納本制度審議会のこれまでの歩み
(1)納本制度調査会の答申(平成11年2月)
近年の電子出版物の増大に対応するため、国立国会図書館では、平成9年3月以来、納本制度審議会の前身で、館長の諮問機関である納本制度調査会において、電子的な媒体の出版物の納入に関する制度及び運用の在り方について調査審議を行った。同調査会は、電子出版物部会、法制部会における検討を経て、平成 11年2月22日に「答申 21世紀を展望した我が国の納本制度の在り方-電子出版物を中心に-」を提出した。この答申は、(1)CD-ROM等の有形の媒体に情報を固定したパッケージ系電子出版物を、従来の紙媒体等による出版物と同様に網羅的に納入対象とし、その納入に際して交付する代償金の額は、納入出版物1部当たりの生産に要する費用相当額とすることが妥当であること、(2)パッケージ系電子出版物を利用に供するに当たっては、著作権者等、発行者、利用者それぞれの便益の均衡を図ることが重要であること、(3)ネットワーク系電子出版物については、当分の間納本制度の対象外とし、必要、有用と認められるものについては、契約により収集することが適当であること等を内容としている。なお、ここでいうネットワーク系電子出版物とは、インターネット等により送受信される電子出版物のことである。
(2)パッケージ系電子出版物の納入に係る代償金の額について答申(平成11年7月)
平成11年6月7日、国立国会図書館は、上記の納本制度調査会答申の趣旨に沿って、納本制度を改正するのに伴い、パッケージ系電子出版物の納入に際して交付することとなる代償金額を確定する必要から、「パッケージ系電子出版物の納入に係る代償金の額について」納本制度審議会に諮ることとした。この諮問事項は、代償金部会に付託された。
代償金部会は、平成11年6月18日以降、パッケージ系電子出版物の生産・流通実態、パッケージ系電子出版物の納入に係る代償金額の在り方等について審議を行い、同年7月13日に、「パッケージ系電子出版物の納入に係る代償金の額について-納本制度審議会代償金部会報告-」をとりまとめた。この代償金部会報告は、平成11年7月19日に納本制度審議会に提出され、同審議会はこれを答申案として審議した結果、「答申 パッケージ系電子出版物の納入に係る代償金の額について」を決定し、同日、国立国会図書館長に提出した。
(3)国立国会図書館法の一部改正(平成12年4月)、納入すべきパッケージ系電子出版物の最良版について答申(同8月)、改正納本制度の施行(同10月)
平成12年4月7日、パッケージ系電子出版物を新たに納本対象とすること等を内容とする国立国会図書館法の一部を改正する法律が公布され、平成12年10月1日に施行されることとなった。
この改正納本制度の円滑な実施を図るため、平成12年6月5日、国立国会図書館長から「納入すべきパッケージ系電子出版物の『最良版』について」諮問がなされ、納本制度審議会は、この諮問事項を調査審議するため、納入出版物の最良版に関する小委員会を設置した。
この小委員会は、「最良版」の規定の設置経緯とその趣旨、従来の納入対象出版物と「最良版」、パッケージ系電子出版物の発行の特徴と「最良版」等について調査審議を行い、同年8月3日、小委員会報告を決定した。
同年8月31日に開催された納本制度審議会は、この小委員会報告を討議ののち全会一致で了承し、これに基づき「答申 納入すべきパッケージ系電子出版物の「最良版」について」を決定し、国立国会図書館長に提出した。なお、これをもって当該小委員会は廃止された。
同年10月1日からの改正納本制度施行に際し、平成12年9月には、上記納本制度審議会答申の内容を踏まえ、納入すべきパッケージ系電子出版物の「最良版」、当該出版物の代償金額、国・地方公共団体等の出版物の納入部数につき法規等の整備が行われた。
(4)ネットワーク系電子出版物の収集に関する制度の在り方についての諮問及び答申
平成14年3月1日、第6回納本制度審議会において、国立国会図書館長から「日本国内で発行されるネットワーク系電子出版物を納本制度に組み入れることについて」との諮問が行われ、併せて、納本制度に組み入れられない場合に収集すべきネットワーク系電子出版物の範囲とその収集方法が調査審議事項として示された。納本制度調査会答申において、当分の間、契約による収集が適当とされたネットワーク系電子出版物に関して、改めて諮問が行われたのは、国立国会図書館の任務に必要な範囲のネットワーク系電子出版物について、納本制度に組み入れられないのであれば、効率的に収集して長期的な観点からの利用を可能とするための新たな制度の創設を視野に入れた検討が必要と考えられたからである。
納本制度審議会は、諮問事項を調査審議するため、ネットワーク系電子出版物小委員会を設置し、同小委員会は、平成14年6月から平成15年1月にかけて 3回の調査審議を行った後、平成15年3月13日の第7回納本制度審議会において、小委員会の調査審議結果を報告した。同報告に基づき、同審議会は、ネットワーク系電子出版物を納本制度に組み入れないことが適当との結論を了承するともに、今後、新たな収集の制度を検討するにあたり、収集の方法や範囲等に関して特に法的観点からの調査審議が必要であることなどを確認した。同小委員会は、同日、廃止された。
平成15年6月25日の第8回納本制度審議会においては、法的観点からの検討を要する事項の調査審議のために、ネットワーク系電子出版物の収集の課題に関する小委員会が設置された。同小委員会は、平成15年9月から平成16年12月にかけて5回の調査審議を行い、途中、平成16年6月2日の第11回納本制度審議会において調査審議の経過を報告し、平成16年12月9日の第12回納本制度審議会において、小委員会の報告を行った。同審議会では、同小委員会報告が了承された後、これと前小委員会の調査審議結果とを統合した答申(案)が会長から提案され、調査審議の結果、全会一致をもって「答申 ネットワーク系電子出版物の収集に関する制度の在り方について」として決定された。決定された答申は、同日、会長から国立国会図書館長に手交された。なお、同小委員会は同日廃止された。
(5)独立行政法人等の出版物の納入義務の在り方に関する諮問及び答申
平成15年10月22日、第9回納本制度審議会において、国立国会図書館長から「納本制度において、独立行政法人、国立大学法人及び地方独立行政法人が発行する出版物の納入義務はいかにあるべきか。また、『特殊法人』、『地方公社』等の法人が発行する出版物の納入義務はいかにあるべきか。」との諮問が納本制度審議会に対してなされた。審議会は、諮問事項を調査審議するため、「独立行政法人等の出版物納入義務に関する小委員会」(塩野宏小委員長、小幡純子委員、高橋真理子委員、百﨑英委員)を設置した。平成15年11月26日、同12月16日に同小委員会が開催され、平成16年2月13日の第10回納本制度審議会において、同小委員会の報告がなされ、審議会の了承を受けた後、審議会は同報告をもとに、「答申 独立行政法人等の出版物の納入義務の在り方について」を決定し、同日、会長が国立国会図書館長に答申を手交した。なお、同小委員会は、同日廃止された。
この答申を受けて、平成16年12月1日、独立行政法人等に国等と同等の納入義務を課することを内容とする国立国会図書館法の一部を改正する法律が公布され、平成17年1月1日から施行された。
(6)オンライン資料の収集に関する制度の在り方についての諮問及び答申
平成21年7月23日、第16回納本制度審議会において、国立国会図書館長からオンライン出版物の収集について問題提起がなされ、収集の意義や電子情報の提供・保存等をめぐって、懇談が行われた。
平成21年10月13日、第17回納本制度審議会では、国立国会図書館長から「国立国会図書館法第25条に規定する者(私人)がインターネット等により利用可能とした情報のうち、同法第24条第1項に掲げられた図書、逐次刊行物等に相当する情報を収集するための制度の在り方について」の諮問(PDF: 128KB)が納本制度審議会に対してなされた。審議会は、諮問事項を調査審議するため、「オンライン資料の収集に関する小委員会」(以下「小委員会」)を設置した。
小委員会は平成21年11月から平成22年2月にかけて3回の調査審議を行い、「オンライン資料の収集に関する中間報告」(以下「中間報告」)を取りまとめた。
平成22年3月16日、第18回納本制度審議会において、小委員会から中間報告が説明され、ほぼ原案どおり了承された。
平成22年6月7日、第19回納本制度審議会において、中間報告を基にした「答申 オンライン資料の収集に関する制度の在り方について」(PDF: 1MB)が全会一致で決定され、同日、会長代理から国立国会図書館長へ手交された。
(7)オンライン資料の補償に関する諮問及び中間答申
平成23年9月20日、第21回納本制度審議会において国立国会図書館長は、上記の平成22年の答申の趣旨に沿ってオンライン資料の制度的収集を行うに際しては、費用補償の対象、補償額の具体的な水準及びその適正な算定方法について、特に中立・公正な観点から決定することが必要であることから、「平成22年6月7日付け納本制度審議会答申「オンライン資料の収集に関する制度の在り方について」におけるオンライン資料の制度的収集を行うに当たって補償すべき費用の内容について」を納本制度審議会に諮問した。同審議会は、この諮問事項を調査審議するため、オンライン資料の補償に関する小委員会を設置した。
同小委員会は、平成23年10月20日及び11月22日に調査審議を行い、中間報告書を取りまとめた。
平成24年3月6日の第22回審議会において、この中間報告書は、質疑の後、了承された。同日、同審議会はこれを基にした「中間答申 オンライン資料の制度的収集を行うに当たって補償すべき費用の内容について」(PDF: 579KB)を決定し、会長から国立国会図書館長へ中間答申が手交された。
(8)オンライン資料の補償に関する答申
平成24年の中間答申において結論に至らなかった有償等オンライン資料の制度収集については、平成24年度から令和2年度にかけて、納本制度審議会及びオンライン資料の補償に関する小委員会において、調査審議を行った。
令和2年度の同小委員会では、数年にわたる調査審議内容の総括を行い、令和3年3月5日の令和2年度第5回同小委員会において、オンライン資料の補償に関する小委員会報告書を取りまとめた。
令和3年3月25日、第34回納本制度審議会において、同報告書が了承され、同日、同審議会はこれを基にした「納本制度審議会答申 オンライン資料の制度収集を行うに当たって補償すべき費用の内容について」(PDF: 600KB)を決定し、会長から国立国会図書館長へ答申を提出した。