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令和元年度第1回納本制度審議会オンライン資料の補償に関する小委員会議事要録

日時:
令和元年12月20日(金)午後2時~午後4時
場所:
国立国会図書館本館3階総務課第一会議室
出席者:
福井健策小委員長、植村八潮委員、遠藤薫委員、柴野京子委員、永江朗委員、根本彰委員、佐々木隆一専門委員、樋口清一専門委員
溝口敦株式会社メディアドゥホールディングス執行役員
野村虎之進株式会社モバイルブック・ジェーピー顧問
会次第:
  1. 小委員長の挨拶
  2. 有償等オンライン資料制度収集に向けた課題について
  3. 電子書籍の制作・流通と長期保存に関するヒアリング
  4. 今後の予定について
配付資料:
  • (資料1)納本制度審議会オンライン資料の補償に関する小委員会所属委員・専門委員名簿
  • (資料2)有償等オンライン資料制度収集に向けた課題について
  • (資料3)電子書籍の制作・流通と長期保存に関するヒアリング
  • (参考資料)オンライン資料収集に係る法規対照表
議事概要:

資料2に基づいて、事務局から、有償等オンライン資料制度収集に向けた課題について説明を行った。

資料3に基づいて、電子書籍の制作・流通と長期保存に関するヒアリングを実施した。主な発言は次のとおりである。

  1. 電子書籍の一般的な制作・流通フローについて
    • 版元は、電子書籍のオリジナルデータ(本文、表紙画像、書誌情報のセットが基本)を作成し、電子取次に渡す。版元以外に、制作会社や電子取次が作成する場合もある。
    • 電子取次は、版元から届いたデータを確認し、不備(乱丁・落丁、書誌情報の不足等)を整え、各電子書店が求める形式に変換した上で配信する。
    • 電子書店は、電子取次から受け取ったデータを確認し、商品データとして商用環境に登録し公開する。
  2. 電子取次の機能について
    • 版元から電子取次に渡される電子書籍ファイルには、DRMが付与されていないのが一般的(例外的に、海賊版対策の電子透かし入りで渡される場合等もある。)。本文のファイルフォーマットはEPUBが主流だが、PDF、BookSurfing、.book、XMDFもある(新刊では、.book、XMDFはほとんどない。)。書誌情報はCSV、表紙画像はJPEGが主流。それらのファイルを、FTP、ダウンロード、クラウドサービス、システム入稿等、何らかのネットワークを介した方法で受け渡すのが一般的。
    • 電子取次は流通ライセンス事業。コンテンツの利用権は出版社にあり、取次が流通させるためのライセンスを得て、電子書店のサブライセンスを仲介する。
    • 電子取次から電子書店には、書店毎に必要なDRMや書誌情報を付与した上で納品するのが一般的。電子書店側でDRMを付与する場合や、電子取次のサーバにDRM付きファイルを置いたまま電子書店経由でエンドユーザに提供する方式もある。
    • 電子書店毎に求める書誌情報が異なるため、版元から預かったオリジナルデータを電子取次が変換した上で各書店に配信する。JPOが提唱するJP-eコードとISBNを入れて流通させるのが基本だが、ISBNは必ずしも全てに付与されているわけではない。
    • 1巻無料キャンペーンのように、期間限定で特別価格が設定されることもあり、版元の依頼に応じて、期間や価格等を書誌情報の形で整え、電子書店に渡す(対象巻号や期間は書店によって異なる。)。
    • 電子書籍の流通総量を点数で示すのは困難。漫画の場合、1巻1ファイルとすれば30万ファイルは流通しており、1話1ファイルとすれば、それ以上になる。流通金額ベースだと総量の約8割が漫画であり、テキスト系は多くはない。モバイルブック・ジェーピーの場合は、12月時点で、おおよそ、1,300社から60万タイトルを預かり500サイトに取り次いでいる。点数はタイトル数の約3倍であり、1年で約6万タイトル増えている。
    • 冊子と電子書籍の両方が出版される場合が多く、特に漫画でその傾向が顕著。新刊書籍の約50%は電子書籍でも出版されており、コミックだと80%以上、文芸は50%程度の割合という調査結果もある。電子書籍が普及しても冊子の出版物は消えないだろう。
    • 電子取次事業者は複数あるが、大規模な取次サービスシステムを完備しているのは、現状、メディアドゥとモバイルブック・ジェーピーの2社と考えて差し支えない。両社は、B to Cで一般に流通している電子書籍のほとんどを取り扱っている。冊子の取次と同様に、同一の電子書籍を両社が扱う場合、互いの書誌情報の形式は多少異なるが同定は可能。
    • DRM付きファイルの複数電子書籍間の本文横断検索は、技術的には可能だが許諾の問題があるかもしれない。
  3. 電子書籍データの保管状況について
    • 版元では、オリジナルデータ(本文、表紙画像、書誌)をDB管理している場合、媒体に格納して保持している場合など様々。電子取次が保管しているオリジナルデータの提供を版元から求められる場合もある。
    • 電子取次では、オリジナルデータは当然のこととして、DRMを付与した商品データ、各種バックアップデータ等、複数バージョンのファイルを保管している。
    • 電子書店では、配信対象の商品データを保有している。取次のサーバにファイルを置いたまま電子書店経由でエンドユーザに提供するモデルの場合は、電子書店の手元にはデータがない。
    • 版元から電子取次への本文差し替え依頼や書誌情報修正依頼は多い(月の流量の1割程度は更新依頼あり)。電子取次では、基本的に、版元の依頼に基づき上書きで対応し、版管理は行わない。著作権者との権利関係で配信停止になる場合も稀にあるが、購入済エンドユーザの再ダウンロードに応える必要があるため、電子取次が保管しているファイルの削除は行わない。
    • 電子書籍にも様々な版違いがある。同一タイトルで内容が異なるもの(おまけ付き等)は別ファイルであり、勝手に上書き更新することはない。基本的に、ISBNに変更がなければ刷り違い相当であり上書き更新、ISBNに変更があれば版違い相当であり別商品となる。
    • 電子取次の判断でファイルを削除することはなく、商用環境で流通しているコンテンツについては、一番正しいファイルを永遠に保持する努力をしている。サーバの冗長化や拡張、セキュリティ確保は当然のこと。コンテンツが適切に読める状態を維持するには、本文だけが存在しても用をなさず、本文、書誌情報、ビューア、DRMが揃って、初めて機能するため、それらを維持するためにマイグレーションをし続けることが求められている。そのための作業を永遠に反復し継続することが長期保存である。ただし、電子取次において長期保存は目的ではなく、機能の一部であり手段。
  4. 電子書籍の特殊な制作・流通フローについて
    • セルフパブリッシング(取次や出版社を介在せず、著者とセルフパブリッシング提供サービスとの間で直接ファイルをやり取りする)は増えており、今後も拡大するだろう。その他、電子取次が扱わない電子書籍には、独自DBで提供される辞書系、専門書系、学術系や電子書店のオリジナル商品、出版社が単体アプリケーションで直接提供しているもの(コミック、絵本など)等がある。
  5. その他(NDLの課題)
    • 収集対象について、話売り(巻や号を話単位に分割)したファイルまでは収集不要だが、おまけ付きは別途収集する価値があるかもしれない。縦スクロール漫画のように内容が同じで見た目が違うものは難しい。付与されているJP-eコード単位で収集するのも一案。
    • セルフパブリッシングや、冊子がない電子書籍の収集は、独自形態が多いこともあり、難易度が高いのではないか。
    • マイグレーションをし続けられるかが最大の課題だろう。
    • セルフパブリッシング、地方出版社の電子書籍など、全国的な取次ネットワークでは流通しないものの収集も課題だろう。

(以上)

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