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令和2年度第4回納本制度審議会オンライン資料の補償に関する小委員会議事要録

日時:
令和3年2月17日(水)午前10時~午前11時45分
場所:
Web会議システムによるリモート開催
出席者:
福井健策小委員長、植村八潮委員、遠藤薫委員、奥邨弘司委員、柴野京子委員、永江朗委員、根本彰委員、佐々木隆一専門委員、樋口清一専門委員
会次第:
  1. 有償等オンライン資料制度収集に関する小委員会報告書の取りまとめについて
  2. その他
配付資料:
  • (資料1)納本制度審議会オンライン資料の補償に関する小委員会所属委員・専門委員名簿
  • (資料2)有償等オンライン資料制度収集に関する小委員会報告書(草案)
  • (参考資料1)有償等オンライン資料制度収集に向けた課題の整理について
  • (参考資料2)オンライン資料収集に係る法規対照表
議事概要:

資料2に基づいて、小委員会報告書の取りまとめに向けた審議が行われた。主な発言は次のとおりである。

  1. 収集及び収集除外について
    • 現行制度では、特定のコード(ISBN、ISSN、DOI)が付与されているもの「又は」特定のフォーマット(PDF、EPUB、DAISY)で記録されているオンライン資料を収集対象としているが、国立国会図書館法に規定されている文化財の蓄積及び利用という収集目的に鑑みると、収集対象が適切に定義されているのか疑義がある。出版社や新聞社のインターネット配信コンテンツのように、有体物であれば納本対象となる内容のものが収集対象から漏れる可能性がある一方で、個人のブログに掲載されたPDFまで収集対象に含まれる可能性がある。オンライン資料の収集実績として示されている74,000点には、どのようなものが含まれているのか。
    • 元々、幅広くインターネット上で流通している情報の収集、ウェブアーカイビングというものを見据えて議論を始めたが、情報発信者が意図しないタイミングで国により情報が固定され長く保存されるとなった場合に、表現行為自体が萎縮してしまう恐れがあるという問題が指摘され、固定の意思をもって発行された旧来の出版物の延長線上にある図書又は逐次刊行物に相当するものの収集にフォーカスを絞った経緯がある。また、特定コードの付与が徹底されていないことから、特定のコードあり「かつ」特定フォーマットと定義すると、収集範囲が狭くなり過ぎる懸念があった。PDFファイルの全てが収集対象というわけではなく、機密扱いのものや簡易なものは除かれる。収集実績74,000点のほとんどは、無償かつDRM無しで公開されているPDF形式のもので、学会誌、事業報告書、年報等が多く、その他にも、紀要、技報、ニュースレター等、図書や逐次刊行物に相当する資料を幅広く収集している。これとは別に、公的機関についてはウェブサイトごと収集しており、そこから取り出したオンライン資料に相当するもの等を加えると、国立国会図書館デジタルコレクションを通じて提供している電子書籍・電子雑誌は、昨年度末時点で約1,250,000点である。
    • オンライン資料の定義から外れるウェブサイトにも、内容的には収集対象とすべきものがある。表現の萎縮の問題が挙げられたが、納本制度の開始当初も同様の問題があり、検閲ではなく文化財の蓄積なのだと諄々と説いて理解を得た結果として今がある。NDLにはインターネット情報の収集においても覚悟を持って臨まれたい。
    • 平成30年に文部科学省が子供の読書活動の推進に関する基本的計画を策定した際、これからの子どもの読書活動には電子書籍等の情報通信技術を用いた読書を含むものとした背景には、若者に浸透している小説投稿サイト(いわゆる「なろう系」)の存在がある。読書活動を広くとらえた場合に、オンライン資料の定義や制度収集の枠組みの中で小説投稿サイトがどこに位置付けられるのかという問いは、必ず出てくるだろう。今は、平成24年に考えた枠組みの中で早急に結論を出すことに意味があるが、次の段階として、オンライン資料の定義の外にあるものを全て収集対象外とするのではなく、ビジネスとして成り立っているコンテンツを収集する枠組みを考える必要がある。
    • 当初、個人的にはインターネット情報の網羅的収集に賛成していたが、審議会における議論の中で、そこまでは収集範囲を広げられないという一つの結論が出て、現在のオンライン資料の定義となり、館法改正が行われたものである。今回の報告書は、それを前提としてまとめるしかないが、収集すべき対象については今後とも不断の議論が必要であることを報告書の中に表現できないか検討したい。
    • 優先的に収集すべき「資料」という表現だと、内容で優劣をつけるかのような誤解を生じかねない。形式に着目する意味で優先的に収集すべき「バージョン」と表現すると紛れがないだろう。
    • 「汎用性」があるものを優先的に収集すべきとしたのは、再生環境に着目すれば専用環境を必要としない方、アクセシビリティに着目すればテキスト情報がある方というように、より広い使い方が可能なものを集めるという趣旨である。
  2. 収集除外について
    • NDLが収集しないリポジトリのコンテンツについても、統合的検索サービスにより所在が判明し、リンクにより本文情報へナビゲートされるものと理解した。
    • 運営目的に文化財の蓄積及び利用が含まれることをリポジトリ認定要件とするが、何を収録するかは任意である。リポジトリに収録されていないコンテンツは、NDLの収集対象である。
    • 複数法人の委託を受けた営利法人をリポジトリ運営事業者として認める場合、同一グループ内の企業であっても複数法人と考えられるか。単に複数法人というだけでなく、参加できる者を限定しないという条件付けもあり得るかもしれない。
    • 相互の独立性がない複数法人を形式的に揃えただけでリポジトリと認めてしまっては意味がない。例えば「独立の」複数法人のように、安全弁になり得る表現を加えてはどうか。
    • ダミー会社による複数法人を装った収集逃れを防ぐという趣旨からすると、「独立の」複数法人くらいの表現がよいだろう。制度開始時点では、包括的な概念の方が運用しやすいのではないか。
    • J-STAGEの場合、希望する者は誰でも参加可能である。電書協が構築を予定しているリポジトリについても、最初は加盟社のみで小さく始めるとしても、いずれ加盟社以外にも門戸を開く想定ということなら、そこはぜひ実現してもらいたい。
    • 運営体制の要件として、国立国会図書館との連絡窓口を明示し維持することを規定してはどうか。覚書の方でもよいので、定めがあると運用しやすいだろう。
    • 運営能力の要件として、過去の実績に加えて、今後も安定的運営が見込まれる旨を加えてはどうか。
    • リポジトリの運営停止や配信停止に伴うNDLへのコンテンツ移管は、発行者(本来の提供義務者)の代理で行うものとして整理されると理解した。倒産に伴う運営停止の場合、差し押さえ等の理由により、NDLへのコンテンツ移管が確実に行われるか懸念がある。事業報告書や財務諸表による運営安定性の確認は、リポジトリ認定時だけでなく、定期的に行う方がよいだろう。
    • リポジトリからの定期的な運用状況報告に際して、コンテンツの異同に係る情報の他に何を含めるか、財務諸表の提出も選択肢として、具体的な運用を検討したい。
    • NDLへのオンライン資料の提供は複製であり、知的財産権には影響を及ぼさないが、差し押さえや仮処分の対象は幅広になる可能性があり、一時的に複製すら制限される事態はあり得るかもしれない。仮に、リポジトリ運営事業者が代理提供できない場合でも、元の発行者の提供義務は残るだろう。
    • 差し押さえのような特殊な事情の場合に、一時的にコンテンツの利用が停止することはやむを得ないだろう。仮に、コンテンツに係る権利が他者へ移転し、再び世の中に発行されたら、改めてNDLへの提供義務が発生する。
    • リポジトリの運営停止に伴い、元の発行者の提供義務が復活しても、既に発行者の手元にはデータがない可能性がある。リポジトリの運営停止に備えて発行者がデータを保管し続けるのは困難であり、発行者としても信頼できるリポジトリを選んで預けなければならないということだろう。
    • 電書協が構築予定のリポジトリでは、コンテンツ提供者(発行者)、著作権者、リポジトリ運営事業者の間で、運営停止時のNDLへのコンテンツ提供が担保できる契約内容も検討されているようである。リポジトリ運営事業者には、NDLへのコンテンツ移管を含めて権利関係をクリアしておくことが求められる。
  3. その他
    • 元号のみの記載は分かり難く、西暦を併記してはどうか。
    • TTS(音声読み上げサービス)のような視覚障害者向けサービスを含め、収集した資料の利用は無制限に行えるものではなく、一定の範囲を超える利用については、権利者との丁寧な協議が必要である。

(以上)

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