1. 小委員長あいさつ |
小委員長から開会のあいさつがあった。引き続き、事務局から配布資料の確認を行い、第1回小委員会からの進捗状況を報告した。 |
2. オンライン資料の収集に関する中間報告(案)について |
オンライン資料の収集に関する中間報告(案)について、事務局から資料3に沿って要点説明を行った後、質疑応答が行われた。主な内容は以下のとおり。 |
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○報告書で使用する用語の定義について |
- 技術の進歩などを考えると、ある時点で納入義務の対象を明確に固定することが非常に難しい。現段階でどのようなものが対象になるかを十分議論する必要はあるが、今後のことも考えると、制度の工夫が必要になってくるだろう。明確な定義にはならないかもしれないが、具体的な対象の例示を国会図書館が一種のガイドライン的に示すことが必要になってくるのではないか。(委員)
- 「ネットワーク系電子出版物」と「オンライン出版物」という用語について、これまでも国会図書館では報告書に記述されているような定義で使用してきたのか。(専門委員)
- これまでの答申では「ネットワーク系電子出版物」という用語のみ使用してきた。ただし、オンライン出版物という言葉は使っていないが、ネットワーク系電子出版物の中には、ウェブサイトと著作単位のものがあるという言い方をしてきた。一方、近年における諸外国の法制化の事例を見てみると、online publicationやpublication available onlineといった表現が散見されるようになってきた。英国図書館が昨年実施した電子情報の納本制度に関するアンケートでも、online publicationを電子情報の一つのカテゴリとして分けて調査を行っていた。このように、オンライン出版物がそろそろ用語として定着してきているのではないかと考え、今回の報告書案で使用した。オンライン出版物の概念整理については、資料4を御参照いただきたい。(事務局)
- オンライン出版物の定義については懸念がある。著作権法上の扱いにおいても、放送と通信の混乱を結局うまく整理できなかった。元々は放送で配信され途中からインターネットになる場合もあり、もはや流通経路で情報を区別することは難しいのではないか。(専門委員)
- 今回は、放送番組そのものは収集対象としていないが、オンライン出版物を「インターネット等で利用可能とした情報」としている。この場合のインターネットは例示であり、事務局としても流通経路で対象コンテンツを絞るのは適当ではないと考えている。(事務局)
- 平成11年の答申の際は、パッケージ系電子出版物はある程度ビジネスとして見えていたのに対し、ネットワーク系電子出版物は、対象となるものの姿形がはっきりとしない状態であった。現在は放送や通信がこの状態である。今回の報告書では、とりあえずこの分野はあいまいなまま、定義づけをせず、将来的に必要になった時に検討するということでよいのではないか。報告書の「はじめに」の部分で、「今後の新しいメディアの様態の変化に応じた制度設計が必要になってくるだろうが、今回は図書・逐次刊行物に相当する「オンライン出版物」を対象とする」と触れておいてはいかがか。ただ、諮問の内容に対して答申していく形なので、諮問の範囲内にないものまで踏み込まなくてもよいという判断であれば、その必要はないだろう。(小委員長)
- 「ネットワーク系電子出版物」の定義は曖昧にしておいても、「オンライン出版物」を「図書、逐次刊行物に相当する情報」としっかり定義しておけば、後に出てくる様々な事項も説明がつけやすいのではないか。この定義をうまく使っていけば、クリアになることは多いと思われる。(専門委員)
- 「おわりに」の部分では「50年後、100年後においても、時代の文化遺産として、今日の文化が確実に引き継がれていくことが望まれる。」と国会図書館のミッションがはっきりと記述されている。はたしてオンライン出版物のみを収集対象とするだけで実現できるのだろうか。新しく出てきたものを、従来の「出版物」という括りで概念規定するのは無理ではないか。今回は限定的だが、将来的にはすべてを収集対象とするというのであれば、国会図書館としての長期的な見通しをはっきりと打ち出す必要があるのではないか。(専門委員)
- 「オンライン出版物」の「出版物」という言葉に違和感がある。有体物を連想させる「出版物」をもって無体物を定義するという書き方は、はたして本当に不可避であるのだろうか、という感想をもった。(委員)
- 諮問に「図書・逐次刊行物等に相当する情報を収集するための制度の在り方について」とあるため、今回はこの部分に対象を絞って検討を行ってきたが、諮問にこだわらず、もう少し将来を見据えた議論を行った方がよいのか、小委員会としてどちらを選ぶかという問題であろう。我々がどこまでパースペクティヴを持っていたかということは、報告書の中で触れておいた方がよいのではないか。(小委員長)
- 100年後には紙の本が電子に置き換わっている可能性が大いにあり得ることを考慮すれば、もう少し広い範囲を議論した方がよい。(専門委員)
- そこまで諮問の字句にこだわる必要はないのではないか。(委員)
- 広く書いておくと、今後どんどん新しいものが出てきた時に、国会図書館がすべて対応しなければならないという義務感が生じてしまう。今できる範囲から行っていかなければならないという程度にしておけば、最初に広げて書いておいても大丈夫ではないか。(専門委員)
- 博物館や公文書館、図書館といったそれぞれの機関が、自分の守備範囲内で議論を行っていると、技術の進歩と共にどこにも属さない分野が出てきた時に、誰も収集しないまま消えていってしまうおそれがある。国会図書館にはぜひ広く収集していただきたい。(専門委員)
- 今回の中間報告書の「はじめに」及び「おわりに」の部分では、将来的にも当館の収集対象をオンライン出版物に限定するという記述にはなっていないと思われる。具体的にどのような文言に落とし込んでいくのかという判断になろう。(事務局)
- 国会図書館としては、ネットワーク系電子出版物についてもいずれは収集対象とするという前提があって、その中でまずはどの部分から実施していくのかということで、今回は「図書・逐次刊行物等に相当する情報」を対象と考えているのではないか。報告書はそのような理解で記述されていると感じた。(専門委員)
- 今回の対象は答申で触れられている部分である、とはっきり記述していただければよいと思う。(専門委員)
- 放送というものも現実的には境目が流動的になっているという状況がある。また、「図書・逐次刊行物等に相当する情報」の「相当」という表現も、差し当たり制度を作る上では必要なので検討するが、実はそれ自体矛盾した要件である。こういった状況があるということを、一言付け加えておくだけでも印象が違うのではないか。(委員)
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○現行納本制度による収集について |
- 「館法第24条第1項第9号の規定を適用することによる制度的収集はできない」というのは、法律を改正するという意味か。(専門委員)
- 現行法での収集はできないので、何らかの新しい改正が必要ということである。(事務局)
- 館法第24条第1項第9号が有形のパッケージ系電子出版物に限るというのは、どこかに明記してあるのか。(専門委員)
- 第24条には「出版物」と書いてあって「部数」とあるので、有形と類推できるのではないか。(委員)
- 第9号は「記録した物」と書かれているので、情報までは含まれないと思われる。(事務局)
- オンライン資料については納本制度による収集の枠外であるということだが、元々現行制度の枠内で収集しなければならないという話なのか。(専門委員)
- オンライン資料については、納本制度の根幹的要素である到達義務・網羅性・発行者に納入義務を課すという3点をすべて満足させることが困難であるため、現行の納本制度に組み入れることは難しい。納本制度に準じるような制度的収集によるものと考えている。パッケージ系電子出版物は、第24条第9号を追加する形で納本制度の枠組みに入れた。しかし、平成21年の政府機関等のインターネット資料の収集に関しては、第11章の2で「インターネット資料の記録」として、制度的収集ではあるが納本制度の枠外という形で館法改正が行われた。民間の出版者が発行したものを収集する場合も、同様の形になるかと思われる。(事務局)
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○収集対象とするオンライン資料と他の資料との区別について |
- 収集対象について、大きく2つの性格の違うものを除外しようとしている。一つは放送であり、保存の必要性は高いが国会図書館のミッションではないので対象外とする。もう一つはウェブサイトであり、作成者が固定して保存されることを想定しないで世に出していることから、表現の萎縮との関係で対象外とする。こういったことをもう少し明確に記述した方がよいのではないか。全体として、他の情報と明瞭に分けられると言っているが、何と区別しようとしているのか分かりにくい。区別したいのだが境界線が曖昧であるため難しいということが、はっきり分かるようにした方がよい。(委員)
- 山本委員の意見に同感である。せめて、明瞭には区別できないが理由があって線引きを試みていることをどこかで注記しておかないと、たやすく指摘を受けてしまうのではないか。収集対象が今後の義務につながっていくので、どういった物が出版物相当であるのか、というのは大事な区別のはずである。対象範囲の境界が不明確であるという注意書きをするか、さらに頑張って厳密な定義に向けての努力を尽くすしかないと思われる。(委員)
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○編集過程の有無について |
- 「従来の出版物と同様の編集過程」というのは、「何らかの編集過程」を経ていることである、と明瞭に述べておくべきである。なおかつ、実際には編集過程を経たかどうかは分からないので、「何らかの編集過程を経たと考えられる」といった言葉で説明しておかないと、「従来の出版物と同様の編集過程」という言葉自体が意味不明であると言われてしまうおそれがある。(委員)
- 何らかの編集過程によって図書、逐次刊行物を定義する一方で、図書、逐次刊行物を意味づけるものとして「編集過程」を挙げているにすぎないとするのは、トートロジーに読める。編集過程に意味はないということになって、用語衝突を起こしてしまっている。(専門委員)
- 「従来の納本制度の運用においても、厳密な編集過程を経た資料だけが納本されてきたわけではない」と書いてあるからといって、従来の編集過程を否定しているわけではない。ただし、分かりにくさはあると思うので、収集対象を提示するのは難しい、と注記するのは一つの手かもしれない。(事務局)
- 今回の報告書は一定の限定された範囲で記述しなければならないが、実際のところ出版物の概念規定は無理である。実務においてはケースバイケースで判断するしかないので、形式的に一応の概念規定を記述している、と理解した。(専門委員)
- 携帯小説やウィキペディア、青空文庫など判断に迷うものに関して、少なくとも報告書を読んで、国会図書館の収集対象になるか否かが分かる程度には記述しなければならないだろう。(委員)
- ウィキペディアや青空文庫は、小委員会の中でも収集対象になるかどうか意見が分かれていた部分である。当館としても、具体的な収集対象をガイドライン的に報告書の中で記述していくことは、現段階では難しいと考えている。仮に報告書の中で対象であると記述しても、収集に当たっては設備面の条件や関係者との調整が必要であり、実際にできるかどうかということもある。段階的な実施ということもあり、曖昧さがどうしても残ってしまうということで、中間報告の中ではそれを許容していただく方がよいのではないかと考えている。(事務局)
- やはり「編集過程」という言葉は避けた方がよいのではないか。映画や放送においても「編集」は行われている。むしろ、図書・逐次刊行物について言うのであれば、「出版制作過程と同等の」というような表現がよいと思われる。諮問で使っているということであるならば、従来の意味合いと異なることを示すためにカギ括弧を付けて使用するという方法もある。あるいは、諮問の「従来の編集過程を経て」という文言を、本報告書では「何らかの編集過程を経て」と解釈して検討を行う、と断り書きを入れてはどうだろうか。(小委員長)
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○データベースの収集について |
- データベースそのものが収集対象とならない理由として、「システムが稼働する環境まで収集することはできず」と記述されているが、この理由で対象とはならないのは疑問である。(専門委員)
- データベースは、来館者に利用してもらう環境を作るために用意するもので、制度的収集とは別ではないか。来館者へのサービス形態の違いが出ているという印象である。(小委員長)
- 契約によって利用環境を整えるということは今でも行っているし、制度的収集の実現後も引き続き行っていくことである。収集するというのは、基本的に個別のコンテンツを対象としているものであり、利用環境をどのように整えていくか、ということとは別の話である。ソフトウェア・ハードウェアを含めてデータベース全体を収集するのは、不可能というわけではないが技術面・資源面を考えるとかなり難しいだろう。(事務局)
- 今後、コンテンツとシステムが一体となったようなデータベースが出てくることが予想される。個々のコンテンツだけ集めても出版物全体とは言えないのではないか。システム全体を保存しないと使えないのではないか。(専門委員)
- データベース全体を収集するのは、民間の経済活動をそのまま収用することになるので収集対象としないという議論だったのではないか。(委員)
- 収集しても利用形態に問題がなければ民業圧迫にならないのではないか。(小委員長)
- マルチメディア著作の中には、一つのデータベース中に存在しているものだけでなく、外のサイト等とも結びついて、閉じた形を成さないでコンテンツが形成されているものもある。それらを全部含めて収集・保存を行うというのは、現実的にどこまで可能であるのかということを見極めた上で、可能な範囲について取り組んでいくことになるだろう。(事務局)
- 報告書の表現を「収集することは困難であり、今回は収集対象とはならない」と一歩ひいた表現にして、今回の中間報告の中でのデータベースの取扱いであるということが分かるように記述してはいかがか。データベースの収集というのは、将来的に課題として出てくる可能性がある。(小委員長)
- データベースは収集対象としては大変大きいので、対象になるかならないかという点をはっきりさせておきたいと考えている。当館が今後、利用環境も含めてシステム全体を取り扱うことが可能かどうかは未知数であり、現実的には難しい側面もあるだろう。(事務局)
- 動画が入っていてアクセスする度に内容が異なるようなものは、集めるのが難しい。これはデータベースの収集ではなく、別の話であろう。技術の進歩はとても早くて、これから本と動画の境目がどんどんなくなってくると思われるが、そうなった時どうすればよいのだろうかという疑問をもった。(専門委員)
- 確かにビジネスとしても、漫画を見せるためにコマを動かしたり音楽をつけたりする、ということが出てきており、近い内にそういった状況になる可能性が高いが、今回の報告書でそこまで範囲を広げてしまうと、まとまりがつかなくなるおそれがあり難しいところである。(専門委員)
- データベース全体の収集については、「今回の収集対象としては、民間が提供している間は対象としない」という限定で記述してはどうだろうか。また、収集対象としない理由として「システムが稼働する環境まで収集することはできず」という文言を削除してはいかがか。(専門委員)
- 今回の報告書においてはデータベースそのものが収集対象ではないことは合意しているが、将来的には課題になることも予想されるので、「収集対象とはならない」という表現をもう少し工夫することでよいのではないか。(小委員長)
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○「日本国内」の判断について |
- 〔机上配布資料「対象となるオンライン資料について」に沿って説明。〕情報の発信主体の属性と情報の言語・発信地の関係で、国会図書館としてどこまで収集したいのかを明確にした上で、それを可能とする法律論を後追いで考えていくという方法がよいのではないかと考えた。サーバが海外にあって自動収集をする場合の著作権法上の取り扱いについては、複製行為を行うのが日本国内のサーバ上である、という解釈もあり得る。(委員)
- 当館としては、発信主体が日本在住・所在である場合、サーバの所在地が海外であれば自動収集の対象ではないが送信義務は課する、海外在住・所在の場合は、自動収集・送信義務のいずれにおいても対象とはならないだろうと考えている。(事務局)
- クラウドコンピューティングなど情報の場所が関係なくなっている状況において、発信地等で対象を区切るのは意味がないのではないか。国会図書館のミッションとして、日本の文化を発展・蓄積するために意味があるものは全部を収集対象とすべきであって、実際に対象になるかどうかは法律に委ねればよいのではないか。(専門委員)
- 単に収集するかしないかという意味では、制度的収集に依らなくても契約など他の手段を採ることができる。しかし、法律によって収集するという場合は、やはり法的な手当てができるかどうかという話が必要になってくる。(事務局)
- 発信主体が海外在住で、日本語・日本発信の情報は収集対象ではないと考えてよいか。本拠地が海外にあり登記等はしていないが日本に事業所を持つ機関は、日本所在の発信主体に含まれるのでは。(委員)
- 収集範囲と法解釈については、もう少し調整が必要なので、今後個別のやりとりで詰めていくこととする。(小委員長)
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○経済的補償について |
- 経済的補償に関しては、結論に賛成である。場合によっては、納入に係る手続き費用をかなり要する可能性はあるだろう。(委員)
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○過料について |
- 過料を設けないという結論はよいと思う。ただし、「一般に、秩序罰のような強制手段を設けるのは、特に不履行が著しい公益違反をもたらす場合に限られ」という表現は、国会図書館としてはできる限り義務を履行してほしいという立場であるにもかかわらず、収集できなくても公益上問題がないと誤解される可能性がある。また、過料はどちらかと言えば刑罰をつけるには及ばないものに対して課されるものである。収集範囲が明確ではない、技術の進歩に応じて変化していく流動的な性質のものであるため、義務違反に対して過料を設けるのは難しい、ということが主な理由になるのではないだろうか。(委員)
- 過料について、現行の納本制度でも一度も行使されたことがないと聞いている。オンライン資料に関して、あえて記述する必要があるのか。(小委員長)
- 義務履行確保のための記述は必要であると考える。ただし、表現の仕方には工夫の余地があるだろう。(事務局)
- 法律上義務を課して罰を設けないという形は、例がないわけではないが例外的である。制度を作って罰を設けないので、何らかの理由を付けておきたいというのが主旨であろうと理解した。(委員)
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3. その他 |
次回委員会の開催とスケジュール、審議会への報告及び答申への道筋が確認された。 |
以上 |