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第31回納本制度審議会議事録

日時:
平成31年3月18日(月)14時00分~14時45分
場所:
国立国会図書館東京本館3階総務課第一会議室
出席者:
中山信弘会長、福井健策会長代理、植村八潮委員、遠藤薫委員、相賀昌弘委員、角川歴彦委員、斎藤誠委員、重村博文委員、永江朗委員、根本彰委員、佐々木隆一専門委員、三瓶徹専門委員、樋口清一専門委員
会次第:
  1. 有償等オンライン資料制度収集の今後の進め方について
  2. その他
配布資料:
  • (資料1) 第30回納本制度審議会議事録
  • (資料2) 納本制度審議会委員・専門委員名簿
  • (資料3) 有償等オンライン資料制度収集の今後の進め方について
  • (資料4) 国立国会図書館法(昭和23年法律第5号)(抄)
  • (資料5) 納本制度審議会規程(平成9年国立国会図書館規程第1号)
  • (資料6) 納本制度審議会議事運営規則(平成11年6月7日納本制度審議会制定)
  • (資料7) 国立国会図書館法によるオンライン資料の記録に関する規程(平成25年国立国会図書館規程第1号)
  • (資料8) 国立国会図書館法第25条の4第4項に規定する金額等に関する件(平成25年国立国会図書館告示第1号)
  • (資料9) 国立国会図書館法第25条の規定により納入する出版物の代償金額に関する件(昭和50年国立国会図書館告示第1号)
議事録:
(開会)定足数の確認等
会長:
定刻となりましたので、第31回納本制度審議会を開催いたします。委員の皆様にはお忙しいところ御出席くださいまして、ありがとうございます。
本日は、15名の委員中10名の委員に御出席いただいておりますので、定足数は満たされております。また、本日は、専門委員のみなさんにも御出席いただいております。
なお、傍聴の方は、メモをとることは差し支えございませんが、自由な審議を行うため、録音及び写真撮影については、ご遠慮ください。
それでは初めに、事務局から、配布資料の説明をお願いします。
事務局:
〔配布資料について説明〕
会長:
資料はお手元に全部そろっていますでしょうか。それでは進めてまいります。会次第にはございませんが、ここで、昨年11月に開かれた、前回、第30回納本制度審議会の議事録の取扱いについて、事務局から説明があります。
事務局:
議事録につきましては、前回出席された委員の皆様方の御確認、御了解を得た上で、議事運営規則第16条の規定により、既に当館ホームページで公開しております。
(会次第1)有償等オンライン資料制度収集の今後の進め方について
会長:
それでは、会次第1に入ります。有償等オンライン資料制度収集の今後の進め方について、事務局から報告があります。
収集書誌部長:
資料3、通しページ13頁をご覧ください。有償等オンライン資料の制度収集に関しましては、平成27年12月に開始した実証実験を通じ、出版界各位の御理解を得ることを第一の目的としつつ、実効性の高い制度実現のために各種の調整を図ってまいりました。実証実験の第2段階移行と、その後に続く制度化の枠組み等につきまして当館の考え方を繰り返し出版界に御説明し、また、当審議会の場においても御報告してきたところです。
各種調整の結果、今年度下半期におきまして、一般社団法人日本電子書籍出版社協会、以下電書協と申し上げますが、電書協から一つのお申出がございました。有償の電子書籍等について、電書協が収集・保管・利用提供を行うリポジトリを立ち上げるというものです。リポジトリの考え方は、すでに国立国会図書館法等において、オンライン資料提供義務の適用除外として定められております。ただ、現時点では、まだ提供義務そのものが発動していないことから、民間が運営するリポジトリについて適用除外を認めた例はございません。
電書協の想定するリポジトリが実現する場合、当館が行うオンライン資料制度収集の在り方は、これまでの想定をいくつかの点で変更していくことが考えられます。 これらの経緯と、そもそものリポジトリの位置づけ、また、今後の有償等オンライン資料制度収集の進め方等について、当館の考え方を御報告申し上げます。
事務局:
〔有償等オンライン資料制度収集の今後の進め方について、資料3に基づき説明〕
会長:
ありがとうございました。国会図書館と電書協のご努力によりまして、ここまで来たわけですが、ただいまの事務局の説明につきまして、何か御質問や御意見がありましたらお願いします。
委員:
御説明ありがとうございました。調査審議の経過を拝見して、10年になるかと非常に感慨深いものがございました。私とこの審議会のお付き合いとも重なる10年間でした。この間、会長がおっしゃったとおり、館と出版界双方の懸念を解消するための様々な努力を見てまいりましたが、一つ大きな方向性が出たということは、感慨深いものがあります。今後、仮にこの方向で進むとした場合に、リポジトリを含めて相当数のオンライン資料の収集・保存が軌道に乗ってくると考えられます。まさに先月末、ジャパンサーチの試験運用が開始された我が国のデジタルアーカイブにとっても大きな節目になります。そのためにも、中間答申における課題を潰していく作業が重要になると思いました。
感じた課題は2点あります。一つは法的な対応です。法律家が聞いてもいろいろなところにジャンプする複雑な条文関係でありますが、大きく言えば、有償又はDRM付きのオンライン資料の提供義務の免除を外すこと、その上で改めてリポジトリという仕組みにのっとった適用除外を確保していくこと、この2つの手続になろうかと思います。この点、規程3条3号に明記されているのは、オンライン資料が長期間にわたり継続して公衆に利用可能とすることを目的としているもの、例えて言うとリポジトリのような存在であって、かつ、特段の事情なく消去されないと認められるものである場合であり、このような条件を満たす場合に適用除外になるわけであります。この確保をいかに行っていくか、まさに関係者間の覚書のような取り組みが重要かと思いました。
2点目として、こうしたリポジトリに加わらない他の出版社もいるであろうと御説明いただきましたが、他の出版社からオンライン資料の提供を受ける場合の、館で長期保存を実現できる形態の確保が重要であると思いました。以上、2つの課題を感じたところでございます。
会長:
ありがとうございました。他に何かございますか。
専門委員:
電書協が運営するアーカイブサーバ、電子文庫パブリの中身ですが、人間が感得するのではなくて、コンピュータが全文検索することは可能なのかどうか。他のリポジトリは全文検索が可能なものが多いと思うので、その意味で将来どのような形になるのか。個人が読む分には、有償なりどのようなサービスになるか分かりませんけれども、コンピュータが読めるのかどうか、そのあたりを少し懸念しております。
事務局:
大変恐縮ですが、本日、電書協の関係者はいらっしゃっておりません。また、リポジトリがどのようなものであるか、どのようなものであった場合に適用除外とするかにつきましてはこれから精査していくところでございます。したがいまして、現時点では事務局ではお答えいたしかねるところでございます。
会長:
他に何かございませんでしょうか。
委員:
国との約束ですから、電書協がその約束を果たしていくことと思います。その上で資料14ページの3の中ほどに「リポジトリ運営停止時は」とある点について、関連して確認です。電子書籍といっても、電子書店は売れているものしか扱わず、全く売れなければ販売を止めることもあるし、その際にはサーバーから削除されます。電書協リポジトリは売らなくなったものも全てアーカイブし続けるのでしょうか。あるいはリポジトリの運営を停止する以前に、取り扱わなくなった電子書籍は、その段階で国立国会図書館に移るのでしょうか。単に運営停止時以外にも条件を付けていただきたいと思いました。
事務局:
事務局としてもこれから電書協と実務的な面で打ち合わせをしていく想定ではございます。ただ、電書協が考えるリポジトリとして伺っておりますのは、私どもの考える長期保存という観点から、消去されないことを重視していただいて、売れなくなったものにも必ずアクセスは保証していただく、保存も行っていくことを想定していただいているということです。
会長:
よろしいでしょうか。今の点は大事で、紙の本は売られなくなっても国立国会図書館に来れば見られる状態となっています。
委員:
私は前から例外規定を設けることについてやや疑問に思っております。例えば、機関リポジトリはいろいろな大学でやっているわけですが、現行の制度でも公的な機関がやっているものに対する例外規定の位置付けがあり、今回のリポジトリもこれと同じように捉えているという風に伺いました。そもそも大学が学術論文を発信するようなものと、この機関リポジトリでは、ずいぶん性格が違うのではないかという一つの疑義があります。というのは、機関リポジトリというのは、学術コミュニケーションのコンテクストの中で出てきた言葉であって、一般的に、こういう意味では使っていないと思います。それをあえて商業的な出版物について機関リポジトリという言葉で例外的に扱うことがあっていいのかどうかというのが、そもそもの疑問です。そこは、電書協として恒久的に、公共的な性格を持ったものとして運営するということ、それを受け入れた形でこの提案が出ているということかと思うのですが、制度的な切り分けが今のところ少し疑問があると感じたところです。
会長:
その点についてはいかがでしょうか。
事務局:
御指摘ありがとうございました。リポジトリという言葉を使ってはおりますけれども、確かに公的機関のものとは一律ではないとは存じます。一方で、インターネット資料として公的機関のウェブサイトを集める際の制度設計を行い、それと対になるものとしての私人が発行するオンライン資料の収集は、ウェブサイト等の中でも電子書籍、電子雑誌等に該当するものだけをターゲットにしておりますが、オンライン資料制度収集の法案を作る際にも、一定の適用除外を制度の中に組み込んで考えておりました。それは、民間データベースをどう扱うかというものでございました。公的機関の機関リポジトリとは異なりますが、民間のデータベースについても一定の収集、保存、利用提供という機能を果たすものであれば、当館の制度と並立して、共にあるものとして制度全体を考えていくという発想は、インターネット資料の場合、オンライン資料の場合、いずれも異なるものではございませんので、それぞれの制度を構築してきたという経緯がございます。
委員:
民間資料とは、たぶん私立大学の機関リポジトリのようなものが中心ではないかと思います。その場合、商業出版のものは、それとはだいぶ性格が違う。恒久的に公衆に利用提供するような性格をどこまで維持できるのか。これを運用する電書協という団体は一般社団法人という位置付けですよね。公的な性格を持っているにしても、恒久性についてどこまで担保されるのかなどを含めて検討したのでしょうか。
事務局:
今この段階におきましては、電書協リポジトリが適用除外に該当すると判断したものではございません。ただ、リポジトリに該当するようなものが存在するのであれば、当館が用意しております館法第25条の4第2項第3号の適用除外を用いる道はあるかと言われればそれはあるということでございます。したがいまして、今、先生が懸念として示されたような、公的機関と一般社団法人の公共性の違い、あるいは今までの実績の違いというのは、これから実務の中で、すでに用意されている条文を適用できるかどうかを詰めていくべきものと考えております。その際には先生からご注意いただきました継続性の問題、安定性の問題、それから常にアクセスが保証されるかという先ほどの御指摘も含めた制度設計を考えていく必要があると考えております。
会長:
ありがとうございました。他に何かございませんでしょうか。
(会次第2)その他
会長:
会次第の2に移ります。その他とのことですが、事務局から何かございましたら御報告をお願いします。
事務局:
2点御報告申し上げます。まず、前回の第30回納本制度審議会で御報告しました実証実験第1段階の報告書は、昨年12月に電書協からの提出を受けました。もし閲覧等を希望される委員の方がおられましたら、後ほど事務局までお知らせください。2点目は、次回、第32回の納本制度審議会の開催予定についてです。具体的な日程につきましては、来年度に入りましてから、事務局から改めて御相談させていただきたいと存じます。
会長:
ただ今の点について、何か御質問等はございますでしょうか。よろしゅうございますか。予定されている議題や報告は以上で終了いたしましたが、何か特に御意見や御質問がありましたら遠慮なくお願いいたします。
委員:
業界では、新刊は年間7万点くらい発行されていますが、そのうちどれくらい電子書籍化されているか、国会図書館は把握しているでしょうか。
事務局:
大変申し訳ございませんが、把握はしてございません。
委員:
おそらく電書協の方もあまり把握していないのではないかと思います。25社しかないわけですから。7万点のうち何点が電子書籍化されているか、25社以外にはどれくらいあるのか、その辺が大きな問題を抱えているように思います。
会長:
その点についてはどうでしょうか。
事務局:
おそらく書協さんに加入されている社と25社との間には相当な開きがございまして、またビジネスの規模も相当異なるものと思われます。そうしますと、電書協さんのリポジトリに乗るところと乗らないところ、いろいろな御判断が出てくると思いますので、リポジトリに参加されない出版社に対しては、当館から制度設計を細かく丁寧に説明をしていく必要があるとは考えております。
委員:
リアルの本は納本制度により国会図書館が把握されているわけですよね。あとは電子書籍を毎年どれくらい出ているかということを把握する必要があるのではないでしょうか。
事務局:
これから母数の把握には努めてまいりたいと存じます。
委員:
今の委員の発言について少しだけ補足しますと、学会でもそのような調査をしている研究者がいます。私の知っている限りですと、2018年の日本図書館情報学会春季研究集会で亜細亜大学の安形輝先生が国立国会図書館所蔵資料を対象に、各年5000タイトルの無作為抽出で、電子書籍化率を調査しています。2017年の平均で約37%、大手出版社は70%前後です。中でもKADOKAWAは一番、高い数字が出ていました。もう一つ、同日、日本出版学会春季研究発表会で伊藤民雄先生が調査発表されています。2014年と2015年の全冊調査をしています。これはもう少し数字が低く、約20%でした。なぜ2014年、2015年だったのかというと、後から電子化されたものも含めて調べたからです。まだまだ個人レベルの研究ですので、こういうのはもう少し大規模にやっていただければいいなと思っております。
会長:
ありがとうございました。ほかに何か。
委員:
ジャパンサーチの試験運用が開始し、まだ1か月も経っておりませんが、手ごたえや今後について、もし一般的な情報がありましたらお願いします。
収集書誌部長:
あまりはっきりとした情報は得ておりませんが、ジャパンサーチで情報を提供するに際しまして、特に書誌データについては、皆さまに無償で使っていただくことを並行して準備してまいりました。4月1日から、申請なく使っていただくというようなモデルでやっていきたいと思います。手ごたえはあまり把握しておりませんが、そういう準備は着々と進めているところでございます。
会長:
それでは、以上をもちまして、第31回納本制度審議会の会次第はすべて終了いたしました。本日はこれにて散会といたします。ありがとうございました。
(14時45分終了)

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