令和2年度第5回納本制度審議会オンライン資料の補償に関する小委員会議事要録
- 日時:
- 令和3年3月5日(金)午前10時~午前11時10分
- 場所:
- Web会議システムによるリモート開催
- 出席者:
- 福井健策小委員長、植村八潮委員、遠藤薫委員、奥邨弘司委員、柴野京子委員、永江朗委員、根本彰委員、佐々木隆一専門委員、樋口清一専門委員
- 会次第:
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- 有償等オンライン資料制度収集に関する小委員会報告書の取りまとめについて
- その他
- 配付資料:
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- (資料1)納本制度審議会オンライン資料の補償に関する小委員会所属委員・専門委員名簿
- (資料2)オンライン資料の補償に関する小委員会報告書(案)
- (参考資料1)オンライン資料収集に係る法規対照表
- 議事概要:
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資料2に基づいて、小委員会報告書の取りまとめに向けた審議が行われた。主な発言は次のとおりである。
- 収集対象について
- 現行制度では、インターネット等により利用可能とされる図書又は逐次刊行物に相当するものをオンライン資料とし、具体的には、特定のコード(ISBN、ISSN、DOI)が付与されているもの又は特定のフォーマット(PDF、EPUB、DAISY)で記録されているものを収集対象としている。しかし、文化財の蓄積及び利用という収集目的に鑑みると、新聞記事や雑誌記事に相当するニュースサイトのコンテンツが収集対象から漏れるのは構わないのか。それらは収集対象にならない「簡易なもの」なのだろうか。また、納本制度において収集対象とされている図書、逐次刊行物以外のもの(小冊子、楽譜、地図、映画フィルム、文書・図画、蓄音機用レコード等)に相当するデジタルコンテンツが放置されている状況でよいのか。ジャパンサーチの運用が開始され、他のデジタルアーカイブ機関との分担・連携を明確に考えるべき時期ではないか。これらについて残された課題として報告書に入れていただきたい。
- 前提として、国立国会図書館法(以下「館法」という。)第24条第1項第1号から第9号まで(図書、逐次刊行物、パッケージ系電子出版物等)は、納本制度における収集対象を規定しているものであり、それとは別途、館法第25条の4第1項においてオンライン資料(図書又は逐次刊行物に相当するもの)を規定しており、その収集の在り方について、この小委員会においてご議論いただいているものである。また、国立国会図書館では、館法に規定する制度に基づく収集以外にも、許諾や契約に基づく収集を行っており、オンライン資料の定義から外れるものについても、必要に応じて、相手方の理解を得た上で制度によらず収集していくものと考えている。
- 平成24年の館法改正で図書又は逐次刊行物に相当するオンライン資料を収集するという枠組みを作ってから、状況は変化している。前回の小委員会で言及した小説投稿サイト(いわゆる「なろう系」)のように、オンライン資料の定義の外にあるものの収集についても課題として挙げてよいのではないか。冊子体からウェブ版に切り替わったものを収集する場合、PDFで公開される技報等は、収集すべきオンライン資料として分かりやすかった。しかし、当時想定した以上に、ウェブのみで公開される社会的に重要なコンテンツが増えてきており、特に、逐次刊行物に相当する領域は広がっている。例えばニュースサイトのコンテンツはオンライン資料に該当するのか。
- ニュースサイトのコンテンツは、内容としては図書又は逐次刊行物に相当するものと思われる。しかし、所定のコード又はフォーマットを要件とするオンライン資料の外形定義から外れるため、民間が公開するウェブサイト情報として制度に基づく収集の対象外となる。
- ISSN等の標準的な識別子が付与され、発行者において出版物として管理しているニュースサイトやウェブマガジンは、制度に基づく収集の対象に含まれる。発行者側に対し、標準的な識別子の付与について戦略的な広報を行うことも必要だと考えている。
- 報告書において、オンライン資料の外形基準であるコードとフォーマットの定義については、出版流通状況の変化等に応じて不断に見直しを行うことが重要である旨を記載している。概念としては逐次刊行物に相当するが現在の外形定義からは外れるものへの対応については、この記載によって必要性を指摘しており、まさに、不断の見直しを行うことが望まれる。
- NDL-HP等で制度収集について説明している概念図では、オンライン資料から外れる部分を「ウェブサイト」と表記しているが、アプリケーションのみで利用するコンテンツが増えてきたことを踏まえて概念を見直すことも考えられる。
- 民間が公開するオンライン資料(図書又は逐次刊行物に相当するもの)に該当しない情報は、現行法規において収集対象となっておらず、今回の諮問の対象にも含まれない。ただし重要な課題である。オンライン資料の補償に関する小委員会で扱うべき範囲を超えていることから、報告書において言及するのではなく、今度の納本制度審議会において小委員会の審議経過を報告する際に参考意見として紹介することとしたい。
- 本日の審議経過を追記した小委員会報告書の確定版を整え、次の審議会に提出する。
- その他
- 平成22年の納本制度審議会答申では、オンライン資料を「広く公衆に利用可能とした者」が国立国会図書館への提供の義務を負うものとし、館法第25条の4においては、「公衆」に利用可能とされたオンライン資料を収集対象と規定している。この「公衆」の指す範囲について、例えば著作権法においては「特定かつ多数の者を含む」と明示されているところ、館法では明示されていない。仮に、館法における「公衆」の範囲に特定多数の者を含まないものと解すると、資格審査を経て利用可能となる会員限定のオンライン資料(学協会員向けの資料等)が収集対象外となり、有体物の資料を対象とする納本制度において特定多数向けの資料も収集対象としていることとのバランスを欠く。有償等オンライン資料収集に向けて検討する過程において、「公衆」の定義を明確化する必要性があり改めて確認するが、国立国会図書館として、「特定かつ多数の者」に向けて利用可能とされたオンライン資料も収集すべきであるという考え方でよろしいか。なお、機密情報に該当するものについては、収集の対象から除くことが館法において規定されている。
- 「公衆」あるいは「不特定多数」には、「不特定かつ多数」と「不特定又は多数」という2つの考え方がある。著作権法における「公衆」は「不特定又は多数」を指し、会員や個人的なつながりが強い特定の人々でも多数に及べば「公衆」であるという考え方である。国立国会図書館が何を収集すべきかという観点に立てば、機密情報に該当しない限りは、特定多数向けのオンライン資料も収集対象にすべきであろうことに異論はない。
(以上)
- 収集対象について