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第36回納本制度審議会議事録

日時:
令和4年2月28日(月)11時00分~12時00分
場所:
Web会議システムによるリモート開催
出席者:
斎藤誠会長、植村八潮会長代理、伊藤真委員、江上節子委員、江草貞治委員、奥邨弘司委員、小野寺優委員、柴野京子委員、仲俣暁生委員、根本彰委員、堀内丸惠委員
会次第:
  1. 代償金部会の審議経過報告
  2. 事務局からの報告(有償等オンライン資料の制度収集開始に向けた進捗等)
  3. 今後の日程について
配付資料:
  • (資料1)納本制度審議会委員名簿
  • (資料2)第17回代償金部会における審議の概要について
  • (資料3)有償等オンライン資料の制度収集開始に向けた進捗について
  • (参考資料1)第35回納本制度審議会議事録
  • (参考資料2)納本制度審議会答申「有償等オンライン資料の制度収集を行うに当たって補償すべき費用の内容について」(令和3年3月25日)概要
  • (参考資料3)有償等オンライン資料の制度収集開始に向けて
  • (参考資料4)お知らせ 国立国会図書館から出版社のみなさまへ
  • (参考資料5)国立国会図書館法(昭和23年法律第5号)(抄)
  • (参考資料6)納本制度審議会規程(平成9年国立国会図書館規程第1号)
  • (参考資料7)納本制度審議会議事運営規則(平成11年6月7日納本制度審議会制定)
  • (参考資料8)国立国会図書館法によるオンライン資料の記録に関する規程(平成25年国立国会図書館規程第1号)
  • (参考資料9)国立国会図書館法第25条の4第4項に規定する金額等に関する件(平成25年国立国会図書館告示第1号)
  • (参考資料10)国立国会図書館法第25条の規定により納入する出版物の代償金額に関する件(昭和50年国立国会図書館告示第1号)
議事録:
会長:
それでは、第36回納本制度審議会を開催いたします。委員の皆様にはお忙しいところ御出席くださいまして、誠にありがとうございます。本日は14名の委員中11名の方々に御出席いただいておりますので、定足数は満たされております。まずは事務局から、配付資料の説明をお願いします。
事務局:
〔配付資料について説明〕
また、議事の進行に関し1点お願いがございます。御発言の際は、ミュート解除をしてからお話しいただき、御発言が終わりましたら、その都度、ミュートにしていただきますようお願い申し上げます。また、議事録作成のため、会議を録画させていただいております。どうぞ御了承ください。以上でございます。
【会次第1 代償金部会の審議経過報告】
会長:
それでは、会次第1に入ります。代償金部会の審議経過につきまして、部会長から報告があります。奥邨部会長、よろしくお願いします。
部会長:
奥邨でございます。資料2、通しページ2を御覧ください。昨年9月2日、前回の納本制度審議会の後に開催されました、第17回代償金部会の議決について、御報告をさせていただきます。まず、私が委員の互選により代償金部会長に選出されました。続きまして、江上委員を部会長代理に指名させていただきました。御報告内容は以上となります。
会長:
ありがとうございました。ただ今の奥邨部会長からの報告について、何か御質問や御意見はございますでしょうか。よろしいですか。それでは、代償金部会の皆様には、引き続き、よろしくお願いいたします。それでは次に進みます。
【会次第2 事務局からの報告】
会長:
会次第2に入ります。事務局から、有償等オンライン資料の制度収集開始に向けた進捗等について報告があります。よろしくお願いします。
事務局:
事務局から、有償等オンライン資料の制度収集開始に向けた進捗等について御報告いたします。資料3、通しページ3、「有償等オンライン資料の制度収集開始に向けた進捗について」を御覧ください。
当館は平成25年7月から、国立国会図書館法(参考資料5)に基づきまして、民間発行のオンラインを収集しております。現状、無償かつDRM(技術的制限手段)が付されていないもののみが収集対象となっております。有償又はDRMが付されたオンライン資料(有償等オンライン資料)については、国立国会図書館法及び「国立国会図書館法によるオンライン資料の記録に関する規程」(参考資料8)によりまして、当分の間、提供義務が免除されているという状況です。この有償等オンライン資料については、昨年3月の審議会において答申「有償等オンライン資料の制度収集を行うに当たって補償すべき費用の内容について」を頂戴したところでございます。答申の概要は参考資料2に付させていただいております。
当館としましては、答申の内容に沿った形で、現状実施している無償DRMなしのオンライン資料制度収集の実態を踏襲する方向で、有償等オンライン資料の制度収集開始に向けて、前回の審議会において報告した方針及びスケジュール、こちらは前回の資料を参考資料3に付けております、に沿って準備を進めております。その現状について御報告いたします。
まず(1)法規整備についてでございますが、現在開会中の第208回国会において、有償等オンライン資料の提供義務を免除する規定を削除するための館法改正を御審議いただけるよう、関係者との調整を進めております。また、規程につきましても同趣旨の改正に向けた調整を行っております。具体的には、「提供の免除」を規定している条文、館法につきましては平成24年改正法の附則第2条、通しページ26に該当する条文がございます。それから、規程につきましては第5条、通しページ33に該当する条文がございます。これらを削除する形での改正を想定しているところでございます。
また、答申においても言及されておりました、市場においてDRMが付された状態で流通している場合でもDRMが付されていない状態のファイルを収集すること、それから同一内容が複数フォーマットで流通している場合は代表的なバージョンを優先的に収集することにつきましても、規程の下に位置付けられる告示において定める方向で現在検討を行っているところでございます。
なお、改正法の施行日は令和5年1月1日を想定しておりますので、有償等オンライン資料については、この日以降に発行されたものが制度収集の対象となります。
続きまして、(2)対外説明の状況について御報告いたします。
有償等オンライン資料の制度収集開始について、直接出向いてお話をさせていただいたり、制度の概要を記したチラシ、こちらは参考資料4、通しページ18・19でお付けしておりますが、このチラシを配布するなどして、順次、著作権者団体、出版関係団体の方々へ御説明を行っているところでございます。
例えば、日本書籍出版協会様では、会報と同封していただく形でチラシを会員社の皆様に配布していただきました。日本雑誌協会様では、著作権委員会にお招きをいただき、その場でチラシの配布と概要の御説明をさせていただきました。出版梓会様では、江草委員の御厚意もありまして、会員社の皆様の研修の一環として、説明会を開催していただきました。また、日本文芸家協会様を含め、著作権者団体の方々には、メールにてチラシをお送りし、御説明の機会があれば対応させていただく旨お伝えしているという状況でございます。委員の方々の御協力に厚く御礼申し上げます。
御説明の際の反応を見る限り、制度の趣旨については一定の御理解をいただいているのではないか、と考えております。また、収集対象に該当するか、収集対象外として認められるか等、例えば、章単位等で分割して電子書籍として販売しているような場合や、電子化に際して広告を除外している場合などは、納本済資料と同一版面であると認められるのかどうか、というような具体例に基づく御質問が多い印象を受けているところです。
引き続き、著作権者や発行者を始めとする関係する権利者の御理解・御協力をより一層得られるよう、制度の趣旨や具体的な収集実務について、丁寧な説明を行っていきたいと思っているところです。
なお、営利企業が運営するリポジトリを構築予定の日本電子書籍出版社協会(電書協)様につきましてですが、先週、お会いする機会がございましたので進捗状況等を確認いたしました。まず、昨年10月1日付にて、一般社団法人デジタルコミック協議会との合併を実施し、合流活動を開始しておりましたが、2月1日付で一般社団法人デジタル出版者連盟に、通称は電書連とおっしゃるそうですが、社名変更したとのことです。合併、社名変更を経てもリポジトリ構築については準備作業を継続しており、5月頃を目途にリポジトリの運営を開始する予定であるとのことでした。こちらにつきましては、御参考までにお知らせいたします。
最後に、想定スケジュールですが、前回の審議会で御提示したスケジュール感に変更はございません。今年度内に制度の詳細設計及び運用調整、関係法規整備に向けた準備を行い、来年度(令和4年度)の第1四半期には関係法規整備を終え、半年程度の周知及び収集除外手続等の期間を経て、令和5年1月から全面的な制度収集を開始したいと考えております。
御報告は以上となります。
会長:
どうもありがとうございました。ただ今の事務局からの進捗状況等の報告につきまして、何か御質問や御意見はありますでしょうか。御遠慮なくお願いいたします。せっかくの機会でありますので。御発声いただく場合、リアルで御発声いただいても結構ですし、ウェブ機能で挙手いただいても結構ですが、どなたからでも何かいかがでしょうか。
委員:
質問を一点お願いいたします。資料2、1(1)法規整備のうち、2ポツ目の2行目なのですが、同一内容が複数フォーマットで流通している場合、代表的なバージョンを優先的に収集することについて検討しているというお話しでした。これは、前の報告書にもあった文言ですけれども、今聞いていて、例えば、紙のもので出て、同じ内容のものが電子書籍として出た場合に、両方収集するという理解でよろしいのでしょうか。片方ということはないのかどうかという、そのあたりの確認です。つまり、紙のものと電子書籍との関係を、今後どのように収集していくのか、納本対象とするのかについてお聞かせください。
会長:
事務局、いかがでしょうか。
事務局:
お答えいたします。まず、御指摘のあった箇所で規定しようと考えていることは、電子書籍内のフォーマットの異同について、どれを優先するか、しないのか、ということです。こちらについては御認識のとおり、審議会の答申でも補論(1)で書いていただいているところです。これを法規的な形に落とそうというのが、今回御報告している趣旨でございます。一方、今おっしゃられた紙と電子の別フォーマットの形につきましては、基本的に収集除外対象にならない限り、両方集めていきます。紙は収集除外がありませんので無条件に集めます。電子についてはリポジトリや同一版面といった収集除外対象は存在しますので、それらを除いた上で収集していくということになります。
委員:
分かりました、ありがとうございました。
会長:
よろしいでしょうか。他にいかがでしょうか。では、私の方から一つ。これは中長期的なことになるのかもしれませんが、事務局報告の資料3の、先ほど指摘のあった部分の1つ下のところです。1(1)法規整備の3ポツ目で、有償等オンラインについては施行日以降に発行されたものが制度収集の対象となるとあります。それは制度ができてから周知期間をおいて収集を開始するということで理解いたしますけれど、中長期的には、既に出ているものが相当数あるわけなので、その遡及的な収集についてです。今までの事務局での検討状況、それから審議会の答申でそれについて触れた部分があるかどうか即座に思いつかないのですが、何かありましたら、コメントをいただければありがたいです。お願いいたします。
総務部長・収集書誌部長兼務:
その点については、私から御回答申し上げます。会長のおっしゃる通り、制度開始後に収集できることになったものは、それで一つの目的は達せられるわけですが、当然それ以前のものをどうするかという点があり、基本的には何らかの契約、寄贈契約でも結構ですし、買うというか、対価を払うことを通じて集めていくことは、制度開始後も必要になることかと思います。寄贈で受けたい部分はもちろんございますし、強制力が働きませんので、館として、ぜひとも文化財として将来に残すという理念の下で、御協力をお願いする形となるかと思います。また、リポジトリという話が先ほどございましたが、どこのリポジトリでも、昔からの成果をきちんとまとめるようにされていると思いますので、国立国会図書館一館だけの力ではなくて、他の機関と協力して電子書籍・電子雑誌の保存について、国として実現するように尽力していかなくてはならないのは間違いないと考えております。
会長:
はい、どうもありがとうございます。他にいかがでしょうか。
委員:
資料3、1(1)法規整備の、令和5年1月1日から収集したものは、いつから利用できるのでしょうか。国立国会図書館の中での利用タイミングについての質問です。
会長:
事務局、お願いいたします。
事務局:
お答えいたします。利用につきましては、特に制約等はございませんので、入ってきて、すぐデジタルコレクションに投入いたしまして、利用が開始されるということになります。当然メタデータを作る等の作業のため、若干のタイムラグはありますけれども、基本的には収集して利用可能な状態になれば、すぐにでも利用を開始する想定です。
委員:
確認ですけれど、それはデジタルコレクションの館内利用ということですから、3館の中での利用ということでよろしいですね。
事務局:
はい、御認識のとおりです。
委員:
続けてもう1つよろしいでしょうか。先ほども話題になった点ですが、通しページ16、参考資料3で、以前に議論があったところのうち、(2)収集除外についてです。収集除外となる条件で、「納本済資料と同一版面である旨の申出を受け確認したもの」とある点の確認です。電子書籍のPDF版というのは結構な点数があり、特に専門書関係は版面をスキャニングしたPDF版で、これはほぼ紙の版面と同一であるということになります。これは出版社からその申出があった場合は収集対象外となっていくという理解でよろしいのでしょうか。
事務局:
お答えいたします。必ずしもPDFイコール同一版面となるわけではないですが、おっしゃる通り、かなりの確率で同一版面であると認定することができるかと思っています。したがって、申出がありましたら、そういう判断が非常に大きくなる可能性はあるかと考えております。
委員:
議論に関わってきながらこんな質問ですみませんが、どうしてこれが対象外になってしまうのでしょうか。つまり、デジタルコレクションの中で検索できなくなってしまうのではないか、ということを懸念します。どういう経緯で収集除外になったのかということを、確認させていただければと思います。
事務局:
紙の資料が存在するものについて、という限定がついております。当然デジタルオンリーのものは対象外です。そういったような規定から考えますと、個人的には、紙の資料というものはいずれ国立国会図書館でその版面のとおりにデジタル化する可能性があると考えているところです。したがいまして、こちらにつきましては、出版社側の御負担を軽減するために、いずれ国立国会図書館がデジタル化を同じような形式でするものについては、免除というようになっていると理解しているところです。
委員:
はい、よくわかりました。かつての議論を忘れておりました。ありがとうございます。
会長:
はいそうしましたら他にいかがでしょうか。よろしいでしょうか。はい、どうぞ。
委員:
今のやりとりを聞いて、私の最初の質問の趣旨が正にそこにありました。先ほどの御説明で一応納得したのですが、少し認識が変わりました。同一版面のものが紙のものでいったん出て、同じものがPDFファイルで出ると、収集対象にならないことがありうるのですね。出版社からの申出があれば避けることがあることの説明として、そのような解釈で本当によかったのかを確認させてください。国会図書館がいずれデジタル化するからそれでよい、という御説明をうかがいました。しかしながら、今の技術的な環境の前提は、もともと出版社が電子的な版面を作るわけで、それを上手く利用して、全体的な経済を考えるためにオンライン資料の収集制度をつくっていると思っていました。今の御説明は少しそれに反するような感じもします。今の御説明の理解があの時あったのかというのは、私は記憶していなかったのですけれど、同一版面ということをどう解釈するのかについて、もう一度確認させてください。今のようなことで全体としてよろしかったのでしょうか。以上です。
会長:
事務局、いかがでしょうか。
事務局:
お答えいたします。この同一版面の規定は、平成25年、無償DRMなしが開始するときにできた規定でございます。その当時の議論としましては、紙と電子両方出ているもの、電子しか出ていないもの、それから紙しかないものの3種類あるのですけれど、それらのうち何を優先して集めていくか、というのが一つ大きなポイントだったのかなと思っています。オンライン資料を収集する契機として、まずは当館が収集するすべのない電子しかない出版物を優先して収集すべきであるとの判断がありました。紙しかないものについては後ほど我々が電子化することもできるでしょう、紙と電子があるものについても、全く同じものを我々が将来的に作ることもできるので後にしましょう、というところなので、現時点では紙と同一版面のオンライン資料は収集対象にはなっていないというのは正にその通りなのですが、御指摘のとおり古い考え方なのかもしれないというところは、我々事務局としても考えているところでございます。今般すぐにこの規定を改正して両方集めるということではないのでしょうけれども、もう少し審議会でも事務局でも議論を重ねた上で、将来的には同一版面の免除につきましては、何らかの対応をせざるを得ないかなと思っているところでございます。あまりきちんとした回答になっていなくて申し訳ないのですが、現状としてはそういう認識でございます。
委員:
前からの規定の考え方が残っているということなのですね。今回の法整備の中では、これをある程度踏襲せざるを得ないということなのでしょうが、紙のものを出しているから、うちは電子を提供しないというところがどんどん増えてくると、納本制度の趣旨からすれば非常にまずいのかなと感じましたので、発言させていただきました。今後また議論したいと思います。
会長:
どうもありがとうございました。
総務部長・収集書誌部長兼務:
補足させていただいてよろしいでしょうか。今のお話しは、本当に今後論点になる部分が大きいだろうと思っております。この10年の歴史は、そのくらい大きく電子書籍・電子雑誌を取り巻く環境を変えてきており、コロナ禍のこともあり、その普及も著しいものになったのかなと考えております。保存が大事だという観点で、平成24年改正の際は、こういう規定を出版界と協議の上で組み立てて御理解もいただいて始めることにいたしました。ただ、電子環境、インターネット等の環境が整備され、色々な方が電子書籍をお使いになっている環境の下で、この紙で納本されたものと全く同じ版面の電子書籍・電子雑誌は集めなくても任務は果たせるかという点については、また色々なお考えがあるかと思いますし、この審議会の課題としても相応しいものになるのかなという気もいたします。本日伺ったところは、今後検討していかなければならない大きな点になるかという気はいたしております。補足させていただきました。
会長:
やはり技術や利用の進展、状況の変化もありますから、民間リポジトリとの役割分担等も睨みつつ、また考えていくことになろうかと、私としても考えております。
委員:
先ほど御指摘があったことと関係があるのですけれども、収集自体が現状ではまだなかなか難しいという話は今の一連の御説明で分かったのですが、その電子版があるのかないのかといった情報を、例えばNDLサーチの方で、商業的なデータベースを可視化するような形で補完的に見せるというようなことについては、どうでしょうか。お話しを伺えればと思うのですが。
会長:
今の点いかがでしょうか。
事務局:
お答えいたします。電子版の有無の可視化という点につきましてですけれども、リポジトリ認定された場合はそのリポジトリに入っているものにつきましてはメタデータ連携をしましょうというところが今般の答申でも謳われておりますので、それは実現をしようと思っているところです。同一版面で除外される場合は、こちらとしてもデータとして持ちようがない部分がありますので、そこにつきましてはNDL側でこれが電子化されているので同一版面で除外です、というような情報提供というのは難しいと思っているところです。一方、今、出版のデータベース化が進んでおりまして、JPROのデータベースの中で、これは電子版があるよというフラグを立てて、今後メタデータを管理していくということも聞いているところですので、我々というよりは出版界側のデータベースの方で、これは電子がありますというところは、今後、明確にしていっていただけるのかなと考えております。
委員:
おっしゃる通りだと思います。どうもありがとうございました。
会長:
どうもありがとうございました。これも非常に重要な点だと考えます。他にいかがですか。
委員:
大変な御努力で根気強く今回の制度収集について定めていただいて、誠にありがとうございます。ただ、これはコロナがこのような状況になる前からの課題であり、方向性、枠組み作りであり、そういうことでいうと適切だと思うのですけれども、やはり2年ちょっとの間に、学校教育の現場、人々の生活行動、地域の図書館に非常に通うようになったとか、制度的に運用そのものがパソコンやスマホを通じて行うようになったとか、官公庁が色々開示をしているものも変わってまいりました。そういう意味で言うと、生活行動が、あるいは経済行為も、デジタルを前提にして、デジタルを中心にして行われるということが大幅に進んできて、産業界も再編成されています。情報のやり取り、それから法的な契約行為であるとか、金銭の授受であるとか、あるいは様々な申請であるとか、そういったものについて、急速に制度的運用が変わりつつあります。もっと進むと思います。そういう意味で、出版界というような業界のくくりもこれから変わっていくと思います。今日、副館長の御挨拶にもありましたけれど、人々の知的行為、創作行為を保全していくために出版界が重要だということで、今までパートナーとして行ってきているわけですけれども、今後の抱負をもう少し考えていく、そういった何か、私的諮問委員会か何かを作ってもいいのではないかということですね。国立国会図書館がこれからも非常に有用性が高く、知的好奇心を満足させてくれるという国民的な役割、それから国家が保存すべきものの責任の遂行と、色々な意味で少し新しい枠組みを考えていく時にきているのではないかという感じがいたします。そういう意味で、私たちは、日々仕事をしていて、暮らしをしていて、家族を見ていて、読む、書く、聞く、話す、伝える、感動する、そういった様々な行為の中で、紙に書いたものの浸透以上に、デジタルが基盤になってきているということで、少しそういうようなことをまた考えていただけたらありがたいなと思いました。
会長:
どうもありがとうございます。非常に大きな課題というか、問題意識を提起いただきましたが、山地部長、何か国立国会図書館全体の組織なり、考え方、在り方を睨んでいかがでしょう。
総務部長・収集書誌部長兼務:
御指摘のあったことは日常の話として、私ども捉えております。委員の中には御存じの方も多いかと思いますが、この5月19日から、国立国会図書館のデジタルコレクションの中で、これまで図書館にしか送信できなかったコンテンツを御家庭でも閲覧できるよう、個人送信を実施いたします。このあたりは、出版界にも御理解をいただいて著作権法改正が整いまして、国立国会図書館としても、デジタル情報資源を使いやすい形でお届けできるよう環境整備に努めてきた成果かと思います。それは各界の非常な御理解と御協力の下で実現したことで、厚く感謝申し上げます。引き続き、コロナも含めていろいろと困難な環境の下でも、読者の方に色々な形でコンテンツが届けられるよう考えていかなければならないことと思います。以上でございます。
会長:
ありがとうございました。そうしたら、引き続きまして、お願いします。
委員:
昨年から委員をさせていただいております。よろしくお願いします。質問ですが、紙と電子で同時発売されている書籍というのは非常に増えてきております。国立国会図書館として、どちらをもらった方が都合がよいのでしょうか。あるいは、出版者の方にはどちらの方が納本しやすいのでしょうか。デジタルでDRMを外して収集するということですが、紙の本よりもデジタルを納本した方が便利だという話になれば、国会図書館もスキャンしてPDFファイルを作る必要がなくなるわけですので、都合がいいのではないかという気がするのですが、そのあたりのところどうなのか、実情を教えていただければと思います。
会長:
まずは事務局からお願いいたします。
総務部長・収集書誌部長兼務:
紙の出版物、有体物の出版物については一切の例外規定がありませんので、出版されたものは納本していただくというのが本則です。電子については、除外の規定があります。今日は何度かこの話をさせていただいたと思います。委員のおっしゃるように、デジタルで出されるものがあるのだから、紙はマストであるという前提も含めて考える余地が今後あるのではないかというのも、分かるのですが、これも、制度は若干世の中の動きより後追いではあるのかなと思っております。当然、その話題はこの場で審議がなされなければならないことなので、それも大きな課題になっていくのかなと思います。事務局から何か補足がありますか。
事務局:
お答えいたします。制度の枠組みとしては今申し上げたとおりです。一方、何のためにやっているかと考えますと、文化的資産を後世まで残していく、またそれを将来の国民の皆様に使っていただくということを目的としてやっているところでございます。そういう観点から紙と電子を比較した場合、実は紙の方が保存はしやすいのだけれども、利用の方は電子がしやすいという、二律背反するような状況に陥っているというのが正直なところです。本来的には、存在するならば両方あるべきなのだろうと思いつつ、制度に基づいて国民や出版社の皆様から強制的に納めていただく対象をどこに置いたらよいか、我々は開館以来ずっと悩んでいるところだと思います。これについては、時代の変遷に伴って随時見直していくべきことなのだろうなと、そのためにも審議会のお力添えが必要かなと考えているところです。
委員:
今、紙の方が保存しやすいと言われたところが少しびっくりしているところでございます。昔はそうだったのでしょうが、物理的なことも含めて、保存スペースの拡大とか色々な問題が国立国会図書館に生じたと以前聞いたことがあり、今の時代においては、電子の方が保存しやすいと思っていたので、意外でした。その辺もう少しだけ簡単に教えていただければと思います。
事務局:
申し訳ございません。言い方が正確ではありませんでした。おっしゃる通り、紙は物理的なスペースを取ります。ただ、紙媒体には、1000年持つという実績があるわけです。一方電子は、まだ、これからどうなるのか分からない部分がございます。例えばCDやハードディスクなども何年持つのだろうね、という話をしています。長期的な話として、長期保存に向いているか向いていないかといった場合には、今のところ、紙という媒体が、世界の中で一番長期的に保存できる媒体であろうと考えているところです。
委員:
ありがとうございます。分かりました。
会長:
他にいかがでしょう。
委員:
もう一度すみません。この有償等オンライン資料の収集という制度がスタートするわけなのですが、次に何をしていくのということをそろそろ議論した方がいいのかなと思います。通しページ15のよく使われる図なのですが、改めて見ると、この図を作ったのが随分前で、だいぶ古くなって、今の概念に合わないなというところがあります。A,B,C,Dとも、もともと紙が出たものの電子化を前提にしているのですが、たびたび話をしている「小説家になろう」等のような投稿サイトで扱われる図書・逐次刊行物に該当するようなネットコンテンツの収集が抜け落ちたままなのではないかと思うのです。まず確認として、そもそも「小説家になろう」等の作品群は、インターネット資料のウェブサイト情報なのか、図書・逐次刊行物に相当するものか、どちらなのでしょうか。
事務局:
お答えいたします。オンライン資料の定義はコードとフォーマットという2種類で規定していますので、その定義から外れるようなもの、たとえばHTML、テキストで書かれているようなものにつきましては、オンライン資料の定義から外れますので、この図でいいますと、御指摘のとおり、民間でやっているとすれば、民間のウェブサイト情報ということになります。
委員:
そうすると、今のままですと、インターネット資料収集制度の中で、キャプチャか何かしていかなかったら、どんどん消えていく作品群だということになります。今の制度上でもそのウェブサイト、投稿サイト運営団体の御理解をいただいて、国立国会図書館の方でキャプチャしていいよというふうになれば収集できるという理解でいいですか。
事務局:
はい、そうです。民間のウェブサイトにつきましては、制度的な収集ではなく許諾による収集という方法で収集することができます。委員がおっしゃるとおり、その許諾を得て、WARP、インターネット資料収集保存事業の方で収集していくことは可能です。
委員:
分かりました。投稿サイトにある膨大な作品群は図書じゃないということですね。ファイルフォーマット上はHTMLなので、この枠組みの中ではウェブ情報になるということで理解しました。では、積極的にWARPの方で保存させていただくような提案をしていくというという可能性はありますか。
事務局:
先方から国会図書館に対して保存してくださいとのお願いをいただけるということでしょうか。
委員:
いや、そういうような世論を高めてもよいのかなと。向こうから言ってくれなかったら国会図書館側は動かないということではなく、この膨大な作品群が失われていることの問題というのを考えておいた方がよいのかと思ったものです。ちなみに、ざっと数えると、投稿サイトで投稿されてから紙の出版物になったのは既に1万点を超えています。現在、流通する数十万点という作品群の中からすると一部ですが、1万点という書籍化されたクオリティのある小説のオリジナルが、もともと投稿サイトに投稿されていて、それが読まれない状態になっていく。もしかすると、その後、大活躍した作家の処女作は投稿サイトのもので、もう読めなくなっているという事態も考えられます。これは何かやはり積極的な保存という道を考えていただけないかなと思った次第です。
会長:
ありがとうございました。収集範囲や、それぞれ出てきた事例における関係の整序等、色々な課題があろうかと思いますが、引き続き中長期的な観点も含めて議論していければと考えます。他にいかがでしょうか。よろしいですか。はい、そうしましたら、次に進ませていただきます。
【会次第3 今後の日程について】
会長:
会次第3、今後の日程について、事務局から説明をお願いします。
総務部長・収集書誌部長兼務:
今後の日程につきまして御説明申し上げます。まず、有償等オンライン資料の制度収集に向けては、本日、進捗を御報告したところでございますが、引き続き、着実に準備を行ってまいります。
次の審議会は、次年度の第2四半期頃を予定しております。また具体的な日程につきましては事務局から改めて御相談させていただきます。以上です。
会長:
ただ今の、今後の日程について、何か御質問等はありますか。よろしいですか。
予定されている議題や報告は以上で終了いたしましたが、なお何か御意見・御質問等はございますか。
委員:
短く一つだけよろしいですか。
会長:
どうぞ。
委員:
最近出ている出版物の中で、いわゆるNFTという技術で電子的な付録がついているものが増えてきていると思うのですが、こちらに対して収集方針というようなことで、いま検討していらっしゃること、あるいは実際にしてらっしゃることがありましたら、教えてください。
総務部長・収集書誌部長兼務:
委員のおっしゃられるNFT、ブロックチェーンに類したものなのですが、正直に申し上げて、集めた後の利用が非常に難しいので、図書館で利用できないものは今の段階では手出しが難しいかとは思っております。まずフォーマットとして該当するものではないのですが、付録という形で存在していることについては認識しております。これも、今後研究が必要な分野かと思っております。事務局から何か補足はありますか。
事務局:
おっしゃるとおり、つい最近もそのような事例が報告され、担当から相談を受けているところです。今申し上げたとおり、利用が難しいというのと、基本的に付録であるというところ、本体ではなくて、本体は紙だったり電子だったりするのですけれども、付録というものが現状では多いというところから、今のところ収集対象にはならないかと思っているところです。ただし、今後どう展開していくのか分からない部分ですので、引き続き研究は続けていきたいと考えております。
委員:
ありがとうございました。
会長:
色々な存在形態が出てくるということで、また引き続き議論できればと考えております。それでは、事務局からは何かございますか。よろしいですか。
【閉会】
会長:
それでは、以上をもちまして、第36回納本制度審議会の会次第はすべて終了いたしました。御協力に感謝いたします。なかなか第六波が落ち着きませんので、引き続き御健勝のほどお祈りいたします。
本日はこれにて散会といたします。どうもありがとうございました。
(12時00分終了)

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