ホーム > 資料の収集 > 納本制度 > 納本制度審議会 > 第30回納本制度審議会議事録

第30回納本制度審議会議事録

日時:
平成30年11月29日(木)15時00分~16時30分
場所:
国立国会図書館東京本館3階総務課第一会議室
出席者:
中山信弘会長、福井健策会長代理、植村八潮委員、江上節子委員、角川歴彦委員、斎藤誠委員、重村博文委員、永江朗委員、根本彰委員、佐々木隆一専門委員、三瓶徹専門委員、樋口清一専門委員
会次第:
  1. 委員の委嘱の報告
  2. 代償金部会の審議経過報告
  3. オンライン資料の補償に関する小委員会の審議経過報告
  4. 事務局からの報告(平成29年度資料収集状況、平成29年度出版物納入状況、平成30年度代償金予算及び平成29年度代償金支出実績等
  5. 電子書籍・電子雑誌収集実証実験事業について
  6. 今後の日程について
配布資料:
  • (資料1) 第29回納本制度審議会議事録
  • (資料2) 納本制度審議会委員・専門委員名簿
  • (資料3) 第15回代償金部会における審議の概要について
  • (資料4) 平成29年度第1回オンライン資料の補償に関する委員会における審議の概要について
  • (資料5) 国立国会図書館の資料収集状況(平成29年度末時点)
  • (資料6) 資料別納入実績(最近3年間)
  • (資料7) 納入出版物代償金 予算額と支出実績(最近5年間)
  • (資料8) 電子書籍・電子雑誌収集実証実験事業について
  • (資料9) 国立国会図書館法(昭和23年法律第5号)(抄)
  • (資料10)納本制度審議会規程(平成9年国立国会図書館規程第1号)
  • (資料11)納本制度審議会議事運営規則(平成11年6月7日納本制度審議会制定)
  • (資料12)国立国会図書館法によるオンライン資料の記録に関する規程(平成25年国立国会図書館規程第1号)
  • (資料13)国立国会図書館法第25条の4第4項に規定する金額等に関する件(平成25年国立国会図書館告示第1号)
  • (資料14)国立国会図書館法第25条の規定により納入する出版物の代償金額に関する件(昭和50年国立国会図書館告示第1号)
  • (参考資料1)電子書籍・電子雑誌収集実証実験事業報告(平成30年11月)
  • (参考資料2)電子書籍・電子雑誌収集実証実験第2段階における枠組み(案)
  • (参考資料3)電子書籍・電子雑誌収集実証実験第2段階における枠組みに対する主な意見
議事録:
(開会)定足数の確認等
会長:
それでは、定刻となりましたので、第30回納本制度審議会を開催いたします。委員の皆様にはお忙しいところ御出席を賜りまして誠にありがとうございます。
本日は15名の委員中、8名の委員に御出席いただいておりますので、定足数は満たされております。委員1名につきましては遅れて御参加とのことでございます。
なお、傍聴の方は、メモをとることは差し支えございませんが、自由な審議を行うため、録音及び写真撮影については、御遠慮ください。
それでは初めに、事務局から、配布資料の説明をお願いします。
事務局:
〔配布資料について説明〕
会長:
資料はお手元に全部そろっていますでしょうか。それでは、進めてまいります。会次第にはございませんが、ここで、今年1月に開かれた、前回、第29回納本制度審議会の議事録の取扱いについて、事務局から説明がございます。
事務局:議事録につきましては、前回出席された委員の皆様方の御確認、御了解を得ました上で、議事運営規則第16条の規定によりまして、既に当館ホームページで公開しております。〔委員1名到着〕御説明は以上です。
(会次第1)委員の委嘱の報告
会長:
それでは、会次第1に入ります。新規委員の委嘱につきまして、事務局から報告があります。
収集書誌部長:それでは御報告いたします。資料2、通しページ10頁を御覧ください。名簿がございます。一般社団法人日本出版取次協会会長の交代に伴いまして、平成30年9月12日付けで平林彰委員の委嘱を解き、近藤敏貴委員を補欠として納本制度審議会委員に委嘱いたしました。
任期については、通しページの27頁に納本制度審議会規程(平成9年国立国会図書館規程第1号)がございますが、その第4条第2項ただし書、「補欠の委員の委嘱期間は、前委員の残存期間とする。」とされておりますので、委嘱期間は発令日から平成31年6月30日までとなります。御報告は以上です。
(会次第2)代償金部会の審議経過報告
会長:
会次第2に移ります。代償金部会の審議経過について、部会長から報告があります。斎藤部会長、よろしくお願いします。
委員:
今年1月26日、前回の納本制度審議会の後に開催されました第15回代償金部会の議決について御報告いたします。資料3、通しページ11頁を御覧ください。
第一に、私が委員の互選により部会長に選出されました。第二に、江上委員を部会長代理に指名いたしました。御報告は以上です。
会長:
ありがとうございました。ただいまの斎藤部会長からの報告について、何か御質問や御意見はありますか。
(会次第3)オンライン資料の補償に関する小委員会の審議経過報告
会長:
続いて、会次第3に移ります。オンライン資料の補償に関する小委員会の審議経過について、小委員長から報告があります。福井小委員長、よろしくお願いします。
委員:
福井でございます。オンライン小委員会の報告をさせていただきます。今年3月23日、平成29年度第1回オンライン小委員会が開催されました。資料4、通しページ12頁から13頁を御覧いただければと思います。
オンライン小委員会では、まず、現在進行中の電子書籍・電子雑誌収集実証実験事業の現状について、事務局からの説明を聴取いたしました。ついで、学術専門書系の電子書籍・電子雑誌の出版・流通の事情について調査するために、関係者のヒアリングを実施いたしました。報告者及びヒアリング項目は、資料4、通しページ12頁を御覧ください。この会で出されました主な意見については、事務局から御説明いただければと思います。
会長:
それでは事務局からの説明をお願いいたします。
収集書誌部長:
発言の内容は、通しページ13頁に箇条書きでまとめています。主な意見を御紹介させていただきます。
1点目に、学術専門書系の場合、PDF形式が主流であるという話をいただきました。2点目に、個人向けと機関向けの配信があり、売り方、規模、使用頻度等によって値付けが異なるため、制度収集の場合の補償の考え方にも影響するかという話をいただきました。3点目に、汎用的なメタデータのフォーマットがないため、国会図書館に提供するに当たり、メタデータ作成作業が過剰になるとなかなか対応が難しい部分があるということ。それから3つほど飛ばしまして、電子書籍等の制度収集については、収集・保存と閲覧提供は分離して考えていただきたいということ。その下ですが、散逸のおそれがある電子書籍等を国会図書館が収集することには意義があり、長期的な保存とアクセス保証を可能とする形式での保存が望ましいということでした。また、民業との関係では、国会図書館が収集した電子書籍等を公共図書館等に配信することは民業の圧迫につながるのではないかということでした。かいつまんで御紹介いたしましたが、以上のような話をいただいたところです。
質疑の方でございますが、これらの報告をいただきまして、2つの大きな点がございました。まず、国会図書館による電子書籍の収集がどの程度民業に影響を与えるかというところを御議論いただいて、報告者からは、国会図書館の館内閲覧ということであれば大きな問題はないと思われるという話をいただきました。また、色々複雑なデータベースの形をした出版物もございますので、このようなデータベース総体として機能するコンテンツがあった場合に、その収集・保存についてどのような取組があるのかといった質問や論点が提示されました。電子書籍ビジネスは複雑なものもあり、多様化している今日において、すべて問題が解けるものではなく、国立国会図書館が制度収集の枠組みを構築するに当たり、改めてコンテンツに則して整理が必要な点ではないかとの御指摘がありました。主な意見は以上のとおりでございます。
会長:
ありがとうございました。ただいまの報告について、何か御質問や御意見はありますか。
委員:
少し補足させていただけますでしょうか。まさに今、収集書誌部長から御説明がありましたとおり、大きな観点でいうと、実証実験事業については2つの課題があるように感じました。1つは、いったいどんなデータをどういう形で納めるかということのコンセンサス。もう1つは、そのデータについて、保存の担い手と提供の担い手を国と民間がどういう役割分担で行っていくか、保存と提供の分担ということがあろうかと思います。いずれにおいてもお話を伺うと、事務局、出版界とも前向きな気持ちを持ちつつも、なかなか調整に御苦労があるように感じます。一方で、いよいよ国の統合ポータルであるジャパンサーチが1月1日から試験運用開始ということで、デジタルアーカイブに対する関心はこれまでになく高まっていくだろうと感じます。不断の検証を行いつつ、スピード感を持ってこれからも進めていくことが重要かなと思うところでございます。後程、実証実験事業についてはお話があろうかと思いますが、まずはかいつまんでコメントさせていただきました。
会長:
ありがとうございました。何か御質問や御意見はありますか。
委員:
今現場では海賊版対策がタイムリーですが、同じようにタイムリーな話として、非常に電子書籍の量が増えてきています。130%以上の伸び率であり、紙の方の長期停滞傾向は止まらない感じですが、電子書籍はだいぶ変わってきたように思います。ですから、図書館の電子化は時代の要請である、必然であると思います。KADOKAWAも2020年に向けて民間の図書館を育てていく必要があると考えており、民間の図書館の蔵書の数というのはいくら頑張っても限られているわけで、電子図書によって閲覧者の希望も叶えるということが必要であると思います。国会図書館の場合には、従前から、どのようにすれば民間への提供に対して業界の理解を得られるかといったことに対して、いろいろ提案もあったと思いますので、その議論をまた進めていただいて、出版社にお金が戻るようなビジネスモデルさえできれば、国会図書館が電子化を進めることは正しい方向だと思います。
会長:
ありがとうございました。何か御質問や御意見はありますか。
委員:
実証実験についてはあまり詳細を把握していないのですが、私は、武蔵大学で教えておりまして、地域の社会人の大学図書館利用というのが非常に増えています。その方々はリアルな書籍を調べに来ているだけではなくて、パソコンの貸出コーナーがありますので、パソコンで色々と検索をして、リアルな書籍も借りてという形で、大学図書館が空間としてのプラットフォームになってきています。国会図書館のオンライン利用について、地域への展開のある種のプラットフォームとして大学図書館を経由するとか、何かそこでしかアクセスできないような形にするとか、委員がおっしゃったような何かしらの権利料についても、そういう仕組みの中で構築するということもあり得るのかなと思いました。検索の仕方や利用者のライフスタイル、これからのシニアライフの長い知的な楽しみの姿と新しいビジネスモデルの在り方について、思い付きではございますが、現場からの実感として、大学図書館の社会人利用が非常に増えていることから申し上げました。
会長:
ありがとうございました。他に何かございませんでしょうか。委員のおっしゃるとおりデジタル化は避けて通れず、ここで遅れると世界に非常に遅れてしまい大変なことになるので、何とかしなければならないところです。あとは方法論だけで、なかなかうまい具合に出版社にお金を還流させるなどの仕組みが難しいところですが、ぜひそのあたりを考えていただきたいと思います。
(会次第4)事務局からの報告
会長:
続いて、会次第4に移ります。事務局から、資料の収集状況等につきまして御報告をお願いいたします。
収集書誌部長:
〔資料収集状況(平成29年度末時点)について、資料5に基づき説明〕
事務局:
〔平成29年度出版物納入状況、平成30年度代償金予算及び平成29年度代償金支出実績について、資料6、7に基づき説明〕
会長:
ありがとうございました。ただ今の事務局からの報告について、何か御質問や御意見等ございましたらお伺いしたいと思います。
委員:
3億8千万円程度の支出なのですね。
会長:
本音を言うと、かなり少ないのではないかという気がします。これは国会図書館の他、文化庁の予算も同じで、文化関係に出すお金というのはあまり多くないのが実情のようです。
(会次第5)電子書籍・電子雑誌収集実証実験事業について
会長:
続いて、会次第の5に移ります。事務局から、電子書籍・電子雑誌収集実証実験事業について報告をお願いします。
事務局:
〔電子書籍・電子雑誌収集実証実験事業の現状等について、資料8、参考資料1に基づき説明〕
会長:
ありがとうございました。ただいまの事務局からの説明について、何か御質問や御意見はありますか。
委員:
御報告どうもありがとうございました。既にお伺いしたことも含まれていたら申し訳ないのですが、まず第1段階について、目的の一つとして、ビジネスへの影響分析が含まれていたように思います。第1段階の実証実験の結果、国会図書館での収集・保存がビジネスにどんな影響があるという知見が得られたのでしょうか。まずはこれをお伺いできればと思います。もう一つ、第2段階についても電書協さんのサーバ及びビューアを通じて閲覧提供を行う実証実験の形を採られるということです。少し気の早い話かもしれませんが、これが仮に将来的な電子書籍の収集・保存の形を想定してのものであるならば、電書協さんは民間の団体ということになります。そこにおいて、例えば、大変失礼な物言いですけれども、活動の継続性に不安が生じた場合の、資料の恒久保存への対策、これはどんなことが想定されるのか、今の段階でお伺いできればと存じます。
会長:
それではよろしくお願いいたします。
事務局:
御質問にお答え申し上げます。まず、第1段階におけるビジネスへの影響検証についての御質問がございました。第1段階の場では、このような形、すなわち、電書協のサーバに保存し、電書協のサーバを通じて館内の端末のみで閲覧提供を行っています。ダウンロードもできない、持ち帰ることもできない、プリントアウトもできない。できないことばかりではございますけれども、そういった形であれば、特段にビジネスへの影響はないように思えると所感として述べられる方が多くおられました。これらの論点につきまして、正式には第1段階報告書で挙がってくることとは存じますが、皆様の所感としては、このように限られた閲覧提供であれば特段に問題がなかったのではないかという御意見だったと記憶しております。
また、もう一つの御質問でございますが、電書協におけるサーバでの保存、それから利用を行うというのは、私どもとしては、実証実験の枠組みで行う試みと考えております。従いまして、これを制度の中に組み込んでいくかどうかというところはまだ検討の途上にあるという段階でございますので、その永続性や恒久性をどのように担保するべきかは、今後の大きな課題になると考えております。
委員:
ありがとうございました。第2段階においてもビジネスへの影響は検証対象に含まれていたかと思います。今後は、この第2段階の実証実験を踏まえて、こうした収集・保存活動はビジネスに対して悪影響はない、むしろいい影響があるということを説得的に語っていくことが必要なフェーズが出てくると思いますので、所感に加えて客観データをどう集めていくかということを検討されてはいかがでしょうか。そんな風に感じました。
会長:
ありがとうございました。他に何かございませんでしょうか。
委員:
第1段階から第2段階への移行に関して、特に利用についての調査方法に基本的に大きな変化はない、同じようなことを継続すると理解しました。今のようなやり方だと、特にビジネスへの影響をみようとしても、同じような結果が出ることが予測されます。もっとコンテンツを増やすなり、利用の仕方を柔軟にするなり、そういうことをしない限り、あまり実証実験にならないのではないかという印象を持ったところです。先ほどの委員の発言に関して、この場はやはり国の機関と民間の方々の話し合いの場と基本的に理解しているのですが、つまり長期保存を国会図書館で行うけれども、その一部を利用する体制を作る、あるいは代償金という形で収集したものの費用の一部を還元することで、その両者の関係を見る場だと思います。それでいうと、単に代償金を考えるだけでなく、図書館全体としての電子書籍の利用方法を検討しないといけないのかなと思います。ただ、それが納本制度審議会の範囲の議論なのかはよく分かりません。以前に、長尾構想と呼ばれる国会図書館が中心となって、出版界と図書館界を繋いで新しい電子出版物の提供体制を作るという構想があったと思います。たぶんこの場もその延長で動いているのだろうと思います。ただやはり色々な制約もあります。今の利用提供体制のまま継続でよいのかどうかを議論する機会としては、ちょうど切り替えの今しかありません。特段私は強い意見を持っているわけではありませんが、今のやり取りの中でそのあたりが気になりました。
会長:
それでは事務局からお願いいたします。
収集書誌部長:
利用についてのイメージはなかなか難しいところがあるかなと思います。出版社は当館に入れたものがどう使われるのか常に関心があって、当館でもよく聞かれることではございます。先ほどのオンライン小委員会報告でもあったように、国会図書館から飛び出さない範囲の利用には、概ね「それくらいなら」とおっしゃられた部分があったかと思います。納めていただく出版社側からそのあたりならば問題ないということを受けて、利用の範囲も決めていく部分もあると思います。また、国会図書館のサービスという意味では、今でも新聞データベース等を契約して使っていただいている部分もございますので、納本で入れた資料の利用についてはそれほどバンバン使いましょうということにはならないと思われます。今度の第2段階では、テクニカルに保存していくにはどうしたらいいかという点の検討をお願いしています。先生の御質問に十分答えられているか分かりませんが、国会図書館として考えているのはこういうところがございます。
委員:
お立場はよく分かりますが、実証実験である程度やれそうなことが他にもあるのかなという気がしていて、例えば、電子出版の形式が非常に多様になって、異なるプラットフォームで提供されているコンテンツをどう保存するかを検討することも必要だと思います。こういったことを検討していくと、ある程度プラットフォームやコンテンツフォーマットの共通化が議論になってきます。つまり、もちろん出版界でもそれぞれやられていて色々なお立場から色々な議論があるとは思いますけれど、こういう場で、保存を踏まえてももう少し使いやすい電子書籍の提供方法を検討するような方向付けがあるのかなと思います。
もう一点、先ほどの小委員会報告の民間出版社の話の中で、メタデータを出版社側が提供するのは難しいと整理されていたと思います。私はメタデータというのは図書館の側で作っているのかと思っていたのですが、そのようなことが出版社の負担になるということだとどうなのかなと思いました。例えば国会図書館が新しい電子出版物のメタデータを作っていくということを保存とつなげて提案していく。そういうことが出版界全体として電子出版物の図書館を通じての提供にもつながってくるというようなことを、長期的なビジョンを踏まえて考えていけたらどうかと思います。この場で議論すべきことかも分かりませんが、感じた点を申し上げました。
収集書誌部長:
二つお話を頂戴いたしました。まず、コンピューターソフトウェアやOSなどがバージョンアップしていくとコンテンツが読めなくなってしまうという問題があると思います。技術的なことについては、きちんと確認して読めるようにしなければならないという検討は必要だと思いますので、第2段階では大事なテーマだと思っております。
メタデータの問題については、もちろん図書館が目録を作っているのは間違いないところですが、できるだけ早期の出版の段階で、出版物のメタデータを入手できれば、図書館としても収集や管理の観点から有効です。冊子体の方で先に進めさせていただいているのは、JPO(一般社団法人日本出版インフラセンター)のデータを当館のNDLサーチを使って共有して見られるようにするプロジェクトを進めております。そういうモデルが、流通、出版、販売にも役立ち、図書館の目録としても役立つ形で出版界と協働させていただくのが理想と考えております。
会長:
先ほどのお話に関連して、第2段階の実験でタイトル数がぐっと増えるということはないのでしょうか。
収集書誌部長:
受託業者である電書協に頑張っていただけるようお願いしているところでございます。
会長:
受託者との話し合いかと思いますが、同じタイトル数ではあまり意味がないので、第2段階ではぐっと増やすようにしていただければと思います。
委員:
今まで出てきましたお話を伺うと、公共図書館や民間図書館における電子書籍についてのニーズや提供の在り方と、そこと国立国会図書館が連携できるのか、あるいは連携すべきでないのかといった論点があります。第2段階の実証実験の枠に入るのか外れるのか分かりませんが、外の図書館の動向やニーズの把握を同時並行で行うことが大事ではないかと考えました。先ほどの事務局の御発言で、納本されたものの利用をそれほど重点的に考えるものではないという点について、法律の規定上は、納本されたものについて、他の図書館に相互貸出しという規定が手掛かりとしてはあるので、納本の枠組みの中で他の図書館との新しい連携のニーズがあるかどうかを把握するのも重要な任務ではないかと考えます。
収集書誌部長:
図書館との協力ということでは、ボーンデジタルは対象ではございませんが、冊子体からデジタル化したものについては、絶版であることを確認したうえで、図書館に対して利用を提供するシステムがあります。私どもは図書館送信と言っておりますが、そのような協働をしております。今度の場合、カレントで今販売されているものをどうするかという課題がありますが、絶版等で市場に流通していないものについては、そのようなモデルで社会的に利用させていただいているところでございます。
会長:
絶版等で入手困難なものについては、前回の著作権法の改正で送信可能になったもので、かなり機能していると思います。委員がおっしゃったのは、メタデータの交換やワンストップ提供のことを併せてのことでしょうか。
委員:
第2段階の実証実験を超えた話になるかもしれませんが、プラットフォームという話も出ましたので、そういう可能性もあり得るかどうか、民間の図書館の話もありましたが、公共図書館、大学図書館がステークホルダーであることは間違いないと思いますのでコメントした次第です。
会長:
ありがとうございました。他に何かございませんでしょうか。
委員:
このログ分析を見ると、ほとんどの人が1、2分で閉じており、読んでいないわけですよね。タイトルを見て開いて「あ、こんなものか」となっていて、そこが気になります。ぱっと見て関係ないと止めてしまう人がいて、なぜ止めてしまうのか。圧倒的に多くの1、2分未満の人たちは、利用しなかったとも思えます。このアンケートの取り方ではない何か工夫をして、なぜ1、2分で見るのを止めてしまうのか深く聞けるやり方はないものでしょうか。
事務局:
御指摘ありがとうございます。確かに今の段階ですと、なぜ読むのをやめたのかまでは分かりかねるところはありますが、資料の通しページ47頁、48頁の個別の御意見には、もっと細かなデータがございます。それを見てみますと、興味があって開いてはみたけれど、出納の呼び出しがあってすぐ閉じたのではないか、あるいは実際に見ようと思っていたものがないのでちょっと時間つぶしのように開いてみた等、本当に読もうと思っていた方が開いて止めたものではないように感じております。一方、こうして電子書籍に触れていただくことにも意味があると思います。ここで触れることによって電子書籍に興味が出たという方もいらっしゃいますし、当館において電子書籍の閲覧をさせることによって紙の資料と異なり出納待ちをしなくてよくなるので利便性が高い、または本の傷み防止にもなるという、大変当館を慮った御意見をくださる向きもございます。私どももそういったニーズは細かく分析していきたいと考えております。
委員:
今の件について、私も図書館の研究者で同時に国会図書館の利用者でもあるのでちょっと申し上げますが、まず国会図書館に来る方は、特定の資料、専門の資料を求めに来る方が圧倒的に多く、ただぶらっと、公共図書館に行くように利用するという方は少数派だと思います。要するに、目的がある方にとって、実証実験の今あるコンテンツはほとんど何の役にも立たない、ちらっと見るだけであとは特に関心の持てないものだと思います。その意味で利用が低調なのは当たり前ではないかと思います。それがまず第1点です。それから、先ほど御説明の中にもありましたが、国会図書館が古い資料をデジタル化したものがすぐに読めるようになっています。私は戦後改革の中で図書館が発展する動向の研究をしてきています。最近、国会図書館に行って、戦後間もない資料を利用しようと思って書庫から出してもらうつもりで検索したところ、そしたらそれがオンラインですぐ読めたのです。それも、目録検索したものが大きな画面で瞬時に読めるのです。これはすごく便利だなと思いました。今まで紙が劣化してぼろぼろになっている資料を恐る恐る読んでいたのと比べたら、遥かに見やすくなっています。昭和30年代、40年代までの資料は、ほとんどデジタル化されていますから、そういうものを利用する立場からすれば、国会図書館が提供している電子書籍の使い勝手はありがたいと思っています。それはまだ蔵書の一部ですが、著作権法の規定とどう調整するのかを含めて、デジタル化したものが国会図書館の中で見られるという体制と、他の図書館への送信と、実証実験の対象になっているものをどう利用させるのかというのは、別の話かもしれませんが、そのあたりの全体の利用関係を考えていただきたいなと思います。
事務局:
御指摘のとおり、国会図書館が行っております図書館送信の対象は当館が所蔵している絶版等資料をデジタル化したものとなっております。一方、実証実験では、いずれオンライン資料の制度収集を全面施行するために、民業として市場で流通しているカレントの電子書籍・電子雑誌をターゲットとしております。その意味では、担っているところが異なりますので、サービスの形態もおのずと異なってまいりますが、全体としてどのような利用であるべきかについては十分に検討し、課題を抽出してまいりたいと考えております。
委員:
今までの各委員の御意見を受けて、だいぶ分かってきたところもありますが、通しページ39頁上の段の第2段階についてです。「当初は」国立国会図書館のサーバに納めるということだったのですが、結果的には電書協のサーバで継続するという方針ですね。この方針については、私は電書協の第1段階会議の委員でもあるので、大変な御苦労の結果、第2段階が続くことになったと理解しています。一方で、ここは、納本制度審議会ですので、前提としては国に本を納めるという枠組みの中で議論しています。第2段階をこれでやってしまうと、いつ国会図書館に納めるということを検討するのか、あるいは、民間のサーバにあることも納本制度の枠組みとして捉えるのかという議論を、どこかでしなければならない。会長代理から、民間の事業継続性についてどう担保するのかという話もありましたが、それはこの審議会のスコープに入るのかなと思います。第2段階がこうなって、その次の第3段階が予定されないと、ちょっと心配なわけです。この17頁もそうですが、(2)①も結局今のままを続けるとしか思えないので、数が増えるとかではない、本来の納本の在り方をどう捉えるかをクリアに議論していただきたいと思います。
それと、民間の動きがすごく早くて、スタートするときに想定していなかったくらいに、投稿サイトのコンテンツ量が増えて、また読まれています。「小説家になろう」などから、デジタルファーストで投稿されて、民間の出版社から紙の本になったものが3,000冊くらいあります。『君の膵臓をたべたい』という話題作も、若い人たちは、無料投稿サイトで読んだのです。この速度のこのコンテンツを次にどう収集していくかという議論を早く始めなければならない。今の実証実験の請負先の電書協ではだめだと言っているわけではないのですが、電書協の枠組みではデジタルファーストコンテンツのような、膨大に若い人たちに読まれているようなコンテンツがスコープ外になってしまっていることが、もう一つの懸念です。
事務局:
まず、実証実験につきましては、御案内のとおり電書協の受託事業ということで、ある程度実施できる範囲が限定されているところがございます。第2段階を13月かけて実施していきますけれども、同時並行で国会図書館としては、オンライン資料収集制度化に向けてもう一つのスケジュール立てを行い、各所との調整を進めていく想定でございます。まだその絵図面が書けていないところではございますが、実証実験第2段階が終わってから取り組むのではなく、早急に進めていこうと考えております。先生方の御知見を賜れればと存じます。
会長:
他には。どうぞ。
委員:
KADOKAWA、講談社、紀伊国屋書店、大日本印刷、図書館流通センターは、JDLS(日本電子図書館サービス)というデジタル図書館に取り組んでおります。なかなか離陸が難しかったのですが、ようやく70館くらいの大学図書館、公共図書館が利用し、4万2,000点のコンテンツを提供しています。基本的な構想はアメリカに同様のサービスがありますが、52回読んだら一度サービス提供を停止して、もう一度申し込んでもらう形としています。その分だけ出版社にお金を還元するシステムで、これはある程度、長尾構想の実現だと思っています。4万2,000点提供されていている中身を見てみると、大衆の読書の傾向が割とはっきり出ています。読者に読まれることを前提として提供されているもので、国会図書館と提携しても何ら問題ないはずなので、こういうところと提携してみてはいかがでしょうか。電書協が提供しているものとJDLSとを2本立てにして考えると、だいぶ電子書籍の現状に即してくるのではないでしょうか。JDLSには今御指摘のあったデジタルファーストコンテンツも、かなり入っています。申し訳ないが、今の実証実験の第1段階、第2段階の延長に本当に希望はあるのか。無駄ではないと思いますが、現実離れしている感じがして、ちょっと危機感を持っております。
会長:
3,000冊から数万点まで増えればかなり強力になりますね。
委員:
提供点数を増やすにあたり、著作権者からの許諾がハードルになっているということでしたが、文藝家協会、著作権者の立場からすると、国会図書館のこういう実験事業に参加した場合、何がどう使われてどうなってしまうのかよく分からないというのが、積極的に許諾できない理由ではないでしょうか。こういう風に利用されていますよということが、ある程度、実験に参加した著作者にも何らかの形で分かるといいなと思います。実際に、42頁12番目の「アダルト系」はたぶん私の本だろうというのは分かりますが、これがどういう風に見られているのか、出版社からは連絡がないので、読んだ人の感想が聞きたいということではなくて、実験に参加すると著作者にはこんなフィードバックがあるとか、参加したことの証しがあるとか、1分で閉じられているというようなこととか、何かがないと、実験材料にされるだけでは許諾は広がらないように思います。
事務局:
御指摘ありがとうございました。確かに私どもが直接対応できますのは、出版社の方たちになります。実は、38頁にありますように、第1段階会議の下に連絡会議というものを設けておりまして、ここがコンテンツを提供してくださった1つ1つの出版社の担当の方と当館が直接話をする場となっております。その場では、各担当の方から許諾に当たってどんな御苦労があったかなど匿名のアンケートで寄せていただいております。また、本日審議会で御報告したものと同じ内容、同じ精度の御報告と、アクセスログ、アンケートの集計結果など、バックデータに当たるレベルの情報も含めて、各出版社にお渡ししております。ただ、各出版社の方々が御担当の著者である先生方にまで展開してくださるほど、私どもも熱心にお願いしておりませんでした。先生から御注意いただきましたことは、さっそく12月5日に次の連絡会議を行うことになっておりますので、その場で著者の方へのフィードバックという意味で、こうしたログなども御興味があればお見せしていただけるよう働きかけてみたいと思います。
会長:
他に御意見等あれば。
委員:
多くの委員の皆さんの御意見をお伺いして、大きな空気感としては、今の実証実験では、世界の急速に変わりつつある現実に追いついていけないのではないかという御懸念を共通して感じました。そのことは、私も問題意識として共有するところです。他方において、この間、多少なりとも、現場の協議のあり様をお伺いしてきた身としては、事務局の皆さんが相対している出版の現場の声は、この場の議論とはだいぶ空気感が異なることも感じるわけであります。これをブレイクスルーするためには、少し出版界の方の空気も一緒に変えていくような努力がないと、なかなか審議会の場の議論だけでは、後押しという意味では不十分かなと感じるところです。そんなところも、私自身も考えていきたいと思いました。おそらく目指したい方向はそう変わるはずもないので、そこに向けてどんな知恵を絞れるかということかと思います。
最後に、実証実験とは異なりますが、お尋ねになります。先ほども申し上げたとおり、いよいよあと1か月ほどでジャパンサーチ、統合ポータルが試験運用を開始するわけで、これはデジタルアーカイブということでは、非常に注目が大きく、いよいよ日本でも立ち上がるかというものかと思います。目下、メタデータの提供ということになるわけですが、実証実験には実証実験の条件があるので別ですが、これまで収集されたオンライン資料のメタデータについては、ジャパンサーチの下で集約され提供される予定でしょうか。またその場合、メタデータはクリエイティブコモンズのCC0という、完全利用条件で提供されるということが原則という風に理解しております。原則通りCC0で提供される予定でしょうか。
収集書誌部長:
まず検索のメタデータについては、ジャパンサーチもありますが、今当館で作っているデータそのものは現行のNDLサーチでもフルで載っております。それも利用していただき、ジャパンサーチは省庁横断、色々な組織を横断するモデルですので、さらにリッチになる、検索内容は充実すると思っております。NDLで収集した電子書籍・電子雑誌のメタデータについては、今日の段階でも検索可能となっております。メタデータの権利関係については、今はノンコマーシャルの場合はどうぞという形でやっています。先生のおっしゃるとおりフリーで使っていただくには段取りが必要であり、今精力的に整理を進めているところでございます。
会長:
色々貴重な御意見を頂いたわけですけれども、他に何かございますか。
委員:
民間サーバで納本制度を代替するという検討もする必要があるのではないでしょうか。出版社の考えを待っているばかりではなく、逆に例えばJDLSのようなものでもよいといった検討をしていかないと、出版社としてはこっちに来てくれないのではないでしょうか。民間の電子図書館システムは、コンテンツ等増えており、しかも作家にお金が還元されるシステムです。これを一時的に利用する形で、納本制度の代替のようなものを検討できないものでしょうか。
会長:
おそらく色々と問題が出てくるかと思いますが、事務局でも検討してみてください。
委員:
出版社が一番危惧しているのは、国会図書館から出て一般の図書館で勝手にダウンロードされるなどアンコントロールになることです。現実に、いつも問題を起こす図書館が5つ位あって、それについて、国会図書館は指導できません。指導できれば、出版界は安心するのですが。勝手に自由に本をコピーさせることがあり、特定の数館の図書館ですが、司書の方たちは、自分たちはサンクチュアリである、それが読者のためになるのでいいじゃないかとおっしゃる。結果的には非常に乱暴な意見だと思いますが、電子書籍でもそれをやられると、無限大に拡がってしまうという危機感があります。先ほど申し上げたとおり、JDLSでは52回の利用で自動的に打ち切られて再交渉できるので、歯止めになります。乱暴な使い方をする図書館に対しても、停止すれば防げる。アナログよりも技術的なコントロールができるという点では、デジタルの方が有効な点もあります。
委員:
先ほどの委員の御質問にもあった、図書館等送信にも関わる話と理解しました。まず、現行法では、今のところ図書館等送信の対象は絶版等資料であり、現在流通しているものは対象になりようがない。また、オンライン資料としてボーンデジタルで収集したものは、そもそも第31条第3項の対象には現在はならない理解であるということで、今のところ、別の枠組みかなと思います。ただ、目指すべき方向について私見をいうならば、全国の図書館等で見られるべきだという気がします。なぜならば、東京に住んでいる人は館内で見られるけれど、地方に住んでいる人は見られないということは、本当はあってはいけないことだと思うためです。しかし、委員のおっしゃったような在るべき姿に今すぐにしますと言えば、オンライン資料など集まりそうにもないような状況だとも思いますので、それを目指していくためには、色々な工夫がさらに必要なのかなと感じたところです。
会長:
理想を言えばユビキタス社会ですから、どんな山間へき地にいても読めることがいいことなのは間違いないのですが、そこに行くまでに色々な課題がありますので、事務局としてはだいぶ苦労されていると思います。もう一つ言えば、世界はGoogleやEuropeanaの時代で、日本は言葉という天然の要害があったので何となく外国から攻められない感じがしているかもしれませんが、出版社が外国企業に買収されてしまえばそれまでなので、日本としても、GoogleやEuropeanaに対抗する、というとおこがましいですが、なるべく多くの人が情報を的確に得られるようなシステムを作っていただきたいと思います。
(会次第6)今後の日程
会長:
会次第の6に移ります。今後の日程について事務局から説明をしていただきます。
収集書誌部長:
御説明いたします。次回、第31回の納本制度審議会は、今年度中に開催したいと考え準備をしています。具体的な日程につきましては、事務局から改めて御相談させていただきます。
会長:
ただ今の説明について、何か御質問等はありますか。
それではまた日程の調整をお願いいたします。これで予定されている議題や報告はすべて終了いたしましたが、何か御意見や御質問はございますか。よろしゅうございますか。事務局からは何かございますか。ございませんね。
それでは、以上をもちまして、第30回納本制度審議会の会次第はすべて終了いたしました。本日はこれにて散会といたします。お忙しい中ありがとうございました。
(16時30分終了)

このページの先頭へ