腕試し問題(難易度3)

代数の問題 解答

n進法

A1

『新編塵劫記』より
『新編塵劫記』より 問題の長方形の面積は37×28=1,036歩となりますが、1反=300歩、1畝=30歩なので、1,036=3×300+4×30+16と上位の単位ごとに展開して、答えは3反4畝16歩となります。

整数

合同式
A2 5,11,13は互いに素なので中国式剰余定理を使います。 11×13=143の倍数で 5で割ると1 余る最小の数は57×5+1=286、 5×13=65の倍数で11で割ると1余る最小の数は59×11+1=650、 5×11=55の倍数で13で割ると1余る最小の数は38×13+1=495ですので、x≡286a+650b+495c (mod 715) が一般解。
A3 x≡2(mod 36),x≡14(mod 48)で、36=22×32, 48=24×3 なので、36の約数aと48の約数bで、互いに素となるものはa=32とb=24です。すると、x≡2(mod 36)であるxはx≡2(mod 9)を満たし、一方x≡14(mod 48)であるxはx≡14(mod 16)を満たし、(9,16)=1。中国式剰余定理からx≡2(mod 9),x≡14(mod 16)の解は x≡p(mod 9x16)の形をしており、pは16の倍数で、9で割ると 2余る数である128と、9の倍数で、16で割ると 14余る数である270の和=128+270=398から9×16=144を順に引いてゆくと254,110となり、解はx≡110(mod 144)。
冪和
A4

k=1Σnk=1+2+3+…+n=n(n+1)/2となることは簡単にわかります。k=1Σnk(k+1)/2!は少し難しいので、きちんと計算しておきましょう。k=1Σnk2がわかればk=1Σnk(k+1)/2!(k=1Σnk2+ k=1Σnk)/2!として計算できます。そして、k=1Σnk 2乗はn3+3n2+3n=(n+1)3-1と(n+1)3-n3=3n2+3n+1を使って以下のように計算します。

n3+3n2+3n=(n+1)3-1={(n+1)3-n3}+{n3-(n-1)3}+…+{33-23}+{23-13}
={3n2+3n+1}+{3(n-1)2+3(n-1)+1}+…+{3×22+3×2+1}+{3×12+3×1+1}
=3 k=1Σnk2乗 +3 k=1Σnk + n

3 k=1Σnk2乗 = (n3乗+3n2乗+3n)-3n(n+1)/2-n =n(n2乗+3n+3-3n/2-3/2-1)=n(n2乗+3n/2+1/2)=n(n+1/2)(n+1)

したがって、k=1Σnk2乗= n(n+1/2)(n+1)/3 となります。
すると 

k=1Σnk(k+1)/2!= (k=1Σnk2乗+ k=1Σnk)/2!= n(n+1/2)(n+1)/(3×2!)+ n(n+1)/(2×2!) = n(n+1){(2n+1)+3}/(6×2!)= n(n+1)(n+2)/3!

となります。
以上からk=1Σnk(k+1)(k+2)/3!がどうなるのか予想できるでしょうか。k=1Σnk/1!= n(n+1)/2!k=1Σnk(k+1)/2!=n(n+1)(n+2)/3!となりましたので、k=1Σnk(k+1)(k+2)/3!=n(n+1)(n+2)(n+3)/4!となれば、規則性がはっきりしますが、実際はどうでしょうか。それについてはQ5 をご覧ください。 

A5

k=1Σnk(k+1)(k+2)…(k+p-1)/p!=n(n+1)(n+2)…(n+p)/(p+1)!となることを数学的帰納法で証明します。n=1の時、左辺=1×2×3×…×p/p!=1右辺=1×2×3×…×(p+1)/(p+1)!=1ですので、等式は成り立っています。n=mの時、k=1Σmk(k+1)(k+2)…(k+p-1)/p!=m(m+1)(m+2)…(m+p)/(p+1)!であるとすると、

k=1Σm+1k(k+1)(k+2)…(k+p-1)/p!= m(m+1)(m+2)…(m+p)/(p+1)!+(m+1)(m+2)…(m+p)/p!= m(m+1)(m+2)…(m+p)/(p+1)!+(m+1)(m+2)…(m+p)(p+1)/p!(p+1)= (m+1)(m+2)…(m+p)(m+p+1)/(p+1)!

したがって、n=m+1の時も成り立つので、あらゆるnについて成立します。
具体的な式にしておきますと、

k=1Σnk=n(n+1)/2! k=1Σnk(k+1)/2!=n(n+1)(n+2)/3! k=1Σnk(k+1)(k+2)/3!=n(n+1)(n+2)(n+3)/4! k=1Σnk(k+1)(k+2)(k+3)/4!=n(n+1)(n+2)(n+3)(n+4)/5! …

こうした関係式はすでに14世紀中国の数学書である朱世傑の『四元玉鑑』で取り扱われています。
また、n(n+1)=n2+n、n(n+1)(n+2)=n3+3n2+2n、n(n+1)(n+2)(n+3)=n4+6n3+11n2+6nと展開することでk=1Σnk(k+1)= k=1Σnk2乗+ k=1Σnkなどの関係を使ってk=1Σnk=n(n+1)/2から順次k=1Σnk2乗、k=1Σnk3乗、k=1Σnk4乗などの式が計算できます。その結果は以下の通りです。

k=1Σnk2乗=n(n+1)(2n+1)/6 k=1Σnk3乗={n(n+1)/2}2乗 k=1Σnk4乗=n(n+1)(2n+1)(3n2乗+3n-1)/30 …

A6

Q5 で確認したk=1Σnk(k+1)(k+2)…(k+p-1)/p!=n(n+1)(n+2)…(n+p)/(p+1)!という公式がありますので、k=1Σnk(k+1)(k+2)…(k+p-1)/p!のnp+1の係数は1/(p+1)!です。従って、k=1Σnk(k+1)(k+2)…(k+p-1) のnp+1の係数はp!/(p+1)!=1/(p+1)となり、k=1Σnkp のnp+1の係数も1/(p+1)です。そこでk=1Σnkp乗=np+1/(p+1)+Bnp乗+Cnp-1+…+Yn+Zと書けるとすると、k=1Σnkp乗/np+1=1/(p+1)+B/n+C/n2乗+…Y/np乗+Z/np+1ですので、nを無限に大きくした極限ではlim n?∞  k=1Σnkp乗/np+1=1/(p+1)となります。

k=1Σnkp乗/np+1{(1/n)p乗+(2/n)p乗+…+((n-1)/n)p乗+(n/n)p乗}/n と書き改めると、これは図のようにnを無限に大きくした極限はy=xpという関数を区間[0,1]で積分した値のことです。 

A6

この問題は0∫1xp乗 dx=1/(p+1)という定積分と同じで、和算家たちは、円の面積を出すのに、lim n?∞  k=1Σnkp乗/np+1=1/(p+1)という事実を使いました。これを使って安島直円(1732-1798)が導いたπ/4 = 1-1/6-1/40-1/112-5/1152-…という級数は、西洋数学での

π/4 =0∫1√(1-x2乗) dx= 0∫1 (1-x2乗/2-x4乗/8-x6乗/16-5x8乗/128-…)dx=1-1/(2×3)-1/(8×5)-1/(16×7)-5/(128×9)-…

と同じものです。

組立除法

A7

解をpの冪級数で表すため、組立除法を使って、1次の係数から順番に高次の係数を求めていきます。方程式の定数項を小さくしていくことが目的ですので、まず定数項pが消えるようにp/2を最初の近似とすると、以下の組立除法となります。

これで、元の方程式を(x-p/2)2+(-2+p)(x-p/2)+p2/4=0 に変換したことになります。次にp2/4が消えるようにp2/8を2番目の近似とすると、以下の組立除法となります。

次にp3/8が消えるように、p3/16を3番目の近似とすると以下のようになります。

次に5p4/64が消えるように、5p4/128を4番目の近似とすると以下のようになります。

すると次の項は7p5/128を2で割った7p5/256であることがわかり、ここまでで、x=p/2+p2/8+p3/16+5p4/128+7p5/256+…という解の近似値を求めたことになります。
この形の解が何に由来するのかを調べてみましょう。方程式 x2-2x+p=0の解は(x-1)2=1-pよりx=1±√(1-p)となります。√(1-p)をテーラー展開すると1 - p/2 - p2/8 - p3/16 --5p4/126 - 7p5/256- …となり、組立除法で求めた解は1-√(1-p)のことであることがわかります。和算家は円周率の計算にこの解の形を利用しました。

有理数近似

A8

右辺の xを1+1/xと書き換えると

x=1+1/x=1+1/(1+1/x) =1+1/{1+1/(1+1/x)} =…

と無限に続く式ができます。これは

1+1/[1+1/{1+1/(1+…)}]

という形の無限に続く分数がx=1+1/xの解となることを意味しています。x=1+1/xはx2-x-1=0と同じで、この解はx=(1±√5)/2ですので、

(1+√5)/2=1+1/[1+1/{1+1/(1+…)}]

、すなわち

(√5)/2=1/2+1/[1+1/{1+1/(1+…)}]

となります。

このように

a+1/[b+1/{c+1/(d+1/…)}]

の形の分数を連分数と呼びます。(1+√5)/2は連分数を順に計算すると、

1+1/(1+1)=3/2 、1+1/{1+1/(1+1)}=5/3、 1+1/[1+1/{1+1/(1+1)}]=8/5

のように少しずつ正確な値へと近づいてゆきます。この分子と分母の数は、「次の分母=前の分子」、「次の分子=前の分母+前の分子」という関係があり、以下、13/8, 21/13,34/21,55/34,…という風に続いてゆきます。3/2の前に、1/1,2/1があると考えたとき、分子を並べた数列1,2,3,5,8,13,21,34,55,…はフィボナッチ数列と呼ばれます。また、(1+√5)/2黄金数と呼ばれ、1.6180339…と続く無理数です。フィボナッチ数列の隣り合う数字の比は黄金数に収束します。

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