第三章 暦の中のことば

吉凶を表す言葉②中段

六曜が広まる前の暦にも、六曜と同じように日々の吉凶を示す選日(せんじつ)と呼ばれるものが書かれており、その多くは干支の組み合わせによって日々の吉凶を判断しています。

たとえば、「暦の中段」あるいは「十二直(じゅうにちょく)」と呼ばれるものや、「暦の下段」に記載されていた選日もあります。その他にも一粒万倍日(いちりゅうまんばいび)、三隣亡(さんりんぼう)なども選日の一種です。これらの多くは現在ではあまり使われなくなっています。

中段

「暦の中段(ちゅうだん)」は、暦上に記載される位置から名づけられました。十二直(じゅうにちょく)とも呼ばれ、十二直の「直」は「当たる」という意味があり、よく当たる暦注と信じられていたと考えられます。建(たつ)、除(のぞく)、満(みつ)、平(たいら)、定(さだん)、執(とる)、破(やぶる)、危(あやぶ)、成(なる)、収(おさん)、開(ひらく)、閉(とづ)の12種類があります。

古くから中国では、一定の位置にあって動かない北極星を中心に1日1回転する北斗七星に興味を示していました。そして、北斗七星のひしゃくの部分(斗柄、剣先星)が夕方どの方角を向いているかをその方位の十二支に当てはめて各月の名を決め、暦に記しました。これを月建(げっけん)といいます。冬至(旧暦11月)には、斗柄が真北(十二支の子の方角)を指す(建(おざ)す)ため、建子の月と名づけ、同じように、12月は丑、正月は寅…という要領で各月を名づけました。

そして、その節月と同じ十二支を持つ最初の日を建とし、以後順に、除、満…と配していきます。例えば1月の月建は寅なので、1月節(立春)後の最初の寅の日が建となり、次の卯の日には除、辰の日には満…と順に配当します。原則として十二直は12のサイクルですが、毎月の節入りの日のみ、その前日と同じ十二直を配しています。

十二直の意味の解釈は時代によって少しづつ異なっています。現在ではほとんど使われることはなくなりましたが、建築や引越しの吉凶を見るために使われることもあります。

暦の中段
節月 二十四
節気
節月の
十二支
最初の
建の日
子の日 丑の日 寅の日 卯の日 辰の日 巳の日 午の日 未の日 申の日 酉の日 戌の日 亥の日
正月節 立春 立春後の
最初の
寅の日
2月節 啓蟄 啓蟄後の
最初の
卯の日
3月節 清明 清明後の
最初の
辰の日
4月節 立夏 立夏後の
最初の
巳の日
5月節 芒種 芒種後の
最初の
午の日
6月節 小暑 小暑後の
最初の
未の日
7月節 立秋 立秋後の
最初の
申の日
8月節 白露 白露後の
最初の
酉の日
9月節 寒露 寒露後の
最初の
戌の日
10月節 立冬 立冬後の
最初の
亥の日
11月節 大雪 大雪後の
最初の
子の日
12月節 小寒 小寒後の
最初の
丑の日

実際の暦の画像です。暦の中段などの選日が、暦のどの部分に記載されているかを示しています。 中段 選日 方位神