があると思う。(専門委員)
  • 各出版社で専用の編集システムを利用しているため、元のデータは互換性がない。販売用のDRMを施す前のデータを収集しても利用や保存の上で難しい問題がある。具体的に報告書に記すのは難しいと思う。(専門委員)
  • DRMの解除を義務付けるのであれば、著作権法第113条の3の改正が必要になると思われる。(委員)
 
【論点10 館内利用】
  • 収集にあたっては、利用についても丁寧に説明して欲しい。(専門委員)
  • 東京本館、関西館、国際子ども図書館の三館での提供ということも議論となる可能性がある。(専門委員)
  • 有形の図書館資料と同等の利用方法とする。(事務局)
 
【論点11 複写、遠隔利用】
  • 著作の一部分についてプリントアウトでの提供を想定している。ダウンロード等は想定していない。公共図書館へ対しては現在、図書の図書館間貸出は実施しているが、雑誌やCD-ROMなどは行っていない。(事務局)
  • ファイルのダウンロードも複製なので、著作権法第31条「図書館等における複製」では、できるはずだという意見があるかもしれない。提供を行わない場合は、提供を行わない理由の説明が必要となる。(委員)
    • 現在も館内の利用であっても音楽映像資料などについては、技術、設備や人員などの関係で一部分かどうかの確認が難しく複製物の提供はしていない。法的にできるはずということと、実際のサービスは別である。(事務局)
  • ダウンロードなど電子的な複製については出版界の理解を得ることが難しいと思われる。(専門委員)
 
【論点12 代償金】
  • データを変換する際に、特定のフォントを使用すると、変換のたびに利用料金を支払わなければいけない場合があり、かなり高額になる。DRMを解除する費用も必要になる。DRMのかかったままの作品を購入する方が、手数料を支払うよりも安くなる可能性もある。(専門委員)
  • 問題の所在を明確に指摘して、今後の課題とする。(小委員長)
 
【論点13 一括して事務を代行する機関】
  • 一括して事務を代行する機関の制度設計については、国立国会図書館で考えてもらうことでどうだろうか。(小委員長)
 
【論点14 義務履行の確保】
  • 罰則等は設けない方が、おそらく法律改正が容易であろう。(委員)
 
3. 中間報告骨子案について
 事務局から骨子案について説明し、今後骨子案をもとに肉付けをしていくことが了承された。
 
4. 次回の調査審議事項、今後の日程等について
 今後の開催日程と検討の方法及び平成21年度内に審議会へ報告することが確認された。
以上

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