マイクロ資料への対策
マイクロ資料は長期保存性に優れた媒体であり、図書館や文書館等で媒体変換や資料収集の手段として、長年、広く利用されてきました。マイクロ資料を長期的に保存するためには、保存環境の適切な管理のほか、定期的な状態調査や、調査結果に応じた適切な対処が必要です。マイクロ資料のうち、素材がTAC(セルロースエステル)ベースの資料については、不適切な環境下で保存すると、加水分解によって酢酸が生じ、劣化します(ビネガーシンドローム)。黒白フィルムでは、主として1950年代から90年代前半に作られたものがこれに該当します。国内では、黒白フィルムの素材(支持体)は1990年代前半に化学的に安定し長期保存が期待できるPET(ポリエステル)ベースに全面的に切り替わりました。
国立国会図書館は、平成2年頃からマイクロ資料の劣化対策を進めてきました。平成16年度から平成20年度には、劣化しやすいTACベースフィルムが使用されていた時期のマイクロ資料の緊急劣化対策を外部専門業者に委託して行いました。対策内容としては、フィルムに影響する酸性紙製の包材を中性紙製の包材に交換し、ロール・フィルムは酢酸を放散させるため巻返しを行い、併せて、劣化状況を調査しました。そして、問題があったマイクロ資料のクリーニング及び再作製を行いました。
国立国会図書館所蔵マイクロ資料長期保存対策方針
緊急劣化対策から10年以上が経過し、所蔵するマイクロ資料全体に対して、劣化や破損を防止し、長期的な利用を保証するための対策を継続的かつ着実に実施する必要があることから、「国立国会図書館所蔵マイクロ資料長期保存対策方針」を定め、マイクロ資料の保存対策を進めています。
マイクロ資料の保存に関する参考資料
- 「マイクロフィルム保存のための基礎知識」国立国会図書館収集書誌部資料保存課(令和元年9月改訂版)(PDF: 1.51MB)
- 「マイクロ資料状態調査結果に基づく原則的な対策フローチャート」国立国会図書館収集書誌部資料保存課(令和元年10月作成)(PDF: 160KB)
- 「マイクロフィルム保存の手引:大切なマイクロフィルムのためにぜひ知っておきたい」日本画像情報マネジメント協会(2005)(公益社団法人日本文書情報マネジメント協会へリンク)
- JISZ6009:1994「銀−ゼラチンマイクロフィルムの処理及び保存方法」
- 『資料保存の調査と計画』 日本図書館協会資料保存委員会 編集企画 安江明夫 監修 日本図書館協会 2009.3 141p
- 『図書館資料としてのマイクロフィルム入門』 小島浩之 編、安形麻理、上田修一、小島浩之、佐野千絵、 野中治、矢野正隆 著 日本図書館協会 2015.3 180p(JLA 図書館実践シリーズ;27)
- 『標準化ガイドブック ドキュメントマネジメント 2012』 日本画像情報マネジメント協会 2012.4 170p
過去に開催したマイクロ資料関連のイベント・研修等
- 第34回保存フォーラム「フィルムと写真-劣化の仕組みと保存対策」国立国会図書館収集書誌部資料保存課
- 第18回保存フォーラム「マイクロフィルムを長期保存するために」(インターネット資料収集保存事業(WARP))
- 資料保存特別研修「図書館・文書館におけるマイクロフィルム・写真の取扱いと保存」(インターネット資料収集保存事業(WARP))